■グリーンロケッツ、豊田自動織機から5ポイントの勝利を挙げて、最終節に「トップ4」入りの望みを託す!
2019/07/16

前節で近鉄ライナーズから1ポイントも奪えず、手痛い黒星を喫したNECグリーンロケッツ。
豊田自動織機シャトルズ戦は、プールD首位通過=トップ4進出のために絶対に勝たなければならない試合だった。
それも、ただ勝つだけではなく、「このゲームのターゲットは5ポイントを取って勝つこと」(浅野良太ヘッドコーチ=HC)。つまり、織機に3トライ差以上つけて勝つことが必須だった。
しかし、キックオフ前から降り続く雨は強くなるばかりで一向にやむ気配がなく、トライを量産するには厳しいコンディションだった。
松尾健バックスコーチも、こんな危惧を抱いていた。
「我々がやりたいラグビーのイメージは、5月に柏の葉公園競技場で東芝ブレイブルーパス戦に勝ったときのラグビー。地域にこだわらず、しっかりスペースを見つけてどこからでも攻めたい。しかし、トップリーグカップに入って以来、天気のためになかなかそれを出せずにいる。今日もロースコアの試合になるのでは……」
ところが、そんな懸念は、開始1分37秒で吹き飛んだ。
WTBロラギ・ビシニアが、自陣で織機のパスをインターセプト。そのまま70メートルを走り切ってトライを挙げ、SO亀山宏大のコンバージョンで7-0と幸先良く先制したのだ。
実は、グリーンロケッツは、これまで第2節のリコーブラックラムズ戦でも、前節の近鉄戦でも、相手に先制される苦しい展開が続いていた。そのため、織機戦の前には、松尾コーチが亀井亮依キャプテンをはじめゲームリーダーたちとミーティングを行ない、PGで先制するチャンスがあれば積極的に3点を取りに行こうと確認していた。
だが、そんな心配も杞憂に終わり、グリーンロケッツは順調にゲームに入った。

けれども、グリーンロケッツは、ここから攻めあぐむ。
19分には、亀井キャプテンが織機SOトゥシ・ピシのキックをチャージ。そのまま転がったボールをドリブルしてハーフウェイラインを越え、亀山がサポート。大きなチャンスを作り出すが、織機陣22メートルラインを越えたところで反則を犯して地域を戻される。
29分には、NO8ハパクキ・リアヴァアがスクラムから単独でサイド攻撃を仕掛けて大きくゲイン。ところが、厳しいタックルにあってボールを落とし、得点に結びつけられない。
32分には、この試合で初めて織機陣の22メートルラインを越えた地点でマイボールのラインアウトを得た。モールで押し込んでトライを狙う絶好のチャンスだ。
しかし、ここでグリーンロケッツは、モールではなく、FLブロディ・レバーを狭いタッチライン際に走らせるサインプレーを敢行。そこから連続攻撃に持ち込んだが、ハンドリングエラーでこれもまた得点に結びつかなかった。
このプレー選択について、亀井キャプテンはこう振り返る。
「用意していたプレーでしたけど、ちょっと使う時間帯が早すぎましたね(笑)。結果論ですけど、一回プレッシャーをかけて、敵陣にいる時間を長くした方が良かった。ラインアウトリーダーも含めて、もう少し駆け引きが必要でした」
けれども、落球を単なる失敗に終わらせなかったのが、今季のグリーンロケッツの成長した部分だ。
続くスクラムでFWが奮起。織機FWを押し込んでボールを奪い、右へ展開する。CTB松浦康一がパスを受けたときには相手との間合いがなく、パスする余裕がなかったためにインゴールへのキックを選択。ビシニアを走らせた。
ビシニアはわずかにボールに届かず、結果はドロップアウトに。
しかし、このドロップアウトからアタックを継続。
ラックから出たボールをSOの位置で受けたFB横山陽介が、亀井キャプテンを走らせる。
さらにCTBアマナキ・サヴィエティが何度も力強くゲインラインを切り、ふたたびゴールに迫る。最後は右に展開したところで松浦がインゴールに飛び込んで2つめのトライを記録。
亀山のコンバージョンはポストに当たって外れたが、12-0としてハーフタイムを迎えた。

