トップリーグ09-10 ワイルドカードトーナメント ファイナル クボタ戦 ~グリーンロケッツ、劇的逆転勝利で日本選手権出場決定!対戦相手はサントリーサンゴリアスに決まる~

info_category1.gif2010/01/25



  開幕戦で苦杯を喫したクボタスピアーズとの“リベンジマッチ”となった、ワイルドカード決勝戦。NECグリーンロケッツは、終始重苦しい展開を強いられた。
 しつこく粘り強く守るディフェンスは健在なのに、ちょっとした隙をつかれて2トライを奪われ、SOシェーン・ドゥラームのキックでスコアをじりじりと引き離される。
 残り10分を切った時点で19─21。
 逆転を信じて必死に攻めてもクボタの堅守に阻まれ、重圧を受けてミスを引き起こす。
 今シーズン前半のもどかしさが脳裏をよぎる。
 しかし、シーズン終盤の4連勝で自信を取り戻したグリーンロケッツは、最後の最後まで勝利を諦めずにボールを追い続けた。
 33分、SO松尾健が40メートル近いDGで逆転を狙うが、ボールはそれてドロップアウト。
 そこから2分間、クボタからもぎとったボールを執拗に連続攻撃で継続する。が、最後にタッチに押し出されて相手ボールのラインアウトに。
 37分、今度は左中間の10メートルライン付近で得たペナルティキックからPGを狙うが、ボールは無情にもわずかにそれる。
 それでも折れないグリーンロケッツは、クボタがボールを確保してプレーを切ればそこで試合が終わる最後のスクラムに、意地を見せた。
 強烈な押しで反則を誘い、もう一度PGのチャンスを得たのだ。
 位置は先ほどよりもわずかにゴールポスト正面に寄った辺り。距離は約40メートル。
 松尾が慎重にボールをプレースしている間に、試合終了を告げるホーンが鳴って、泣いても笑ってもラストプレーであることを知らされる。
 決まれば逆転で日本選手権出場。
 外れればその場でシーズンが終わり、ミラクル10の夢が消える。
 そんな重圧のなかで松尾が蹴ったボールは、今度こそゴールポストの真ん中を通過。
 その瞬間に歓喜の雄叫びが響き渡った。




 先制したのはグリーンロケッツだった。
 前半9分にラインアウトからNO8ニリ・ラトゥが突進。クボタのディフェンス目がけて直進しながら、激突する寸前に身を翻して松尾にパス。松尾は冷静に左側にできたラインにボールを回して、FB吉廣広征がゴールに飛び込んだ。
 だが、前半の得点シーンはこれで終わり。
 グリーンロケッツはFW戦で優位に立ち、再三モールを20メートル以上も押し込む場面を見せながら、仕留めが上手くいかずにスコアを伸ばせないのだ。
 その間にクボタは、SOシェーン・ドゥラームがPGを返して食い下がる。



 そして前半40分。
 クボタは、グリーンロケッツのゴール前のスクラムから左に展開。CTBカトニ・オツコロが強引にトライを奪って逆転。5─8で前半を終えた。
 ハーフタイムで戦い方を修正したグリーンロケッツは、立ち上がりの2分に連続攻撃でクボタのゴール前に迫り、ニリがトライを奪って再逆転。松尾が、右端の難しい位置からゴールを決めて12─8とリードした。
 しかし、ゲーム・コントロールに長けたクボタは、ドゥラームの2本のPGで逆転すると、22分にはドゥラームのカウンター・アタックからチャンスをつかみ、グリーンロケッツの反則を誘うと、ラインアウトからトライを奪って12─21までスコアを広げる。



 ワンチャンスでは逆転できない状況に追い込まれたグリーンロケッツ。絶体絶命のピンチを救ったのは、ベテランWTB窪田幸一郎のひたむきで忠実なプレーだった。
 起点はCTBブライス・ロビンスのキックだ。
 クボタが捕り損ねて転がったボールを、窪田が足に引っかける。勢いよくピッチを駆ける楕円球。だが、窪田は諦めずにボールを追い続ける。不規則に転がる楕円球は、可能性を信じて走り続けた努力に報いるように、インゴールでポンと高く弾んで窪田の胸にスッポリと入った。
 松尾のゴールも決まって点差は2点。
 逆転の準備はこれで整い、冒頭のクライマックスへと雪崩れ込んだわけだ。




