グリーンロケッツ、序盤の大量失点が響いてサントリーに敗れる!

info_category1.gif2018/09/25



 前年度王者サントリーサンゴリアスに挑んだNECグリーンロケッツ。
 試合開始のキックオフでレシーブを選んだ目論みは、意図した通りに運んだ。
 FL大和田立が捕球してラックに持ち込み、そこからNO8ジョージ・リサレが、サントリーの防御にくさびを打ち込むようにタテに突進。もう1度ラックを作ると、SOスティーブン・ドナルドが高々とハイパントを蹴り上げた。
 落下点にFB松浦康一とCTBアマナキ・サヴィエティが駆け寄ってボール再獲得を目指す。
 ここまでは事前に準備したプランが円滑に進行した。
 時間にして22秒。
 プランが狂ったのは、そこでボールを再獲得できなかったからだ。
 転々とするボールに駆けつけたFWも加わった争奪戦は、サントリーが懸命にボールを確保。そこからバックスにボールを散らし始めた。
 その後、サントリーがキックを蹴り込み、最後尾に戻っていたドナルドが蹴り返す。
 まだ時間は1分も経っていない。
 しかし、ここから12分間、グリーンロケッツはまったくボールに触れられないまま、サントリーの猛攻にトライラインを4度も明け渡す。
 最初のトライは、ドナルドが蹴り返したボールをカウンターアタックに持ち込まれ、そこから6フェイズ重ねられてSOマット・ギタウに走られた。
 6分には、ラインアウトのサインプレーから前進され、ゴール前のFW戦からLO真壁伸弥に飛び込まれた。
 9分、12分とFB松島幸太朗に連続でトライを奪われる。
 最初のトライと4本目のトライは、一度もプレーが途切れないまま奪われたノーホイッスルトライだった。
 いったいグラウンドでは何が起きていたのか。
「ドナルドが再獲得のキックを蹴るところまでは準備した通りでしたが、再獲得できそうなチャンスがあったにもかかわらず、サントリーにボールをキープされてしまった。そこで流れを失ったことが、連続失点につながりました。前に出て圧力をかるディフェンスを準備していたのに、サントリーのアタックがすごく早かったので迷いが生じた部分もありました。だから、外に(相手の人数が)余ってもいいから、思い切ってどんどん前に出ようと声をかけたのですが……」
 そう唇を噛んだのはキャプテンのCTB森田洋介だ。
 スコアボードに刻まれた数字は0-26。
 12分間で一気にスコアが開く展開に、大敗の2文字が誰の脳裏にも浮かぶ。
 そんな嫌な流れを変えたのは、続くキックオフ直後のリサレのプレーだった。



 ドナルドが蹴り上げたボールを捕球したサントリーLOジョー・ウィーラーを倒すと、そのままボールに働きかけ、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘う。
 この試合で初めてグリーンロケッツに訪れたアタックチャンスだ。
 ドナルドがボールをタッチラインの外に蹴り出して、ゴール前でラインアウト勝負を挑む。
 HO川村慎が投げたボールをキャッチしたのは大和田。そして、すぐにモールを組む。
 ボールは最後尾についたLO細田佳也に送られて、モールがゆっくりと前進する。
 サントリーは、モールごとタッチラインに押し出そうとする。
 けれども、モールの前方部分が右側のタッチライン方向に動いた結果、ボールを持つ細田の前にスペースが生まれた。
 細田は、そのまま体ごと倒れ込んでボールをインゴールに押さえつけた。
 前半15分、4連続失点から立ち直るきっかけとなったトライだった。
 その後、サントリーに1トライ(コンバージョン成功)を加えられ、5-33と28点差まで広げられたが、グリーンロケッツは諦めなかった。
 メインスタンドから見て右半分を占めるグリーンロケッツ応援団には、バレーボールのレッドロケッツも加わって、ピッチのフィフティーンを叱咤激励するように「NECコール」を叫び続けた。
 後押しされたグリーンロケッツが2つ目のトライを挙げたのは35分。
 サントリーのゴール前に攻め込んでの連続攻撃は、トライ寸前にハンドリングエラーが出て相手ボールのスクラムになったが、しっかり組んだスクラムが功を奏してサントリーの球出しが狂い、スクラムの脇からボールが転がり出た。
 これをSH中嶋大希が素早く拾ってラックに持ち込む。
 スクラムを離れたFLスコット・ヒギンボッサムが猛スピードでサポートについて、中嶋を体ごと押し込む。
 そして、こぼれ出たボールを拾ったリサレが一気にインゴールへと駆け抜けた。
 森田のコンバージョンが決まって12-33。
 さらに前半終了間際には、ラックから中嶋がボールを持ち出したところに、防御の死角となる背後から松浦が走り込んで突破。右にサポートしたドナルドがそのままポスト真下にトライを決め、19-33として前半が終了した。
「前半の立ち上がりに26点差をつけられたのは非常に厳しかったが、そこからドナルドと森田がよくリードして立て直してくれた。フェイズを重ねてアタックすればサントリーの防御に隙ができると事前に分析していたが、ハーフタイム前に14点差まで追い上げたことで、後半のアタックに弾みがついた」



