■グリーンロケッツ、マツダからボーナスポイントを奪ってトップリーグカップを白星発進!

2019/06/24



 試合後の記者会見。
 浅野良太ヘッドコーチ(HC)は、トップリーグカップ2019の目標を「トップ4」と明言してこう話した。
「ゲインラインバトル(ゲインライン突破を目指す戦い)に勝つことと、日本一のディフェンスを目指すという部分では、いい時間帯もあった。このいい時間帯をもっと増やして、次のリコー戦につなげていきたい」
 続いてマイクを持った亀井亮依キャプテンのコメントは、HCと対照的で興味深かった。
 こう課題を指摘したのだ。
「雨が降るなかで、前半は風下だったので、敵陣で勝負するプランで臨みました。ただ、ゲインラインバトルで勝負するなかで、前半は自陣でのゲームマネジメントに課題が残った。後半は、リザーブメンバーが入ったところでペナルティが増えたり、チャンスを仕留めきれなかった。その点が課題です」
浅野HCが「いい時間帯」という言葉でゲームのポジティブな部分を強調したのとは対照的に、亀井キャプテンは、「いい時間帯」にならなかった部分に言及する。まるで2人で役割分担をしてゲームの全体像を語ったような形だった。
 つまり、言っていることはただ1つ。
 マツダブルーズーマーズを43-12と破ったNECグリーンロケッツは、ゲームの大半をかなり意図通りに進め、7トライを奪ってボーナスポイントも獲得した。
 一方で、前半からチャンスを何度もつかみながら逸機が多く、試合を決めることができなかった上に、せっかくマツダを60分以上ノートライに抑えながら、終盤に2トライを許した。
春からの取り組みが実を結んだ部分と、 まだ成果を出すには精度を上げる必要がある部分の2つの面が顔を出したのが、このマツダ戦だった。



 試合は、グリーンロケッツが3分13秒でモールから先制トライを奪う展開。
 その後も、前に出て激しくプレッシャーをかけようとするマツダのディフェンスに対し、SO亀山宏大が巧みに“間”を作ってパスを繰り出し、すれ違いざまのゲインライン突破を何度も演出した。ところが、こうして生まれたチャンスがなかなかトライに結びつかない。
 せっかく「ゲインラインバトル」に勝ちながら、その優位性を活かせなかったのだ。
 亀井キャプテンが言う。
「前半は、思ったよりもゲインラインを切れたのですが、ボールをしっかりキープしようと話していたにもかかわらず、抜けたあとで無理なオフロードパスをしてミスが出た。チャンスが逆にピンチになったような場面がありました。相手の早く前に出るディフェンスに対して、すれ違いで大きくラインブレイクできた場面で、いかにすばやくサポートにつくかが課題ですね」
 ボール支配率で圧倒的優位に立ちながら、21分にWTBロラギ・ピシニアがトライを追加しただけで、時間がどんどん経過する。30分には、12番のインサイドCTBに入ったアマナキ・サヴィエティが大きく突破。ゴールラインまであとわずかと迫りながらタックルされ、サポートについたCTB松浦康一がボールをつなごうとしたが、相手に邪魔されてノックオンに終わっている。
 それでもゲームがおかしくならなかったのは、終了間際にピシニアが2つめのトライを奪って19-0とリードを広げ、ピッチ上の選手たちが感じた優位性を、ようやくスコアボードの数字に残してハーフタイムを迎えられたからだった。



