「ちょっとした隙」で精度を欠いたグリーンロケッツ、キヤノンに敗れる!

info_category1.gif2018/11/19

 若手とベテランを混在させたメンバーで新設されたトップリーグカップを戦い、12月に始まるトップリーグ順位決定トーナメントに向けたベストの布陣を模索する――NECグリーンロケッツは、そんな目論みでプール戦の第2戦、キヤノンイーグルスとの対戦に臨んだ。
 目論みは、実を結びかけた。
 前半は立ち上がりからキヤノンを圧倒。
 前節と同様に躍動感溢れるアタックで、何度もトライチャンスを作り出した。
 しかし、スコアボードはゼロを表示したまま動かない。
 募る焦りとフラストレーション。
 攻めても攻めてもトライを奪えないもどかしさに、少しずつチームの歯車が狂っていく。
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)は、こう試合を振り返る。
「ゲームプランは、しっかりコンタクトするダイレクトプレーからショートパスを使うシンプルなものでしたが、迷いからプレーが複雑になってしまった。ちょっとした判断の誤りがパニックをひき起こし、パニックがミスを誘発したと言えるでしょう」
 歯がゆさに終始したゲームの実相はどうだったのか。
 試合は、キヤノンのキックオフから始まった。



 最初の逸機は5分50秒だった。
 立ち上がりにキヤノンのアタックをしのいだグリーンロケッツは、SH山田啓介のキックからキヤノン陣に攻め込み、フェイズを重ねたところで右タッチライン際をFL権丈太郎が大きく前進。キヤノンの反則を誘うと、ペナルティキックを得てラインアウトを選択。得意のモールからトライを狙う。
 このモールはつぶれて前進を阻まれたが、そこからボールを継続し、FWが密集サイドを攻めて9フェイズ目にLOサム・ジェフリーズが長い左手を伸ばしてトライを狙う。しかし、ボールは、地面につく寸前に手からこぼれ落ちてノックオン。
 この間にキヤノンにオフサイドがあり、アドバンテージが出ていたためにグリーンロケッツはゴールポスト左の絶好の位置でペナルティキックを得た。
 PGを狙えば3点が確実に見込める状況だったが、亀井亮依キャプテンはアタックを選択。SO亀山宏大がボールをタッチラインに蹴り出してラインアウトにする。ふたたびモールからトライを狙いに行くのだ。が、このモールもキヤノンに守られて押し込むことができず、FWがボールを持ち出して愚直にゴールライン目がけて前進する。
 そして、4つフェイズを重ねたところで今度はバックスが仕掛けた。
 CTBデレク・カーペンターをオトリに走らせ、その後ろをCTB山崎翔が右に走る。
 亀山のパスがきれいに山崎に通り、見事なトライが生まれた――と思った瞬間だった。
 レフェリーの手が、トライを示す真上ではなく、キヤノンの側に斜めに上がったのだ。
 判定は、トライではなく、カーペンターがタックルに入ろうとしたディフェンスを妨害したというオブストラクションだった。
 試合開始から10分も経過しないうちに立て続けに逃したトライチャンス。
 これが、ゲームの行方に大きな影響を及ぼした。
 しばらく膠着状態が続いた20分過ぎには、FB吉廣広征のカウンターアタックから右へ展開。カーペンター→HO川村慎→WTB後藤輝也と渡り大きくゲインする。
 後藤に対するハイタックルでペナルティを得ると、ここでもラインアウトを選択。
 今度はモールではなく、準備してきたプレーを仕掛けた。
 ジャンプする田中が後方に下がり、できた隙間にNO8ラトゥイラ・レプハがトップスピードで走り込み、一気にトライを狙ったのだ。
 ラトゥイラはトライ寸前でタックルされたが、グリーンロケッツはアタックを継続。ラックサイドからPR瀧澤直が持ち出し、一度タックルされると、ボールを地面に置いてからインゴールに飛び込んだ。
 しかし、レフェリーの判断は、瀧澤が完全にボールを手放していないとして、ノット・リリース・ザ・ボールの反則だった。
 32分には、キヤノンのゴールまであと8メートルと迫った地点でペナルティキックをスクラムに選択し、今度はラトゥイラがサイドアタック。
 さらにFWがしつこくしつこく密集サイドを攻め、9つラックを連取したところからバックスで仕掛けようと亀山にパスを送る。しかし、亀山がボールをこぼしてチャンスを活かせない。
 結局、グリーンロケッツは決定機を4回作りながらそれを活かせず、前半は双方無得点で終了した。



 前半の逸機を、亀井キャプテンはこう振り返る。
「キヤノンがディフェンスのときにブレイクダウンでプレッシャーをかけてきた。そこで少し隙を見せて、SHに圧力がかかってしまった。本来ならゴールラインを背負っているキヤノンの方がプレッシャーを感じているはずなのに、そこで攻めている自分たちがプレッシャーを受けてしまい、ミスする原因を自分たちで作ってしまいました」
松尾健バックスコーチは、「もっとシンプルなプレーをしても良かったのではないか」と課題を指摘する。
「少し複雑なプレーを試みて上手くいかなかったことで、逆にキヤノンがディフェンスに自信を持った部分があったと思います。前半の勢いがある時間帯にスコアしなければいけなかったのですが、前半の若いハーフ団は、どうやってトライをするかという具体的なイメージが、まだ明確になっていないように感じました。FW一辺倒だとFWもきついし、相手も守りやすいのですが、そういうときにどうやってトライに結びつけるか。コーチとしても、練習中からどうトライをとるかというイメージを持てるように、もう少し準備を重ねられるようにしないといけないのかもしれませんね」
 この代償を、グリーンロケッツは後半に支払わされた。
 3分、8分と、キヤノンWTB三島藍伴に連続でトライを奪われたのだ。
 それも、起点はどちらも自分たちが持ち込んだボールを奪われて、ガラ空きとなった背後のスペースを攻め落とされたものだった。
 亀井キャプテンが言う。
「キヤノンに奪われた2つのトライは、外のブレイクダウンで相手にボールがこぼれて、そこから崩された。象徴的な取られ方でした」
 原因は、ブレイクダウンでの「ちょっとした隙」だという。
「キヤノンにラックでプレッシャーをかけられたときに、身体が横を向いたり、後ろを向いてしまい、ボールをプロテクトできなかった。本当にちょっとした隙なのですが、そこがこの結果につながりました」