前半に攻めあぐみながらも主導権を握り続けられたのは、ディフェンスがしっかりしていたからだった。コンディションの影響でどうしてもミスやペナルティが生じ、織機に攻め込まれる場面がしばしばあったが、ヒヤリとするような、決定的な場面を作られることはなかった。
11分、18分と、自陣に攻め込まれてモール勝負を挑まれる場面もあったが、いずれも前進を許さず、11分には相手のノックオンを誘い、18分も守り切ってラックにした。亀井キャプテンのチャージが飛び出したのは、そのラックから続いたディフェンスのさなかだった。
堅いディフェンスは後半に入っても衰えなかった。
立ち上がりのキックオフから、織機は3分近くにわたって長い連続攻撃を仕掛けたが、グリーンロケッツはノーペナルティでこれを守り、ターンオーバー。SH中嶋大希のキックでピンチを脱出する。
直後の5分には、タッチライン際でWTB釜池真道と横山がピシを倒して反則を誘い、織機陣内に攻め込んでラインアウトからモールを押す。10メートルほど前進したところで織機がコラプシングを犯すと、ふたたびラインアウトを選択してモール勝負を挑む。
このモールでもペナルティを得ると、今度はラインアウトではなく、スクラムを選択する。
そして、スクラムからリアヴァアが単独でサイドアタック。ラックからサポートしたLO大石力也がタテに突進。もう一度リアヴィアが突っ込み、さらにLOサナイラ・ワクァが前に出る。
最後はサヴィエティがトライに仕留めて、ボーナスポイントの要件3トライ差以上を満たし、亀山のコンバージョンも決まって19-0と点差を広げた。
グリーンロケッツは、26分にも5メートルスクラムを起点にアタックを仕掛け、最後はワクァがトライを挙げて4トライめ。これでほぼボーナスポイントを手中にした。
何より、これまで織機のアタックをことごとく止めて、無得点に抑えている。
次節の神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦に向けて弾みをつけられるような完勝――と、誰もが期待したところで、残念ながら終了直前の38分にトライを奪われてしまった。

浅野HCは、苦笑しながらこの場面をこう振り返る。
「後半38分まで無得点に抑えたことは評価できるが、トップ4を目指すために掲げた日本一のディフェンスという目標には、2分足りなかった。この残り2分の戦い方を、次節の神戸製鋼戦に向けて詰めていきたい」
亀井キャプテンも、前節の近鉄戦で56失点しただけに「最後までノートライに抑えたかったのですが……」と悔しそうに唇を噛んで、ラスト2分をこう総括する。
「メンバーチェンジもあって、ペナルティを連発したりミスが起きて相手にチャンスを与えてしまいました。勝ち点5を取る目標は達成できましたが、僕たちが目指すスタンダードにはまだ到達していない。まだまだ課題がたくさんある。まあ、成長の余地がある、ということでしょう。次の神戸製鋼戦は、勝つのと負けるのではまったく結果が違うので、昨季のチャンピオンチームに対して、チャレンジャーとしていい準備をして臨みたいと思います」
この勝利でグリーンロケッツは勝ち点を14に伸ばし、勝ち点18で首位を走る神戸製鋼との差を4ポイントとした。
それだけを見れば、19日の直接対決で神戸製鋼に3トライ差以上つけて勝ち、かつ神戸製鋼に1ポイントも与えなければ勝ち点で上回ることができる――のだが、近鉄が同じ13日にリコーを38-26と破り、こちらも勝ち点を14として最終戦に臨む。
こうなると、得失点差も最終的な順位決定に大きく影響してくるのだ。
今節終了時点で、神戸製鋼は得失点差がプラス113。近鉄が81で、グリーンロケッツは19と大きく下回っている。仮にグリーンロケッツが神戸製鋼から5ポイントの勝利を挙げても、近鉄が織機から5ポイントの勝利を挙げて勝ち点で並ばれれば、得失点差で上回る近鉄が1位になる公算が高いのだ。
とはいえ、他力本願ながらグリーンロケッツにも1位通過の可能性が残っている。
トップ4入りを目指して、しゃにむに勝利を目指す以外に道はない。
19日(金)19時30分――運命の神戸製鋼戦は、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場でキックオフを迎える!



