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重なったアクシデントに「自分たちのラグビー」を見失ったグリーンロケッツ、10位でトップリーグを終える!

2018/12/17

 NECグリーンロケッツが、トップリーグの順位を1つでも上げるために残された最後のチャンス――それが、ホンダヒートとの9位決定戦だ。
 勝利をつかむためにチームに与えられたキーワードは「我慢」。
 日本代表でWTBを務めるレメキ・ロマノ・ラヴァをはじめ、個々に強いランナーを揃えたホンダのアタックを組織的な防御で封じ込め、ボールを奪い返して粘り強くアタックを継続。シンプルにフェイズを重ねて得点に結びつけて勝つ――そんなプラン通りに戦えば、コカ・コーラレッドスパークス、東芝ブレイブルーパスと連破した勢いで勝利は自然についてくるはずだった。
 しかし、結果は24-30と、悔しい逆転負け。
 なぜ、プランは崩れたのか。
 冷たい北風が吹きつけた名古屋での試合は、誤算の連続だった。



 立ち上がりのグリーンロケッツは、まったく危なげがなかった。
 この2試合で手応えをつかんだ防御は揺るがず、開始から53秒でSH中嶋大希がラックに働きかけて反則を誘い、プラン通りにホンダのアタックの芽を摘んだ。
 続くラインアウトからは用意したサインプレーを仕掛けてWTB松浦康一がクリーンブレイク。大きく防御ラインを突破してFB吉廣広征につなぐ。さらにラックを連取して、PR瀧澤直が強引にインゴールに身体をねじ込んで先制トライを挙げた。
 CTB森田洋介のコンバージョンも決まって7-0。
 幸先良くクリーンパンチをヒットさせたのだ。
 ホンダに1PGを返された13分には、CTBマリティノ・ネマニが大きく抜け出してチャンスを作り、ゴール前の絶好の位置でスクラムを得る。
 そこからSOスティーブン・ドナルドが、中嶋とループする素振りを見せてディフェンスを惑わし、自ら勝負してトライを決めた。森田のコンバージョンも決まって、14-3だ。
 続くキックオフ。
 グリーンロケッツは、FLスコット・ヒギンボッサムがキャッチを試みるが、着地で足を痛め、サポートに入った後藤も巻き込まれて足を負傷。後藤はこのままピッチを去ることになった。
 しかも、最初のトライのときに吉廣が足を痛め、すでに8分には釜池真道と交代していたため、バックスの控えメンバーはSH木村友憲とCTBアマナキ・サヴィエティが残るのみ。外国人枠の問題で、サヴィエティを入れると、外国人選手を1人下げなければならない。
 そこで本来FLの大和田立が急遽WTBとしてピッチに入ることになった。
 負傷者の連続で落ち着きをなくしたグリーンロケッツは、19分にトライを奪われ、14-10と追い上げられる。
 強い風上に立っているにもかかわらず、序盤のいい流れが暗転し始めたのだ。
 29分には、不慣れなWTBでディフェンスした大和田が、独走しかけたホンダWTB生方信孝を倒してピンチを防ぐが、そのときサポートに戻ったヒギンボッサムが再度足を痛める。しかも、ラックでペナルティをとられてピンチを断ち切れない。
 直後のラインアウトでグリーンロケッツは相手のノックオンを誘い、アドバンテージを活かしてドナルドが相手の背後に短いキックを上げる。それを追走した森田が好捕。そのままブレイクしかけるが、横殴りのタックルにあってボールを落とす。
 そのときアドバンテージはすでに解消されていて、ホンダがそのまま攻めてPGで3点を追加。14-13と1点差に迫られた。
 前半終了間際にもPGを決められて、グリーンロケッツは14-16で前半を終えた。



 それでも後半に先手を取って再逆転したのはグリーンロケッツだった。
 4分、ホンダCTBショーン・トレビ―にパスをインターセプトされて迎えた大ピンチに、ネマニが相手のパスを再インターセプト。いったん斜め後ろに走ってパスを出す味方を探したが、追うホンダのディフェンダーがFWばかりだと気づいて一転して勝負に出る。
 そして、そのまま防御を振り切ると、70メートル近い距離を1人で走り切ってゴールポスト真下にトライ。森田のコンバージョンで21-16とした。
 さらに2分後には、キックオフリターンで自陣から攻めてNO8ジョージ・リサレが一気にブレイク。ハーフウェイラインを越え、中嶋にパスを送ったが、呼吸が合わずにノックオン。中嶋は天を仰いだが、絶好のトライチャンスを逃した。
 グリーンロケッツの攻勢はさらに続く。9分には大和田が地を這うようにして抜け出してチャンスを作る。が、展開したところで相手にインターセプトされて得点を挙げられない。
 10分には、ドナルドがLO廣澤拓に絶妙なタイミングでパスを出して廣澤が独走。さらに継続して松浦がゴール前に迫るが、これもラストパスが通らない。
 この間、ホンダにオフサイドがあってグリーンロケッツはペナルティを得る。ここは、タッチに蹴り出してラインアウトからモールでトライを狙いに行ったが、モールを組むところでノックオン!
 18分にも同じようにペナルティをラインアウトに選択してモール勝負を挑んだが、ホンダに上手く守られて有効に押し込めなかった。
 ペナルティを得た地点が、ゴールポスト正面で距離はいずれも30メートルほど。PGを選択して3点を追加する手もあったが、亀井亮依キャプテンは決断の胸のうちをこう明かした。
「確かに、リードを8点に広げて相手のキックオフからリスタートする考えもありました。ただ、後半は風下でしたし、リーダー陣で相談してラインアウトを選択しました。FWにはモールを押せる手応えがありましたから。でも、結果論で考えれば、あそこで8点差にしておけば、気持ち的にもう少し余裕を持って戦えたかもしれませんね」
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチは「亀井の選択は間違っていなかった」と弁護する。そして、それよりもチャンスに多発したミスを悔いた。
「ホンダのプレッシャーがかかっていない状況で自分たちからミスを犯した。ボールキープのところで無理をしていたので、もう少し冷静さが欲しかった」



