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NECグリーンロケッツ浅野良太新ヘッドコーチ就任インタビュー「シンプルに、愚直に、GO FORWARDでトップ4を目指したい!」

2019/04/22

 NECグリーンロケッツの新しいヘッドコーチ(HC)に、2013年度で現役を引退し、その後、國學院栃木高校で教職に就いていた浅野良太(39歳)の就任が決まった。
 グリーンロケッツで史上2位の試合出場を誇り、キャプテンも2期(通算5年)務めたかつての大黒柱は、5年間の「学び」をもとにどんなチームを作ろうとするのか。
 新HCの胸のうちをたっぷり聞いた。



 

――13年度で勇退してから5年間、教職に就いてご自身の変化はありましたか。


 教員として高校生を5年間教えてNECに戻ってきた今の自分自身と、引退後もそのままNECに残っていた自分を想像して比べると、本当に大きく変わったと思います。この5年間の「学び」は大きかった。
 高校ではラグビー部をコーチとしてお手伝いもしましたが、日常的には教員の仕事がメインで、5年間のうち4年間、担任を持って卒業する高校生たちを見送りました。
 高校生を教えて感じたのは、当たり前のことですが、みんな「十人十色」だということ。
 生徒たちは、それぞれ違うバックボーンを持っている。なりたい職業や将来の夢も、持っている生徒もいれば持っていない生徒もいました。そういう彼らが、これからより良い道に進むために何が最善なのかを考え、アドバイスするためには、自分の経験だけでは単なる押しつけになってしまう。そのためにいろいろなことを勉強しました。これはNECにいた12年間では経験できなかったことでしたし、本当に大きな学びでした。
 

――ラグビーでも、高校生に接して何か考えが変わりましたか。


 トップリーガーとしての目線をいかに下げられるか。それが、最初にやらなければならないことでしたし、また大変なことでもありました。
 トップリーガーの場合、あるプレーができない理由は、プレーの存在を「忘れていた」であったり、「その部分にこだわりを持っていなかった」という場合がほとんどです。だから、意識的に促して、無意識にできるようになるまで反復すればいいのですが、高校生には、まず知識を伝えることから始めなければなりません。そして、伝えた知識を応用して使えるようにしてあげる。
 この「土台から伝えなければならない」部分が一番面白く、かつ難しかった。
 たとえば、ブレイクダウンを教える際に10個のキーワードがあれば、トップリーガーには10個全部理解している前提で接することができます。そして、そのなかの2つ、3つにこだわることでスキルが飛躍的に向上します。
 でも、高校生は10個を全部追うことはできません。だから、10個のうち8個に目をつぶって、2個だけにこだわって練習する。そうすると、正解が見えてくることがあります。「伝えたつもり」になるのが一番怖いということも、高校生を教えるなかで痛感させられましたね。
 でも、自分が教えたり伝えたことが、ゲームのなかで彼らが成長を実感できる場面につながって、我々もそれを共有できるようなところが、高校生を教えていてとても面白かったですね。


 

――教職を離れて、HCとしてチームに戻ることに迷いはなかったのですか。


 迷いはありました。
 5年前に、自分の意志でチームの外に出してもらったのに、もう一度戻ることになります。
 それに、教員としても担任していた生徒たちを残して学校を離れることになる。ラグビー部員のなかには、遠方から自分を慕って学校を選んでくれた生徒もいました。だから、葛藤はありました。妻にも何度も相談しましたが、妻は「やりたいことをやればいい」というスタンスでした。
 5年前にチームを離れるときは、こういう選択肢が将来あるとはまったく考えていませんでした。昨年暮れに話をいただくまでは、可能性も一切考えていません。
 ただ、最初は教員という職業にあこがれがあって、ラグビーは付随的に教えられればいいというスタンスでしたが、U17日本代表を指導したり、高校以外でもコーチングに携るなかで、少しずつやりたいことのバランスが、ラグビーに傾きつつあったのも事実でした。
 だから、葛藤を繰り返すなかで自分が本当に何をやりたいのかを考えたときに、やはり誇りを持って打ち込めるのがこの仕事だ、という結論にたどり着いた。それが決断した理由です。
 

