NECグリーンロケッツ新兵器対談 フォア・ザ・チームに徹して、細かいことまで一所懸命に!  ~土佐誠選手×アンソニー・ツイタヴァキ選手~

info_category3.gif2010/06/30


■ 土佐 誠 (とさ まこと)
 生年月日・年齢 : 1986年6月28日・24歳
 身長・体重     : 187cm・104kg
 ポジション      : フランカー、ナンバー8
 出身            : 尾道高校→関東学院大学




■ ANTHONY TUITAVAKE(アンソニー ツイタヴァキ)
 生年月日・年齢 : 1982年2月12日・28歳
 身長・体重      : 178cm・98kg
 ポジション      : センター、ウィング
 出身             : Massey高校
                   2005年  オタゴハイランダーズ(スーパー14)
                   2006年~ オークランドブルーズ(スーパー14)
 主な経歴        : 2002年~2003年 ニュージーランド7人制代表
                 2008年~ ニュージーランド代表(cap6) 


 雨の水曜日、天王台駅の自由通路を自転車を抱えて横切る筋骨隆々の男がいた。もしや……と思っていたら、案の定、それがニュージーランド代表オールブラックスで6キャップを持ち、スーパー14のオタゴ・ハイランダーズ→オークランド・ブルースでCTB/WTBとして活躍した、アンソニー・ツイタヴァキ選手だった。得点力不足に泣いてきたグリーンロケッツに加わった強力な新兵器は、予想外に人なつっこい笑顔で終始にこやかにラグビーを語り続けた。
 そして、そんなツイタヴァキ選手となごやかに英語で談笑していたのが、英国オックスフォード大学留学を終えて帰国したばかりの土佐誠選手だった。
 それぞれ今シーズンがデビューとなる攻守の要。果たして二人はどんな思いでシーズン開幕に向けた準備をしようとしているのか。


──今シーズンのデビューを前に、どんなプレーでチームに貢献しようと考えていますか?
土佐 : 僕はボールのキープ力と、ディフェンスですね。特にディフェンスは、練習の段階から身体を張って相手を止めるプレーを心がけて、チームに貢献できればいいなと考えています。

──ツイタヴァキ選手は、NECがどんなチームなのか、事前に映像を見たりしましたか?
ツイタヴァキ : いえ、見ていません。スポーツ専門チャンネルと契約していなかったので(笑)、日本のラグビーを見られなかったんですよ(注・ニュージーランドではトップリーグの試合が毎節1試合放送されている)。でも、グレッグ・クーパー(コーチング・コーディネーター)さんや、ニリ・ラトゥ選手とは連絡を取り合いながら、チームの情報は入手して、自分なりのイメージを描いていました。だから、プレーできることをとても楽しみにしています。



──ニュージーランドの他の選手から日本の情報を得たりしましたか?
ツイタヴァキ : いえ。それより、僕自身がジュニア・オールブラックスの一員として日本代表と対戦したので、日本のラグビーがとてもスピーディーであることは、十分にわかっています。
 その試合で印象に残ったのが日本代表のCTB。身体は小さいけれど、キックも上手いし、いい選手だと思いました。今はNECでチームメイトになりましたけど(注・安藤栄次選手のこと)。
 昨日初めてNECの練習を見たのですが、選手たちみんなが非常に高い緊張感を持って、100%の力を出しているところに感銘を受けました。土佐選手にも強い印象を持ちました。
 僕は今、手術をしたばかりでリハビリ中ですが、経過は順調で、早く練習に参加したい。そんな気持ちになりました。言葉が通じない環境でチームに溶け込めるかどうかは、僕自身にとって大きなチャレンジですが、ニリがチームのことをいろいろ教えてくれるし、ラグビーはシンプルなゲーム。ボールを持って力強く走ることができれば、そんなに大きな問題はないと思いますよ。

──土佐選手はツイタヴァキ選手のプレーを見たことはありますか?
土佐 : ユー・チューブで見たぐらいかな(笑)。でも、経歴もすごいけど、パワフルですごく速い。日本人のバックスにはない特徴を持っているので、チームの力になってくれると思います。僕自身、こんな選手といっしょにプレーできる喜びがあります。
 それからディフェンスができるWTBというイメージが強いので、外にそういう選手がいると、FWにすれば思いきってディフェンスにいける。その点は、大きいでしょうね。
 ただCTBもできるので、彼みたいな選手がCTBに入ると、オトリで走るだけで十分に攻めるスペースができるんじゃないかな。これだけのスピードがある選手がCTBにいれば、彼自身のトライは少なくなるかもしれないけど、その分、多くのトライを演出できるでしょう。個人的には、彼のCTBを見てみたいですね、一ラグビー・ファンとして(笑)。

──ツイタヴァキ選手はCTBとWTBとどちらが好きなんですか?
ツイタヴァキ : どちらも好きです(笑)。個人的にはCTBをプレーすることで成長してきたと思いますが、チームの状況や対戦相手によって求められる役割が変わってくるだろうし、求められるポジションも変わってくるでしょう。それはチームの方針に従います。
 僕自身は、オールブラックスに選ばれるまで、CTBもWTBも求められる役割が違うだけで、本質的には同じようにプレーすればいいと思っていました。WTBだってCTBみたいなパスを要求されるし、CTBもWTBみたいな走りを求められますから。
 でも、オールブラックスで教えられたのは、CTBはもう一人のCTBと協働してラインとしてのディフェンスを常に求められるということ。そして、WTBはFBやもう一人のWTBと協働してラインの後ろを守るということ。つまり、CTBはフロントスリー(10番12番13番)というユニットの一員であり、WTBはバックスリー(11番14番15番)の一員であって、2つのユニットが担う役割は本質的に違う。ただ、こうしたことを学んだおかげで、僕自身はどちらの役割もきちんと果たせるようになったと思います。