 後半立ち上がりにWTB飯山竜太がトライを奪って、スコアをさらに広げたのも効果的だった。
 飯山は、昨季第6節、日野レッドドルフィンズ戦の前半36分に左手首付近の骨を折り、そのままゲームに復帰できず、悔しい思いで残りのシーズンを治療とリハビリに明け暮れた。
 今年に入って5月の部内マッチで実戦に復帰するや、翌週の東芝ブレイブルーパス戦でもトライを奪うなど着実に復活ぶりをアピールしている。
「今日のトライは、少し無理矢理だったかな……とは思いますが(笑)、半年間重点的に強化した部分が出たと思います」と、TMOに持ち込まれた場面を振り返って苦笑したが、ゲームを離れた期間に鍛え上げた体幹と下半身の強さが生んだトライだった。
 飯山が言う。
「日野戦で負傷してから悔しい思いをすることが多かったし、フラストレーションを溜め込んだときもありました。でも、手が折れた分、開き直って下半身を強化した。逆サイドの後藤輝也さんはスピードで勝負するタイプのWTB。僕は後藤さんのような天才的ステップは踏めないので(笑)、ならば、相手に倒れない強さであったり、コンタクトの部分を強みにしようと思っていました」
 さらに今季は、キックというオプションも身につけたと飯山は言う。
 5月の東芝戦では、飯山が前方に大きく蹴り込んだキックからチャンスが生まれ、FB高平祐輝のトライをお膳立て。自らボールを追走してトライに結びつけた場面もあった。マツダ戦ではキックは1本蹴ったのにとどまったが、新しいオプションを増やすことで、さらに防御との駆け引きを有利に進めようとしているのだ。



 これで勢いに乗ったグリーンロケッツは、ディフェンスでも魅せた。
 7分にゴール前でマツダにモールを組まれ、そこからNO8リチャード・スケルトンが単独で突進。トライを狙いにきた。それに、今季加入のFLブロディ・レバーとピシニアが反応。スケルトンを挟み込むようにダブルタックルを見舞い、ノックオンを誘ってピンチを防いだのだ。
 浅野HCが「きちんとディフェンスできる」手応えをつかんだ場面だった。
 しかも、このあとの自陣のスクラムからサヴィエティが一気に突破。
 ピンチを一気にチャンスに変える。
 そして、15分にはマツダのゴール前で得たペナルティでスクラムを選択。
 FWが8人一塊となって一気に押し込み、ボールがゴールラインを越えた。
 滅多に見られないくらいきれいに相手を押し込んだ完全なプッシュオーバートライに見えたが、レフェリーの判定は、マツダがスクラムを崩したとしてペナルティトライだった。
「幻のスクラムトライになってしまいましたね」
 そう苦笑したのは、この試合にNO8で登場した大石力也だ。
 インゴールを越えたところで足下のボールが弾み、それを身体で押さえつけるようにしたので、レフェリーにノックオンと見られても仕方がなかった――と、悔やんだ。
 大石が言う。
「僕自身、NO8でプレーすることはあまりないし、みんなでスクラムを押してあそこまで運んだのは初めてだったから、そのままトライにしたかったですね。春から取り組んできたスクラム強化が実を結んだという意味では良かったのですが……」



 PR前島利明も、昨季のコカ・コーラレッドスパークス戦(トップリーグカップ順位決定戦1回戦)で、交代直後に相手ボールのスクラムを一気に押し込んでボールを奪い、NO8ジョージ・リサレのトライに結びつけた瞬間と、「同じくらい嬉しかった」と破顔一笑した。
「レフェリングに対応しながらスクラムを押して、どこかでスクラムトライを狙おうとFWで話していたのですごく良かった。実際の試合に出なければ経験できないことがあるので、僕自身は、今PRとしての経験を積んでいることを、すごく嬉しく思っています」
 続くキックオフリターンからもノーホイッスルトライを奪ったグリーンロケッツは、この段階でボーナスポイントつきの勝利を確実にしたが、亀井キャプテンが指摘した課題が出たのはその直後からだった。
 リザーブメンバーが入ったところで細かいコミュニケーションが取れずにペナルティを連発。22分にマツダの途中出場のCTBジョー・カマナにトライを許し、34分にも、やはりペナルティから仕掛けられてトライを奪われた。
 このゲームだけではなく、次節のリコーブラックラムズ戦を見据えれば、こうした“甘さ”は致命的な失点につながりかねない。そのことを、キャプテンは指摘しているのだ。
 後半からの登場となったFL大和田立も、「目標のトップ4へ弾みをつけるためにも、絶対にリコーに勝ちたい」と、必勝を期す。
 HO川村慎も、スクラムからペナルティトライを奪ったことを評価しながら、「リコー戦のような、強度が上がるゲームでああいうトライを奪ってこそ、成果が出たと言える」と気を引き締める。
 グリーンロケッツは次のリコー戦(28日 秩父宮ラグビー場 19時30分キックオフ)を「決戦」と、とらえているのだ。






