グリーンロケッツ、日野から6トライの快勝で4位に浮上! 次節はベスト4をかけて神戸製鋼に挑む!

info_category1.gif2018/10/15



 勝負の最初の分岐点は試合開始直後に訪れた。
 3分。
 NECグリーンロケッツが2回目のラインアウトを確保し、右へ展開。バックスラインの真ん中にポジショニングしたNO8ジョージ・リサレがトップスピードでタテに切れ込む。
 日野レッドドルフィンズは、NO8ニリ・ラトゥが真正面に立って待ち構え、低く鋭いタックルを見舞う。
 かつてグリーンロケッツでもキャプテンを務めた、あの「ニリ」だ。
 激しいコンタクトの直後、麻生彰久レフェリーが短く笛を吹いて試合を止めた。
 タックルに入ったラトゥが動かないのだ。
 担架がピッチに運び込まれ、リサレが心配そうにラトゥの様子をのぞき込む。
 両チームが円陣を組み、突然訪れたインターバルに戦い方を確認し合う。
 日野の円陣では「ニリのために体を張ろう」という言葉が飛び交ったと、キャプテンの村田毅は振り返った。
 しかし、ゲーム再開のスクラムから主導権を握ったのはグリーンロケッツだった。
 スクラムからリサレが持ち出し、SH中嶋大希→FB吉廣広征と、右へ8→9のプレーを仕掛けて大きくゲイン。日野陣内に攻め込み、分厚いアタックを繰り出し続けた。
 フェイズを10重ねたところで日野が反則を犯すと、グリーンロケッツはボールを蹴り出してラインアウトからモールでトライを狙う。このモールは押し戻されたが、そのままアタックを継続。さらに日野のオフサイドを誘って、攻め続ける。
 8分には反則を繰り返したとして日野PR村上玲央がシンビンとなり、10分間の一時的退場に。そして、グリーンロケッツはスクラムを選択。7人になった日野FWを押し込んでのスクラムトライを狙う。が、押し込みながらもボールがこぼれ出てスクラムトライには至らない。
 日野がふたたびペナルティを犯して再度スクラムを選択すると、今度はリサレがサイドアタック。そこからFWでラックを連取して、右に展開。SOスティーブン・ドナルドが、右から走り込んだCTBマリティノ・ネマニにパスを通し、ネマニがそのまま力で突破して先制トライを挙げた。
 時計は13分。
 CTB森田洋介のコンバージョンで、グリーンロケッツが7-0とリード。
 けれども、まだゲームの流れが決まったわけではなかった。



 続くキックオフからのアタックで、ドナルドが蹴り上げたハイパントを追走したリサレが、危険なタックルでシンビンとなり、今度は日野が息を吹き返す。
 そして、17分にトライを奪われ、スコアは7-7の同点に。
 その後もまた日野が攻め込んで、グリーンロケッツには嫌な流れとなった。
 この展開に危機感を抱いたのは、第3節宗像サニックスブルース戦で負傷し、この試合でようやく先発に戻った、吉廣だった。
「同点で自陣に押し込まれていたので、あそこで相手に居座られて得点を許したら、嫌な流れになりかねなかった。最初のトライも、ずっと攻め込んでいながら取るまでに少し時間がかかりましたし、開幕戦と同じようだな、と思っていました」
 「開幕戦」というのは、8-9と悔しい思いをした豊田自動織機シャトルズ戦のこと。確かにあの試合も、常に主導権を握りながら決定的な得点機を何度も逃し、最後はDGに泣いた。
 攻め込まれたグリーンロケッツは、それでも自陣22メートルライン付近右サイドのラックで相手ボールを奪う。
 これが勝負の2つ目の分岐点となった。
 ターンオーバーしたグリーンロケッツは、自陣深くからボールを左に展開する。
 ふたたび吉廣が振り返る。
「ターンオーバーしたときに、僕のトイメンにはニリから替わったNO8がいて、その外側には外国人選手が1人いるだけだった。だから、トイメンをずらせば抜けると思って、ボールを呼んだ」
 果たして吉廣がマークをずらして左に待つWTB飯山竜太にボールを託すと、飯山がタッチライン沿いを一気にハーフウェイライン付近まで駆け上がる。
 パスした吉廣は、「ピーター(・ラッセル ヘッドコーチ)さんから“WTBに渡したらリターンのボールをもらえ”と言われていたので」忠実に内側をサポート。
 飯山からリターンパスを受けると、さらに内側をサポートしてきたFL亀井亮依にパスを放る。「個人としてボールタッチを増やそうと思っていたので、得点に絡めて良かった」と言う亀井は、バランスを崩しながらもボールを捕って、トップスピードで走り込んできた中嶋にパス。
 中嶋がボールを持ったときには、もう前にディフェンスはいなかった。
 自陣深くからのアタックをトライに結びつけたことで、ゲームの流れは大きくグリーンロケッツに傾いた。
 31分には、リサレが、日野が持ち込んだラックに働きかけてペナルティを誘い、直後のアタックから、またもやバックスが魅せた。
 ラインアウトから出たボールを受けたドナルドが、外側に開いた森田にパス。森田は、右方向に走りながら左側に走り込んだ飯山にパスを通し、つられたディフェンスがいなくなったスペースを飯山が駆け抜けた。
 2015年のラグビーW杯イングランド大会で、日本代表が南アフリカからトライを奪ったムーブと同じ仕掛け。「確かにドンピシャでハマった」(森田)というプレーできれいに日野の防御ラインを破ったのだ。
 残念ながら、飯山が倒されてからの展開でミスが生じてトライに結びつかなかったが、グリーンロケッツはそのまま日野のゴール前に居座り、36分にPR瀧澤直がトライを挙げて、21-7と大きくリードした。