――その5年間、グリーンロケッツは見ていましたか。


 ほとんど見ていません(笑)。会場に足を運んだのは2試合くらいじゃないですかね。
 HC就任の話は、昨年の暮れにいただきました。
 そのとき、チームから2つのテーマを示されました。
 1つは「日本一のディフェンス」を復活させること。これは、この35年間で根づいたチームのカルチャーですから、もう一度復活させたい。
 もう1つは、常に「Go Forward」、前に進み続けたい。
 これは、NECの社員である選手たちが、フィールドを離れても前に進み続けるような姿勢を示すことで、従業員の意識向上につながれば、という思いも込めています。もちろん、グラウンドのなかでも当然前に進み続ける姿勢を示したい。
 そして、最終的には「トップ4」を狙いたい――と。
 これがチーム側から示されたビジョンで、非常に共感できました。何よりも明確ですし、どこで戦うかがわかりやすいと思いました。
 チームは、これまで、(グレッグ・)クーパーさん、ピーター(・ラッセル)さんが指導して、選手の平均値は上がったと思います。実際にグラウンドで見ても、選手の能力は高くなっている。
 でも、ではグリーンロケッツはどこで勝つのか。
 HCに就任してからは、この点をスタッフと話し合っています。
 最初にスタッフでミーティングをしたときに、「昨季のゴールはなんだったんですか?」と質問したのですが、最終的に「トップ4」という答えが返ってきたものの、では「相手にどこで勝つのか」を重ねて問いかけると、スタッフみんなの答えが違っていた。スタッフ全員が、それぞれ「ここはどのチームにも負けない」というこだわりやストロングポイントを明確に持っているのですが、それをどうチームとしての強みに変換していくかという部分が、少し弱いように思いました。
 だから、今季は「Same Page(セイム・ページ)」をキーワードにしています。つまり、みんなが同じページを見て問題に対処するイメージです。
 今季は日本人スタッフが多いので、彼らといっしょに、日本人に特有のこだわりの強さや準備の細かさといった良さもチームの強みにしていきたい。そのためには、まず選手みんなに伝える内容を明確にするのが第一だと思っています。


 

――現在ミーティングをかなり密に行なっているのですか。


 昨季に比べて頻度が多いのか少ないかはわかりませんが、スタッフがミーティングに拘束される時間はかなり多いと思いますよ(笑)。
 通常の流れは、練習が始まる1時間前からミーティングを始めます。これは、トレーナー陣も含めてスタッフでケガ人の情報を共有するためでもありますし、練習の内容も、ここで密に話し合います。練習メニューも、選手たちがグラウンドに出る前に、スタッフですべてのメニューをデモンストレーションしてみます。そこでまた、問題点があれば議論をする。
 練習後には、映像で練習を振り返りながらレビューをします。
 

――チームには、この5年間で若手を中心に新しい選手たちが伸びてきました。今季は、誰を中心にチームを作ろうと思いますか。


 選手たち個々の能力を見ると、トップ4に行けるだけの能力が十分にあると思います。上手く15人を組み合わせれば、トップ4に行けるでしょう。
 選手たちとは、4月1日から全員と1対1でミーティングをしました。
 その前に昨季の映像をすべて見て、1人ひとりについて強みを把握して、面談の場で「ここが強みだよね」という話をしました。そのなかから、亀井亮依をキャプテンに、マリティノ・ネマニをバイスキャプテンに選びました。スタッフにはボクの方から提案して、賛成をもらいました。
 つまり、亀井とネマニが、今季の象徴的な存在になると思っています。
 亀井は昨季に続いてのキャプテンですが、選手たちから話を聞いても非常に信頼度が高い。今もチームの和を大切にしながら、あるべき姿を体現してくれるし、言葉がけも素晴らしい。今季は「Go Forward」をスローガンに掲げていますが、まさに先陣を切って常に前に進み続ける存在です。
 ネマニをバイスキャプテンにしたのは、彼がもっとも「Go Forward」をゲームのなかで体現してくれる選手だからです。ボールを持てば一番前に進むし、素晴らしいタックラーでもある。彼を中心にバックスが回っていたのは間違いないことでした。
 その反面、反則が多いというディシプリンの問題があることも全員がわかっています。
 ただ、試合の映像を見ると、実際に反則しているのは確かにネマニですが、そもそもはチームに責任があったのではないかと思えてきた。というのも、3年連続で反則数がワーストスリーに入っている。つまり、チームとしてのディシプリンがない。
 これは、ロッカーの整理がどうなっているか、グラウンドで走るときにちゃんとコーナーを回っているのかといった、高校生レベルのところから言わなければならなかった部分です。トップリーガーとしての当たり前がチームのスタンダードではなかった。だから、ネマニにも、「実際に反則しているのはキミだけど、これはキミだけの責任ではない。チームとしてのスタンダードが低かったから反則につながったんだと思う」と伝えました。
 彼は昨季のカードの累積で今季は6試合出場できませんが、ディシプリンの問題を治せば選手としてさらに成長するし、チームとしても、それをメッセージにしていきたい。ネマニ自身も、反則が多いことが自分の最大の課題であることを受け入れて、僕が伝えたことも理解してくれた上で、「ぜひバイスキャプテンをやらせて欲しい」と言ってきた。
 こうした選出の理由も、リーダーを発表するときに全員にすべて話しました。
 チーム全体のディシプリンについて言えば、この10日間で非常に向上しています。
 ルールを作ることの善し悪しは必ずあって、ルールがあることで、守らなければならない最低ラインを示すことができる反面、あまりにもルールが多過ぎると、選手たちが何も考えなくなってしまう。それは良くないので、今季は「トップ4スタンダード」という言葉を与えて、チームのなかにスタンダードを作ろうとしています。
 これは細かいことですけど、スタッフミーティングのときに、スタッフに「履き物を揃えましょう」と言うところから始めました(笑)。履き物を床に乱雑に脱ぎ捨てるのがチームのスタンダードであっていいわけはないので、そこからトップ4のスタンダードを目指すようにしています。スタッフが変わった姿を見せれば、選手も変わってきますからね。
 ラグビーをやる時間は1日24時間のうち2時間くらいですが、残りの22時間が整っていれば、ラグビーをやる2時間も自然に整ってより良い準備ができるようになります。逆に、2時間だけ頑張って残りの22時間がだらしなかったら、結局それがラグビーにも出る。トップリーガーが公人だとまでは言いませんが、応援されて会社の象徴としてプレーする以上は看板を背負うだけの責任を果たさなければならないし、それだけの準備をしなければならない。
 選手たちも、常にディシプリンを言われることで変化してきました。
 練習中にコンディションを整えるためにゲームをすることがあるのですが、昨季は笛を吹いたコーチの判定が気に入らないと罵声を浴びせていたらしい。しかも、誰もそれをとがめなかった。コーチが「オレ、もう審判やりたくない」と言うくらいだったそうです(笑)。
 でも、そういう日常が、下った判定に文句を言っても変わらないし、判定にミスがあるかもしれないけど、その前に自分がやるべきことをやるべきではないか、という考え方に変わってきた。まだ文句が出ることもありますが、方向性としては明らかに変化の芽が感じられます。
 もちろん、ディシプリンに限らず、成長しようとする息吹は、他の部分でも感じています。
 トレーニングの強度も去年より高めてもらっていますし、すべての部分でトップ4スタンダードを意識するようになりつつあります。選手たちは肉体的にはしんどいでしょうけど、生き生きとしています。何より目がいい。試合出場経験の有無にかかわらず、今年にかける思いが伝わってきます。それがディシプリンにもつながって、いい方向に進んでいると思います。


