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■「日本一のディフェンス」復活への第一歩? グリーンロケッツ、終盤の猛攻を耐え抜いてリコーに競り勝つ!

2019/07/01


 
 まだ6月だというのに、試合もトップリーグカップ2019のグループリーグだというのに、終了間際の秩父宮ラグビー場は、シーズン佳境のファイナルのような盛り上がりに呑み込まれていた。
 バックスタンドだけではなく、いつもは比較的静かなメインスタンドからも、NECグリーンロケッツと、リコーブラックラムズに大きな声援が飛び交う。
 スコアは7-5とグリーンロケッツがリード。
 時計はすでに80分を大きく過ぎて、ホーンの余韻も完全に消え去った。
 44分56秒。
 逆転勝利を目指して、リコーがコンパクトなモールを組み、前進を図る。
 グリーンロケッツが、少ない人数でこれを押し返す。
 押し返されたリコーは、モールを諦めてFWでのサイドアタックに切り替える。
 突進に次ぐ突進。
 頭を相手の突き刺すような低く激しいタックルで、グリーンロケッツも対抗する。
 グリーンロケッツ陣右側のタッチラインから始まった密集戦は、じわりじわりと左へ移動。少しずつフィールド中央に近づく。
 リコーが、トライによる逆転ではなく、ドロップゴール(DG)による3点でゲームを締めくくるプランに切り替えたのだ。
 グリーンロケッツは密集脇で激しいタックルに入る一方、密集戦には人数を割かず、またペナルティを防ぐために、ボールを奪いに出るよりも防御に集中する。
 グリーンウォール――つまり「緑の壁」だ。



 前半を0-0で折り返すロースコアの展開に、浅野良太ヘッドコーチ(HC)が後半戦に向かう選手たちにかけた言葉が、この「グリーンウォールでグリーンナイトを盛り上げろ!」だった。
 時計は46分を回る。
 ラックは、ゴールポスト正面に近いところまで移動した。
 守り切れば勝利が、DGを決められれば敗北が、待ち受ける。
 46分50秒を回ったところでリコーの途中出場のSH高橋敏也が後方に大きくボールをパスアウト。SO堀米航平の右足に勝利を託す。
 この場面を亀井亮依キャプテンはこう振り返った。
「僕はラックの下にいて最後の瞬間は見ていませんが、その前にリコーがDGを狙うためにセットしているのが見えた。あの土壇場の場面で、オフサイドをせずにしっかりプレッシャーをかけられたのは、練習のときからこういう場面を想定して、意識していたからでした」
 ラックの両脇に伸びた緑の壁から、選手たちが一斉に飛び出して堀米を狙う。
 そして――。
 圧力を感じた堀米が、DGを蹴ろうとした瞬間にボールが手からこぼれ落ちた。
 ノックオン。
 レフェリーの笛が聞こえないほどの喧噪のなかで、グリーンロケッツの選手たちが抱き合い、ハイタッチを繰り返して喜びを爆発させた。
 46分55秒。
 グリーンロケッツが激闘を制してついに勝利をものにしたのだ。
「リコーに公式戦で勝ったのは、ボクがチームに加わってから初めてだ!」
 攻守に獅子奮迅の働きをしたCTBアマナキ・サヴィエティが、そう言って喜びを爆発させる。
 それが、7-5で試合を終えた瞬間だった。



 試合後の記者会見。
 浅野HCは、グリーンナイトの準備に奔走した人々への謝辞を述べ、サポーターにも感謝してから「ゲームの内容は……」と切り出して、そのまましばらく言葉が出なかった。
 感極まったのではなく、どう表現すればいいのか考えあぐねて苦笑した――そんな感じだ。
 ようやく、こう言葉を絞り出した。
「ここまでのロースコアになるとは思わなかった。7-5ですか。ボクが現役のときの(05年度日本選手権決勝。6-6で引き分け、東芝府中ブレイブルーパス=当時=と優勝を分け合った)試合みたいですね」
 そして、こう続けた。
「チーム目標であるトップ4を目指すにあたって、日本一のディフェンスをテーマに掲げていますが、今日の試合で選手はその一端を体現してくれた。非常に誇りに思うし、素晴らしい勝利だった。この1勝を自信に変えて、次の試合に臨みたい」
 確かに前半をスコアレスで終え、後半も粘り強くリコーの猛攻をしのぎ、1トライこそ許したものの、競り合いを制して勝ち切った事実は大きい。若いチームに自信を与える勝利だった。



