トップリーグ09-10 第13節 ヤマハ戦 ~グリーンロケッツ、最終節のヤマハ戦に快勝。ワイルドカード出場も決定!~
2010/01/12
快晴微風。
開幕から3連敗と最悪のスタートを切ったNECグリーンロケッツの09-10年度トップリーグ最終戦は、終盤になってようやく上昇気流をつかんだチーム状態を映し出したような天候に恵まれた。
試合前の時点で、グリーンロケッツは3勝9敗通算勝ち点20の11位。この試合でヤマハ発動機ジュビロから4トライ以上を奪って勝てば勝ち点は25まで伸びるが、10位の近鉄ライナーズの勝ち点は23。グリーンロケッツが最大限の勝ち点を挙げても、近鉄が福岡サニックスブルースから4トライ以上奪って勝てば、グリーンロケッツは後塵を拝して11位で終わる。
今シーズンから日本選手権の出場規定が変わり、トップリーグ5位から10位までのチームには、勝ち上がれば日本選手権の出場権を獲得できるワイルドカード・トーナメント出場のチャンスが与えられる。つまり、グリーンロケッツが勝ち点で近鉄を上回って10位になればワイルドカードが、上回れずに11位で終われば入替戦が、行く手に待ち受けることになる。
ワイルドカードが日本一に望みをつなぐ希望の道なら、入替戦は敗れればトップイーストへの降格を意味する、いわば“退却戦”。チームの意気込みもモチベーションも大きく違ってくる。
他力本願とはいえ、残された希望を信じるように、グリーンロケッツは立ち上がりに集中した。

ヤマハが蹴り込んだキックオフを確保してモールからSH西田創がハイパント。追走したWTB窪田幸一郎が素晴らしいタックルでヤマハNO.8木曽一を倒して反則を誘う。ペナルティキックからのラインアウトを選択したグリーンロケッツは、そこからモールを押し込み、最後はPR土井貴弘がトライを挙げた(SO松尾健のゴールキックは失敗)。
開始からわずかに1分26秒。この試合にかける意気込みを表したトライだった。
しかし、この日のグリーンロケッツが真価を発揮したのは、攻撃よりも粘り強い防御だった。
キックの応酬からチャンスをつかんだヤマハは、6次にわたる連続攻撃でグリーンロケッツ陣内に攻め込むが、7次目のラックでノット・リリース・ザ・ボールの反則。
17分には、自陣ゴール前のラインアウトでヤマハにモールを組まれて押し込まれるが、トライの態勢に入ったLOローリー・ダンカンにしつこくからみついてタックル。落球を誘ってピンチを切り抜ける。続くスクラムでヤマハにプレッシャーをかけられてボールを奪われるが、ラックから連続的に繰り出すヤマハのアタックをきっちりと止めて、マイボールのスクラムにする。
そして28分、この試合最大のピンチが訪れた。
ヤマハCTBジョシュア・レヴィがグリーンロケッツの防御を鋭く突破。ゴール前に迫ると、連続攻撃に持ち込んだ。次々とモール・ラックを制して攻め続けるヤマハに対して、グリーンロケッツはひたすら我慢の時間を過ごす。サイド攻撃と鋭いタックル。肉弾戦はフェイズを重ね、じりじりと時間だけが経過する。
8つ目のブレイクダウンから持ち出されたボールは緑の壁に呑み込まれ、9つ目のラックになった。そこでペナルティを告げる長い笛が鳴る。
反則をとられたのはヤマハ。グリーンロケッツの粘り強い防御に業を煮やしたのか、寝ている選手を踏むスタンピングで、麻生彰久レフェリーがイエローカードを出した。
我慢比べの攻防に耐えきれずに反則を犯し、あげく14人となったヤマハに、今度はグリーンロケッツが反撃する。
自陣でラインアウトを確保すると左へ展開。バックスのオープン攻撃が実って、左WTB瀬崎隼人がタッチライン際を快走する。ヤマハの懸命の防御に瀬崎が倒されると、ラックから今度は右に展開。松尾からの飛ばしパスを受けたNO.8ニリ・ラトゥが、冷静に防御の数を読んでPR久富雄一にパス。そして、ラストパスを受けたFL権丈太郎が右中間に飛び込んだ。松尾のゴールも決まって12─0。
長い長い防御に耐えた直後に奪ったこのトライが勝負の流れを決めた。
