拙攻と規律の乱れで、グリーンロケッツ、今季初勝利も笑顔満開とはならず!

info_category1.gif2018/09/18

 この日、宗像サニックスブルース戦にゲームキャプテンとして出場した共同キャプテン、CTB森田洋介は、負けたチームのキャプテンのように厳しい表情で試合後の記者会見場に現われた。
「3試合目にしてようやく初勝利を得られたことは喜ばしいのですが……」
 そう言うと、森田は一気に課題を挙げた。
「今週のテーマに掲げてきたボールをキープすることも、規律を守ることもまだまだ達成できていない。修正点が多々ありました」
 隣に座ったピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)も、こう総括する。
「勝利という結果には満足しているが、前半にいいアタックをしながらチャンスを活かしきれず、サニックスを突き放せなかった。その結果、後半にサニックスに得意の形から反撃を許した」
 なぜ、歓喜が爆発するはずの初勝利が、反省が口に出る課題の多い試合となったのか。
 トライを量産し、サニックスに3トライ以上の差をつけて獲得すべきボーナスポイントを、自らの“アンフォースト・エラー”で失ったから――。
 それが、笑顔が曇った要因だった。



 グリーンロケッツの立ち上がりは良かった。
 試合開始のキックオフを蹴り込み、相手のノックオンを拾ってアタック。しかし、こちらもボールが手につかずにノックオン。
 5分には、自陣のスクラムから狭い右サイドにパスを出してWTB後藤輝也を走らせる。
 そこからFWで前に出て、SH中嶋大希が前方にキックを上げる。これに、後方から走り込んだFLスコット・ヒギンボッサムが飛び上がってスーパーキャッチ! さらに前に出てラックを作り、中嶋がガラ空きの背後に再度キックを蹴る。
 しかし、これがタッチインゴールを割って、得点には結びつかなかった。
 それでも7分には、相手のノックオンをLOサム・ジェフリーズが後方にはたき、ボールを拾った中嶋が走り出す。
 防御陣形がほどけたサニックスの選手たちの間をスラロームのように駆け抜けた中嶋は、左にサポートしたWTB飯山竜太にパス。スピードに乗った飯山が、最後は1対1の局面を見事なステップで抜き去って、先制トライに結びつけた。
 試合開始直前に降った激しい雨で地面が緩み、ボールも滑りやすいコンディションとなって双方にハンドリングエラーが続く展開だったが、そんなもやもやを吹き飛ばしたトライだった。
 だが、その後はいい形を作り出すものの、得点を重ねられない。
 10分には、FB吉廣広征のカウンターアタックから飯山が走ってラック。FL大和田立がボールを拾い上げて力強く突破し、連続攻撃に持ち込む。そして、この試合が初先発となったSO亀山宏大が思い切りよく前に出て22メートルラインを越える。
 しかし、亀山が捕まったラックからボールを持ち出そうとしたヒギンボッサムが、横からラックに入ったとしてペナルティをとられてチャンスを活かせない。



 20分には、スクラムから中嶋が左に開いたところでNO8ジョージ・リサレが右にボールを持ちだし、亀山→森田→CTBマリティノ・ネマニとつないでネマニが突破。そのままゴールポスト目指してネマニが快走する。右には中嶋がサポートして、相手と2対1の大チャンスだ。
 しかし、ネマニは迷ったあげくパスを放せず、相手に捕まったあげく、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られてまたもやトライチャンスが消えた。
「あそこはボールが欲しかった。トライが見えていましたからね」と中嶋。
 サニックスは、ここからペナルティキックを素早く仕掛けるとボールを大きく動かし、一気にグリーンロケッツを自陣に押し込める。このトライを逸したことで、ゲームの潮目が明らかに変わった。そういう意味でも代償が高くついたプレーだった。
 自陣に押し込められたグリーンロケッツが息を吹き返したのは、スクラムがきっかけだった。
 26分に、自陣で完全にスクラムを押し込み、サニックスからペナルティをもぎ取る。
 それでも、28分には連続攻撃のなかで森田が足を滑らせてノックオン。30分にはスクラムからリサレがサイドアタックを仕掛けてチャンスを作り、8フェイズを重ねたが、ゴールライン目前でノックオン……とハンドリングエラーが続く。
 冒頭のような反省の弁がキャプテンやHCから出てきたのは、こういう時間帯の逸機があまりにも悔やまれたからだった。
 グリーンロケッツにようやく待望の追加点が入ったのは36分だ。
 サニックス陣22メートルラインを越えたラインアウトからモールに持ち込み、「今季はアグレッシブに前に出ることにフォーカスしている」というリサレが抜け出して大きくゲイン。
 大和田がサポートしてゴールライン手前でラックを作る。
 そして中嶋が左に待つヒギンボッサムにパスを通して2つ目のトライが生まれた。
 森田がコンバージョンを決めて12-0。
 なんとか得点をふたケタに乗せて、ハーフタイムを迎えた。



