トップリーグ09-10 第9節 トヨタ戦 ~ディフェンスに復活の兆しも、攻撃に迷い?グリーンロケッツ、トヨタに痛い星を落とす~

info_category1.gif2009/12/07



 勝てた試合だった。
 いや、勝たなければならない試合だった。
 ともに強力なFWを擁し、ボール争奪戦にこだわりを持つNECグリーンロケッツとトヨタ自動車ヴェルブリッツの対戦。しかも天候は冷たい雨だ。徹底したFW戦が繰り広げられることは試合前から予想できた。
 トライを奪い合う展開になれば、手数と決定力に劣るグリーンロケッツの不利は否めない。しかし、ロースコアの“我慢比べ”なら勝機は十分にある。だから「勝たなければならない」。そして、根負けしそうに見えたのは、グリーンロケッツではなく、勝ったトヨタの方。それが、「勝てた」という根拠である。
 立ち上がりから主導権を握ったのはトヨタだった。
 6分には自陣22メートルライン付近のスクラムでトヨタにプレッシャーをかけられて球出しを狂わされ、SH西田創がボールを後逸。辛うじてキャリバックに逃れて、トヨタボールの5メートルスクラムに持ち込まれるなど、再三ゴールラインを背負っての防御を強いられた。
 けれども、この日のグリーンロケッツはディフェンスに粘りがあった。
 象徴的な場面は前半23分。
 やはりスクラムからのパスミスをターンオーバーされて迎えたピンチに、トヨタは大きく左に展開。WTB久住辰也を走らせる。ゴールラインまであと1メートル。トヨタのサポーターで埋まった観客席がトライの予感に総立ちとなるなか、グリーンロケッツCTBシュウペリ・ロコツイが鬼気迫るバッキングアップ。久住に横からハードタックルを見舞って、タッチラインに吹っ飛ばす。
 チームに勇気と元気を与えたトライ・セービング・タックルだ。
 かつて「ディフェンスのNEC」と標榜していた頃のグリーンロケッツは、攻められて窮地に立たされれば立たされるほどチームの意思統一が固まり、緑の壁となって相手のアタックに立ちはだかった。防戦一方に追い込まれながらも懸命にトヨタをノースコアに抑えた前半は、セカンド・ジャージー着用のため緑ならぬ「白い壁」だったが、そんな往年の輝きを彷彿とさせた。



 次第に激しくなる雨脚に影響されて、両チームとも攻めてはミスを連発するようになる。
 トヨタの前半のハンドリング・エラーは11。グリーンロケッツは3だが、これはボール獲得率でトヨタが圧倒した分攻撃機会が増えたため。ただ、グリーンロケッツにチャンスがまったくなかったわけではない。
 立ち上がりの早い段階には、WTB窪田幸一郎がフェアキャッチから素早く仕掛けて抜け出したり、SOヤコ・ファン・デル・ヴェストハイゼンのキックを追走したFL権丈太郎が相手とすれ違いざまにボールをつかみそうになったり……と、ビッグチャンスの芽はいくつかあった。
 特に権丈がキックを追走した場面は、ボールが不規則にバウンドした分、決定的なすれ違いになりそうだったが、不運にもほんの少し後方にバウンドし過ぎて権丈の手からこぼれ落ちた。テレビ画面で見れば単なるノックオンにしか見えないかもしれないが、スタンドからはこの試合でもっともトライの可能性があったように見えた。
 ともに決め手を欠いた前半は、終了間際にPGを決めたグリーンロケッツが3─0とリードして終わる。ボールが停滞する場面の多い内容だったが、それだけグリーンロケッツの勝機が膨らんでいるようにも感じられた。




 後半、トヨタが6分に1PGを返して同点に追いつく。
 18分。グリーンロケッツが相手陣に攻め込み、モールを組んでゴールラインに迫る。しかし、押し込んだところでオブストラクションの反則をとられてチャンスを逃す。
 そして、後半22分過ぎからこの試合を分けた攻防が始まった。
 きっかけは些細なタッチキックのミスだった。
 CTB森田茂希が、22メートルラインの外側からパスされたボールを直接タッチに蹴り出して、自陣深くに押し戻されてトヨタのラインアウトとなった。
 モールを組んでゴリゴリ押すトヨタに、グリーンロケッツはたまらずにモールを崩して反則をとられる。トヨタはラインアウトを選択して再びモール戦に挑む。
 モール→押し切れずにラック→再びモール形成→押し切れずにラック。
 ここで、この日ゲーム・キャプテンを務めたFLニリ・ラトゥを筆頭にFWが奮起。反則をせずにタックルを繰り返し、ラックでノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘って、ピンチを脱出した。
 拳を握りしめて喜ぶFW陣。