 後半も、最初のトライを奪うまでやはり13分間を要したが、FLスコット・ヒギンボッサムがバックス並みのパススキルを見せてドナルドのトライを導くと、22分には、森田が勢いよく飛び出す相手防御のギャップをついて抜けだし、ネマニの2本目のトライをお膳立て。
 26分にトライを奪われたものの、33分には相手ボールのスクラムを奪い、途中出場のSH山田啓介と同じく途中出場のWTB松浦康一が見事なパス交換。山田が6トライ目を決めて、今季初のボーナスポイント獲得を決定づけた。
 最終スコアは38-12。
 5ポイントを獲得したグリーンロケッツは、勝ち点を14に伸ばして4位に浮上。次節の神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦(20日 ノエビアスタジアム神戸 13時キックオフ)に、レッドカンファレンス4位の座をかけて臨む。
 ちなみに5位には、前節破ったNTTコミュニケーションズシャイニングアークスがいて、こちらも同じく勝ち点は14(2勝4敗)。
 次節終了後に両者が勝ち点で並んだ場合は、勝ち星の多いグリーンロケッツが4位となるが、NTTコムが勝ち点で上回ればその時点でグリーンロケッツは5位となる。
 つまり、現在カンファレンスの首位を走る神戸製鋼からなんとしても勝ち星が欲しい状況なのだ。
 次節に向けてラッセル ヘッドコーチはこう話す。
「神戸製鋼は今、さまざまなスタッツで高い数値を残して、トップに立っていますが、そういう相手に対して、無理にボールをつなごうとしてミスを犯すようなことがないようにしたい。そのために大切なのはマインドセット。ボールを大切にキープし、フィジカルで負けないような心構えが必要になる。安易なオフロードでターンオーバーされないように心がけていきたい」
 共同キャプテンの1人、森田もこう話す。
「神戸製鋼はディフェンスがしっかりしているので、ただ横にボールを運ぶだけではなく、ネマニとドナルドを上手く使って、相手を下げたい。サントリーの早いアタックを止めたチームですから、ゲインラインをどんどん切っていくイメージを持たないと、なかなかディフェンスを崩せないでしょう。その辺りを工夫しながら1つひとつのプレーの質を高め、常にいろいろなオプションを持っていることが大切になると思います」
 今季初めて勝ちゲームのあとの記者会見に臨んだ亀井も、「前評判の高いチームですが、そこにチャレンジできるのが、トップリーガーとしても、個人としても、すごくいいこと。(レギュラーシーズンは)残り1試合なので、ベストな状態で臨めるようにしたい」と腕をぶす。
 開幕戦でつまずき、苦しみながらも4位に浮上してきたグリーンロケッツ。
 しかし、4位に浮上した今、最終節が今季の目標「ベスト4」を達成できるかどうかがかかる大一番となった!






 頼もしい“大黒柱”が帰ってきた。
 昨季は全試合に出場し、グリーンロケッツFWを地道に下支えしたLO廣澤拓だ。
 今季も春シーズンの廣澤は絶好調。FWの中核として活躍が期待されていた。
 ところが好事魔が多し。
 開幕直前の8月21日に行なわれたサントリーサンゴリアスとのプレシーズンマッチで大ケガを負い、シーズンを棒に振る危機に見舞われた。10年目のベテランは、浮かない表情で開幕戦を迎えたのだった(ケガの部位はヒ・ミ・ツ)。
 廣澤が当時を振り返る。
「ケガした瞬間に今季は無理かなと思いました。ただ、地道にリハビリに取り組むメニューを与えられて、トレーナーといっしょに頑張ろうと決意しました。負傷した直後は精神的にもショックでしたが、焦っても仕方がないし、リハビリを通じて日に日に良くなる感触があったので、治療に集中することができました」
 その間、チームは黒星が先行し、初勝利は第3節になってから。
 その後も黒星が続き、ようやく前節で2勝目。
 そして、復帰した日野戦で3勝目を挙げて4位に浮上したのだ。
「試合に出られずに、もどかしい思いをしたことは確かにありましたが、自分が出るまでみんなが頑張ってくれた。誰が試合に出ても、いいプレーができていると思っていました。ただ、では自分が復帰して、みんなに恩返しをするようなプレーができたかというと、まだまだ。全然走れなかったし、ダメでしたね(苦笑)」
 コンタクトに対する不安もあったが、最初にタックルに入った相手が、そんな不安を吹き飛ばすような存在だった。かつてグリーンロケッツでもキャプテンを務めたニリ・ラトゥだった。
「相手がニリだったので面白かった。エキサイトしたわけではないのですが、タックルした瞬間に、試合に戻った実感が湧きました」
 チームは次節でレギュラーシーズンの大一番、4位の座をかけて神戸製鋼に挑む。
「もちろん、神戸製鋼戦は出たいです。ただ、今季は11月にカップ戦(トップリーグカップ)も行なわれますし、12月には順位決定戦もある。まず11月の試合に出続けて、ゲーム経験を重ねていきたい。復帰したことに一喜一憂せず、地道にプレーを重ねていきたいですね」
 ベテランは、シーズン終盤まで見据えて、チームに貢献することを考えているのだ。
 そして、もう1つ。
 廣澤には今季の個人的な目標もある。「トライをとりたい」というのだ。
「自分がそういうキャラではないのはわかっていますが(笑)、昨季は全試合に出場しながらトライがなかった。だから、今季はチームに貢献できるトライを取れれば、というのが目標です」
 そのトライが、シーズンの帰趨を決める次節に飛び出せば――シーズン後半に活躍するステージは、さらに高くなる!
 
(取材・文:永田洋光)
 

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