昨年11月11日に行なわれた前回のトップリーグカップ、パナソニック ワイルドナイツ戦以来の先発となった横山陽介は、気負うことなく浅野良太ヘッドコーチ(HC)から言われたことを、忠実に果たそうと考えてピッチに立った。
言われたことは、「チームがいいときも悪いときも声を出して盛り上げること」、「ハイボールのキャッチ」、そして「思い切りやれ!」の3点だった。
雨が降り続く悪コンディションにもかかわらず、横山は、相手に蹴られたボールを処理ミスすることなく80分間を勤め上げた。
特に前半は、積極的にカウンターアタックを狙う姿勢も見せ、若々しいプレーぶりだった。
が、本人の感触は見た目とは違っていた。
「判断を間違えたプレーもあったので、もう一度レビューして修正したい」
それが感想だった。
判断を間違えたと横山が反省するのが、試合開始直後の最初のプレーだ。
織機SH下平凌也が上げたキックをハーフウェイライン手前で捕ると少し走り、近寄ってきたロラギ・ビシニアにパス。いきなりカウンターアタックを仕掛けた。ところが、ビシニアは少し走ったところで相手に捕まり、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られた。
その結果を受けて、「判断として良くなかった」と言うのだ。
「まだ試合が始まったばかりでしたし、雨ということもあって、キックで良かったのかもしれません」
けれども、そうした判断の誤りを、試合中に修正する冷静さを横山は備えている。
「後半は、キックでエリアを取っていこうというプランだったし、僕も、前半はもう少しキックを使った方が良かったのでは……と思っていたので、後半はキックを多めにしました」
ハーフタイムの修正が功を奏して、24-5という勝利に貢献することができた。
横山は、それを「みんなに助けられている」からだと話す。
「試合中は、釜池(真道)さんも、松浦(康一)さんも、ビシニアも、周りにいる選手がすごく声を出してくれるので本当にやりやすい。それだけではなく、吉廣(広征)さんや高平(祐輝)さんには、いつも自分のパフォーマンスがどうだったのかを訊ねて、フィードバックをもらっています。本当に勉強ができるいい環境にいると思います」
もともと早稲田大学時代はSOとして活躍した選手。これからは、SOでの経験を踏まえてゲームコントロールを磨き、FBでありながら、状況に応じてSOのポジションにも入れるようになろうと目標を立てている。
「FBのポジションでSOを兼ねられる選手は僕しかいないので、そういう点をアピールしたい。僕が上手くゲームをコントロールできれば、ゲームをコントロールする人間が2人になる。浅野HCにも、試合の流れのなかで、どんどんSOの位置に入っていっていいと言われていますが、そうすることで、SOの負担を減らしたり、アタックのリズムをいいものにできれば、と思っています」
今年に入って、リチャード・グラハム コーチから練習中に2つのことを厳しく徹底されている。
「前を見ろ」と「周りの声を聞け」だ。
おかげで少し前を見る余裕が生まれ、プレーの選択肢も増えた。
本人は「早く吉廣さんや高平さんのレベルに追いつきたい」と謙遜するが、与えられたチャンスを確実にモノにしていけば、背番号15に手が届く日もそう遠くはない。
入社2年目の若手がどこまで能力を伸ばせるか――そんな成長が、今季のグリーンロケッツの新たな推進力となる。
(取材・文:永田洋光)
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