グリーンロケッツ、東芝から7トライを奪う快勝で2回戦を突破!

2018/12/10

 東芝ブレイブルーパス戦は、NECグリーンロケッツの真価が問われた試合だった。
 総合順位決定トーナメント1回戦でコカ・コーラレッドスパークスを破って入替戦回りの危機を回避。2回戦は、勝って順位を1つでも上げるというモチベーションの強さが問われることになる。
 しかも、相手はライバルの東芝だ。
 昨季も、5位-9位決定戦1回戦で対戦し、22-29と敗れている。
 そればかりではなく、グリーンロケッツは7年前の2011-12年度に24-19と勝利して以来6連敗と、東芝から勝利を挙げていない。
 今季は、カンファレンスが違っていたためレギュラーシーズンでの対戦はなく、両者の力関係を測る物差はない。しかし、東芝がホワイトカンファレンス6位に終わったとはいえ、強力なFWを持ち、手強いチームであることは事実。
 今季、シーズンが深まるにつれて実力を発揮し始めたグリーンロケッツにとって、その力が本物なのかどうかを見るには、絶好の試合だった。



 先制したのはグリーンロケッツだった。
 7分、東芝陣内のラインアウトから左へ展開。SOスティーブン・ドナルドのパスを受けたCTBマリティノ・ネマニがディフェンスラインを突破。そのまま東芝防御を振り切ってトライを挙げ、CTB森田洋介のコンバージョンで7-0と幸先のいいスタートを切った。
「あのプレーはトライを狙ったわけではないんです」と話すのは、キャプテンのFL亀井亮依だ。
「基本的には、ネマニは必ずゲインを切ってくれるので、ペネトレーター(突破役)として考えています。最初のプレーも、トライを狙ったわけではなく、あそこで東芝防御を押し込んで、そこからアタックするプランでした」
 それがいきなり7点に結びついて、士気が上がった。
 続くキックオフレシーブではミスが出て東芝にボールを拾われ、自陣に攻め込まれたが、東芝のノックオンを拾ったSH中嶋大希が大きく前方に蹴り込んでピンチを脱出。ボールを追ったWTB後藤輝也がプレッシャーをかけてラックでボールを奪うと、そこから左に展開。ドナルドからネマニの手を経て、逆サイドのWTB松浦康一にボールが渡る。
 松浦はスピードに乗ってゴールラインに迫ったが、東芝もFLのリーチ・マイケルとWTBジョネ・ナイカブラが戻って松浦を取り囲み、トライを許さない。
 それでも、地域は東芝陣内の深い位置だ。
 グリーンロケッツは、ラインアウトからふたたびネマニを走らせた。
 ネマニは期待に応えて大きく突破。そこからラックを連取して右に展開。
 最後はゴール前のラックからLOサナイラ・ワクァがインゴールに長い手を伸ばしてトライを記録。森田のコンバージョンで14-0とした。
 昨季、東芝と開幕戦で対戦した際は、不完全燃焼とも言えるような内容で0-20と敗れたが、グリーンロケッツは、自ら殻を破るように2トライを奪って主導権を握ったのだ。
 共同キャプテンの森田が言う。
「アタックに関しては、シーズンが深まってこういう感じで行けばいいというのが明確になってきました。シーズン序盤は、チグハグなアタックしかできませんでしたが、今は、シンプルに強い選手をタテに走らせて相手に当てていこうと、頭の整理がついてきた。精度も上がってきましたし、上手くいかないときでも、ちょっとしたコミュニケーションが取れるようになってきました」
 レギュラーシーズン第5節、第6節と、ホーム柏の葉で連勝して始まったいい流れが、11月のカップ戦を経て実を結びつつあるというのだ。



