圧勝のなかに覗いた課題を糧に、グリーンロケッツ、順位決定戦に向けて歩み出す!

info_category1.gif2018/11/26



 今季から新設されたトップリーグカップも、この日野レッドドルフィンズ戦が、グループステージの最終戦だ。
 グリーンロケッツは、初戦でパナソニックワイルドナイツと取りつ取られつのシーソーゲームを繰り広げて31-38と惜敗。先週は、日本代表組を除いてほぼベストのメンバーを組んできたキヤノンイーグルスを前半から圧倒。40分間のほとんどをアタックに費やしながら、決定的なチャンスをトライに結びつけることができず、7-17と敗れた。
 その結果、日野戦の勝敗にかかわらずプールBの3位以下が決定したが、この試合は、それよりももっと大切な意味があった。
 12月1日から始まるトップリーグ総合順位決定トーナメントに向けた準備だ。
 グリーンロケッツは1日11時30分から秩父宮ラグビー場で、ホワイトカンファレンス8位のコカ・コーラレッドスパークスとの対戦を控えている。そして、この試合は、敗れればその時点でトップリーグ13位以下が確定し、入替戦回りが決まる、「どんな試合よりも怖い」(森田洋介・共同キャプテン)試合だ。
 それを見据えたグリーンロケッツは、カップ戦に入ってから初めてベストメンバーを組んだ。レギュラーシーズンで活躍したメンバーを起用し、1日に向けた最終調整を行なったのだ。
 対する日野は、前週のパナソニック戦に順位決定トーナメントを見据えたメンバーを揃え、後半30分まで21-20とリードする戦いを見せた。最終的にパナソニックに逆転されたが、そこでトーナメントに向けた準備を終え、今週のグリーンロケッツ戦では前週のメンバーを休養させた。
「大切な試合の1週間前にベストメンバーを組んで戦い余勢を駆って臨むのか、2週間前にベストメンバーで戦って1週間の休養を与えるか。それはヘッドコーチ(HC)の考え方次第でしょう」
 そう話したのは日野の細谷直監督だ。
 結果として、グリーンロケッツはベストの布陣で、若手を多く起用した日野と対戦することになった。
 そして――グリーンロケッツのトライラッシュが始まったのだ。



 最初に力の差を見せつけたのはスクラムだった。
 日野がラインアウトでミスを犯して組まれたファーストスクラムで、グリーンロケッツはボールをキープしながら前方に力強く押し込む。そこから連続攻撃を仕掛け、最後はNO8スコット・ヒギンボッサムが大きく突破。22メートルライン付近からポスト真下まで一気に駆け抜けて、4分48秒に先制トライを記録した。
 CTB森田がコンバージョンを決めて7-0。
 しかし、グリーンロケッツにとって、この試合最大の収穫は、2つめのトライが生まれる21分まで15分間、まったくトライを奪えなかったことだ。「行ける!」という手応えにプレーが雑になり、ミスを連発。一発勝負に臨む直前に、貴重な教訓を得たのだ。
 ゲームキャプテンを務めた、亀井亮依・共同キャプテンが言う。
「相手のメンバーに関係なく、自分たちが準備してきたプレーをしっかり出すことが今日の目的でした。カップ戦に入ってから、パナソニック、キヤノンに競り合いながら勝てなかったなかで、今日白星をとれたことはいいきっかけになると思います。ただ、試合の序盤に、スコアを重ねながらも、相手にチャンスを与えてしまった部分は次への課題です」
 同じことを森田も指摘した。
「前半は、余裕がある分、フィフティ/フィフティのパスが多かったですね。チームのなかでやらないように言っているのですが、相手の圧力が弱まると、ついついやってしまう。でも、チームとしてフィフティ/フィフティでつなぐような練習はやっていないので、対応ができなくなる。それがミスにつながった。しっかりボールをキープしてアタックを続ければ、リズムがかみ合って、得点につながるのが、今季のグリーンロケッツのラグビーですから」
 チャンスを作り出しながら、ミスでトライを逸するとゲームがおかしくなるのは、先週のキヤノン戦で経験済み。だからこそ、チャンスを確実にものにするマインドセットが大切だと、2人のキャプテンは言うのだ。



