トップリーグ2011-12 第10節 ヤマハ戦 ~グリーンロケッツ、安定したセットプレーでヤマハを撃破! トップ4にまた一歩前進~
2012/01/16

トップリーグ4位以内、つまりトップ4に入ってプレーオフを戦い、勝ち抜いて日本一へ――それが、NECグリーンロケッツのチーム目標だ。
今季は開幕戦から連敗とスタートこそ苦しんだが、第3節のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦で29―26と初勝利を挙げるや一転して上昇気流に乗り、そのまま第8節まで6連勝と第一関門突破にぐぐっと近づいた。
前節ではサントリーサンゴリアスに敗れはしたものの29―35と食い下がってボーナスポイントを獲得。4位の座を死守して戦線に踏みとどまった。
ここ5シーズン、どうしても越えられなかった壁を乗り越えるための最後の難所。今、グリーンロケッツが立っているのは、そんな正念場だ。
第10節の相手はヤマハ発動機ジュビロ。
試合前の勝ち点はグリーンロケッツが32でヤマハが26。この日の勝敗で両者の順位が入れ替わることはないが、敗れたチームがトップ4戦線から脱落する。
15日12時、近鉄花園ラグビー場。そんな重たい試合が始まった。
立ち上がり、いきなりグリーンロケッツがチャンスをつかむ。
最初のラインアウトからSO田村優が、ヤマハ防御のギャップをついて大きく抜け出しゴールラインに迫る。田村が捕まってできたラックから今度は左に展開。CTB櫻谷勉→LO浅野良太とつながってふたたびラック。ゴールラインはもう目の前だ。
このラックでヤマハが反則を犯してペナルティキックを得ると、田村がタッチラインに蹴り出してゴール前のラインアウトに持ち込む。
そして、得意のモールからキャプテンのFLニリ・ラトゥがインゴールに飛び込んで先制トライを挙げた。試合開始からわずか121秒の速攻だった。
続くキックオフから今度はヤマハが攻め込んだが、グリーンロケッツは落ち着いて対応する。
4分には自陣22メートルライン付近のラックでヤマハのボールをターンオーバーするや、チャンスと見て左に展開。ヤマハ防御が、一番左端に控えるWTBネマニ・ナドロに集中したところをFB大東功一が冷静に見逃さずに大きく前進する。大東は、内側にサポートについたCTBアンソニー・ツイタヴァキにボールを渡し、ツイタヴァキが内に切れ込んで相手防御をフィールド中央に寄せる。そこにNO8土佐誠が走り込んでチャンスを大きく広げようとしたところで、パスがわずかにそれ、ボールは土佐の手からこぼれ落ちた。

ヤマハはそのスクラムから左にボールを展開。WTB中園真司が大きく抜け出し、グリーンロケッツ陣内深く攻め込む。ここからはヤマハがテンポ良く連続攻撃。それをグリーンロケッツが懸命に守る。
今季のグリーンロケッツは、ナドロの加入で攻撃力が大幅に増してアタックで試合を優位に進めるパターンが多かったが、この試合は本来の「ディフェンスのNEC」に立ち戻ったような粘り強い防御が光った。何回もヤマハに大きなゲインを許すものの、ゴールラインを背にするとしつこさがより増して、相手にトライを許さないのだ。
そして、隙を見つけてはボールを奪い返してピンチを脱出する。
ヤマハの切れ味のいいアタックと、最後まで諦めないグリーンロケッツの防御が火花を散らしてゲームは白熱した。
18分、ヤマハが、それまで何度も崩しかけては崩し切れなかった緑の防壁を初めて突き破る。
グリーンロケッツ陣内深い位置のラインアウトから右へボールを展開。ライン参加したFB五郎丸歩がステップを踏んでナドロの外側に抜け出す。ナドロも、抜かれてなるかと195センチの長身を投げ出して五郎丸の足首を手で払う。五郎丸は体勢を崩したものの、そのまま右手一本で右側についたWTB屋宜 ベンジャミンレイにパス。これがつながって屋宜がゴールラインを駆け抜けた。五郎丸のゴールも決まって5―7。ヤマハは、23分にもPGを追加して5―10とリードを広げたが、勝負はまだ序盤戦。グリーンロケッツの士気は衰えなかった。
田村がPGを返して2点差に追い上げて迎えた34分、今度はグリーンロケッツの大砲が炸裂する。
起点は自陣に20メートルほど入った地点のラインアウト。ヤマハが投入したボールにFL細田佳也が競りかけてノックオンを誘い、グリーンロケッツのスクラムに変わる。位置は右側のタッチラインから15メートルのところだ。
このスクラムからボールを受けた田村が、右足で左側のタッチライン目がけて高くボールを蹴り上げた。キックパスだ。
落下地点に走り込むのは、もちろんナドロ。
ナドロは、正面の屋宜(身長175センチ)にのしかかるように飛び上がると、なんと左手一本でボールをキャッチ。そのまま屋宜と、駆けつけた五郎丸を押しつぶして走り出し、懸命に戻ってきたヤマハCTB宮澤正利をハンドオフ一発で吹っ飛ばしてインゴールに駆け込んだ。
田村が難しい角度からのゴールキックも決めて15―10。
しかし、せっかく主導権を奪い返しておきながら、グリーンロケッツは前半終了間際にミスから ピンチを迎えてしまう。
前半終了を告げるホーンが鳴った直後のラインアウトを、ヤマハに奪われるのだ。おまけにピンチを察してラインアウトに参加しなかった選手たちが一斉に前に飛び出してオフサイド。
ヤマハは、このチャンスに五郎丸がPGを決め、15―13で前半が終了した。

