■若いグリーンロケッツを見舞った、今季初黒星という厳しい試練!

2019/07/08

 NECグリーンロケッツの今春初めての黒星は、苦く手厳しいレッスンだった。
 試合終盤に意地で連続トライを返したものの、スコアは19-56。
 前節、リコーブラックラムズに競り勝って勝ち点を9に伸ばし、プールDの首位を走る神戸製鋼との差をわずかに得失点差1と肉薄。首位通過しての「トップ4」へと希望が膨らんだとたんの、大敗だった。
「今日はボールの大切さを感じさせられたゲームだった」
 そう振り返ったのは、浅野良太ヘッドコーチ(HC)だ。
「いいディフェンスをしてこちらが我慢で勝ったのに、ボールを持つ場所がゴールラインを背にするような場所だった。そこで戦うからミスがピンチに直結するし、ピンチを脱しても相手ボールでの再開となって、ポゼッション(ボール保持率)が上がらなかった。戦う場所とポゼッションが誤算でした」
 前半に近鉄に奪われた3トライは、すべてがその典型的なパターンだった。
 まず3分にグリーンロケッツがオフサイドを犯し、続くラインアウトから近鉄にモール勝負を挑まれる。そのモール攻撃を身体を張ったディフェンスで防ぎ、自陣10メートルライン付近のマイボールラインアウトに持ち込むが、ここでタイミングが合わずに近鉄ボールのスクラムとなる。
 そこから強いランナーに少しずつ食い込まれてゴール前へと後退。
 下がりながらの防御で対応が後手に回ってペナルティを犯し、近鉄がアドバンテージを得る。
 アドバンテージを利用して近鉄SO正面健司がキックパス。これがラッキーなバウンドとなって、8分にトライを奪われた。我慢強くモールを守っても地域を大きく獲得できるような有効なアタックに結びつかず、相手にボールを与えた結果の失点だった。



 グリーンロケッツが、17分にNO8ハパクキ・リアヴァアのトライで5-7と2点差に追い上げた直後には、自陣からSO金井大雪が背後に小さなキックを転がして突破を図る。しかし、そのボールを拾われ、近鉄FBセミシ・マシレワのカウンターアタックを食らってトライを奪われた。
 浅野HCが言う「戦う場所」の問題がここでも出た。
 その場所が、このアタックを仕掛けるのにふさわしい場所だったのか――ということだ。
 27分には、やはりゴール前でモールを懸命に防ぎ、近鉄が仕掛けるFWでのアタックもことごとく食い止めながら、ディフェンスの目が密集周辺に集まったところでボールを大きく動かされ、切り札のマシレワに一気に走られた。
 ゴールラインを背負った場所で戦わざるを得ない状況に追い込まれ、ボールを奪うことができないまま、近鉄に思った通りのアタックを仕掛けられたのだ。
 亀井亮依キャプテンは、原因を「昨季のようなディフェンスに戻ってしまった」ことに求める。
「この春、これまではディフェンスのラインスピードを上げて前に出て、相手が仕掛ける前にコンタクトできたのですが、今日は前に出るラインスピードが遅かった。だから、相手のキープレーヤーである外国人選手に食い込まれた。その結果、下がりながら何とか相手を止めることの繰り返しで、いいディフェンスができなかった。今春から取り組んできた攻撃的なディフェンスをしたかったのですが、昨季までのディフェンスに戻ってしまいました」
 前節のリコー戦では、横一列に広がった“緑の壁”が素早く前に出て、リコーに用意したプレーを出させなかった。つまり、相手から判断する時間的余裕を奪い、ボールを動かそうとしたスペースを埋めることができた。それが「攻撃的なディフェンス」だ。相手は攻めれば攻めるほど後ろに下がらざるを得なくなる。
 ところが、近鉄戦では前に出るスピードが鈍った結果、緑の壁の圧力が少し弱まり、相手に“自由”を与えてしまう。
 27分に許したマシレワのトライに至る場面でも、近鉄にほんの少しだけ余裕を与え、外国人選手に連続的にオフロードパスを許してゴール前まで攻め込まれた。
 リコー戦では、相手がオフロードを試みても、ボールを持った選手とパスを受けようとする選手を緑の壁が一気に包み込んでボールもろとも後ろに押し下げることができたが、近鉄戦ではそこまでの圧力をかけられず、結果として相手の強い外国人選手に自由にプレーをさせてしまったのだ。
 それでも、ハーフタイムでスコアは5-21。



