チーム全員の力を結集して、グリーンロケッツ、順位決定戦1回戦を突破!

info_category1.gif2018/12/03



 プロ野球でこんな言葉をよく耳にする。
「大勝した次の試合は打線が湿る」
 ホームランが何本も飛び出し、大量点を奪って勝った反動で、次の試合はバッターが大振りになり、結果として得点を挙げられなくなる現象を指した言葉だ。
 グリーンロケッツに置き換えれば、日野レッドドルフィンズを73-0と圧倒した先週のトップリーグカップ第3節が、この「大勝」に当たる。
 ラグビーでも、簡単にトライを取れたことで「オレたちはいける」と過信し、次の試合でアタックが雑になるのはよくあることだ。
 だから、日野戦が終わってから、まったく重みが違う総合順位決定トーナメント1回戦のコカ・コーラレッドスパークス戦に至るまでの1週間が大切だった。
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)が言う。
「日野戦の大勝のあとで、亀井亮依キャプテンがチームに対して、しっかり気を引き締めてこの試合に臨もうと話してくれた」
 亀井キャプテンは、その背景にあった思いをこう明かす。
「コカ・コーラがこの試合にフォーカスしてくることはわかっていました。おそらく、僕らの予想を上回る力を発揮してくる、と覚悟していました。ただ、それでも、自分たちの力を出せば勝てると信じていました。これは過信ではなく、自分たちも最高の準備をしていいパフォーマンスをすれば、この試合に勝ってもう1つレベルアップできる。そう考えていたのです」
 結果は出た。
 43-17。
 危なげのない会心の勝利だった。



 試合がどういう展開になるか、最初に主調音を決めたのはグリーンロケッツだった。
 前半14分に、コカ・コーラ陣10メートルラインから少しゴールに寄ったところで、もう1人の共同キャプテンCTB森田洋介がPGを狙う。
 右足で蹴られたボールは、きれいにゴールポストの間を通過。3点を先制した。
「序盤からPGを狙ってスコアできたのが良かった」と亀井キャプテンは振り返ったが、これもトップリーグカップ第2節のキヤノンイーグルス戦で、前半に何度も相手ゴール前でペナルティのチャンスを得ながらトライを狙い、それをことごとく守られて無得点に終わった苦い教訓を活かしての決断だった。
 負ければ終わりの順位決定トーナメントでは当然の選択とも言えるが、得点に結びついたことで、チームに「いける!」という手応えが生まれたのだ。
 グリーンロケッツは、18分にもスクラムで反則を誘ってPGを狙ったが、これは外れてドロップアウトに。
 19分には、コカ・コーラのバックスに、左タッチライン際で2対1の決定的な場面を作られたが、防御に戻ったSOスティーブン・ドナルドが冷静に対応。ボールキャリアにプレッシャーをかけてパスミスを誘い、事なきを得る。
 実はこの場面が、地味ではあるけれども、ゲームの行方を決定づけた。
 続くマイボールのラインアウトからドナルドがハイパント。高く蹴り上げられたボールを、亀井キャプテンとCTBマリティノ・ネマニが追走。プレッシャーをかけてキャッチミスを誘い、こぼれ球をNO8ジョージ・リサレが確保。右に展開して、LOサム・ジェフリーズがラックに持ち込んだところでコカ・コーラFWが密集に横から入ってペナルティを得る。
 今度はPGではなく、ラインアウトからのアタックを選択。
 グリーンロケッツは、得意のモールを組む。
 右タッチライン際、ゴールラインまで10メートルほどの地点で組まれたモールは、ググッと前進。後方からバックスの選手も参加し、最後尾でボールを持ったのはWTB後藤輝也だ。モールは左斜め方向に前進し、停滞したところで後藤が飛び出し、そのままトライを奪った。
 森田のコンバージョンも決まって10-0。
 プレー選択が順調にスコアに結びついて、完全にゲームの主導権を握ったのだ。
 コカ・コーラも続くキックオフから11フェイズにわたってアタックを仕掛けたが、グリーンロケッツの防御は揺るがず、最後はコカ・コーラがキックのオフサイド。ピンチを脱する。
 そして、29分には、相手ボールラインアウトのこぼれ球を奪い、右へ展開してFLスコット・ヒギンボッサムがトライを追加。森田のコンバージョンで17-0。
 35分にはコカ・コーラに1トライを返されたが、前半終了間際には、やはりモールでゴールラインに迫り左へ展開。WTB松浦康一が脳しんとうチェック(HIA)を受けている間に代わりに入った釜池真道が、タッチライン際で巧みにボールを活かしてアタックを継続。ドナルドのキックパスを受けた後藤が連続トライを決めて、前半を締めくくった。



