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トップリーグ2012-13 第2節 トヨタ自動車戦 ~必勝の意気込みも、楕円球の回転に無情の結果。グリーンロケッツ、トヨタに1点差で惜敗!~

2012/09/10




 試合が始まる直前の秩父宮ラグビー場のピッチ。
 通常なら両チームのキャプテンを先頭に選手が入場する。しかし、8日は違った。
 誰よりも早く、そして一人で、NECグリーンロケッツのFB窪田幸一郎が姿を現した。
 タッチラインを越える前にいとおしむようにピッチの芝に触れ、一礼してからラインをまたぎ越える。場内アナウンスが告げた。
「NECグリーンロケッツの窪田幸一郎選手は、この試合でトップリーグ通算100試合出場を達成しました」
 トップリーグがスタートした03年度から10シーズン。昨季は8名の選手がこの記録を達成したが、窪田はグリーンロケッツで誰よりも早くこの記録に到達した。
 100試合出場を達成した選手が所属するチームは、昨季、1つを除いてその試合に勝利を収めている。それだけ、チームメイトのメモリアルゲームにかける思いは熱い。
 グリーンロケッツも、必勝の意気込みでキックオフを迎えた。

 しかし、立ち上がりのグリーンロケッツは動きが硬かった。
 2分には自陣に少し入ったところでマイボールのラインアウトを奪われ、トヨタ自動車ヴェルブリッツに左に大きくボールを運ばれる。
 防御は人数が揃っていたが、トヨタFBスティーブン・イェーツがまっすぐ走り込んだところで、WTB首藤甲子郎がタックルを外されて、そのままゴールラインまで走られた。ゴールも決められて、いきなり0―7と先制パンチを浴びる。
「一昨年の開幕戦以来のスタメンだったから、緊張して試合開始からしばらくは足がまったく動かなかった。あそこでタックルを外されて、やっと落ち着きを取り戻しました」
 首藤は試合後にそう振り返ったが、首藤に限らず、チーム全体がこのトライで逆に落ち着きを取り戻す。グリーンロケッツがボールを動かし始めるのは、前半5分を過ぎてからだった。
 9分にはWTBネマニ・ナドロが、カウンターアタックからトヨタのディフェンダーを2人弾き飛ばして大きく前進。ラックから右へ展開し、次のラックからSOキャメロン・マッキンタイアーが、今度は逆の左サイドへ高いキックパスを蹴り上げる。
 するすると走り込んできたのはナドロ。195センチの長身を生かしてボールを捕れば、ゴールラインは目前だ。
 しかし、ボールはナドロの手から滑り落ちて後ろに転がり、トライにはならなかった。
 17分にはSH櫻井朋広が相手の蹴り上げた高いボールをしっかりとキャッチしてチャンスを作る。櫻井からパスを受けたCTB森田茂希がナドロを走らせ、ナドロが相手防御に囲まれると、そこにCTB釜池真道が走り寄ってボールを継続。内側にサポートした森田にパスを返してラックに持ち込んだ。ここでトヨタが反則を犯してペナルティキックのチャンス。
 マッキンタイアーが迷わずタッチに蹴り出して、グリーンロケッツはトライを奪いに行く。
 ところが、続くラインアウトでまたもや相手にボールを奪われる。
 攻め込んでチャンスを作りながら、細かいミスで得点を奪えないグリーンロケッツに嫌なムードが漂ったが、続くラインアウトで今度はボールをしっかり確保してバックスに展開した。
 櫻井からマッキンタイアーにパスが渡った瞬間に、森田がぶつかるように走り込んで短いパスをもらう。ボールが渡ったときにはもう、森田はトヨタ防御ラインの裏側へと走り抜けていた。
「相手のSHがマッキンタイアーにもの凄い勢いでディフェンスにきたから、その脇のスペースが空いていた」と森田は振り返ったが、このゴールポスト真下へのトライとマッキンタイアーのゴールでともかく試合は振り出しに戻った。
 20分には、トヨタWTB松下馨がタッチライン際を抜け出し、ゴール前でカバーディフェンスに戻った櫻井と1対1になるピンチがあったが、櫻井はあわてずに適正な距離を保ち、松下が背後へ蹴ったボールを処理してドロップアウトに逃れる。
 これがグリーンロケッツにいい流れを呼び込んだ。
 22メートルラインを少し出たところでFL宮本誉久が、マッキンタイアーが短く蹴ったドロップキックを捕って抜け出して連続攻撃へ。そして、トヨタ陣内に大きなスペースがあることを見て取ったマッキンタイアーが深くボールを蹴り込んで、一転してグリーンロケッツがトヨタのゴールラインに迫った。
 トヨタは、ゴール前のこのラインアウトでマイボールを確保できず、ボールが転々とする。
 それを櫻井が好ダッシュで奪ってそのままインゴールへ。
 ピンチをチャンスに変えたこのトライ(ゴール成功)でグリーンロケッツは14―7とリード。その後、両チームとも1PGずつ決めて前半は17―10で終了した。
 





