トップリーグ09-10 第12節 ホンダ戦 ~グリーンロケッツ、連勝で11位に浮上!他力本願ながら「ミラクル10」に希望をつなぐ~

info_category1.gif2009/12/28



 残り5分でスコアは27-17。
 しかし、攻められ続けて辛うじて守っているのは、リードしているNECグリーンロケッツだ。プレーが途切れてスクラムとなった瞬間だった。
「FW何やってんだ! ボールに集まりすぎるな、もっと広がれ!」
 SO松尾健のものすごい怒声が、瑞穂ラグビー場のフィールドに響き渡った。
 振り返れば今シーズンは、この時間帯から何度も悪夢を見てきた。
 息が上がり、集中力が途切れかけたところを連続的に攻撃され、リードがみるみる消滅する。残ったのは、悔し涙と溜息、そして黒星だけ。
 そんな過去が脳裏をよぎったからだろう。松尾の喝は鋭くFWに突き刺さって、彼らを覚醒させた。
「防御のときにFWがみんな密集に固まっていて、相手にボールを出されたらピンチだった。(終盤逆転された)近鉄ライナーズ戦と同じような感じだったから厳しく注意しました」
 松尾は試合後にそう振り返ったが、前半の快勝ムードが後半にしぼみ、同じように嫌な空気が漂ったのは確かだった。
 それでも、この一喝が功を奏したのか、グリーンロケッツは必死の反撃を試みるホンダヒートを寄せ付けず、10点差のまま無事に試合を終えた。




 トップリーグ12位のグリーンロケッツと13位のホンダの対戦。この試合で敗れればトップリーグ降格が決まるホンダが、死に物狂いで勝ちにくることは戦前から十分に予想された。
 前節で福岡サニックスブルースから勝ち点5 をとって上昇気流をつかんだグリーンロケッツも、ここで敗れれば日本選手権出場決定トーナメント(ワイルドカードトーナメント)参加資格の10位以内に入る可能性がほとんど消えるところだ。

 前半。
 太陽を背にしてキックオフを蹴り込んだグリーンロケッツは、ホンダのキャッチミスにつけ込んで敵陣でのラインアウトを得る。ボールを確保するとがっちりモールを組んで前進しゴール前へ。モールは惜しくも途中で崩れて押し込めなかったが、続くスクラムでホンダが反則。グリーンロケッツは、ゲーム・キャプテンのNO.8ニリ・ラトゥが速攻を仕掛けて前進。左隅に待つFLセミシ・サウカワにパスを通して、わずか1分で先制トライを奪った。
 ホンダもすぐに反撃し、CTBタプオシ・ポンギの突破からエースWTB山田章仁につないでゴールラインに迫る。
 グリーンロケッツは、ここで2人がかりのタックルで山田を倒してノックオンを誘い、ピンチを逃れる。
 突破力のある両CTBに決定力のある山田をからませて、自陣からでも積極的にアタックを仕掛けるホンダに対して、グリーンロケッツは全員が献身的なタックルを敢行。前半立ち上がりからボールがよく動く展開となった。
 グリーンロケッツは、10分過ぎにセミシが長い腕を伸ばしてブレイクダウンで相手ボールをむしり取り、ニリが鋭くカウンター・アタック。さらにブライス・ロビンスが続き、最後は右に展開してWTB窪田幸一郎がインゴールに飛び込んだ(11分)。右隅の難しい角度からのゴールキックを松尾が決めて、スコアは12-0。



 懸念されたスクラムもホンダと五分以上に組み、モールとディフェンスで相手に圧力をかけるグリーンロケッツには、今シーズンなかなか見られなかった安定感が感じられた。
 21分にはラインアウトから一度大きく右に展開してラックを作り、今度は左へ展開。松尾が、タッチライン際で待ち受けるセミシに絶妙のキックパスを通す。セミシは内側にサポートしたニリにボールを戻し、ニリがディフェンスを引きつけて、ふたたびセミシにリターンパス。絵に描いたようなアタックが完璧に行われて、この試合3つ目のトライが生まれた。
 30分にはSH西田創のキックがチャージされてホンダにトライを返されたが、直後のキックオフからグリーンロケッツはふたたび素晴らしい連続攻撃を見せた。
 ニリのカウンター・アタックからラックを作り、2次攻撃でブライスが突破。3次攻撃ではFL権丈太郎が上手くラインに加わってスペースを作り出し、FB吉廣広征がキックオフから一度もホイッスルを聞かぬままインゴールに飛び込んで4つ目のトライを挙げた。
 このノーホイッスル・トライでグリーンロケッツはボーナス・ポイントを獲得。終盤に1PGを返されたが、次のキックオフからも、あわや2度目のノーホイッスル・トライかと思わせるような攻撃を展開し、24-10でハーフタイムを迎えた。