 一方で、試合の中身を細かく見れば、いくつかの得点機を逃して、自らロースコアの接戦に持ち込んだ部分があったことも否めない。
 亀井キャプテンが言う。
「ラインブレイクをしてからノット・リリース・ザ・ボールとか、僕もオフロードパスをミスしましたが、チャンスのところでいい判断ができなかった。練習では、セットプレーから3つのフェイズでしっかりトライを取りきるよう意識していますが、今日はトライを取り急いでいい判断ができなかった」
 特に惜しまれるのは後半5分のプレーだ。
 自陣のスクラムから、この日初めてファースト・ジャージーに袖を通したNO8ハパクキ・リアヴィアが単独で大きく抜け出し、右にサヴィエティがサポート。リコーのディフェンスがリアヴィアを見た瞬間に、サヴィエティが完全にフリーとなった。そこでパスを放っていれば、完全にトライとなった場面だった。
「なんでパスしないんだ!と聞いたら、相手のディフェンスが2人寄ってきたから……と言い訳していたよ」と、サヴィエティは振り返ったが、実にもったいない場面だった。
 あるいは、後半13分、途中出場のSO金井大雪が自陣深くから「外のスペースが空いている」と判断してキックパスでWTB飯山竜太を走らせた場面。
 飯山は、ワンバウンドでボールをキャッチするとそのままスピードに乗って大きくゲイン。
 しかし、サポートしたCTB松浦康一に余裕のある状態でパスができず、ボールは松浦からサヴィエティへとつながったものの、結果的にサヴィエティが孤立してノット・リリース・ザ・ボールを取られた。
 前節のマツダブルーズ―マーズ戦でも、同じようにアタックでミスが出て得点を挙げられない場面があったが、トップ4を目指すためには確実に仕留められるよう修正が必要だ。
 もちろん、「湿度が高いなかでボールが滑りやすいのは事実ですが、お互いにいいプレッシャーを掛け合っていた」と亀井キャプテンが振り返ったように、リコーのディフェンスも堅く、トライを奪えなかったのは、あながちミスのためだったとは決めつけられないが。



 それでも、決勝トライに至る過程には、チームとしての明確な意志が感じられた。
 後半25分にリコーにトライを奪われ、0-5で迎えたリスタートのキックオフ。ボールはいったんリコーに確保されたが、ここで途中出場のPR田中光、LOで入ったジョージ・リサレ、FLブロディ・レバーの3人がリコーのボールキャリアを取り囲む。そして、ボールを地面に置かせずに抱え込んでマイボールにした。
 派手さはないが、この試合一番のファインプレーだった。
 グリーンロケッツは、このスクラムからノーミスで10個フェイズを重ね、最後は金井が同点トライを上げたのだ。
 金井は、自らコンバージョンも決めて7-5とし、マン・オブ・ザ・マッチにも選ばれたが、繰り返すけれども、これは自ら蹴り込んだキックオフをマイボールのスクラムにしたFW3人の活躍があってこそ。リードされた直後のキックオフにどう対処するかという意志が全員に共有されていたからこそ生まれたトライだった。
 亀井キャプテンが言う。
「今、チームとしてブレイクダウンとディシプリン(規律)を強化しているところですが、ディシプリンが守れずに反則を繰り返して相手に1トライ奪われた。ペナルティを減らすのがこれからの改善点になります。残り2分の状況で、マイボールのラインアウトからどう試合を締めくくるのかも、想定外のメンバー交代もあって上手くいかなかった。これも、きちんとシナリオを想定する必要があります。でも、今日の試合をしっかり守って勝ち切れたのは、これからの自信になるでしょう」
 同じ秩父宮でこうした競り合いの終盤にDGを決められて豊田自動織機シャトルズに敗れた昨季の開幕戦を思えば、細かいミスや反省点が散見しながらも、それでもロースコアの接戦を勝利で終えられたのは、この春シーズン最大の収穫と言えるだろう。
 これでグリーンロケッツは勝ち点を9に伸ばし、次節は近鉄ライナーズと熊谷ラグビー場で対戦する(6日 16時45分キックオフ)。
 目標の「トップ4」到達には、無敗でグループリーグを終えることが必須。
 果たして次節も凱歌を上げることができるのか――若いグリーンロケッツの快進撃を期待しよう!