──土佐選手もそうしたポジションによる微妙な違いを感じることがありますか?
土佐 : オックスフォードに行く前はほとんどNO.8でプレーしていたのですが、向こうでは6番をやっていました。NO.8だとラインの防御を抜けてきた選手を倒したり、誰かがタックルに行ったあとに自分が何かをするイメージなのですが、6番の場合はディフェンスでは自分が一番最初にタックルに行くイメージ。そこはかなり大きな違いでしたね。
 NO.8の場合は、ここに蹴られそうだとか、ここを抜かれたら危ないというところを読んで動くのですが、FLは一次からディフェンスに行かないといけない。個人的にはどんどんディフェンスできるからFLの方が好きなのですが、走らないといけないところはちょっと嫌いかな(笑)。

──ツイタヴァキ選手はスーパー14のオークランド・ブルースでプレーしていましたが、個性の豊かなスター選手が揃ったチームが勝利をつかむためには何が必要だと思いますか?

ツイタヴァキ : 確かにブルースには個性的な選手が多かったし、みんな素晴らしい才能を持っていました。でも、だからこそ一人ひとりが一所懸命に練習し、プレーすることが大切なんです。特に、細かい基礎的な部分を一つひとつおろそかにしないで、全員が勝利に向けて一所懸命な気持ちになること。それが勝利につながるし、それはNECでも同じことだと思います。
土佐 : オックスフォードは、プレー面はスーパー14ほどレベルが高くなかったのですが、アマチュアの学生スポーツという厳しい環境のなかで、向上心やアグレッシブな気持ちを持つことを学べました。勉強のレベルが高いので、練習時間はどうしても短くなりがちだし、それぞれ勉強を優先して全員が練習に揃わないこともある。プロではあり得ないことですが、でも、そういう制約された環境のなかで自分たちで話し合いながら練習をオーガナイズする。
 不利な環境で後ろ向きな気持ちになるのではなく、常に勝つために最善を尽くす。とても貴重な経験でした。レベルの如何にかかわらず、ラグビーでは常にアグレッシブな気持ちでプレーに臨むことが大切なんだと痛感しましたね。

──英語も上達したし、コミュニケーションもスムースになるのでは?
土佐 : いや、まだ全然です(笑)。人と話すのは大丈夫ですけど、講義のなかの学術的な専門用語だったり、話題によってはちょっとわからないことが多いです。まあ、日常会話程度ですかね。ラグビーをやる上ではそれほど不自由はないですが、まだまだカンペキじゃない。グラウンド上でのコミュニケーションはできると思います(笑)。
ツイタヴァキ : 僕も言葉を早く覚える必要性は感じています。さまざまなムーブや動きの連携の取り方などを学んでいきたいと思います。
 幸いチームにはブライス・ロビンス選手がいる。僕は彼がノース・ハーバーにいたときに対戦していますが、そのときから彼は経験を積んだいい選手だったし、リーダーシップもあった。今も相変わらずシャープなのでちょっと驚いているんですが(笑)、バックス同士のコミュニケーションの取り方や、約束事は、彼がいろいろアドバイスしてくれるでしょう。



──日本のファンに「ここを見て欲しい」というプレーはありますか?

ツイタヴァキ : スマイルかな(笑)。
 ジョークはさておき、プレーの面では、ラインブレイクして目立つ走りを見せることもあるし、ラインブレイクをお膳立てすることもある。狙いを定めて強烈なタックルを見せることもあれば、チームの戦術に従ってじっくりとスペースを埋めることもある。もちろん得意なプレーはありますが、それはすべてチームのシステムに従って行われるべきでしょう。
 ラグビーでは、個人ではなく、チームの戦術が優先される。だから、どのプレーというより、細かいところでも一所懸命チームのためにプレーするところを見てもらいたいと思います。
土佐 : 僕も、自分自身がこんなプレーをしたいというより、まだ1年目なのでチームの方針に従って、その役割のなかでできることを一所懸命やろうと思っています。実際、まだレギュラーになれるかどうかもわからないし、まずはレギュラーを取ることが目標です。本当にフォア・ザ・チームに徹したいですね。

──最後に、夏合宿、それから来るシーズン開幕に向けて、目標にしていることを聞かせてください。

土佐 : 僕はフィットネスを上げることですね。昨日の練習もそうだったのですが、イギリスに比べると日本は蒸し暑い(笑)。この暑さのなかで毎週80分間フルに動けるように身体を作り直す必要があるでしょうね。
ツイタヴァキ : まずケガを完全に治して、チームに貢献できるようにコンディションを整えることですね。まずは復帰予定までの5週間リハビリに集中したい。僕自身は、昨シーズンはケガで満足のいくシーズンが送れなかったので、今シーズンにかける思いが強いんです。だから、フィットした状態で、スピード感のあるプレーができるように、しっかり準備したいと思います。

──どうもありがとうございました。

取材:永田 洋光