 後半、グリーンロケッツはキックオフをナドロに合わせて確保しようと浅く蹴り込んだが、このときボールより前にいたトヨタの選手がグリーンロケッツの選手と接触して、オブストラクションの反則を取られる。
 このPGをマッキンタイアーが確実に決めて、20―10。ワンチャンスではひっくり返らない8点差以上のリードを保つのは勝利の鉄則だ。後半開始早々に追加点を取れたことも、グリーンロケッツにはいい流れに見えた。
 しかし、9分にはトヨタに連続攻撃を許し、最後は大外まで回されて松下にトライを奪われる。SOスティーブン・ブレットがゴールキックも決めて、20―17と迫られた。
 グリーンロケッツも15分にPGを加えたが、トライに至るような決定的な場面を作れない。
 22分には自陣10メートルライン付近のラックでトヨタからボールを奪い、FL村田毅が前進。得意のターンオーバーからのアタックに持ち込んだが、続くラックからのパスが乱れて後退。そこからトヨタに攻撃を許して、PGを追加される。
 28分には、途中出場のNO8ニリ・ラトゥのサイドアタックからチャンスを作りかけるが、こちらも途中出場のSO田村優と首藤のクロスパスがタイミングが合わずに失敗。相手にボールを奪われてしまう。
 29分には、窪田が自陣で相手のハイパントを身体を張ってナイスキャッチ。そのラックからナドロにボールを渡して一気にハーフウェイラインまで前進したが、トライには至らず。その後、トヨタ陣でゲームを進めて34分にPGを追加し、26―20と6点差にはしたものの、依然としてワンチャンスで逆転される可能性を残してゲームは終盤に突入した。
 そして――35分、グリーンロケッツにまさかの事態が襲いかかる。
 途中出場のトヨタSO黒宮裕介が深く蹴り込んだボールが、なんと逆回転して追走したイェーツの手にすっぽり収まり、そのままゴールラインまで走り切られてしまったのだ。
 このトライでスコアは26―25。
 黒宮が蹴ったゴールキックはポストに当たって場内に悲鳴とどよめきが交差したが、グリーンロケッツにとって無情なことに、そのまま内側に落ちて2点が追加された。
 26―27。ひっくり返ったスコアを、再度ひっくり返すために残された時間は3分あまり。
 しかし、とにかくグリーンロケッツがスコアすれば、勝利が転がり込むのも事実だ。
 懸命に攻めるグリーンロケッツは、ラトゥがPKから速攻を仕掛けて前進。そこから連続攻撃に持ち込んでナドロまでボールを回す。巨体を震わせて突進するナドロにトヨタのバックスが懸命にしがみつく。2人がかりのタックルにナドロがボールを落として、万事休したかと思われた。
 ところが次のスクラムでFWが奮起。トヨタを押し込んでコラプシングの反則を誘い、試合終了を告げるホーンが鳴り響くなか、とうとう最後にPGチャンスを得た。
 左タッチライン際からの難しい角度。ボールが置かれた位置はほぼ22メートルライン上だ。
 蹴るのは、田村。
 しかし、狙い澄まして蹴られたボールはポストをかすめて右へそれ、ついに1点差が覆らぬまま、試合終了を迎えた。
 浅野良太キャプテンが悔しさをかみ殺しながら言った。
「窪田のためにも必ず勝とうという思いで戦った。80分間を通していいパフォーマンスが出せたという意味では収穫があったけど、でも、勝てる試合だった。来週はもっと勝利に貪欲になって臨みたい」
 そう。確かに内容は良かったかもしれない。
 しかし、2節を終えて勝ち点はまだ1であるのも事実。何より、後半にトライを重ねられなかったところに、まだまだ修正の余地はある。
 白星を挙げて上昇気流に乗るためにも、次節の近鉄ライナーズ戦(16日 名古屋・瑞穂公園ラグビー場 17時キックオフ)は、グリーンロケッツの真価が問われる試合となる。
 





 




 03年度から始まったトップリーグで、04年度には第11節のリコーブラックラムズ戦で5トライを奪い、昨シーズン、チームメイトのネマニ・ナドロに破られるまで1試合個人最多トライのリーグ記録保持者だった。昨シーズンのトライ数は1と少なかったが、今、安定感抜群のフィールディングでチームを支えている。
 100試合目となるこのトヨタ戦でも、FBとして身体を張ったハイパント・キャッチを見せて、チームの最後の砦として存在感を見せた。
 ただひたすらトライを狙ってガムシャラに走るだけだった“若手”から、チームを最後尾から支え、攻守のバランスを取る“ベテラン”へ。それが、10年という歳月の重み。試合終了後に夫人から贈られた花束は、そんな時の重みへの何よりのねぎらいかもしれない。
 スタンド下の通路で窪田は言った。
「この10年で、チームで求められるプレーが変わってきました。今はWTBとFBの両方をやることを求められているし、プレーの上では安定感やボールを持たないときの目に見えない動きが求められている。僕自身はトライしたい気持ちはまだまだあるし、スピードトレーニングも続けているんですが、でも年齢的にもそういう役割を求められています」
 100試合出場に関しては「あ、もう100なんだ」というのが「素直な気持ち」だと振り返った。
「でも、100試合出場はみんなが達成できることではないし、今までやってきたことが数字に表れたという意味で嬉しいです。名だたるレジェンドに名前を連ねることもできたし、今はあまりケガしない体に生んでくれた両親に感謝しています」
 次の目標を聞くと、こんな答えが返ってきた。
「まあ、コツコツと150試合出場ぐらいまでは行きたいですね」
 そう。個人通算トライ数は現在まで46で歴代3位。100試合出場は、通算トライ記録を伸ばすための、通過点に過ぎないのだ。

取材・文:永田 洋光



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