 しかし、後半は冒頭に記したように一転して“もろいグリーンロケッツ”が顔を覗かせた。
 伏線はいくつかあった。
 3分にはスクラムから右の狭いサイドを西田が素晴らしいスピードで抜け出してチャンスを作りながら、トライ寸前で右の窪田にパスするか左のニリにパスするか迷ってタックルを食らい、ホンダの息の根を止める絶好機を逃す。
 8分に松尾が1PGを加えたが、13分には相手陣に攻め込んでラックでボールを奪いながら、ブライスが長い距離のDGを狙って失敗。トライを畳みかけて相手の息の根を止めるような気迫が感じられない、消極的な選択だった。
 案の定、流れが変わる。
 ホンダは16分にPKから速攻を仕掛け、NO.8川添学がトライ(ゴール)を奪ってスコアを10点差に縮める。
 以降は、グリーンロケッツが何度も相手ゴール前まで攻め込みながらトライを取りきれず、密集でボールを奪われては一気に逆襲を食らうパターンの繰り返し。まさしく近鉄戦の後半最後の20分間を思わせるような展開となったが、懸命に戻ってトライを奪われまいとする意地が、近鉄戦のグリーンロケッツとは違っていた。



 35分には、自陣から捨て身のアタックを仕掛けて抜け出したホンダの選手を、密集のなかにいたニリが鬼のような形相で駆け戻り、後ろから浴びせ倒してピンチを救う。松尾の怒りが爆発したのは、その直後だった。
 ともあれ、グリーンロケッツは、何とか10点差を守りきって勝ち点5を確保。シーズン通算の勝ち点を20まで伸ばした。
 岡村要ヘッドコーチが振り返る。
「ホンダは2人の外国人CTBを中心に、決定力のある選手を揃えて自陣からでも一発でトライをとる力がある。それが脅威でしたが、CTBに思うような動きをさせなかった。意識が高まって、ディフェンスのNECが復活しつつあると思います。でも、気持ちが入りすぎて、ボールばかりを追いかけてしまったところがあったのは、今後の反省点です」



 これでグリーンロケッツは自動降格を免れたが、翌27日には第12節が終了し、9位のコカ・コーラウエストレッドスパークスまでが通算勝ち点を26に伸ばした。この結果グリーンロケッツは、福岡サニックスブルースに21-43と敗れたリコーブラックラムズを抜いて11位に浮上したものの、近鉄がクボタスピアーズとの接戦を23-18で制して勝ち点を23に伸ばしたため、10位浮上はお預けに。
 年明け1月9日に行われる最終節で、グリーンロケッツがヤマハ発動機ジュビロから4トライ以上奪って勝っても最終的な勝ち点は25。サニックスと対戦する近鉄が4トライ以上とって引き分けるか勝つと勝ち点は26となり、グリーンロケッツは11位で終わる。
 日本選手権出場決定戦ではなく、入替戦を戦うことになるのだ。
「先のことは考えずに次の試合に集中するだけ」(グレン・マーシュFWコーチ)というグリーンロケッツだが、他力本願で辛うじて残された「ミラクル10」の可能性を我がものにすることができるのか。シーズンの総決算は9日の一戦にすべてがかかっている。


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 前半はとても良かったですね。でも、後半は、もう1~2トライ取れた。これから日本選手権まで戦うことを考えると、少ないチャンスを確実にモノにしないとダメ。強いチームを相手にすると、本当にトライできるチャンスは、数回しかないですからね。
 後半、ディフェンスでも、下のボールに対する働きかけでも、ブレイクダウンでも、ちょっとずつリアクションが遅くなりました。それが、チャンスを活かせなかった原因でしょう。
 細かいミスも気になりました。1人がミスを1つする。それは大きなことではないけど、15人が一つずつミスをしたら、ミスは15回起こることになる。これでは勝つのが難しい。みんなもっと自信を持ってプレーした方がいいですね。
 ただ、試合を通してディフェンスは良かったと思います。
 というのも、ホンダは残念ながらトップリーグから降格するけど、僕は強いチームだと思っていた。両CTBが強いし、走る力がある。彼らを抑えられれば勝てると思っていたけど、ちゃんと抑えることができました。それが勝因でしょう。
 特にCTB櫻谷勉のディフェンスが良かったね。ホンダのCTBをノー・チャンスに抑えたんだから。それから、松尾のコントロールも良かった。2トライ取ったセミシもいい働きでした。
 来週のヤマハも強いチーム。6位以内に入りワイルドカードトーナメントを優位に戦うためにも、彼らも必死でプレーするでしょう。だからこそ、チャンスを確実にモノにして、相手に点数でプレッシャーをかけるようにしないと、とても難しい試合になる。精度が大事ですね。


◇ゲーム・キャプテンを務めたニリ・ラトゥ選手のコメント◇

「今シーズンは本当に厳しいシーズンだったけど、選手たちに自信が戻ってきた。ラグビーはシンプルなゲーム。勝つこともあれば負けることもある。そう考えれば、頭を切り換えて、たとえ負けたとしても次の試合で自分たちの力を出せるのに、シーズンの前半はそれができなかった。NECは、もともと力のあるチーム。だから、みんなが自信を取り戻してポジティブにプレーに取り組めば、勝つチャンスが増えるのは当然のこと。今日の後半は、ちょっとエネルギーが低下して、チャンスを活かせなかった。でも、それをネガティブに考えるのではなく、きちんと修正して、次のヤマハ戦に臨みたいですね」


取材・文:永田 洋光