グリーンロケッツ、チャンスを活かしきれずに開幕戦で悔しい1点差負け!

info_category1.gif2018/09/03

 トドメの一撃。
 豊田自動織機シャトルズとの開幕戦を8-9と1点差で落としたNECグリーンロケッツの敗因は、この「一撃」を欠いたことがすべてだった。
 6月に来日したスーパーラグビーの強豪チーム、オーストラリアのワラターズを破り、3年目に入ったピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)の意図するラグビーへの理解も深めて、自信を持って臨んだ18-19年度の開幕戦。
 確かに序盤から終始ゲームを押し気味に運び、スコアの上でも残り2分の段階まで8-6とリードを保っていた。
 勝利はすぐそこに見えていたのだ。
 けれども、結果は悔しい1点差の逆転負け。
 グリーンロケッツの歯車は、いったいどこで狂ったのか。

 グリーンロケッツが蹴り込んだ試合開始のキックオフ。
 最初のディフェンスでNO8ジョージ・リサレが、豊田自動織機WTBシオシファ・リサラをしっかり倒してゲインを許さず、次のプレーを22メートルライン付近のマイボール・ラインアウトにすることができた。
 サム・ジェフリーズとサナイラ・ワクァの、身長2メートル超の“ツインタワー”を配置したグリーンロケッツは、このラインアウトを確保。
 WTB後藤輝也をからませてフェイズを重ね、SOスティーブン・ドナルドが相手防御の間に入り込んでオフロードパスを試みたが、CTBマリティノ・ネマニに通らずノックオン。
 こうしたミスが、その後のグリーンロケッツに終始つきまとい、試合を通して通奏低音のようにサポーターの心をざわつかせる。



 たとえば、直後のスクラム。
 グリーンロケッツは、先発1番に起用されたPR前島利明が前に出ていいボールを確保。
 この試合はCTBに入った森田洋介を軸に左に展開したが、ワクァが無造作に放ったオフロードパスがすっぽ抜けてピンチを招く。
 風上に立ってセットプレーも安定。相手にボールを渡すことなくアタックを継続できる状況にいながら、そんな優位性を自ら放棄してしまったのだ。
 しかも、これがペナルティに結びつき、7分に豊田自動織機FBサム・グリーンにPGを狙われる。幸いボールはゴールポストに届かず失点には至らなかったが、嫌な感触は残った。
 グリーンロケッツは、続く相手ボールのラインアウトで、すっぽ抜けたボールをHO川村慎が確保。そこからのアタックは上手く組み立てられなかったが、ドナルドのキックを追走したネマニが相手を倒し、リサレが駆けつけてジャッカル。ノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘った。
 前半9分。
 このPGをドナルドが決めて、3-0。
 13分には、ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、一気に豊田自動織機FWを突き崩してジェフリーズがトライに向けて直進する。
 が、最後にコントロールを失ってノックオン。
 さらに22メートルライン内にとどまってマイボールのラインアウトを得たが、そこで今度は川村がスローイングミス。
 これだけ逸機を続ければ、流れは変わる。
 24分には、豊田自動織機SOクリスチャン・リアリーファノを意識し過ぎたネマニが、ボールがないところで激しくタックルに入り、イエローカードで10分間の一時的退場に。
 そこから自陣に釘付けにされ、トライこそ許さなかったが、30分にPGで3-3の同点に追いつかれた。
 その後も、グリーンロケッツはピンチを迎えたが、38分にはドナルドが執念のバッキングアップでリサラを倒し、さらに相手ボールをインターセプトしてピンチを脱出。相手ゴール前でラインアウトからのモール勝負を挑んだが、これは逆に豊田自動織機LOケイデン・ネヴィルにボールを押さえられて押し切れず、そのままハーフタイムに突入した。



 後半。
 立ち上がりにPGを許して3-6とリードされたグリーンロケッツは、直後に反撃。
 4分に、リサレとFL亀井亮依が、相手が持ち込んだラックに激しく挑みかかってボールを奪取。ルーキーながら開幕戦でトップリーグ・デビューを果たしたSH中嶋大希が、背後のスペースにボールを蹴り込み、後藤が追走して5メートルスクラムのチャンスを得た。
 このスクラムで豊田自動織機は反則を犯し、ふたたびスクラム勝負を選択する。
 このとき、ラッセルHCは、前島と田中光の両PRを、瀧澤直と土井貴弘に替えた。
 スクラムトライを狙っての交代か――と思われたが、ラッセルHCは意図をこう説明する。
「前島と田中のスクラムは良かったが、疲労からスクラム以外のプレーでの運動量が落ちていた。あのスクラムは大切な場面だったし、反則をとられることがないようベテランに替えた」
 代わりに入った土井は、この場面をこう振り返る。
「フロントローとしては、あの場面で替えられるのは嫌でしょう。自分としても、入ってすぐのスクラムが大切な場面だったので、スクラムトライよりも、確実にしっかり組もうと考えていました」
 結果、スクラムは低い姿勢を保ったまま、停滞した。
 そして、グリーンロケッツが押すかと思った瞬間に、中嶋が右サイドにボールを持ち出し、そのままインゴールに切れ込む。
 ルーキーが、デビュー戦で挙げた記念すべき初トライ!