 後半の40分を使えば逆転も可能な点差で試合を折り返したが、立ち上がりにまたもやミスから近鉄に攻め込まれ、わずか2分でトライを奪われた。自陣ゴール前で一度は相手ボールを奪いながら、反撃に転じたところでボールを落とし、連続攻撃に持ち込まれての失点だった。
 気勢をそぐようなこのトライを、浅野HCは「非常にダメージが大きかった」と悔やんだ。
 これでスコアは5-28と開く。
 グリーンロケッツも、直後にWTBロラギ・ピシニアがラインブレイクしてチャンスをつかむが、近鉄陣22メートルラインを越えたところでミスが出て自陣に戻され、15分にはスクラムトライを奪われた。
 これが、グリーンロケッツに決定的なダメージを与え、19分、27分とトライを追加されて、5-49と大きく引き離された。
 ずるずると失点を重ねるグリーンロケッツに、スタンドのサポーターからは「こんな試合を見に来たんじゃないぞ!」と、厳しくも悲痛な声が飛ぶ。
 ピッチでチームを立て直そうともがいていた亀井キャプテンの耳にも、叱声は届いた。
「ファンのみなさんにそういう思いをさせてしまったのは申し訳ないし、とても残念でした」と、キャプテンは唇を噛んだが、この叱声が効いたのか、30分過ぎからグリーンロケッツが反撃に転じる。
 36分には、自陣深くのフリーキックからアタックを仕掛け、インゴールのなかでもリスクを背負ってパスを回した。
「12番でのプレーを楽しみにしていたのですが、ボールが回ってこなかった。ボールをちゃんと触れたのは最後の5分間だけでした……」と、悔しそうに振り返ったのは、これまで13番のアウトサイドCTBでプレーすることが多かった松浦康一だ。
 そんな苦しい状況からWTB飯山竜太が大きく抜け出して左タッチライン際を快走。その内側をベテランのCTB釜池真道がサポートする。釜池は、飯山からパスを受けると、冷静に相手ディフェンスを見て、さらに内側をサポートした途中出場のSO亀山宏大にラストパス。亀山がトライに仕上げて、ようやく7点を返した。
 さらに39分には、こちらも途中出場のFB高平祐輝がトライを奪って意地を見せたが、直後のキックオフリターンからトライを奪いに行ってミスが生じ、最後は近鉄にトドメを刺された。



 メンバーが若返ったチームに初めて降りかかった試練が、この19-56という敗戦だった。
 しかし、ここから「勝って学ぶ」好循環に持って行きたいと、浅野HCは前を向く。
「トップ4を目指すためにチームがどういう状態になっていなければならないのか。我々の強みであるゲインラインバトルが今日の試合ではどうだったのか――今日に関してはトップ4のレベルに達していなかった。では、どうすれば到達できるのか。その部分を練習でどうやるのか。今週は、それを選手たちに伝えたい。次節の豊田自動織機シャトルズ戦(13日 鈴鹿サッカー・ラグビー場 16時30分キックオフ)は、昨季の開幕戦で負けた相手との対戦。我々のゲインラインバトルを見せる素晴らしいチャンスだと思う。今週は、そういう1週間にしたい」
 亀井キャプテンも、こう前を向く。
「チームはまだまだ成長段階。これから踏ん張って、できることをしっかりと準備して、次の豊田自動織機戦に臨みたい。応援してくれる人たちに今日のような試合をお見せするのでは失礼だし、僕たちも残念な気持ちになる。前を向いて、次に臨みます」
 そう、今季から加入したメンバー以外は、誰も開幕戦で逆転負けを食らった昨季の開幕戦を忘れてはいない。大敗の苦さをぶつけるのに、これ以上ふさわしい相手はいないのだ。
 近鉄戦の苦い“レッスン(教訓)”を胸に、若返ったグリーンロケッツはこの試練をどう乗り越えるのか――次節が真価を問われるゲームになる。






