“善戦健闘”のなかに見えた課題と収穫。グリーンロケッツ、パナソニックに7点差で惜敗!

info_category1.gif2018/11/12

 今季から新設されたトップリーグカップは、日本代表活動期間に代表選手を除くメンバーで各チームが4つのプールに分かれて総当たりで順位を決め、年明けの1月にそれぞれの順位同士で決定戦が行なわれる。
 パナソニックワイルドナイツ、キヤノンイーグルス、日野レッドドルフィンズとともにプールBに属するNECグリーンロケッツは、初戦でパナソニックと対戦した。
 カギとなったのは、連続得点だった。
 一度の得点機会で最大7点を獲得できるラグビーでは、得点をいかに連続して相手を点数で引き離すかが勝利への近道。パナソニック戦は、交互にトライを奪い合う展開で推移したが、唯一流れが変わり、パナソニックが連続トライを重ねたのは後半21分と23分のこと。
 これが、最終的に越えられなかった7点差となって勝負がついた。
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)が言う。
「パナソニックにいいプレッシャーをかけて得点を挙げながら、直後に得点を許した。得点を取った直後に失点しないことがいかに大切か、教訓となった試合だった」
 トライ数はどちらも5個ずつ。
 しかし、グリーンロケッツは、試合を通じてトライを先行させることができず、常に「追う」展開をしいられた。それも、善戦健闘を勝利へと変換できなかったもう1つの要因だった。



 前半から押し気味にゲームを進めたのはグリーンロケッツだった。
 立ち上がりにパナソニックに攻め込まれるピンチを迎えたが、ゴール前で相手のモール攻撃を耐えて反撃に転じ、12分にはラインアウトからモールを押し込んでPR土井貴弘が突進。そこからFWが密集サイドを執拗に攻めた。8フェイズを重ねてゴールポスト正面に迫ると、HO佐藤耀がラックの真ん真ん中を割って突進。そのままインゴールに飛び込んだかに見えたが、トライは認められず、ゴール前でのスクラムとなる。
 ファースト・スクラムから低い姿勢でいいスクラムを組んでいたグリーンロケッツに対して、ここでパナソニックがアーリー・エンゲージの反則を犯し、もう一度スクラムを選択。今度は、右へNO8ラトゥイラ・レプハからSH山田啓介とつなぐ8→9のプレーで突破を図る。
 さらにラックを連取して左に展開。
 CTBデレク・カーペンターが突進したところに、サポートしたSO亀山宏大が鋭く切れ込むが、またもやトライには届かず、再度グリーンロケッツの5メートルスクラムとなった。
 しかし、このスクラムをいい形で押し込みながらもボールをコントロールできず、外側にこぼれたところをパナソニックに拾われてチャンスを逸した。
 パナソニックは、直後にカウンターアタックからボールを継続。FLツポウ・テビタが個人の力で防御を突破して、21分にトライを挙げ、コンバージョンも決まって7点を先制した。
 グリーンロケッツは、リスタートのキックオフから攻め込み、25分にラインアウトからモールを一気に押し込んで佐藤がトライを返す。しかし、コンバージョンが外れてスコアは5-7。
 ここから取りつ取られつのシーソーゲームとなったが、前半10分過ぎからずっと攻勢を続けながらもチャンスを活かせなかったツケが、この2点差に凝縮されていた。
 ただ、パナソニックが32分にトライを追加し、スコアは5-14と広がったが、前半の残り時間にそれ以上の失点を許さなかったことが、後半の健闘を呼ぶ要因となった。



 後半は、立ち上がりから若手とベテランを巧みに配したグリーンロケッツの良さが発揮された。
 キックオフをLOサム・ジェフリーズがキャッチしたところにラトゥイラが寄ってモールを形成。
 パナソニックが、グリーンロケッツのバックスを警戒してモールに入ってこないと見てとるや、これを押し込みながら前進し、そこからラトゥイラが突破。
 ラックから出たボールを亀山→CTB山崎翔と動かし、FB横山陽介をオトリにしてカーペンターからWTB宮島裕之へとつなぐ。さらにハーフウェイラインを越えてボールを動かし、10フェイズ目には、佐藤がタックラーに正面から突進。当たった瞬間にパスを浮かしてPR前島利明が突破。22メートルラインを越えてラックに持ち込む。
 そこでパナソニックがペナルティを犯すと、グリーンロケッツはラインアウトを選択。モールを一気に押し込むが、トライ寸前で阻止された。
 続くスクラムから、今度はラトゥイラが単独でサイドアタック。
 そのままトライラインを突破し、亀山のコンバージョンも決まって12-14とした。
 これでリズムをつかんだグリーンロケッツは、9分にまたもモールを一気に押し込み、アドバンテージを得ながらアタックを継続する。
 しかし、その過程でジェフリーズがラックで相手選手の首を持って押しのけたことがTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)で判明。アドバンテージが取り消され、しかも、ジェフリーズがイエローカードで10分間のシンビンとなった。
 熊谷皇紀コーチは、試合後にこの場面をポイントに挙げた。
「これまでの2週間、スクラムやラインアウトの練習に時間をかけてきた。そこで結果が出たのは良かったのですが、モールを15メートルくらい押し込みながら、こちらにシンビンが出た。ああいうところで取り切れないのが、パナソニックとの差なのかもしれません。確かに最後は7点差に追い上げてボーナスポイントを獲得できましたが、それでも負けは負け。追いつくにはまだ距離があると再認識できたところは、ポジティブな部分ではありますが……」
 逆転の絶好のチャンスを逸したことで焦りが出たのか、12分には、カウンターアタックを仕掛けたところでノックオンが起こり、そのボールを拾われてパナソニックにトライを奪われる。
 15分には、勢いを取り戻したパナソニックにキックオフリターンからゴール前へと攻め込まれたが、独走したツポウに対して亀山がよく食い下がり、全員が防御に戻る時間を稼ぐ。そして、逆にパナソニックがノックオンを犯すと、それを拾った山田が卓越したスピードで一気に98メートルを独走。トライを返して19-21と2点差に戻す。



