トップリーグ2011-12 第11節 コカ・コーラウエスト戦 ~次節で勝ち点5を取ればトップ4が確定! グリーンロケッツ、プレーオフにいよいよ“王手”だ~

info_category1.gif2012/01/23



 今季のNECグリーンロケッツについて、前節、キャプテンのニリ・ラトゥはこう言った。
「我々はシーズンを通して優勝することにハングリーな気持ちでいる。それが素晴らしいラグビーにつながっている」
 しかし、そのあとでこう付け加えるのも忘れなかった。
「次節は、トップリーグに残留するためにハングリーに臨んでくるチームが相手。我々も勝利への貪欲さで負けないようしっかりと戦いたい」
 そして、現実のコカ・コーラウエストレッドスパークス戦は、キャプテンの予想通り、両チームの勝利への貪欲さが立ち上がりから激しくぶつかる好ゲームとなった。
 
 金曜日から関東地方に降り出した雨は、日曜日正午のキックオフを迎えてもまだ降り止まなかった。秩父宮ラグビー場の芝生はぬかるんで、スタンドからも足場が悪いことが見てとれた。
 今季グリーンロケッツは、第10節までに16トライを挙げてトライランキング1位を独走中のWTBネマニ・ナドロを筆頭に、テンポのいいアタックでBK(バックス)を走らせて白星を重ねてきた。
 昨シーズンは豪雨を味方につけFW(フォワード)勝負に徹してコカ・コーラを破ったが、、ぬかるんだコンディションは、グリーンロケッツに有利とは言えなかった。
 前半立ち上がりから、グリーンロケッツは大きく攻め込まれた。
 しかし、安定した防御でコカ・コーラの連続攻撃に対処。落ち着いて相手の攻撃を寸断したが、そこから反撃に転じたところでエラーが生じて自陣に戻される。
 9分にはナドロがスペースのあるところでパスを受け、秩父宮に詰めかけた熱心なサポーターを沸かせたが、走り出したところで足を滑らせて転倒。場内の溜息を誘う。



 そんな、天気同様のすっきりしない展開を打開したのは、ベテランLO浅野良太の頭脳的なプレーだった。
 10分過ぎに相手のキックを自陣10メートルライン付近でタッチラインをまたいで捕り、ダイレクトタッチにして、相手陣内でのマイボールラインアウトにしたのだ。
 この試合で初めてのチャンスは、ナドロがタックルされた際にボールを落とし、いったんは潰えたが、相手キックをWTB瀬崎隼人がカウンターアタック。できたラックからSO田村優がナドロへ3人を飛ばして長いパスを放る。ナドロは冷静に相手防御を引きつけて、外側に回ったCTBアンソニー・ツイタヴァキにパス。ツイタヴァキが大きくゲインしてラックに持ち込む。
 SH櫻井朋広がボールを持ったとき、背後からナドロがトップスピードで走り込んできた。
 味噌ラーメンとフライドチキンをこよなく愛する11番は、櫻井から短いパスを受けるとそのまま防御を蹴散らして加速する。
 そして、ヘッドスライディングのように頭からトライラインを陥れた。
 田村のゴールも決まって7―0。
 膠着状態を理詰めに打開した先制劇だった。
 しかし、打開したはずの膠着状態に、グリーンロケッツはふたたび陥った。
 コンディションが悪いにもかかわらず、いつものようにボールを回してアタックしたためにミスが多発。セットプレーでも、お互いに厳しいプレッシャーをかけ合った結果、ラインアウトが安定せずに攻撃の起点をしっかり作れない。フラストレーションが溜まる展開に、グリーンロケッツは自陣で反則を犯しては、コカ・コーラにPGで3点ずつ刻まれた。
 前半終了を告げるホーンが鳴ったときには、スコアは7―6の1点差に縮まっていた。
 


 後半、グリーンロケッツはツイタヴァキに替えてキャメロン・マッキンタイアーを投入。キックで地域を獲得する戦い方に切り替えた。
 効果はすぐに出た。
 バックスが攻撃ラインを敷いた右側を向きながら、左側の狭いサイドへマッキンタイアーがボールを蹴り込む。そこにナドロが走り込んでプレッシャーをかけ、相手ゴール前でマイボールのラインアウトを得る。コカ・コーラが反則を犯すと、ふたたびラインアウトを選択して、今度はそこからガッチリとモールを組んで前進。最後尾についたニリが勢いよくインゴールに飛び込んだ。
 時計はまだ2分を回ったばかりだ。
 8分には、バックスの変則的なポジショニングからトライが生まれる。
 相手陣22メートルライン付近のスクラムで、SOにマッキンタイアーが入り、ナドロが隣のCTBの位置に立つ。ナドロの隣にはFB大東功一が入り、田村がFBの位置に下がって、CTB櫻谷勉が右WTBの位置に入る。
 そして、この陣形からマッキンタイアーがまっすぐ前進。相手防御とぶつかる寸前に横に小さなパスを浮かしてナドロを走らせる。
 ナドロは3人のディフェンダーをはねのけて突進。そのままゴールポスト真下まで駆け抜けた。今季通算18個目のトライだ。マッキンタイアーのゴールも決まって、19―6。