 シーズン序盤、自らの力に確信が持てなかったときに自分たちを襲った「最悪のシナリオ」が、勝利を重ねて自信をつけると、今度は逆に相手に襲いかかる──つくづくラグビーは不思議なスポーツだと考え込ませる逆転劇だった。
 岡村要ヘッドコーチは試合後に興奮さめやらぬ表情でこう言った。
「選手たちが、最後まで諦めずに戦って勝った。今日はそれに尽きます」
 そして、こう続けた。
「これまで松尾のキックで勝った試合がいくつもあったので、(最後のPGは)入っても入らなくてもかまわないという気持ちで見守りました。ただ、リーグ戦10位からここまで這い上がれたことは嬉しいですが、今日は修正点の多いゲーム。判断が悪くて苦しむ場面が多かった。日本選手権では、課題を修正して、激しいコンタクトやタックルといったNECらしさを存分に出して戦いたいと思います」
 ヒーローの松尾は、今季後半の快進撃を支えてきた一人。劇的なキックは昨シーズンの福岡サニックスブルース戦や日本選手権1回戦の神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦でもおなじみだが、そうした目立つ場面よりも、地域をとるかボールを回して攻めるかの判断に、いぶし銀の輝きを見せた。攻守にゲームをコントロールして、チームに「ストラクチャー」を徹底させる役割を担っているのだ。
 松尾が言う。
「キックは、助走を短くしてミートを心がけるようにしてから開眼しました(笑)。それよりも、今日の前半は前にスペースが空いていたから“ボールを回せ”というコールが多かった。でも、冷静に考えたら、それはウチのスタイルとはちょっと違う。だから、後半はもう少し地域をとるようにしました」
 もう一人、熊谷皇紀主将が負傷して戦列を離れて以来、ずっとゲーム・キャプテンとしてチームを支えてきたニリの働きも特筆ものだった。
 ニリは記者会見でキャプテンシーについて訊ねられてこう答えた。
「自分がキャプテンであるという意識よりも、僕はチームのなかに(リザーブを含めた)22人のキャプテンがいると信じてプレーしている。今日の試合も一人ひとりのプレーヤーを信じていたから、最後の松尾のキックも入ると思っていたよ(笑)」



 かくして開幕3連敗の泥沼から始まったグリーンロケッツは、7シーズンぶりの「ミラクル」を狙うところまで驚異的な復活を遂げた。
 熊谷主将を始め、負傷者も戦列に戻りつつあり、戦う準備は整った。
 不完全燃焼が続いたシーズンの記憶を、今季最高のパフォーマンスで払拭できるのか。
 日本選手権の開幕は2月7日。チームのアイデンティティである「ディフェンス」と「泥臭さ」を徹底して「リベンジ・ロード」を歩むグリーンロケッツは、大阪・花園ラグビー場でミラクルへの第1関門をサントリーサンゴリアスと戦う。


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 今日はすごくラッキーな試合でした。
 クボタは、シェーン・ドゥラームのキックで素晴らしいゲーム・コントロールを見せた。それに対してNECは、タックルされてボールを落としたり、ラックで相手をクリーンアウトできなかったり、個人レベルでのミスが多かった。そういうところを一人ひとりが意識しないとレベルは上がりません。でも、みんなが勝つことを信じて最後まで諦めずにいいアタックを続けたから、最後の最後にPGのチャンスが巡ってきた。
 だから、今日のヒーローはメンバー全員。2人に絞ることは無理ですね(笑)。
 今シーズンはなかなか勝てなくて本当に苦しいシーズンだったけど、チームメートを信じ、ストラクチャーを信じ、自分たちの力を信じることで強くなってきた。11月に厳しい練習をした成果が出たと思います。
 12月19日のサニックス戦から連勝が続いて、みんなどんどん上手くなってきたけど、次の試合に勝てばチームが本当にレベルアップを果たしたことになる。そのためには、もっと「スマート(賢く)」にならないと。
 まずミスを減らす。日本選手権は、お互いにプレッシャーをかけ合うようなゲームになるから、数少ないチャンスを確実にモノにしないと勝って次に進むことはできないでしょう。NECのゲームをすることに集中することが大切ですね。
 でも、チームは確実に強くなっています。だから、みなさんもより一層の応援をお願いします!



取材・文:永田 洋光