 グリーンロケッツは、20分に日野のゴール前に攻め込み、ラックからPR瀧澤直がボールを持ちだして飛び込むが、トライはみとめられずに5メートルスクラムに。
 このスクラムからヒギンボッサム→SH中嶋大希と8→9のプレーを仕掛け、そこに森田が走り込んで21分にトライを追加。逸機の連鎖にひとまず終止符を打った。
 25分には、ベテランWTB釜池真道がカウンターアタックから大きく抜け出してチャンスを作り、サポートしたSOスティーブン・ドナルドがトライ。
 いずれも森田がコンバージョンを決めて21-0とリードした。
 ところが、そこからまた得点できない時間帯に後戻りする。
 29分には日野のゴールラインまであと1メートルと迫るが、そこで強引にトライを奪いに行ってボールを落とし、日野の逆襲を食らう。
 このピンチに駆け戻ったLO廣澤拓が、危険なプレーでイエローカードをもらい、10分間の一時的退場となる。
 局面が一気に変わり、グリーンロケッツは、14人でゴールラインを背負って戦うピンチに追い込まれたのだ。
 ここで奮起したのがFWだった。
 8人で組む日野に対してスクラムで一歩も引かず、防御の基盤を揺るがせなかったのだ。
 亀井キャプテンが言う。
「相手をノートライに抑えることを意識したわけではありませんが、1つひとつの局面に集中してディフェンスできたと思います。特に、シンビンで一人少なくなったところで、いいスクラムを組めたところが、FWとしては良かったですね」
 スクラムが安定したことで、バックスは相手の動きに集中することができた。それが、35分にFB吉廣広征が、相手を真正面で受け止めてきっちり倒したタックルに結びつく。そして、ラックで日野のペナルティを誘い、ピンチを脱出した。
 冷静さを取り戻したグリーンロケッツは、スクラムからCTBマリティノ・ネマニが突破。そこからアタックを継続してヒギンボッサムがトライを挙げ、26-0でハーフタイムを迎えた。



 後半は、さらに一方的な展開になった。
 ハーフタイムにピーター・ラッセルHCからフィフティ/フィフティでボールをつなごうとするプレーについて使わないように指示があり、アタックの精度が増す。
 3分に釜池のカウンターアタックから攻め込み、バックスできれいなクロスパスが決まって中嶋がトライを挙げると、ヒギンボッサムの連続トライも含めて7トライを奪い、スコアを73点まで積み上げた。
 けれども、それで安心したのか、終了間際にはまた日野に攻め込まれ、ゴールラインを背負う時間帯を強いられた。
 亀井キャプテンが言う。
「前半に、日野に攻め込まれたときにしっかり耐えきれず、シンビンを出してしまったところは反省点です。後半の最後も、息が上がってきつくなったところで精度を欠いて、日野に反撃のチャンスを与えてしまった。身体がきつい状態のときに、プレーの精度が求められていると思います。その意味では、今日の試合は、フィットネスの部分でもいい経験になりました」
 1日のコカ・コーラ戦に向けていい形で勝利を挙げたグリーンロケッツだが、ラッセルHCはこう気を引き締める。
「コカ・コーラ戦に向けて、レギュラーシーズンを戦ってきたメンバーを中心にコンビネーションを練り、いい準備をすることが今日の目的でした。先週、キヤノンを相手にボールを支配しながら得点を取れずに勝てなかった経験を、今日の試合に活かすことができた。それも、コカ・コーラ戦に向けての準備になるでしょう。今季のグリーンロケッツは、トップ8には入れませんでしたが、順位決定戦では、私たちにトップ8の力があることを証明したい。そのための準備をして、コカ・コーラ戦に臨みたいと思います」
 森田キャプテンも言う。
「コカ・コーラはグリーンロケッツを食おうと思って必死の思いでくる。今日みたいな試合には絶対にならないでしょう」
 11月の日本代表活動期間に設けられた新しい大会で、1勝2敗に終わったものの、若手の力を試し、それなりの収穫を得たグリーンロケッツ。
いよいよ来週から、トップリーグの順位がかかった大一番のトーナメントに臨む!