 さらに14分にはモールからニリがこの試合2個目のトライを奪い、4トライ以上のボーナスポイントも獲得。勝利に大きく前進した。
 ところが、ここから流れが少しずつ変わり出す。
 24―6の点差に強気になったグリーンロケッツはかさにかかって攻め込むが、ぬかるんだグラウンドの影響もあって攻撃が単調となり、コカ・コーラ防御に逆に勢いを与えてしまうのだ。
 22分には、自陣ゴール前のスクラムでボールを奪われピンチを招く。
 ここは懸命に守ってトライを防いだが、ラックでオフサイドの反則を取られて攻撃を継続される。そして24分、ついにコカ・コーラWTBレレア・パエアにトライを奪われる。SOウェブ将武がゴールを決めてスコアは24―13。
 さらに30分には、マッキンタイアーのキックがチャージされてあわやトライのピンチを招き、辛うじてドロップアウトに逃れる。
 最下位脱出に執念を燃やすコカ・コーラの猛攻は一向に衰えず、終了直前にパエアに2つめのトライを許して、24―18でグリーンロケッツは何とか逃げ切った。
 岡村要ヘッドコーチが振り返る。
「グリーンロケッツのいいところと悪いところが出てしまった。コカ・コーラがいいラグビーを始めた時間帯に真正面から対抗し過ぎて、相手のペースにはまった。ハーフタイムに指示した通り、後半立ち上がりはキックで地域を獲得して3トライを取ったが、そのあとでスイッチが入り過ぎて、コンディションが悪いにもかかわらず攻撃的に行き過ぎた。終盤は、コカ・コーラの勢いに、受けてしまいましたね」
 確かに、後半立ち上がりに3トライをたたみかけた集中力は素晴らしかったが、それ以後の時間帯に追加点を奪えず、必死に反撃するコカ・コーラと同じ土俵に乗ってしまった印象はぬぐえない。得点差を背景に、攻め急ぐ相手の焦りを誘い出すような駆け引きが、この日のグリーンロケッツには見られなかった。
 それでも5ポイントを獲得して総勝ち点を41と伸ばしたことで、念願のトップ4入りには大きく前進した。



 この日、現在5位の神戸製鋼コベルコスティーラーズがパナソニックワイルドナイツに27―29と敗れて、勝ち点は35にとどまった。次節、グリーンロケッツが、NTTドコモレッドハリケーンズから5ポイントを取って勝てば総勝ち点は46となり、たとえ神戸製鋼が次節、次々節と連勝しても総勝ち点は45で止まる。
 つまり、次節で4トライ以上奪って勝てば、最終節を待たずしてトップ4が確定するのだ。
 個人記録に目を向けても、ナドロがこの日2トライを挙げて、シーズン通算のトライ数を18と伸ばした。パナソニックワイルドナイツの北川智規が三洋電機時代に作ったシーズン通算19トライのトップリーグ記録まであと1つ。次節で記録更新となれば、それだけトップ4がぐぐっと近づくことになる。
 しかし、岡村ヘッドコーチは、そうした“計算”を戒める。
「今シーズンは、絶対にトップ4に入るという強い意志を持って、一戦一戦戦ってきた。それはここにきても変わらない。次節のNTTドコモだけを見据えて、集中するだけです」
 それでも期待を膨らませるのがサポーターの気持ち。
 次節、トップ4をかけた大一番は28日14時、秩父宮ラグビー場でキックオフだ。

取材・文:永田 洋光







 身長192センチはFW最長身。バックスに195センチのネマニ・ナドロがいるので先発最長身とはならないが、それでもラインアウトでは貴重な核となる。
 今季入社の新人ながら、第3節のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦で途中出場を果たすと、第5節のリコーブラックラムズ戦から先発に定着。そのまま背番号6を背負ってボール獲得に汗を流す。今季、田村優や田中光ら同期が開幕戦から出場を果たすなかで、当初は「出遅れ感」もあったと言うが、今は迷いなく自分の役割を果たしているのだ。
「当初は戸惑いもありました。チームのストラクチャーを頭では理解していても、いざ試合になると、やってみないとわからない部分があったんです。でも、試合に出ることで身体でわかってきた。今は、1年目から試合に出られるのがすごく嬉しいですね」
 ゲームの流れのなかでは、タックルや相手のキッカーへのチャージ、ブレイクダウンといった地道な仕事に徹する。コカ・コーラ戦では、何度も鋭い出足でチャージに飛び出し、相手SOウェブ将武にプレッシャーをかけ続けた。
「チャージするチャンスがあると思ったんです。お互いにミスが多い試合だったので、ああいう場面でプレッシャーをかけたかった。タックルもそうだし、そういう地味なプレーが好きなんです」
 何しろ、「1試合に5本はいいタックルを決めたい。2本や3本では物足りない」というのが、細田のこだわりなのである。
 そんな細田が「絶対的に頼れる存在であり、尊敬している」のが、ベテランの浅野良太だ。ラインアウトの生き字引的存在であり、かつプレーにおいても欠かせないアドバイザーである。
「浅野さんは、試合中にどうしようか迷っていると、パッパッとアイディアを出してくれるし、わからないことを訊いても答えが返ってくる。ニリさんはプレーで引っ張るタイプですけど、コミュニケーションの部分では、浅野さんはみんなから信頼されているし、自分としても尊敬しています」
 そのプロセスこそが、チームに「ディフェンスのNEC」というDNAを刻む行為なのである。
 細田は今、トップ4へと上る過程に身を置きながら、国内外のトッププレーヤーと身体をぶつけ合って、皮膚感覚から日本最高のラグビーを学んでいるところだ。
 
細田佳也◎ほそだよしや◎1987年8月5日生まれ。飯田高校→日本大学→NECグリーンロケッツ