後半も、ヤマハのキックオフを確保したグリーンロケッツが、相手選手を妨害したとして、オブストラクションの反則をとられて始まった。
五郎丸がPGを決めて15―16。
何度も身体を張ったタックルでヤマハの攻撃を防ぎながら不用意な反則から2PGを決められる展開に、幸先良く2トライを奪いながら反則から次々とPGを決められて敗れた昨シーズンの開幕戦が脳裏をよぎる。
が、グリーンロケッツは、今季自信を深めたアタックに徹して、そんな悪循環を断ちきった。
続くキックオフから攻撃をしつこく継続し、6分に田村がPGを決めて18―16と再逆転。
そして、ここからスコアは動かなくなった。
ハーフウェイラインを挟んで激しい攻防を繰り広げる両チーム。だが、お互いに防御のプレッシャーが強く、どちらも決定的なチャンスを作るには至らない。
ヤマハは今季、清宮克幸新監督のもとでセットプレーの強化に取り組んできたが、第8節のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦以後、セットでの課題を克服したグリーンロケッツFWはこれに真正面から対抗。スクラムでもラインアウトでも優位に立って、自慢の防御を下支えした。特に15分、18分と勝負所のラインアウトをターンオーバーして、清宮監督を「あのラインアウトが取れていれば……というところでボールを取れなかった。今日はセットプレーでヤマハが負けた」と嘆かせた。これが、じんわりと功を奏して、攻めている時間はヤマハが圧倒的に長いのに、スコアは微動だにしない。
けれども、落とし穴は、攻勢に転じたところで待っていた。

26分、グリーンロケッツは自陣からハーフウェイラインを越えてヤマハ陣内に攻め込んだ。
10メートルライン付近でのラック。が、ここでボールを奪われる。
チャンスと見たヤマハは右に大きく展開。屋宜が快走して、グリーンロケッツは一気に自陣ゴールラインまで押し戻される。
懸命の粘りでトライこそ許さなかったものの、28分にPGを決められて、スコアは18―19と1点のビハインドに変わった。
トップ4を目指すチーム同士の意地と意地のぶつかり合い。
そして、両者の明暗を分けたのは、やはりラインアウトの攻防だった。
31分。
グリーンロケッツがヤマハ陣内22メートルライン付近まで攻め込んでのヤマハ投入のラインアウト。これまで3度、ミスしていたヤマハのスローイングが、ここでも合わない。後方に転々とするボールに先に追いついたニリがSH櫻井朋広に小さくパス。櫻井がすぐに櫻谷にボールを放し、そのまま攻撃が連続。WTB瀬崎隼人からパスを受けた大東が大きくゲインする。
そしてできたラックから今度は左に大きく展開。
田村からニリへと渡って、ニリが大外で待ち構えるナドロに長いパスを通す。
1対1でボールを受けたナドロは、ハンドオフでマークを吹っ飛ばすとそのままゴールラインまで駆け抜けて、この日2つめ、シーズン通算で16個目のトライを記録。点差を23―19として、勝利を大きくたぐり寄せた。