「本当に久しぶりです。今季は初めて」
 釜池真道が、試合後にそう言って笑った。
 今季で入社10年目。CTBにWTBに、とユーティリティな働きを求められ、長くグリーンロケッツで先発を務めた。先月23日には、32回目の誕生日を迎えている。
 昨季までトップリーグで82試合に出場。27トライを挙げた。
 が、今季は出場数が大きく減った。
 レギュラーシーズンでは、宗像サニックスブルース戦で前半28分から52分間、サントリーサンゴリアス戦で後半28分から12分間、神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦で同25分から15分間と、合計79分間――つまり、試合出場時間がまだ1試合にも満たないのだ。
 先発は、本人が言うように、この日野戦が初めてだった。
「夏合宿で肉離れをやって、その影響で出遅れました」というのがその理由。
 だから、久しぶりに11番を背負った日野戦は、存分に走り回った。
 トライこそ記録しなかったが、前半25分にはカウンターアタックから快走してスティーブン・ドナルドのトライをアシスト。後半立ち上がりにも、中嶋大希にトライをお膳立てした。
「ただ、確かに出遅れましたが、自分にできることはしっかり準備してきました。だから、いつでも試合に出られるとアピールしていました」
 活躍は、当然だったのだ。
 一方で今季は、ベテランとしてどうふるまうか――意識を高く保つこともベテランの役割と考えて、今季はチームのなかに目を配ってきた。
「ベテランにできることと、ベテランにしかできないことを意識しました。僕は選手生活が長いから、メンバーに選ばれたときの嬉しさも、選ばれなかったときの悔しさもよくわかる。だから、ノンメンバーの選手たちが腐らないように引っ張るのもベテランの仕事だと思っていました。今季はそこにフォーカスしていたので、自分がメンバーに入る入らないで一喜一憂することはなかったし、また一喜一憂しないように自分に言い聞かせながらやっていました。今までベテランの方々がやってきたことを、今度は僕がやらなアカンと考えていたのです」
 この間、対戦相手のCTB陣に外国人選手が増加。身長175センチ、体重88キロの釜池が、このポジションで身体を張るのが難しい状況になってきた。
「CTBとしてプレーするためには、僕のサイズでは厳しくなってきている。ピーター(・ラッセルHC)さんから“もっと体重を増やせ”と言われますが、32歳になって90キロまで増やすのはちょっと厳しい。だから、WTBというポジションで、サポートとリアクションに集中してチャンスを作り出すのが、今は合っているのかもしれません」
 つまり、日野戦で見せたチャンスメイクが、釜池の“生きる道”なのだ。
 次週からは、チームの命運をかけた総合順位決定トーナメントが開幕する。
 釜池にとっても、これまでの準備の成果を発揮する機会が巡ってきた。
「来週はとても大事な試合ですが、これだけ準備してきたから大丈夫と思えるような形で臨みたい。変に意識せず、いつも通りに準備をして試合に臨むことが大切でしょう。その点は、経験もあるので、チームにしっかりと落とし込んでいきたい。そして、今まで試合に出られなかった分、たまったエナジーをチームに浸透させられるよう、どんどん自分から発信するつもりです」
 果たしてチームの順位を1つでも高く上げることに貢献できるか。
 入社10年目のシーズン終盤に、釜池の見せ場が回ってきた。
 
(取材・文:永田洋光)
 
 

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