 NO8は、チームの核弾頭とも言える存在。
 ボールを持てば相手に挑みかかり、並み居るタックラーを弾き飛ばしてチームに勢いをもたらし、防御に回れば、危機管理を担ってチームの“守護神”となる。
 そんなポジションに、身長190センチ体重98キロと“細身”の大石が抜擢された。
 浅野良太ヘッドコーチ(HC)は、意図をこう話す。
「大石は4番から8番まで全部のポジションをカバーができる上に、チームに勢いをつけてくれるプレーヤー。ゲインラインバトルの激しさはFWで随一なので、どのポジションでもその点を期待しています。もともとバックスの外側でボールを持つプレーが得意なことはわかっていましたが、密集に近いところでもっとタイトなプレーを増やしたかった。ハーフタイムに、もう少し内側でボールを持つように指示しましたが、やはり内側でもいいプレーを見せてくれましたね」
 バックスの外側、つまりタッチラインに近いところに立ってプレーするのが得意なのは、7人制日本代表スコッドにも選ばれて、プレーを磨いているからだ。
 とはいえ、湿度が高く、雨が降るコンディションではどうしても密集近辺のプレーが多くなる。
 その点で、マツダ戦は、大石が持ち味を存分に発揮するには少し不利な条件だった。
 大石が言う。
「HCから期待してもらっていることはすごく嬉しいのですが、課題だと言われてきた密集に近いところでのゲインラインバトルで、成果が出たかと言われれば、まだまだだと思います。確かにハーフタイムに指示されて、後半は意識してプレーしたのですが、もっとプレーの質を上げたいですね。意識してプレーできたことは収穫だと思いますが、外のスペースがあるところでボールを持てば自分の持ち味が活きるので、そういうところでも、もっとボールを持ちたかった。これからどんどんステップアップできればと思います」
 マツダ戦を終えれば、セブンズの合宿がある。
 7人制は、16年のリオデジャネイロ大会から夏のオリンピックに正式種目として採用され、日本がニュージーランドを初戦で破り、4位と好成績を残したのは記憶に新しい。当然、来年の東京オリンピックでは、それ以上――つまり、メダルへの期待もかかる。
 その日本代表に、大石は今、“当落線上”にいる。
「ワールドラグビーセブンズシリーズのシンガポール大会には日本代表に選ばれましたが、フランス大会とロンドン大会には選ばれなかった。だから、来週の合宿でとにかくアピールしたい。オリンピックにつながる日本代表の第1次スコッド、第2次スコッドに入って、最終的には東京オリンピック代表に選ばれたい。もちろん、メダルの獲得を目指したいです」
 リオ五輪で大活躍した後藤輝也は、同じ山梨学院大学の先輩。当然、刺激も受けた。
 さらにセブンズでスキルとフィットネスを上げれば、15人制でもグリーンロケッツに効果を還元できるという思いもある。
「15人制でも、とにかく常にボールの近くでプレーできるよう、運動量を上げて仕事をできればチームに貢献できると思います。そういう部分はセブンズで鍛えられたことが活きています。セブンズではバックス的なスキルも求められるので、15人制でも強みとして出せればいいと思いますが、まずは運動量と仕事量で貢献したいですね」
 グリーンロケッツから15人制の日本代表スコッドに入った選手は、残念ながら今は1人もいない。その分、チームとしても、大石のセブンズでの「代表入り」をサポートする考えだ。代表に選ばれれば、12月まではセブンズ専従となるにもかかわらず。
「確かに会社も期待していると思いますので、その期待に応えられるように頑張りたい」
 後藤とともに、東京2020にグリーンロケッツから代表として選ばれるか――大石の今後に注目だ。
 
(取材・文:永田洋光)

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