岡村要ヘッドコーチ×ニリ・ラトゥ主将「初戦必勝」対談~スタートダッシュで、日本一まで駆け上がれ!~
2010/09/01

ここ5シーズンのトップリーグ開幕戦に敗れているNECグリーンロケッツにとって、9月4日の今季開幕戦(対ヤマハ発動機ジュビロ)は、どんな試合にもまして重い意味を持つ。昨シーズン、スタートダッシュに失敗して失速。苦い思いをした記憶はまだ新しい。今シーズンは、そんな轍を踏まずに一気にV奪還軌道に乗れるのか。
開幕直前、「目標は日本一」と口を揃える岡村要ヘッドコーチとニリ・ラトゥ主将に、今シーズンにかける意気込みを熱く語り合ってもらった。
■ 今シーズンへの思い
岡村 : 昨シーズンの後半節で、我々の戦い方やストラクチャーを確認することができました。それが選手全員の自信につながって、今シーズンを迎えることができた。春からいい形で強化できたと思います。昨シーズンの序盤は、選手一人ひとりが“自分で何とかしよう”と考えずにどこかで他人任せにしていた部分がありました。しかし今は“誰か”ではなく“自分が”という意識が浸透している。それが、あの苦しいシーズンを経験して選手が一番成長した部分です。
ニリ : チーム全員を精神的にポジティブな状態にしておくのが僕のポリシーです。それは昨シーズン、ゲーム・キャプテンを務めた時から変わらない。もちろん今もその方針を貫いています。
岡村ヘッドコーチが「日本一を目指す」とトップリーグの記者会見で宣言しましたが、そのためには選手がポジティブにラグビーに打ち込める環境を整えることが大切なんです。そうやって初めて、選手がチームとして機能することができる。
昨シーズンの序盤は本当に苦しい戦いが続きました。でも、全員がポジティブに練習に取り組み、心を開いて話し合った結果、苦しい時期を乗り越えて快進撃につなげることができた。それはどのチームにも簡単にできるようなことではないと思う。我々だからこそできたんです。
最終的には日本選手権の準決勝で三洋電機ワイルドナイツに敗れましたが、我々には優勝できる力があることを確信できたし、そういう状態で春シーズンに入ったから今シーズンは非常にいい状態でチームが仕上がっている。日本一を十分に狙えると思います。
チームスローガンにもなった僕がよく言う言葉、「Big Heart」――強い意志――がメンバーに根づいて、練習でもそういう意志が見える。みんなのハートがどんどん大きくなっているように感じます。日本一になるにはあと200%ぐらい大きく強くなる必要がありますけどね(笑)。

■ 期待の戦力
岡村 : 昨シーズンまでメンバー外だった選手が今、すごく伸びています。チームのなかに真のトップリーガーと言える選手が本当に増えた。これは嬉しいかぎりです。
個々の選手について言えば、今シーズンから登場する土佐誠(FL/NO8)はフィジカルでは日本人NO1と言える強さがあります。今年入社した櫻井朋広(SH)は、ボールを動かす早さで今までのNECにはなかった攻撃のテンポをもたらしてくれました。新外国人のアンソニー・ツイタヴァキ(CTB)は、ニリ同様にチームの核弾頭として、プレーだけではなく精神的にも勇気を与えてくれる選手です。途中加入の瀧澤直と川村慎(ともにPR)も能力が高い選手。まだコンディションが整っていないですが、トップリーグで戦えるポテンシャルは確認できました。彼らのコンディションが整えば、それがそのまま今季のNECの伸びしろになるでしょう。
昨年入社組も含めて若い選手が今どんどん伸びていますが、彼らを引っ張っているのが、実はチームのベテラン選手たち。浅野良太、窪田幸一郎、松尾健、久富雄一……彼らが若手の力を引き出す原動力になっていて、それが今のNECを支えている。実際、ベテラン選手があれだけ痛くてきつい練習に身体を張ってくれるのが、最大の強みだと言えるでしょう。
ニリ : 僕が練習や試合を通じて感じたのは、吉村尚人(PR)がすごく伸びたこと。彼はまだトップリーグに出たことがないですが、練習に取り組む姿勢や心構えが素晴らしい。必ずポジション争いに絡んでくると思います。LOの玄成哲も骨惜しみせずによく働いて、これから良くなる一方でしょう。でも、今、岡村コーチが言ったように、ベテラン選手たちが彼ら若手を手助けして伸ばしてあげることが何よりも重要なんです。若い選手たちは、ベテラン選手の言葉に耳を傾けて、そこで成長のきっかけをつかむのですから。
僕のポジションのFW第3列に関して言えば、層が厚くて誰が先発で出場しても素晴らしいパフォーマンスができる。こういうユニットができたことの最大の利点は、一番コンディションのいい選手を試合に使えること。たとえば僕のコンディションが悪ければ、キャプテンであっても試合に出場させる必要はない。毎試合ベストの布陣で臨むことができるのです。練習でもこのメンバーが一番身体を張って激しく本気でぶつかり合っている。それがチームにいい影響を与えていますね。
■ 夏の試合から見えた可能性と課題
岡村 : 一番可能性を感じるのは、我々の戦い方が選手全員に浸透したという手応えをつかめたこと。相手にここで勝つと決めた部分では、選手が決められたことに対して自信を持って遂行している。その点では、いい準備ができていると思います。