 しかし――。
 そのまま快勝ペースに乗れるほどゲームは簡単ではなかった。
 次のキックオフリターンでペナルティを犯したグリーンロケッツは、東芝の連続攻撃にさらされた。トライを許すことなくしっかりディフェンスはできていたが、ラックでも反則を犯してピンチを脱出できない。
 15分には、東芝にゴール前でラインアウトからモールを組まれた。が、ここは東芝がモールに横から入るオフサイドを犯してピンチが去った――かに見えた。
 そこから反撃に出たグリーンロケッツは、ドナルドのハイパントで東芝陣内に攻め込もうとする。
 しかし、ハイパントに対するチェイスが甘く、東芝にカウンターアタックを仕掛けられる。
 東芝はボールを左に展開し、NO8ヘンコ・フェンターが大きく突破。そのまま宇薄岳央の出血交代で入っていたWTB松岡久善にトライを許し、14-7と点差が縮まった。
 さらに24分にも、スクラムから左に展開されて、ピッチに戻ったばかりの宇薄にトライを奪われ、“快勝ペース”が一転“接戦モード”に切り替わった。
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)が、「自分たちのミスやペナルティでボールを手放し、東芝をスコアで突き放すことができなかった」と振り返った時間帯だ。
 亀井キャプテンが、何が起きたかを、こう解説する。
「スコアはしていましたが、その次のキックオフレシーブをほとんど相手にターンオーバーされた。これは次につながる課題です。ペナルティも個人で修正できる部分が多いと思うので、来週までに修正したい。ただ、この時間帯に出たミスは、ネガティブなミスではありませんでした。エナジー(士気)が上がった結果、視野が狭くなってしまい、全員がボールしか見ていなかった。チームのストラクチャーを守らずに全員でボールをもらいにいってしまったのです。そこをコントロールしてシステムを守れば、いいアタックができていたのでそう心配ではありませんでした」
 序盤からのいい流れにイケイケになった結果、視野狭窄に陥ってしまったのだ。
 そんなチームを落ち着かせたのは、スクラムだった。
 前半30分、グリーンロケッツが東芝陣内でスクラムをグイッと押し込み、一気に東芝FWを押し下げた。
 PR土井貴弘も「あんなに押せるとは思わなかった」と驚いた会心のスクラムだった。
 ここはペナルティを誘うことができず、東芝にタッチに逃れられたが、続くラインアウトは東芝陣22メートルラインを少し出たところ。ちょうどバックスの仕掛けに有効な地点だった。
 ここでもう一度ネマニが大きく突破。松浦がサポートし、さらにサポートしたNO8ジョージ・リサレがトライを奪い、森田のコンバージョンで21-12とした。



 9点差で迎えた後半は、立ち上がりにTMOでトライが取り消される不運もあったが、グリーンロケッツは攻勢を緩めず、12分にネマニがトライを挙げて東芝を突き放す。
 さらにその後はゴール前でスクラムにこだわり、スクラムトライを狙いに行った。ここは東芝に踏ん張られてトライを奪えなかったが、26分にはアタックをモールに切り替えてリサレがトライを奪い、森田のコンバージョンは外れたが、33-12として実質的に勝負を決めた。
 その後、お互いに2トライずつ取り合って47-26で試合が終了したが、東芝に一度もリードを許すことなく快勝したことで、ラッセルHCは「素晴らしい勝利」と高く評価。
 亀井キャプテンも、チームの特色が出たことを、こう喜んだ。
「グリーンロケッツは、FWのセットプレーを含めて、ビッグなプレーではなく愚直にワンプレー、ワンプレー積み重ねて、スコアできるところはスコアする。ディフェンスでは、ターンオーバーできるところはターンオーバーする、というのがチームの特徴です。今日は、そういう特色を、しっかりグラウンドでプレーすることができました」
 そして、こう付け加えた。
「もともと年齢に関係なく仲が良いのがチームの特色ですが、試合でいいプレーが出れば元気になります。今日はスクラムも押せていたし、いいプレーも出た。FWとして1つになっていく感覚があったので、終始元気に戦えたと思います。ただ、ゲームが上手くいかないときに、そういう元気を出せるかどうか、劣勢のなかでのコミュニケーションは今季の課題でした。来週は、そうした課題の修正も含めて、今季のトップリーグの集大成にしたい。現実的に狙える最高順位の9位を目指して、しっかり準備をして勝ちたいと思います」
 そう。
 今季の試合は、トップリーグカップの順位決定戦を含めればまだ3試合残っているが、トップリーグの順位に関わる試合は、来週の9位決定戦が“最後の試合”だ。
 ラッセルHCも、「グリーンロケッツにはトップ8に入る力があると信じているし、来週は、それを証明するためにもしっかりと戦いたい」と決意を込める。
 次週の相手は、9日にキヤノンイーグルスを40-14と破ったホンダヒートに決まった(15日 パロマ瑞穂ラグビー場 14時キックオフ)。
 今季のトップリーグの有終の美を飾るためにも、グリーンロケッツの「集大成」となる勝利が求められている。






