■「期待が膨らんで不安がしぼんだ」東芝戦勝利に現れたグリーンロケッツの「変化の兆し」

2019/05/27

今季から就任した浅野良太ヘッドコーチ(HC)が対外試合で初采配を振った東芝ブレイブルーパス戦は、さまざまな意味で「新しさ」を感じさせた試合だった。



 SO亀山宏大が、パスやラン、キックも交えて多彩なアタックを仕掛ければ、FB高平祐輝、WTB飯山竜太といったランナーたちが、意を決したランで大きく東芝防御を突破する。
 FWでは、キャプテンのFL亀井亮依を筆頭に、NO8ジョージ・リサレ、今季から加入した新外国人FLブロディ・レバーらが、ゲインライン突破を目指して激しい「バトル」を繰り広げた。
 何より、試合開始から20分足らずで4トライを奪い、亀山が、右隅からの難しい角度からの1本も含めてすべてのコンバージョンを決めた。立ち上がりに28点を積み重ねた先制攻撃は、浅野HCも「今までのNECになかったのではないか」と笑みを漏らすほどの、鮮やかさだった。
 しかも、30度を超える気温を考慮して設定されたウォーターブレイクのあとには先発させたメンバーを大きく入れ替え、若い選手をピッチに送り出した。
 浅野HCが試合前に語っていた、「若い選手に必要なのは経験を積むことで得られる自信。今まで練習でやってきたことを、試合中に出せた。それがチームとして機能した。そしてチームも勝った――という経験が積み重なれば、やってきたことが間違いではなかったと自信になる。そういう小さなことの積み重ねにこだわって、経験を積ませることができるかが大切」という言葉を、そのまま現実のピッチで実行したのだ。



 興味深いのは、グリーンロケッツが奪ったトライの中身だ。
 前半7分の先制トライは、飯山が自らのキックを諦めずにしつこく追い、東芝FB豊島翔平にプレッシャーをかけたのが起点。豊島が苦しまぎれに蹴ったキックがノータッチとなり、それが逆サイドのWTB釜池真道にスッポリ入った。つまり、飯山が途中で追走を諦めていれば生まれなかったトライだった。
 ボールを捕球した釜池はそのまま直進。
 その右に高平がトップスピードで走り込む。
「高平がいいスピードで来ていることがわかっていた」釜池が迷わず右にパスを差し出すと、高平がそのまま防御をスピードで突破してトライを挙げた。
 高平は、15分にも東芝が蹴り込んだキックオフリターンで、自陣から一気に勝負。大きくゲインしてレバーのノーホイッスルトライを導いた。
 高平が言う。
「浅野HCから『ランを持ち味に頑張ってくれ』と言われているので、しっかり持ち味を出せるように、空いているスペースを探しながら、ランできるようにしたい。昨季までは、自分のプレーができない部分があったので、今季は自分のプレーにフォーカスして毎試合臨もうと思っています。ランやキックだけではなく、エリアの管理も含めて、プレーをアピールしたい。ただ、今日は、良くないプレーもあったので、その点はしっかり反省して次に活かしたい。そうやってステップアップすれば、シーズンには試合に出られるのではないかと思っています」
 持ち味を出せたことに手応えを感じながらも、“その先”を意識しているのだ。



 ボールを持って前に出ることにこだわりを見せたのは、キャプテンもまた同様だった。
 亀井は、後半14分にフリーキックからの仕掛けで一気にゲイン。ゴール前まで力強い走りを見せて釜池のトライを引き出した。
 けれども、キャプテンが試合後に語ったのは、成功したプレーの手応えではなく、失敗したプレーへの悔しさだった。
 トライに至るフリーキックの前のプレーで、亀山が、ラックからのボールを左サイドから右サイドに移動しながら受けて東芝防御を横に引き延ばす。そして、空いた内側のスペースに走り込んだ亀井にパスを返す。横に広がった東芝防御の背後には大きなスペースが生じていたが、亀井がボールを落としてノックオン。続くスクラムでフリーキックを得て前述のトライが生まれたわけだが、前の過程で出たミスが強い悔いの対象だったのだ。
 亀井が言う。
「今季はキャプテンとして、去年より高いスタンダードを僕が練習のときから体現しないといけないと考えています。その分、個人のプレーの質をより上げなければならないので、昨季よりもむしろ僕自身のプレーにフォーカスしています。僕自身がレベルアップすることで、周りもそれを見てレベルアップできればいい。具体的には、昨季はボールを持つことよりもディフェンスにフォーカスしていましたが、今季は練習のときからボールタッチを増やすことを心がけています。それだけに、いいところでノックオンをしてしまったのが悔しい。ああ……、という感じです(笑)」
 もうひとつ亀井が「成果」として上げたのが、反則数だった。
「今日は規律の部分で、ペナルティを10個以下に抑えることをテーマにしました。結果的に9個でギリギリでしたけど、チームとしてこうやろうと決めたことを1つひとつ達成していくことが大事なので、その点は良かったと思います」



 選手たちが、個々に目標=ゴールを設定し、それを試合のなかで大胆に試す。
 成功もあれば失敗も生まれるが、ゲームがテンポ良く進み、終始グリーンロケッツが大きくリードする展開は、失敗を恐れてプレーが小さくなるような萎縮から選手たちを解放し、それがまた次の良いプレーを生み出した。
 それが、この東芝戦だった。
 アマナキ・サヴィエティとマリティノ・ネマニのCTBコンビのプレーぶりも、昨季までとはひと味違う変化を感じさせた。
 強烈な突破力を秘めた2人が、持ち味の突破を図るだけではなく、パスすべきときに外側へとボールを動かそうと何度も試みていた。それでいながら、前半11分の2つめのトライのように、サヴィエティがチャンスと見れば力強く前に出て防御を押し下げ、結果的にHO川村慎がインゴールへと駆け抜けるスペースを作り出した。
 亀井の突進から生まれた後半14分のトライも、最終的に左にバックスが大きく余り、CTB陣が強引に切れ込んでもトライが生まれそうな状況だったが、最後まで丁寧にボールを回して釜池を完全に余らせた。本当に細かい変化だが、少しずつでも選手たちが「変わろう」とする姿勢が、至るところに見られた。
 18日に行なわれた部内でのセレクションマッチでも、ボールを積極的に動かしてトライを奪おうという意志は明確に感じられたが、それが東芝を相手にした試合でも貫けたところに、春シーズンの序盤とはいえ、今季の基調音が定まったことが感じられるのだ。



 浅野HCが言う。
「自分たちが正しい方向に進んでいるかどうか、試合をやってみないとわからない部分が選手たちにはあったと思いますが、今日で期待の部分が膨らんで、不安の部分がしぼんでいったのではないですか。選手たちに、目標を達成しようという姿勢が見られたことが良かった。8トライとれたことは素晴らしい結果だったと思いますし、反則数を10個以内にしようと、具体的な数値目標をみんなが立てて、それをクリアしていこうという姿勢が出ているところがすごくいい。ここからもっと向上しようという姿勢が見られるのも、非常にいいことです。
 チームの底上げという意味では、今日は全員が40分以上プレーしています。まだトップリーグで試合に出たことのないメンバーも数多くプレーすることができましたし、彼らが肌身に感じたことがそのまま経験となり、財産となって文化になる。その意味でも収穫がありました」
 こうした小さな変化の兆しを1つひとつ積み重ねながら、最終的にはトップリーグ上位へ躍進できるようなチーム力を築くことができるのか。
 グリーンロケッツは、そのための最良のスタートを切った。


 

(取材・文:永田洋光)

 

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