 もう1つ、試合の行方を大きく左右したのが、前半に得点を挙げられなかったことだった。
 ゴール前でPGを狙うチャンスがあったので、そこで3点を刻み、スコアで優位に立ってからトライにこだわっても良かったが、その辺りの判断について亀井キャプテンはこう話す。
「確かに、前半に3点でもスコアしていれば、というのが今日の課題であり、反省です。
今日は若手とベテランの混合メンバーでしたが、チャンスを活かすためのコミュニケーションが不足していたのは事実でした。12月のトーナメントを見据えれば、練習のなかから、経験の少ない若手がベテランとしっかりコミュニケーションをとって、質を上げていく必要があると思います。
 ただ、ではトライを狙いに行った判断がミスだったのかというと……結果的に自分たちでトライを奪えずに“判断ミス”にしてしまった部分の方が大きい。判断を正しいものにするための、プレーの精度が欠けていたのだと思います」
 つまり、ブレイクダウンで圧力を受け、ボールを奪われたり、SHの球出しが遅れるような現象が、立ち上がりからトライを取りに行こうという「判断」を支えられなかったのだ。
 試合はその後、キヤノンが1トライを追加。
 グリーンロケッツも、SHに中嶋大希、SOに森田洋介、CTBにマリティノ・ネマニと、レギュラーシーズンを戦ったメンバーを投入して反撃に出たが、前半から続いた悪い流れを変えることができず、後半の中盤に得点を挙げて追い上げることができなかった。
 終了直前に中嶋がトライを返し、スコアは7-17で終わったが、勝負が動いている時間帯に得点を挙げられなかったために、無得点に終わったかのような印象さえ残った。
 18日にパナソニックワイルドナイツが日野レッドドルフィンズを30-21と破ったため、グリーンロケッツは、次週の日野戦(24日 熊谷ラグビー場 11時30分キックオフ)に勝っても3位どまりとなる。
 前半にいいアタックを見せてチャンスを作りながら、それを“フィニッシュ”に持っていけなかったこのゲームの反省を日野戦に結びつけられるか――12月の順位決定戦を前に、グリーンロケッツの修正力が問われている。






 音楽が鳴っての選手入場。
 入社2年目の田中章司にとって、初めて先発として経験したセレモニーだった。
 けれども、そこでちょっとしたハプニングが起きた。
 陸上競技場のトラックとフィールドを分ける段差につまずいてしまったのだ。
 幸い少しバランスを崩しただけで大事には至らなかったが、送り出したコーチ陣は少しヒヤッとしたかもしれない。
「前の日に眠れないというようなことはありませんでしたが、試合前になってちょっと緊張しました。ファーストジャージーを着て先発することを目標に頑張ってきましたが、自分の予想より少し早かったという思いもありました……」
 けれども、緊張はすぐに吹き飛んだ。
 試合開始のキックオフからできたラック。そこからパスアウトされたボールを受けて、いきなりキヤノンの防御に挑みかかる場面が訪れたのだ。
 ここできちんと相手に当たり、しかもグイッと押し込んで前に出られたことで“先発デビュー”はスムースに動き出す。
 それ以後、ボールキャリーに、ラインアウトに、と細身の長身が躍動した。
「段差には全然気がつかなくて……(笑)。ただ、今日はボールを多くもらえて、そこで相手に低く当たれたので、キャリーはよくできたと思います。
 それから、今日はラインアウトでサインのコールを任されたので、頑張ろうと思っていました。だから、ラインアウトが安定して良かった。もちろん、ジャンパーも、リフターも、スロワーも、全員がやることをやったからこそ、いいラインアウトになったのですが」
 レギュラーシーズンでリザーブに起用され、トップリーグの舞台はすでに経験済みだが、初めて任されたラインアウトの“司令塔”役という大任を無事に果たした。ピーター・ラッセルHCも、「エクセレント!」という言葉を使ってラインアウトを高く評価した。それが最大の収穫だった。
「今日は必死で、プレーを楽しむような余裕はほとんどありませんでした。記憶に残ったプレーというのも……今日はミスしたプレーの方を覚えています。特に最初のタックルで、パスした相手を見てしまってミスをしたのが記憶に残っています」
 ミスを気にするのは、12月から始まる大事な順位決定戦に、先発として出場することを目指しているからだ。
 だから、こう言って気を引き締める。
「今日はチャンスをもらえてありがたかったのですが、12月のトーナメントに出られるように、まずはディフェンスのミスを修正したいですね。それから、またラインアウトを任せてもらえるように、準備を常に心がけていきたい。僕は、落ちることを心配する必要がないので、これからは上に上がっていくことだけを目指して頑張るつもりです」
 2年目のシーズンを、大きな飛躍につなげられるか――グリーンロケッツの新しい“ラインアウト・マスター”に注目だ。

(取材・文:永田洋光)
 

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