「予想通りタフなゲームになったが、選手がビッグハートで勝利をもぎ取ってくれた。これまで目の前の試合だけを考えて一戦一戦に集中してきたが、それは残り3試合となっても同じこと。まず、次節のコカ・コーラ戦を全力で戦う。それが、結果的に最後の2試合につながると思う」
激闘を終えた岡村要ヘッドコーチは、選手を讃えながらもなお手綱を引き締めた。
キャプテンのニリも「今日の頑張りを誇りに思う」と話したあとで、こう気を引き締める。
「今季のグリーンロケッツは優勝することにハングリーな気持ちで立ち向かっている。今は先のことを考えずに、ハングリーに勝ち続けることが大切だ。次節のコカ・コーラ戦は、トップリーグ残留に貪欲な気持ちで臨んでくるチームが相手。我々も、同じような気持ちでしっかりと戦いたい」
この日、5位の神戸製鋼コベルコスティーラーズはHonda HEATを52―23と破って勝ち点5を獲得。合計34ポイントとして、36ポイントのグリーンロケッツとの差を2に詰めた。
神戸製鋼が上位チームとの対戦を2試合残しているのに対して、グリーンロケッツは上位チームとの対戦をすべて終えている。その点で優位は動かないが、そうした予断を許さないのがトップリーグの厳しさだ。
ヘッドコーチとキャプテンが口を揃えたように、チーム全員が一丸となって貪欲に目先の勝利に集中できるかどうか――次節は22日正午に、東京・秩父宮ラグビー場でグリーンロケッツのチャレンジが始まる。
取材・文:永田 洋光


「NEC、我慢、我慢!」
ピンチが訪れるたびに、どの競技場にいても、どのチームが相手でも、ピッチ上のそんな声がスタンド最上部まで届いてくる。
声の主は猪瀬佑太。入社8年目のPRだ。
今季のグリーンロケッツは、スクラム最前列のフロントローが大きく入れ替わった。2番には4年目の臼井陽亮が、3番には新人の田中光が定着。そして、長く背番号1をつけていた久富雄一(NTTドコモへ移籍)の跡を継いで1番に定着したのがこの猪瀬。いわば、ゼロからのスタートだった。
「確かに1番で先発を続けるのは本当に久しぶりですね。これまでは久富さんがいたので、僕が3番に入ることが多かったんですが、スクラムを3番で組むのと1番で組むのでは全然違う。今は試合に出るのが、すごく楽しいですね」
若いフロントローには開幕戦から試練が続いた。各チームがスクラム強化に乗り出すなかで、初めて組んだユニットで開幕戦から戦い続けなければならなかったからだ。
トヨタ自動車ヴェルブリッツ戦の勝利も、東芝ブレイブルーパス戦の勝利も、そうした試行錯誤のなかで重圧にもまれ、相手の強さに歯を食いしばって対抗してつかみ取った。けれども、第8節のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦では、相手にスクラムで強烈なプレッシャーをかけられて、苦戦を強いられた。それが、今季の大きな転機となった。
「3人の感覚も今はわかって、シーズン最初の頃とはまったく手応えが違います。NTTコム戦では押されてチームに迷惑をかけましたが、その分、次のサントリー戦ではセットプレーで勝負する気持ちになった。ヤマハ発動機戦も、相手がスクラムで勝負をかけてくるのはわかっていたので、気持ちが入りました。ここで踏ん張れば勝機があるとわかっていただけに、試合は思い切り楽しめました」
セットプレーでの劣勢が懸念されたサントリー戦もヤマハ戦も、グリーンロケッツは大崩れすることなく乗り切り、トップ4に向けて大きく前進した。そのかげでチームを支えたのが、猪瀬たちフロントローなのである。
「僕がチームに貢献しているのはフィールドプレーと声を出すことぐらい。みんなが頑張るための、いわば“つなぎ役”です」と謙遜するが、猪瀬の身体を張ったタックルと、よく響く声はグリーンロケッツの調子を測るバロメーター。「我慢、我慢!」という声を合図に相手ボールを奪って、緑の波が敵陣へと押し寄せる――そんな構図が随所に見られれば、それはゲームがグリーンロケッツのペースで進んでいる何よりの証拠なのである。
猪瀬佑太(いのせゆうた)◎1982年3月15日生まれ。身長182センチ、体重110キロ。常総学院高校→大阪体育大学→
NECグリーンロケッツ。日本代表キャップ6
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