コーチングスタフがこだわっている部分を選手がしっかり理解して、試合のなかで武器として確実に機能させているのは、選手が自信を持って取組んでいる何よりの証拠です。
課題は反則をいかに減らすか。そこに尽きます。勝った試合も負けた試合も反則が多く、反則から自滅するところが見受けられた。肉体的に苦しい時間帯や相手の厳しいプレッシャーのなかで、規律を守れなかったり細かい技術を正確にできない。これは一貫して見られる課題です。
ただ、それらの課題は自分たちで克服可能だと、ポジティブにとらえています。
今シーズンから始まる新しいルール解釈(※タックルに際してタックルした選手は一度完全に相手の身体から手を離さなければならないなど)に一刻も早く適応して、苦しい状況でも規律を守る意識を保てるようになれば、プレシーズンで負けた三洋や神戸製鋼にも勝てる手応えと自信がチームにはある。その点では悲観する必要はありません。
ニリ : 確かに新しいルール解釈への適応に少し手間取っている印象はありますね。
このルール変更はラグビーをより展開の速いゲームにすることが目的ですが、チームにとってはボールを出されるとトライを奪われるような場面で、相手のボールをいかにスローダウンさせるかが変わらず重要です。そこでペナルティを取られて痛い思いをしたのが、この間の試合でした。
今シー ズンは新しい解釈に早く適応したチームがいいスタートを切れるでしょう。NECも、あと一歩のところまでは来ている。とにかく開幕戦に向けてきちんと準備することが大切ですね。
もう一つ、選手が試合中に興奮し過ぎて冷静さを失い、ペナルティを犯してしまう場面もよくありました。夏の試合を通じて選手は皆、反則がいかに高くついたかを身にしみたと思います。だから、開幕前にもう一度自分をしっかりコントロールして落ち着くことを学ぶ必要がある。
個人のミスからターンオーバーされて相手に得点を許した場面も多かったのですが、これらはすべて個人が練習に取り組むことで克服できる課題です。逆に言えば、チームの戦い方にはまったく問題がない。あとは一人ひとりがより正確にプレーするだけです。
■ 開幕戦に向けて
岡村 : 今シーズンは最初の3試合が非常に重要ですが、そのためには、まず初戦に何としても勝たなければならない。今まで準備してきた手応えを本物の自信にするのがヤマハ戦の勝利というわけです。そこで勝てば、今の力が2倍、3倍に伸びるでしょう。過去5年間続けて開幕戦に負けているので、今は本当に初戦必勝という思いしかありません。
ニリ : 確かに、最初の3試合に勝てば長いシーズンを有利に戦うことができる。それが昨シーズンの経験から学んだことです。
昨シーズンに比べて、選手たちは今ワクワクしながらラグビーをやっています。選手とコーチ陣との間に信頼関係も生まれて、ポジティブな環境が整っている。だから、一人ひとりの選手がそれぞれの役割をきちんと果たすことができれば、初戦に勝てると思います。
ヤマハには昨シーズン勝ちましたが、決して楽な試合ではなかったし、開幕戦が厳しい試合になることは間違いありません。選手たちも「ビッグ・チャレンジ」ととらえています。最終的には勝ちたい気持ちで上回ったチームが勝つと思いますが、そういう強い気持ちを持つためにも、自信を持って試合に臨むことが大切でしょう。
■ サポーターへのメッセージ
ニリ : 昨シーズンは苦しい状況のなかで多くのサポーターの声援に支えられました。非常に感謝しています。でも、今シーズンはもっとエキサイティングなシーズンになるでしょう。毎試合必ず勝つとはお約束できないですが、強い意志で常に200%の力を出して戦うことはお約束できます。だから、そんな私たちに最高の声援を送っていただきたい。よろしくお願いします。
岡村 : NECの遠藤信博社長が出演した小惑星探査機「はやぶさ」のテレビ番組を見たのですが、はやぶさの旅路は難局の連続で、もうダメだと諦めかけたところで関係者全員が一致団結して試行錯誤を繰り返しながら地球に戻ってきた。そのドキュメントには本当に感動しましたし、私自身もNECの社員であることを誇りに思いました。
NECのラグビー部が目指しているものも、まさに同じ。苦しい状況で常に相手に働きかけてボールを止めて、難局を一つひとつ乗り越えていく――そんなラグビーです。
そういうラグビーで見ている方々に必ず感動を与えられるような試合をするのが、私たちが目指しているところですし、試合の後でサポーターであることやNECの社員であることに誇りを持てるようなラグビーをしていきたい。だから、ぜひグラウンドに足を運んで応援してください。よろしくお願いします。
取材:永田 洋光
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