 後半も先に得点したのはグリーンロケッツだった。
 6分に相手ボールのラインアウトを奪うと、中嶋が判断良く狭いサイドに走り込んで防御を突破。右タッチライン際で待つヒギンボッサムがサポートし、そのままヒギンボッサムが30メートルを独走して前半最後に続いて連続トライ。
 前後半ともにそれぞれ最初のトライをお膳立てした中嶋は、活躍が認められてマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたが、こう活躍の理由を話す。
「周りの声に助けられています。プレーが途切れたときも、みんながいろいろ声をかけてくれるので、プレーのときも判断する材料が多いのです」
 しかし、ここからゲームは“乱打戦”となった。
 12分に、グリーンロケッツのノックオンを拾ったサニックスが連続攻撃。最後はFBアンドレ・ティラーがトライを挙げる。
 グリーンロケッツもすぐに反撃。
 負傷した吉廣に替わってFBのポジションに入ったネマニのカウンターアタックからチャンスをつかみ、大和田がサポート。亀山のキックで5メートルスクラムを獲得すると、スクラムからFWでポイントを作ったあと、後藤がラックの後方から走り込んでトライを追加。森田のコンバージョンで24-5と引き離す。
 グリーンロケッツは、そこから反則を立て続けに犯して自陣に押し込まれ、21分にトライを許すと、続くキックオフリターンからサニックスに一気に攻め込まれる。
 しかも、23分にはネマニがノーバインドでレイトタックルをしたと判定されてイエローカードに!
 14人となった10分間でサニックスにもう1つトライを許し、ボーナスポイントどころか24-15と9点差に詰め寄られた。



 結局、何とかその点差を守って試合を終えたが、終盤の勝負どころでリサレに替わってピッチに入った共同キャプテンの亀井亮依は、こう反省点を挙げる。
「勝ってホッとする気持ちもありますが、課題も多くて嬉しい気持ちと反省が半々ですね。相手に勢いが出てきたところで、交代したメンバーで流れを変えて攻撃をたたみかけられなかったし、もっと自分たちがアタックする時間を増やさないといけないと思います。サニックスにスコアされたのも、ミスしたボールを相手に持って行かれているから。反則が多いのは、一昨年くらいからチームが抱えている課題で、それを直さないと、こういうゲームが続くことになる……」
 つまり、得点機を確実にモノにして反則を減らし、終始主導権を握って戦わなければボーナスポイントも獲得できないし、安定したゲーム運びもできない、というわけだ。
 グリーンロケッツは、この勝利で勝ち点を5に伸ばしたが、依然としてレッドカンファレンス7位のまま。
 チーム目標の「ベスト4」を達成するために前提となるカンファレンス4位以内に食い込むためには、これから勝ち続けることが必須。だからこそ、神戸製鋼コベルコスティーラーズに敗れて連勝が止まった“手負い”のサントリー戦が、大きな意味を持つのだ。
 森田が言う。
「サントリーのテンポの速いラグビーに対して、まずフィジカルで勝つこと。相手を攻め疲れさせるためにも、ディフェンスで崩されないこと。ボールを保持したら、保持し続けなければならないこと。その3つが、神戸製鋼の戦いぶりから学んだ、勝つためのポイントです。そのためにも、サニックス戦で出た課題を修正して、必勝の意気込みで臨みたい」
 レギュラーシーズンが7試合の今季は、次節を終えれば半分の日程が消化されたことになる。
 グリーンロケッツは星を五分に戻して折り返し点を通過できるのか――次節は今季最大の山場となる。






 入社3年目にして初めて袖を通す公式戦での背番号10のジャージーだ。
 亀山宏大は、試合の立ち上がり、明らかに緊張していた。
「確かに緊張しました。3年近くずっとこの日を待っていましたから。その間に準備してきたことを、今日これから発揮するんだと考えたら緊張するので、目の前のプレーに集中するよう心がけてはいたのですが……」
 体がほぐれたのは、ゲームのなかで動き回ってからだった。
 最初の大きな動きは前半2分。
 自陣右サイドで相手キックに備えていたが、左方向に蹴る素振りを見てとるや、全速力で反対側のタッチライン際へと走った。そして、蹴られたボールを無事に処理すると、あとはパスを放ち、タックルに入り、コンタクトを繰り返すうちに体がほぐれ、9分には思い切ってトイメンと勝負。ディフェンスのわずかなギャップをついて、前に出た。
「勝負したのは、いつもピーター(・ラッセル ヘッドコーチ)さんから言われているところです。持って行けるところは持って行け。それが持ち味だから、と」
 昨季は、リザーブからの途中出場で4試合、合計してもプレー時間は50分に過ぎなかった。このサニックス戦では後半24分に退くまで、正確に記せば63分29秒ピッチに立ち続けた。
 溜まりに溜まった試合に出たいという思い。
 それは果たして思う存分に発揮されたのか。
「いえ、そんなに満足できるパフォーマンスではありませんでした。チームを勝利に導けたので、とりあえず自分の仕事は達成できたかな、とは思いますが、自己評価は“まあまあ”といったところです。もう少しスッキリと勝てるよう、ゲームをコントロールしたかった」
 後方からサポートした森田洋介キャプテンは、こう亀山を評した。
「最初は少し緊張していましたね。それを感じさせないプレーぶりでしたが、FWの外国人選手からは、ラインアウトのときに“もっと早くサインを出せ”とお尻を叩かれていました(笑)」
 亀山もこう反省する。
「自分としては早くサインを伝えたつもりでしたが、もっと早く伝えて欲しかったみたいでした。僕が考えているより要求の水準が高かった。これからは、もっと英語を上達させて、ラインアウトリーダーとコミュニケーションを取れるようにしたい。その辺りがまだまだ未熟でした」
 初めての公式戦先発出場にもかかわらず、亀山が浮かれていないのには理由がある。
 チームには、同じSOとして立ちはだかるスティーブン・ドナルドという大きな壁があるからだ。現在はドナルドが負傷中だが10番を着続けるためにはこの壁を乗り越えなければならない。
「ドナルドはいいお手本です。ウォーミングアップへの取り組み方も、練習中から周囲と積極的にコミュニケーションをとる姿勢も、すごく勉強になります。でも、だからこそ、彼に負けないように頑張りたい」
 ニュージーランド代表として23キャップを持つドナルドとのポジション争いを制すること――それが、亀山にとってレギュラー獲得と「世界」への挑戦の第一歩となる。
(取材・文:永田洋光)
 

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