 冷静なのか、度胸があるのか。
 金井大雪がスクラムからの最初のボールタッチで見せた選択は、キックパスだった。
 後半11分にリコーブラックラムズCTB松本悠介がインゴールに飛び込み、トライを奪われたと思ったところでTMOとなり、スローフォワードが確認されてトライが取り消された直後。12分のことだった。
 大ピンチをしのいだのだから、通常ならここはキックで手堅く地域を前に出すところ。
 しかし、ルーキーは手堅さよりも、左に空いたスペースにボールを運ぶことを選択した。
 金井が振り返る。
「外側が空いているというコールがあったので、キックパスというオプションも想定するように、みんなに伝えました。判断は自分で下しましたが、スペースがあったので、あそこに蹴ればグラウンドが濡れているからボールも転がるだろうし、タッチに出てもいい……くらいの気持ちでした。いい感じにバウンドしたのは偶然ですが、とにかくスペースに蹴ろうと考えていました」
 結果は、バウンドしたボールがWTB飯山竜太にスッポリ入り、大きなチャンスにつながった。最後はペナルティでトライには結びつかなかったが、それでも金井は落胆せず、亀山宏大から引き継いだタクトを振り続けた。
「お互いにフラストレーションが溜まるような展開が続いていたので、ひとつのミスで気持ちが沈まないように声を掛け合っていました。そういう細かいコミュニケーションが、最後のディフェンスにつながったのだと思います。チームが今、成長している部分でしょう」
 19分にはPGを任されたが、蹴ったボールがポストに当たって外れる不運にも見舞われた。
「あのときは……ちょっと引っかけた感触があって、途中でポストに当たると予想できました。だから、いいところに跳ね返れ、と念じていたのですが……」
 それでも、リコーに1トライを奪われた直後に自らトライを挙げてゲームを振り出しに戻し、コンバージョンも決めて、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
 ゲームの流れを変える起爆剤になったと、活躍が評価されたのだ。
「先週もリザーブから出たのですが、インパクトを与えるようなプレーができなかった。今週は、その点を意識したのですが、トライは、チームがいいアタックを続けてくれた結果です。なんか、最後に“いいとこ取り”みたいな感じになりましたね(笑)」
 コンバージョンを蹴る前に、キックティーを運んできたバイスキャプテンのマリティノ・ネマニから、かけられた言葉も大きかった。
「ボクは、コンバージョンをゆっくり蹴ろうと思っていたのですが、ティノさんが『リラックス、リラックス』と声をかけてくれました。おかげでリラックスして蹴れました」
 ルーキーとして公式戦出場2試合目でのマン・オブ・ザ・マッチ受賞を、チームメイトはロッカーで祝福してくれた。けれども、金井は、これに満足することなく、さらに目標を高く掲げている。
「今日もリザーブとして途中から入りましたけど、SOはスタートから出てゲームを作るポジション。まず先発で出て、安定して活躍できるように頑張りたいです」
 冷静なのか、度胸があるのか――金井は10番を背負っての貢献を目指している。
 
(取材・文:永田洋光)
 

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