 そう話すのは、ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)。
 事実グリーンロケッツは、後半立ち上がりからサントリー陣内でゲームを進めた。
 5分。
 サヴィエティのプレッシャーでサントリーのノックオンを誘うと、スクラムで右PR田中光がググッと押し込み、完全に組み勝ってペナルティキックを得る。
 すかさずラインアウトにして、またもモール勝負を挑む。
 8分。
 今度もグリーンロケッツがモールを押し込み、川村に替わって入ったばかりの臼井陽亮がトライを挙げた。
 森田のコンバージョンが外れて、ワンチャンスで同点に追いつける7点差とはならなかったが、スコアは24-33。最大で28点あった点差をついに一桁の9点まで追い上げたのだ。
 追い上げムードに乗ったグリーンロケッツは、11分にPR瀧澤直がハーフウェイライン上のラックで相手ボールに働きかけて反則を誘う。これをラインアウトにしてさあ反撃――というところで、LOサム・ジェフリーズがキャッチしたボールを奪われてしまう。
 さらに、直後のスクラムからサインプレーを仕掛けられて防御を破られ、松島に3本目のトライを献上。コンバージョンも決められて、点差はふたたび16点に広がった。
 グリーンロケッツも、19分にサヴィエティがトライを奪い、森田のコンバージョンでふたたび9点差に迫る。



 しかし、後半の半ばを過ぎてから反則が急増。
 特に、26分過ぎにドナルドのショートキックを起点にサントリー陣に入ったところで反則を犯したのが響き、そこから自陣に押し戻されて防御を強いられて、連続でオフサイドをとられてしまう。これが32分の、サントリーのダメ押しトライに結びつく。
 なんとか7点差以内に戻してボーナスポイントを、そして、そこからさらに逆転を狙ってグリーンロケッツは自陣からも果敢に攻撃を仕掛ける。
 35分にはゴール前のラインアウトに持ち込み、この試合で威力を発揮しているモールからトライを狙ったが、モールを作るところでボールを落としてチャンスを活かせない。
 サントリーも、あと1トライを加えてボーナスポイント獲得を目論むが、グリーンロケッツも懸命に守り、結局トライ数は5-7。スコアは31-47で試合が終了した。
 試合後の記者会見で、「今季得点をなかなか挙げられなかったなかで、5トライとった部分はプラスにとらえたい」とプラス材料を挙げた森田キャプテンは、こう苦言も呈した。
「相手がどうこうではなく、自分たちでこういうラグビーをやるというマインドを持たないとトップリーグでは勝てない。その部分を修正したい」
 ラッセルHCも、「試合のなかの局面で、我慢しきれなかったり、アタックの方向性を見失った部分が見られた」と指摘。次週の休養週を利用して、「この2週間で修正したい」と話した。
 次節は10月7日。
 NTTコミュニケーションズシャイニングアークスをホーム柏の葉公園総合競技場に迎えての、大切な大切な一戦だ(13時キックオフ)。
 レギュラーシーズン7試合のうち4試合を終えた時点でのグリーンロケッツの成績は、1勝4敗勝ち点5。残る3試合すべてに5ポイントの勝利を挙げても、最終的な勝ち点は20にとどまる。レッドカンファレンスの4位以内に食い込むためには、もう1試合も落とせないのだ。
 果たしてホームゲームでの声援を受けて、反撃の狼煙を上げることができるのか。
 グリーンロケッツの背水の陣が続く。






 ニュージーランドとオーストラリア。
 ラグビー史に無数の激闘を刻んできた宿命のライバル国だ。
 その代表司令塔を務めた2人が、横浜で対決した。
 NECグリーンロケッツSOスティーブン・ドナルドVSサントリーサンゴリアスSOマット・ギタウ。
 ドナルドが、2011年に自国ニュージーランドで開催されたラグビーW杯で、相次ぐSOのケガで急遽チームに招集され、決勝戦の前半34分から負傷したアーロン・クルーデンに替わってピッチに立ち、8-7の勝利に貢献する決勝PGを決めたキャリアを持つレジェンドならば、ギタウもオーストラリア代表キャップ103を誇るスーパースターだ。
 2人の対決をピッチ上の至近距離で目撃した森田洋介は、感想を訊かれて、少しはにかんだ口調でこう答えた。
「2人とも、僕が大学生のときに同じポジションで国を代表していた、憧れのプレーヤーです。そんな2人が両チームにいて感無量でした。ライバル意識も間近に感じられて嬉しかった(笑)」
 キャプテンを“ラグビーファン”のような気持ちにさせた当人は、ギタウとの直接対決の感想を訊かれて、にこやかに、しかし特別なことは何もないとでも言いたげな口調で、こう話した。
「ギタウとは何年も何試合も戦ってきた。とてもいい選手だし、リスペクトもしている。だから、最初から今日は彼を押さえようと思っていた。でも、試合展開は、前半立ち上がりにボールにまったく触れず、準備したプランを出すことができなかった。だから、チームとしてボールを奪うことにフォーカスするよう心がけた。ボールを持てば、プランが上手く機能したし、トライも取れたからね。
 でも、今日は勝ちたかったし、勝つことがチームの目標だったから、ガッカリしているよ」
 ドナルドにとって、トイメンが誰であるかは、勝つためにどうプレーするかを考える際の1つの情報に過ぎず、ギタウとの対決は、彼がサントリーの司令塔であるからこそ意識するのであって、そこに特別な思いはない――口調から読み取れるのは、そんなチームへの思いだ。
 ドナルドが言う。
「グリーンロケッツは、ボールさえ持てば、トライも奪えたし、サントリーを相手にいいパフォーマンスができた。その手応えを自信に代えて、次の試合に臨むべきだ。今は、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスに勝つことしか考えていないよ」
 レギュラーシーズン最後の第7節には神戸製鋼コベルコスティーラーズとの対戦が予定されていて、そこで同じオールブラックスで10番のポジションを争ったダン・カーターとの直接対決の可能性もある。
 しかし、そのことを訊ねても、やはり答えは同じだった。
「今は目の前の試合を1つひとつ勝つことしか考えていない。それはダンも同じだと思うよ(笑)」
そう。
 ラグビー王国ニュージーランドに生まれたレジェンドたちの思考は、常に「チーム・ファースト」なのである。
(取材・文:永田洋光)
  

アーカイブ