 ところが、さあここから反撃と意気込んだラインアウトで、そのFWがノックオン。
 トヨタはスクラムから再びモールに持ち込んでグリーンロケッツにプレッシャーをかける。そして、グリーンロケッツがコラプシング。
 トヨタSOオレニ・アイイが冷静にこのPGを決めて3─6とスコアを逆転した。残る試合時間は15分。
 続くキックオフからの攻撃で、今度はグリーンロケッツがPGを得てヤコが左中間からゴールを狙う。いつものヤコなら確実に3点……という距離と角度だったが、この日はキックの当たりが悪く、ボールはゴールポストを逸れた。
 残る時間は13分。
 グリーンロケッツはそのままトヨタ陣に居座って総攻撃に出る。リードされているとはいえ、点差はわずかに3点だ。単純に考えれば10分以上時間をかけて1トライを奪えばいい。あわてる必要も焦る必然性もまったくない。ひたすらボールをキープし続けて最後にゴールラインを越えればいいだけの話だ。
 ところが、今季勝ち星に恵まれないが故の不安からか、ボールをキープするより一発で得点を狙うオプションを選択する。
 32分には西田がモールからサイドアタックを仕掛けて孤立。ボールを奪われる。
 36分には、こういう僅差の試合を数多く経験しているはずのヤコがDGを狙って失敗。またもや相手にボールを渡してしまう。
 この時点で首脳陣はニリに替えてモールからトライを奪う名人、セミシ・サウカワを投入していたのだから、得点を焦る必要などまったくなかった。どちらもゆっくり攻めていい場面だ。
 試合後、ニリも言った。
「僕がグラウンドにいたらDGは狙わせなかった」



 39分にはフリーキックをスクラムに選択して8→9のサインプレーで西田を走らせたが、これも次のラックでノックオン。スクラムを選択した以上、たとえばロコツイのような大きくて強い選手にボールを持たせてキープさせ、そこからモールを組む方がボールを失う確率は低いように思えるが、果たしてどんな判断が働いたのか。
 続くスクラムでトヨタがノックオンをしてグリーンロケッツがボールを奪い、最後の反撃に出て今度こそモールを組んで押し込んだが、そこでもボールがポロリとこぼれ落ちる。
 トヨタの堅守よりはグリーンロケッツの拙攻が記憶に焼き付けられて、試合が終了した。
 キャプテンの熊谷皇紀、先週復帰した浅野良太といったベテラン勢が負傷でメンバーに入れず、しかもSHの控えもいない布陣で臨んだことに対して岡村要ヘッドコーチはこう言った。
「確かにけが人は多かったが、若い選手が伸びているのでこのメンバーで大丈夫だと思った。ゲームをコントロールするリーダーがいない点が不安だったんですが……」
 残念ながら不安が的中してしまった。
 これでグリーンロケッツは1勝8敗勝ち点10で12位のまま。11位の近鉄との勝ち点差は5で変わらないが、残りはわずかに4試合。強い決意で巻き返さなければ、日本選手権出場決定戦の参加資格10位以内にも厳しい状況となってきた。
 しかし、そんな逆境だからこそ、シンプルで力強いラグビーという原点に立ち返る絶好のチャンス──という前向きな見方だってできる。
 次週の相手は首位を快走中の三洋電機ワイルドナイツ。グリーンロケッツの意地と誇りをかけたチャレンジに期待しよう。


 

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 雨でコンディションが悪かったけど、選手たちは「グッド・ハート」を見せてくれました。一人ひとりのプレーヤーは良くやっている。若い選手たちも素晴らしかった。でも、ゲーム経験が足りなくて、そこでの頑張りを勝利に結びつけられなかった。それが残念です。
 プレーの面では、キッキング・ゲーム(ボールの蹴り合い)でトヨタに上回られたのが痛かった。彼らの方が「ベター・キッキング」でした。
 NECにミスが多かったのは、コンディションの問題がまず考えられます。雨でボールが滑りやすいから、どうしてもハンドリング・エラーが出る。それから、これは経験のなさと関係しているけど、攻めたときにパニックになってしまった。もっと冷静に戦えば逆転できたでしょう。
 ラインアウトでもミスが多かったけど、原因はいろいろあります。ジャンプする選手と持ち上げる選手のコンビネーションやサインの選択、それから身長の高い選手を揃えたトヨタのプレッシャー。でも、試合中に修正できた部分もある。それは前向きに考えています。
 今日の試合では、HOの臼井陽亮とLO安田知生がとてもエネルギッシュなプレーを見せていました。彼らはこれからもっと伸びるでしょう。
 来週は三洋電機ですが、とにかく1試合1試合に集中して戦うだけ。特にセットプレーをしっかり強化して臨みたいと思います。


臼井陽亮


取材・文:永田 洋光