 これでグリーンロケッツは、ようやくもどかしさを断ち切ってスコアを8-6と逆転した。
 直後のキックオフから攻め込まれたピンチをしのいだグリーンロケッツは、16分にはカウンターアタックからチャンスをつかみ、途中出場のNO8スコット・ヒギンボッサムが抜け出してWTB松浦康一につなぎ、ハイタックルを誘ってPGチャンスを得た。
 しかし、このPGを、森田がポストに当てて失敗。追加点を挙げられない。
 24分にはラックからボールを受けたドナルドが防御ラインを突破。
 完全に独走状態となったが、オーストラリア代表のリアリーファノが必死に追いかけて倒し、トライを阻まれる。
 その後もゴール前で攻め続けたが、最後は相手ゴール前のスクラムで反則を取られて、またもチャンスを活かせなかった。
 20分過ぎから激しく降り出した雨のなかで、36分に得たPGチャンスも、ドナルドのキックはポストに届かず、スコアは依然8-6のまま。
 そして、このPG失敗後のドロップアウトからのキックを後藤が落球。
 続くスクラムから10フェイズ執拗にボールを継続され、39分にリアリーファノの右足が一閃。
40メートルのDGを決められて8-9とスコアをひっくり返された。
 窮地に立たされたグリーンロケッツは、わずかな残り時間に懸命に反撃を試み、終了直前にはネマニが大きく右に回り込み、外側に後藤がサポートにつく逆転トライの形を作り出す。
 しかし――。
 ネマニのパスは通らず、ボールがダッチラインを割った段階で、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
「とにかく悔しい。その一言です」
 そう切り出したのは、共同キャプテンの1人、亀井だ。
「チャンスは多く作り出せたが、トライを取りきるところでミスが多く出た。コンディションの関係でボールが滑りやすかったことは事実ですが、お互いのコミュニケーションが欠けていて、判断ミスもあった」と、唇を噛んだ。
 もう1人のキャプテン、森田もこう敗戦を総括する。
「トライを取り急いで、必要のないところでオフロードをしたり、ついつい欲張って1人で突っ込んでしまったり、バタバタする悪いクセが出てしまった。戦術的な部分がどうこうではなく、開幕戦を意識し過ぎて、普段通りのラグビーができなかった」
 要するに、立ち上がりから何度もいい形を作り出しながら、すぐにトライを奪えそうな感触に個々の判断が微妙にズレて、得点を重ねられなかった――というわけだ。
 ラッセルHCは、「フェイズを重ねればいい形で前に出られた」と、敗戦のなかからポジティブな部分を引き出して8日のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦(秩父宮ラグビー場 19時キックオフ)に臨む考えだ。
「短いシーズンのなか、一戦一戦が貴重」(亀井キャプテン)な今季。開幕戦で失った白星を、トヨタからもぎ取れるかどうか――グリーンロケッツの真価が問われる。






「もっと冷静にプレーして、もっと周りが見えていれば、もっと楽な試合ができたのに……」
 開幕戦デビューに加えて初トライまで挙げたルーキーの口から出てきたのは、「もっと」が何度も繰り返された反省の弁だった。
 無理もない。
 結果は8-9と1点差負け。
 それも、再三チャンスを作りながら“トドメの一撃”を加えられずに、終了直前にDGで逆転負けの奈落に突き落とされたのだ。
 FWにもっと細かく指示をしていれば反則は防げたのではないか。
 もう少し前の選手たちを楽にプレーさせられたのではないか。
 1つひとつのプレーをもう少し正確にやっていれば。
 もう少し、もう少し、もう少し……。
 反省が次から次へと出てくるのには、別な理由もある。
 試合前の1週間。
 中嶋自身「ビックリした」という開幕戦先発のチャンスを得てから、チーム内での細かい決めごとやストラクチャーを確認し、万全の準備を整えた。だから変に緊張することなく、いい精神状態で試合に入ることもできた。
 前半は、自分の持ち味を出すよりも、ひたすらボールをさばき、チームを前に出すことを優先。キックを蹴らず、サイドアタックを仕掛けることもしなかった。
 けれども細かいハンドリングエラーが続いて、得点はSOスティーブン・ドナルドの1PGのみ。
 そこに、もう少し何とかできたのではないか……という、反省の思いがこみ上げてくるのだ。
 実際、流通経済大学の先輩、ジョージ・リサレがラックをきれいに押し込んで相手ボールを獲得した後半4分に初めてのキックをスペースに蹴り込むと、それを後藤輝也が追走して5メートルスクラムのチャンスに結びつく。
 そして、スクラムトライを狙った7分には、スクラムが動かなかった場合の選択肢で、右の狭いサイドをアタック。そのまま見事にインゴールに飛び込んだ。
 持ち味を出すことを押さえた前半に生まれなかったトライが、中嶋が動いたことで生まれたのだ。
「前半は、相手のプレッシャーを見極めながらFWにシンプルにプレーさせて、動きに慣れたところで自分から仕掛けようと思っていたのですが、それもあまり良くなかったのかもしれません。もっと積極的で良かったのかもしれない。ドナルドに頼り過ぎた部分もありましたし……」
 反省は反省として、次への糧にできるかどうかで、選手のその後は変わる。
 だからこそ、中嶋は次節のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦に向けて、こう意気込む。
「とにかく自分のプレーをしっかりやりたい。チームの勢いをつけられるようにどんどんボールをさばいて、フェイズを重ねた上で僕の持ち味を出せればベストだと思います」
 学生時代にアジア・ラグビー選手権で日本代表キャップを2つ獲得した逸材は、ほろ苦いデビュー戦を教訓に、次なる挑戦に万全を期すつもりでいる。
 
(取材・文:永田洋光)
 

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