 冒頭に述べたようにパナソニックに連続トライを奪われたのは、この状況からだった。
 それでも、グリーンロケッツは気持ちを落とすことなく反撃。28分には、パナソニックのゴール前でペナルティキックを得る。点差は16点。残り時間は12分だ。
 この場面を、亀井亮依キャプテンは自分自身の「課題」に挙げた。
「結果的にスクラムを選択したのですが、残り時間を考えればラインアウトからのモールという選択肢もあったかな、と。“スクラムで行こう”というFWの意志もあったし、初めてファーストジャージーを着たPR足立匠が入ったので、このスクラムを押し切れば足立の自信にもなる……と迷いました。どうスコアに結びつけるかという部分で、上手くリーダーシップを発揮できなかった」
 熊谷コーチも同じことを指摘する。
「16点差があったので、(トライまで時間のかかる)スクラムではなくラインアウトを選択して早く得点したかった。ラインアウトは安定していたし、相手もモールを嫌がっていましたからね。点差と時間、相手に対する自分たちの優位性を考えて、選択をすることが大事なのです」
 レギュラーシーズンより大幅に若返ったチームで、相手も若手主体とはいえ、パナソニックを追い詰めた――だからこそ、そこに生じたわずかな差が、今季後半への課題となるのだ。
 この場面は、途中出場のWTB亀山雄大がトライを挙げ、終了直前にもやはり途中出場のHO秋山哲平がトライを挙げ、最終的に31-38というスコアになったが、勝ちきれなかった悔しさを次の勝利につなげてこそ、健闘は初めて大きな意味を持つ。
「12月の順位決定戦に向けていい準備となった」と話すのは、ラッセルHCだ。
 確かに新設のトップリーグカップは、チームの底上げを図る絶好の機会。
 同時に、この日がそうだったように、ミスを恐れず大胆にアタックを仕掛けることで、レギュラーシーズンでは見られなかったダイナミズムがチームに生まれる可能性も十分に感じさせた。
 こうした希望の芽を、グリーンロケッツはどこまで大きく膨らませられるか。
 次週18日は宮崎に飛んで、キヤノンと対戦する。






 トップリーグカップ初戦、パナソニック ワイルドナイツ戦をピーター・ラッセルHCはこう評した。
「若手の周りにベテランを配して、過去3か月ゲームの機会を持てなかった選手たちがゲーム経験を積めた。とても良いゲーム。12月の順位決定戦に向けていい準備となった」
 起用された若手も高いモチベーションで試合に臨み、ミスを恐れずに戦った。
 なかでもラインアウトのマイボール獲得率100%を記録し、スクラムでも終始パナソニックを押し込む原動力となった、入社3年目のHO佐藤耀は、与えられたチャンスに持てる力をいかんなく発揮した。
 “レギュラー組”に臼井陽亮、川村慎と今も元気なベテランが控えている分、今季はこの試合が初出場だが、グリーンロケッツの最初のトライも記録。見事に結果を出したのだ。
 佐藤が言う。
「なかなか試合に出る機会がないなかでチャンスを与えられたので、頑張ろうと思って臨みました。まずアピールしようと思ったのが、セットプレーの安定です。それから、FWをオーガナイズするというHOとしての役割を果たすこと。そして、3番目に自分の得意なアタックを見せようと思っていました」
 アピールを求められると、とかく“自分ファースト”になりがちだが、佐藤はあえてセットプレーの安定を一番の目標に据え、“チームファースト”の姿勢を貫いた。
 背番号2を背負うHOというポジションを「チームが勝つためにまずセットプレーの安定を考えなければならないポジション」だととらえているからだ。
 背景には、12月の順位決定戦に2番を背負って出場したいという、強い思いもある。
「そのためにもセットプレーが安定しなければ信頼されないでしょう。あとは、臼井さんや川村さんにない部分――たとえばスピードやアタックをアピールしたい。そうそう、あとはアグレッシブな姿勢ですね。2人とも非常にアグレッシブなので(笑)」
 試合のなかではアグレッシブな姿勢も十分に伝わった。
 後半立ち上がりに激しいコンタクトで相手を弾き飛ばしながら同期のPR前島利明にパスした場面では、スタンドの“レギュラー組”から「おおっ!」という感嘆の声が挙がったほどだ。
 それも、フロントローにしてはしっかりと絞り込んだ“スリムな”肉体故かもしれない。
「意識したわけではないのですが、練習を通して自然に身体が絞れて動きは悪くないです。ただ、体重が95キロに向かって下降していて……チームスタッフからは、98キロか99キロ辺りまで増やせ! と言われています(笑)。自分としては、このままバルクアップできれば、と思っているのですが」
 絞り込んだ身体に、さらに3キロの筋肉を増やすのは至難の業だが、それでもチャレンジすることが「2番」へ通じる道となる。
 試合に臨む際に「HOとしていつもやってきたことをやるだけ」と気負わずに臨む佐藤が、12月のレギュラー争いに名乗りを上げた。
 
(取材・文:永田洋光)
 

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