 会心のスクラムは、先週のコカ・コーラレッドスパークス戦だった。
 後半21分、まだピッチに入って5分しか経っていない前島利明を始め、先発とそっくり入れ替わったフロントローが、相手ボールのスクラムを一気に押し込んでボールを奪い、NO8ジョージ・リサレのトライに結びつけたのだ。
 だから、「先週、取材した方が良かった?」と訊いたら、「はい」と言って爆笑した。
 プレー時間もさほど長くなかった東芝ブレイブルーパス戦は少々物足りなかったのかもしれないが、今季、フロントローとして着実に力をつけ、第2節のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦を除いて全試合に出場。不動の「1番」とされていた瀧澤直・前キャプテンを追う一番手として名乗りを上げたのが前島だ。その点でチーム内での評価は揺るがない。
 前島が言う。
「体重も6キロアップして、去年まであまり上手くいかなかったスクラムが改善されてきたのが今季です。昨季のオフから、もう一回身体を見つめ直して、芯が強くなるようなトレーニングを重ねてきた。それが上手くいっているので、今試合で使ってもらっているんだと思います」
 ライバルにして師匠でもある瀧澤からは、さまざまなアドバイスを受けていると言う。
「瀧澤さんは、わからないところを聞けば、どんなことでも隠すことなく教えてくれます。スクラムで相手がいろいろな組み方をしてくると、まだ経験が浅いので、どう対処していいのかわからなくなってパニックになるときもありますが、そういうときにどうすればいいかを教えてくれる。瀧澤さんは引き出しが多いので、いろいろな引き出しを開けてもらいながら教えてもらっている感じです。今は、いっぱい吸収して、いつか越えられるようになりたい。そういう気持ちでいます」
 本来の持ち味は、攻守にグラウンドを駆けるフィールドプレーの良さだ。しかし、スクラムに弱点があれば、どんなにフィールドプレーが良くても試合には出られない。その葛藤を乗り越えるために取り組んだのがウェイト・トレーニングであり、瀧澤先輩への質問だったのだ。
 練習で前島の“トイメン”となる土井貴弘も、前島の成長を実感する1人だ。
「チーム内で組んでも、去年は押せたのに今年はなかなか押せなくなった。後ろの選手の体重を上手く使えるようになったのが特徴的です。だから、ヒットも良くなるし、組んでいて“強くなったな”と思います。もともと下半身の力は強いし、デッドリフトでもかなりの重さを上げる力がありますからね」
 前島も、トップリーグで組んだどの3番よりも「土井さんが一番強い」と感じている。こうした競い合いが、今のスクラムの安定を生んでいるのだ。
 残り少なくなった今季、そして来季へ向けて、こう意気込みを語る。
「フィールドプレーではいっぱい走って、いっぱい仕事したい気持ちがありますが、今季はスクラムに力を入れているので、前節のコカ・コーラ戦みたいなプレーができるように頑張りたい」
 究極的に目指すのが、「コカ・コーラ戦みたいな」スクラムでの圧勝なのである。
 
(取材・文:永田洋光)
 

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