 24-5で迎えた後半は、立ち上がりからピンチの連続だった。
 キックオフ直後に、スクラムからコカ・コーラNO8ジョセフ・トゥペに走られてゲインを許し、さらにラックサイドをPR猿渡康雄に大きく突破される。ここはノックオンに救われたが、自陣深くでゴールラインを背負うピンチが続く。
 4分には、コカ・コーラCTBジェームズ・マーシャルが完全にフリーになってトライか――と思われたが、右サイドから後藤が全速力で駆け戻り、すれ違いざまにボールをはたいてノックオンを誘う。続くスクラムからリサレがボールを持ちだし、コカ・コーラの反則を誘って、ようやくピンチを脱出した。
 15分には、ラインアウトから19フェイズにわたってボールを保持。しつこく攻め続けて、最後はヒギンボッサムが2つめのトライを記録。
 そして、チームにとってもっとも嬉しいトライが21分に生まれた。
 瀧澤直、臼井陽亮、田中光の先発フロントローが、控えの前嶋利明、川村慎、土井貴弘にすべて入れ替わった直後の相手ボールスクラム。これを一気に押し込んでボールを奪い、そのままリサレがトライを挙げたのだ。
「あれは、みんなでスクラムを押そうと狙っていた。FW全員で取ったトライ」とリサレが言えば、亀井キャプテンもこう評価する。
「この1週間、練習中からノンメンバーがすごいプレッシャーをかけてくれた。ゴール前で相手ボールを押し込んでトライに結びつけたのも、ノンメンバーのそうしたプレッシャーがあったからこそ。あれでチームに勢いがついた」
 もっとも、その後にコカ・コーラに連続トライを許し、キャプテンは反省の弁も忘れなかった。
「トライを許した場面や、自分たちで規律を守れずにペナルティを犯してしまったり、隙があったのが今日の課題。勝ったことで9位を狙えるチャンスを得たので、しっかり修正して、次の試合に向けていい準備をしたい」
 それでも、連続トライを許して試合終了なら漂ったかもしれない後味の悪さは、後半39分にスクラムからサインプレーを仕掛けて、途中出場の釜池がトライを奪ったことで払拭された。
 ラッセルHCが「チーム全員の勝利」と讃えれば、2トライを挙げたヒギンボッサムも、「チーム目標のトップ4に届かなかったのは残念だが、今日は僕たちにそれだけの力があることを示せたと思う」と胸を張った。
 総合順位決定トーナメント1回戦を突破したグリーンロケッツは、達成可能な最高到達点9位を目指して、8日には東芝ブレイブルーパスと対戦する(北九州・ミクニワールドスタジアム 14時キックオフ)。2005年度に日本選手権決勝で激突し、6-6と優勝を分け合った両者がここで対戦するのはちょっと淋しいが、ライバル同士の意地が激突する好ゲームになることは必至。
 昨季は0-20とシャットアウトされた東芝に、グリーンロケッツはリベンジを果たせるか。
 今季の成果が問われる試合になる。






 2017-18年度は、足に負った大ケガで1シーズンをまるまる棒に振った。
 オーストラリア代表NO8として32キャップを持つ大黒柱だが、今季のスコット・ヒギンボッサムは、長い空白を経てチームに復帰できた喜びに突き動かされて、活躍を続けている。
「昨季は本当に落ち込んだよ。ケガでシーズンを棒に振らざるを得なかったからね。それでも、グリーンロケッツは、僕のケガが癒えて復帰するまで待っていてくれた。これは本当にありがたかった。とても感謝しているよ」
 そんな思いがあるからか、11月24日の日野レッドドルフィンズ戦では4トライを奪う大活躍。このコカ・コーラレッドスパークス戦でも前半に1つ、後半に1つと2トライを挙げてチームの勝利に貢献した。
 本来は、相手にタックルに入らせてボールをつなぐオフロードパスのような、スキルフルなプレーが持ち味だが、今季はトライを量産するだけでなく、密集戦で身体を張り、防御に駆け戻ってピンチを防いで……と、獅子奮迅の活躍をしている。
 それも、ケガからの復帰を待ってくれたチームへの感謝の気持ちがあるからだ。
「グリーンロケッツは、今季とてもいいチームになっている。ケガする前は、ベテランと若手に少し力の差があるように感じていたけれども、今は若い選手たちがレベルアップして、ベテランを脅かしている。それがいい循環となって、メンバーの経験値が上がり、スキルも良くなった。今季は、目標のトップ4に届かなかったけれども、コカ・コーラにいい形で勝って、僕たちにはトップ4に匹敵する力があることを示せたと思う」
 ただ、ヒギンボッサムは、シーズン終盤にいつも大活躍するのだが、開幕当初はハンドリングエラーが時折出て、あまり好調とは言えないことが多い。
 それはなぜなのか、「日本の湿度のせい?」と突っ込んでみた。
 返ってきた答えは、「そうではないよ(笑)」だった。
「毎年僕は、スーパーラグビー(オーストラリアのレッズに所属)のシーズンが終わってからチームに合流する。その間に、グリーンロケッツのメンバーは、4か月にわたってトレーニングを重ねている。そこに、短い期間で適応するのは少し難しい。特に今季は、リーグ日程が短縮されたから、いきなり自分のコンディションを合わせてパフォーマンスを上げるのが難しかった。でも今は、シーズンが深まって、そうした細かいところでチームのプレーと呼吸が合うようになってきた。それが良いパフォーマンスにつながっている」
 トライの量産も、チームメイトとの細かい“あうんの呼吸”がわかってきたからこそ、というのだ。
 今季達成可能な最高到達点は9位。
 その座を目指すグリーンロケッツは、8日の東芝ブレイブルーパスとの決戦を迎える。
 ヒギンボッサムが言う。
「もちろん、来週もトライを取れればと思う。でも、それ以上に、サポーターの声援が大きな励みになっている。秩父宮でもそうだったけれども、これからも大きな声援を送ってもらえれば、と願っています!」
 シーズンの深まりとともに熟成したベテランの味わいが、次週も勝利の美酒を運んでくるか。
 
(取材・文:永田洋光)
 

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