 後半も、立ち上がり20分間のいい流れのなかで7点しか奪うことができず、追加点を奪えなかったがために、またもや流れが暗転するのだ。
 23分には、ホンダPR具智元が、ドナルドから腕力でボールを奪ってトライを挙げ、スコアは21-23に。グリーンロケッツも、森田のPGで24-23としたが、そこから試合終了までホンダの猛攻に守勢に追いやられ、33分にトライを奪われて万事休した。
「今日はいいグリーンロケッツと悪いグリーンロケッツの両方が出た」と振り返ったのは、途中出場してからWTB、FB、CTBとさまざまなポジションをこなした釜池だ。
「バックスだけで4人もケガしたことが響きました。それでも残り10分までは、しっかりといいラグビーができていたのですが、反則が出始めて相手に流れが行ってしまった。今季はチームとして反則を減らそうとしてきたのに、その課題が、最後にまた出てしまいました」
 松尾健バックスコーチも、暗転の原因をこう指摘する。
「シーズンの後半になって、どういうラグビーをするかが明確になって、シンプルに試合を進めることができてきた。それが、コカ・コーラ戦、東芝戦の勝利に結びつきました。でも、ホンダ戦では、2トライとって気持ち的に余裕が出たところで少し無理にボールをつなごうとしてミスが出た。そこにペナルティが重なり、ケガ人も相次いで、気持ちの余裕を失った。ラグビーは、ミスも起こるし、負傷者も出る競技。そういう自分たちのプランが上手くいかないときに、いかに冷静にゲームを進められるかが大切なのですが、それができなかったのが敗因です」
 この試合で2018年度のトップリーグが終了し、グリーンロケッツは10位に終わった。
 それでも亀井キャプテンはこう言って前を向く。
「反則をしないことを、シーズンを通しての課題にしてきました。そして、課題は改善されつつありましたが、土壇場で自分たちのラグビーをできず、反則から相手にチャンスを与えてしまいました。負傷者が多く出て、普段やらないポジションでプレーしたり、自分たちが準備してきたことを出せない部分もありましたが、それでもしっかり戦えたことはチームとしての収穫と言えると思います。1月にはまだカップ戦があるので、しっかり前を見て戦いたい」
 残る試合は、トップリーグカップの順位決定戦2試合だ。
 しかも、その初戦は、開幕戦で1点差負けした豊田自動織機シャトルズが相手だ(1月8日 パロマ瑞穂ラグビー場 11時30分キックオフ)。今季の悔しさを来季にいい形でつなげるためにも、グリーンロケッツは年明けにリベンジを期す。






 勝っていればヒーローになるところだった。
 ホンダヒート戦の後半4分、相手にパスをインターセプトされた大ピンチで、もう一度相手のパスをインターセプト。そこから最初は横に走り、並み居るディフェンダーをスラロームのように抜き去って70メートルを独走。豪快なトライを奪ったのだ。
「あれはラッキーだった」
 そう言ってネマニは笑う。実は、一か八かのギャンブルだったからだ。
「あのときはボールを奪われた直後で、僕の外側に相手が2人フリーでいる3対1の状況だった。もし、外側にパスを通されたら、完全にトライになったと思う。だから、リスクはあったけれども、あえてパスをカットしに行ったんだ。もし、僕がタックルに入ったら、パスが通ってホンダのトライになったと思う。そういう状況を考えてのカットだった」
 パスをもらえば相手を弾き飛ばし、一気にビッグチャンスを作るネマニは、今季強いランナーとして注目を集めた。だから、ディフェンスよりもアタックを好むのかと思っていたのだが、本人は「ディフェンスが好きだ」と断言する。
「チームが前に出ているときに、アタックするのは簡単なんだ。でも、ディフェンスは頭を使わなければならない。そこが面白い」というのがその理由。ホンダ戦のトライも、そうやって状況を読み、頭を使った上での「ギャンブル」が奏功したものだった。
 一方で、今季は開幕戦から3試合続けてイエローカードをもらい、第4節のサントリーサンゴリアス戦に出場停止処分で出られなかった。チームとしても反則数が多く、ディシプリンが問われたシーズンだったが、その象徴的な存在がネマニだった。
 本人も、こう悔いる。
「確かに、開幕戦の頃は気合いが空回りして、アグレッシブにやり過ぎたと思っている。だから、それを反省して、チームのために自分をコントロールしようと心がけてきた」
 その結果が、勝利にも結びつき、ネマニ自身のトライ数にも結びついている。
 具体的にデータを見れば、イエローカードを受けた3試合はノートライだったが、復帰するや、第5節のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦から第7節の神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦まで3試合で4トライを挙げ、チームも2勝1敗。順位決定トーナメントでも、2回戦の東芝ブレイブルーパス戦で2トライを挙げている。
 トライが勝利に結びつく確率が高いのが、ネマニの持ち味なのである。
「いや、トライを狙ってプレーしているわけではないんです。チームとしていいプレーがあって、たまたま僕がトライをしているだけ。つまり、僕のトライはチームトライ。今季のパフォーマンスも“良かった”と言われるけれども、それもチームのパフォーマンスが良かったからでしょう」
 “チーム・ファースト”を心がけるあまり、開幕当初は気合いが入り過ぎて空回りした男は、頭をクールダウンさせて自身の原点を見つめ直し、チームの誰からも頼られる存在となったのである。
 
(取材・文:永田洋光)
 

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