 4年目にしてつかんだ、公式戦初先発のチャンスだった。
 結果は予想外の敗戦だったが、佐藤耀は「僕のいいところも悪いところも全部出た試合だった」と振り返った。
 「いいところ」は、得意のボールキャリーだ。
 前半10分過ぎには、NO8ハパクキ・リアヴィアが腕力で相手ボールをもぎ取ってカウンターアタック。そこからパスを受けて佐藤がタッチライン沿いを激走。チャンスを広げ、それが結果的に17分のリアヴィアのトライに結びついた。
 その間、2度近鉄陣に攻め込んでのラインアウトがあり、いずれもモールを組んで圧力をかけて近鉄から反則を誘った。リアヴィアのトライは、近鉄の一瞬の隙をついて自らタップキックで仕掛けたものだったが、それに至るプロセスで十分に働いたのだ。
 浅野良太ヘッドコーチ(HC)も、「佐藤は、彼自身の強みである、アタックでもディフェンスでも前に出られる部分を出していた。接点ではFWのなかでも一番というくらい勝っていた。選んで良かったと思います」と、活躍を評価した。
 それでも佐藤は、「チームとしてゲインラインバトルをテーマに掲げているなかで、それが僕の強みであると思います。だからプライドを持ってやっていきたい。でも、もっと波のない活躍をしないとダメですね」と、満足はしていない。
「今日は、最初のラインアウトでチーム全体でミスがあって、僕も力が入ってしまいました。近鉄陣に入ったところで、一度成功してからは軌道に乗りましたが……。でも、そういうラインアウトが上手くいかないときには、HOもリーダーなので、チームを落ち着かせられるようにしないといけない。僕が焦っていてはいけないな、と痛感しました」
 佐藤が「波のないHO」としてお手本にし、ポジション争いのターゲットにしていたのが、昨季限りで現役を退いた臼井陽亮だった。
「臼井さんのように波がないプレーをできるのがいいHOだと思います。今日は初先発で緊張感もありましたが、一番緊張したのはウォーミングアップのときくらい。試合が始まると夢中になりました。でも、臼井さんが引退したから頑張ろうと思っているようではダメですね。本当は、臼井さんがいるときにポジションを取りたかった。でも、もう引退されたので、あとはHOとして、いいプレーを心がけるだけです」
 浅野HCは、佐藤に、川村慎、秋山哲平の2人を加えた3人のポジション争いを「高いレベルで競い合っている」と評価。その上で「佐藤のパフォーマンスが過去2試合良かったので」と、先発起用の理由を明かしたが、佐藤には初先発で満足するつもりはさらさらない。
「セットプレーでも、ゲインラインバトルでも、毎回いいプレーをできるようにしたい。今日は、スクラムは良かった(スクラムトライを奪われたのは佐藤が交代したあと)のですが、ラインアウトをもっと安定させたい。そのためには、練習をやり込むしかないですね」
 その先に見据えるのが、先発としての定着だ。
「チームに貢献するために僕がやらなければならないことは、毎回スターティングに選んでもらっていいパフォーマンスをすること。だからこそ、今は与えられた立場で全力でやりたい」
 それが、「波のないHO」という理想に近づくための道筋なのである。
 
(取材・文:永田洋光)
 

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