 

――チームは新旧交代の時期にさしかかっていますが、スムースに進みそうですか。


 若い選手に必要なのは経験を積むことで得られる自信です。今まで練習でやってきたことを、試合中に出せた。それがチームとして機能した。そしてチームも勝った――という経験が積み重なれば、やってきたことが間違いではなかったと自信になる。そういう小さなことの積み重ねにいかにこだわって、経験を積ませることができるか、それが大切だと思います。
 若手は、試合に出てこそ選手として評価されるべきだし、そういう経験をしてもらいたい。こちらからもかなりプッシュしますし、若手がやる気を見せたのに対して、ベテランが負けられないと意地を見せるような相乗効果が、現段階では見られます。
 結果的にベテランが試合に出たとしても、それがレベルの高い競争を勝ち抜いた結果であれば、若手が悲観するようなことはない。だから、いかに競争の強度やレベルを高められるか、いい意味のストレスを選手たちにかけ続けることができるかどうかが私たちの仕事だと思います。
 

――6月22日から始まるトップリーグカップをどう位置づけていますか。


 今季は、実質的に2シーズン制のような形になっています。だから、トップリーグカップで良かったことを、年明けから始まるトップリーグに活かすことができますし、修正もかけられます。それは今季の強みにできると思います。
 トップリーグカップの5試合が始まる前に、プレシーズンマッチを3試合組んでいますが、5月25日の東芝ブレイブルーパス戦(柏の葉公園総合競技場 14時キックオフ)に向けて、我孫子でセレクションマッチを行なう予定です。これはすでに選手にもアナウンスしていて、ここで25日のファースト・フィフティーンを選ぶつもりでいます。だから今は、全員がこのセレクションマッチと東芝戦にピークを合わせられるように調整しています。チーム内の競争も、この2試合に向けて激しくなっています。選手たちのマインドセット(心構え)もできているように思います。
 そのあとのNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦と、NTTドコモレッドハリケーンズ戦は、多くの選手を起用して経験を積ませる機会にする予定です。
 チームとしてトップ4を目標にする以上、まずトップリーグカップでトップ4を取ることが目標になりますが、それを見据えたメンバーで毎試合臨みます。つまり、プレシーズンのすべてのゲームがセレクションの対象になるわけです。
 戦い方の主軸は、ディフェンスとゲインラインの攻防の2つに置いています。
 スタッフからメンバーまで全員が「セイム・ページ」を見られるよう、スローガンは「Go Forward」にしました。シンプルに明確なメッセージを伝えられるようにしたいからです。
 みんなには、「我々はNECウェイを進むだけだ」と、話しています。そのためにも、「日本一のディフェンス」と「ゲインラインのバトルに勝つこと」が必要になってくるでしょうね。
 

――最後に、HCとしてこれからのシーズンに臨む今、どんな気持ちでいますか。


 今は楽しみしかないですね。
 まず選手の能力が非常に上がっているし、いいコーチングスタッフにも恵まれています。
 こうした素晴らしいスタッフとともにトップ4を取りたいという思いが、どんどん強くなっています。スタッフがハードワークを積み重ねた結果、トップ4という答えが出れば理想的ですね。
 

――ありがとうございました。




(取材・文:永田洋光)

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