35分には、ニリの強烈なタックルでヤマハの反則を誘い、ラインアウトからFLセミシ・サウカワが突進。そこから連続攻撃に持ち込んで、最後はニリがトライを奪う(ゴール成功)。
前半のほとんどを自陣で戦いながら、そして圧倒的にボールを支配されながら、グリーンロケッツは少ないチャンスを得点に結びつけて前半を19─0と大きくリードした。
後半は、5分に松尾がPGを決めて3点を追加。7分には、CTBブライス・ロビンスが突破してセミシに絶妙の浮かしパスを放ち、待望の4トライ目が生まれた……かに見えたが、麻生レフェリーの判定はスローフォワード。
この逸機が、押せ押せムードに水を浴びせた。
ヤマハは13分、18分と連続トライで反撃。いずれもゴールキックは決まらなかったが、22点のリードはあっという間に12点に縮まった。
10月のグリーンロケッツは、こうした状況に追い込まれると焦りから組織防御が崩れて相手に勢いを与え、最後はむざむざ劇的な白星を贈呈していた。しかし、ようやく軌道を修正した今は、焦ることなく防御に集中し、一瞬のチャンスに得点する自信が生まれている。
26分。
グリーンロケッツは、自陣ゴール前でヤマハが持ち込んだボールをターンオーバー。すかさず窪田が相手防御をスピードで振り切ってピンチをチャンスに変える。そして、ヤマハFB五郎丸歩を引きつけて、猛スピードで駆け寄ってきた権丈にパス。権丈はそのまま一気にゴールラインまで駆け抜け、ボーナスポイントをもたらすトライを挙げた。
ゴールも決まって29─10。この時点で、勝利は不動のものとなった。
「最後のトライは、よく権丈が走った。自陣ゴール前から窪田のスピードについていったんですから、たいしたもんですよ」と、岡村要ヘッドコーチも、この試合で自身の誕生日を祝福するかのようなバースデートライと2トライの活躍でマン・オブ・ザ・マッチを手にした権丈の働きぶりに目を細める。
しかし、この日のグリーンロケッツは、試合を29─17で終えてもくつろぐことはできなかった。近鉄の試合が午後2時キックオフのため、その結果を待たなければならなかったのだ。
そして、日も傾き始めた午後4時前。サニックスが近鉄を44─17と破ったというニュースが届き、この瞬間にグリーンロケッツの10位が確定した。
足首の故障からチームのサポートに回った熊谷皇紀主将は、顔をほころばせてこう言った。
「ホッとしました。苦しいシーズンだったけど、これで僕らの力を証明する機会を作ることができた。僕たちのラグビーはガツガツ前に出ないと始まらない。そんな本質に立ち返って、ようやくいい循環が生まれてきた。近鉄が敗れるというツキに恵まれたのも、そうした好循環の結果でしょう。ここからが本当の始まりですよ」
東日本社会人リーグ(当時)7位から日本選手権を勝ち上がり、決勝でサントリーを36─26と破ってついに初優勝を遂げたのは7年前、第40回日本選手権のことだった。
「ミラクル7」
どん底から執念ではい上がった過程を振り返って、NECは自らそう称した。
今季も同様に勝ち上がれば、「ミラクル10」の達成となる。
当時よりも激しさを増して、なおかつ長くなったシーズン。グリーンロケッツは、大きな負荷を克服して、ふたたび頂点に立てるのか。最初の関門は1週間後の16日、花園ラグビー場でのサニックス戦。そこで勝てば、開幕戦で敗れた宿敵・クボタスピアーズとの再戦になる。
負ければ終わりの一発勝負。ようやく上昇気流をつかんだグリーンロケッツは、さらに勢いを加速させて、今季の真価が問われる戦いに臨む。
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サニックス戦の後に「今日は準々決勝、これから最後まで負ければ終わりの戦いが続きます」とお話ししましたけど、ホンダとの準決勝、今日の決勝と勝って、次のステップに進むことができました。新しいチャレンジの始まりです。
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取材・文:永田 洋光







