グリーンロケッツ、総力戦でワラターズから金星をもぎ取る!

info_category1.gif2018/06/18

 秩父宮みなとラグビーまつり2018で、NECグリーンロケッツは、スーパーラグビーに所属するオーストラリアのチーム、ワラターズと対戦した。
 ワラターズは、現在オーストラリアカンファレンスの首位を走る強豪チーム。6月のテストマッチ期間であるため、オーストラリア代表に選ばれた主力選手はメンバーから外れているが、その分、レギュラー定着を目指す若手が目の色を変えてアピールする。
 そんな強敵に対し、グリーンロケッツで共同キャプテンを務めるSO森田洋介は、「勝ちに行きます」と、闘志を燃やしていた。
「チームが1つになって、いつも我孫子のグラウンドでやっているラグビーをプレーする。そのなかに激しさと勝ちたい意欲が出れば、勝てる」
 特別に秘策を練るのではなく、あくまでもグリーンロケッツ流で勝利を目指すというのだ。
 しかし、立ち上がりは、スーパーラグビーの厳しさをたっぷり“教えられる”ことになった。



 試合開始のキックオフ。
 グリーンロケッツは、NO8ジョージ・リサレがボールをキープする。が、ラックを連取したところで森田がパスのタイミングを迷って捕まり、そのままボールを奪われる。
 ワラターズは、このターンオーバーから攻め続け、2分を3秒過ぎたところでFBブライス・ヘガティーがノーホイッスルのまま、トライでアタックを締めくくった。
 続くキックオフ後のラックでワラターズがペナルティを犯すと、グリーンロケッツは森田がPGを決めて3点を返す。
 これでチームは落ち着きを取り戻すかと思われたが、ワラターズの攻勢はやまなかった。
 グリーンロケッツは、8分にSHで先発した山田啓介が、自陣で相手のパスをインターセプト。
そのままハーフウェイライン付近まで走り、ボールを前方に蹴り込んで、一気に相手ゴール前まで攻め込む。
しかし、その後のアタックで、森田のキックが相手に当たり、逆襲を食らう。
 このピンチは、WTB後藤輝也が自陣で相手のパスを奪ってことなきを得たが、ワラターズ陣内に入って、マイボールのセットプレーから攻撃する機会をなかなか作れない。
 17分には、タッチライン際をワラターズWTBタンゲレ・ナイヤラヴォロに走られ、内側をサポートしたHOヒュー・ローチにトライを奪われる。24分にもペナルティキックから仕掛けられて、SHジェイク・ゴードンにインゴールを陥れられた。
 いずれのコンバージョンも、SOマック・マイソンが決め、スコアは3-19と大きく開いた。
 数少ないアタックの場面でも細かいミスが出て意図した通りにボールを動かせず、グリーンロケッツは、ワラターズの波状攻撃に土俵際まで追い詰められた。
 森田とともに共同キャプテンを務めるFL亀井亮依が振り返る。
「ハイレベルなプレッシャーのなかで、自分たちのラグビーを出し切ろうと話していましたが、最初の10分間は完全に受けてしまいました。ただ、スクラムで手応えがあったので、マイボールをキープしながらPGで3点ずつ点差を詰めて行ければ、と考えていました。“とにかく精度を上げよう”と声をかけていました」
 そんな窮地を救ったのが、FB吉廣広征の“決断”だった。



 34分。
 ワラターズのラインアウトからのアタックを、後藤がフィールド中央で止める。
 できたラックにCTBマリティノ・ネマニが働きかけて、ボールをターンオーバー。
 山田から替わった木村友憲が吉廣にパスを送る。
 タッチキックを蹴るために後方に位置していた吉廣は、猛然と突っ込んでくるナイヤラヴォロを見て、走ることを決断する。
 吉廣が言う。
「あのままタッチキックを蹴っても、ほとんど地域を挽回できない。しかも、ナイヤラヴォロが前に出てきたので裏が空いていた。だから、前に走りました」
 そして、ゲインラインを越えた辺りでリサレにパス。
 リサレからパスを受けたCTBアマナキ・サヴィエティも無理をせずに森田にパス。森田もマークを引きつけて、ハーフウェイライン手前で右に待つエースの後藤にボールを託した。
「相手が強ければ強いほど勝負したいと思っていた」という後藤は、そのままトップスピードに乗り一気にゴールラインまで走り切った。
 森田のコンバージョンは外れたが、これで流れが変わる。
 前半終了のホーンが鳴った直後、グリーンロケッツは直前に得たペナルティから、ラインアウト勝負を挑む。
 最初に組んだモールでワラターズにオフサイドがあり、さらにもう一度ラインアウトを選択。今度はガッチリとモールを組んで、押し込む。
 モールはゴールライン手前で前進を阻まれたが、グリーンロケッツはラックに持ち込んでアタックを継続。2つめのラックから、途中出場のHO臼井陽亮がパスダミーを入れながら体を低く保ち、味方の後押しも受けてインゴールに飛び込み、しっかりとボールを地面につけた。
 森田がコンバージョンを決めて、15-19でハーフタイムを迎えた。



 後半も、立ち上がりからグリーンロケッツのアタックが炸裂する。
 キックオフ後の蹴り合いからこぼれ球を拾ったグリーンロケッツは、ラックを連取。
 そして、昨季も見せた、ラックから一度右に待つ森田がボールを受けて、左に走り込む吉廣に逆方向へのパスを放るプレーを敢行。「事前の分析で、ラックの周りにスペースがあることはわかっていた」という吉廣が、そのまま一気に駆け抜けた。
 しかし、ワラターズもヘガティが、ゴールポスト真下に飛び込んだ吉廣の腕の下に自ら腕を差し込み、グラウンディングを許さない。判定はTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)に持ち込まれてトライが認められず、5メートルスクラムでゲームが再開することになった。
 グリーンロケッツは、このスクラムを完全に押し込んだ。
 ワラターズのFWは完全に崩され、ゴールライン目がけてスクラムがじりじりと前進する。
 そのとき、木村がボールを持ちだして左に走り、そのままポスト直下にトライを決めた。
「あれは、スクラムトライです!」と胸を張るのは、右PR榎真生だ。
 そのまま行けば完全に押し切れたスクラムから「木村が勝手にボールを持ちだした(笑)」というのだ。
新任のグレッグ・フィーク・スクラムコーチに鍛えられたFWの意地が発揮されたトライだった。
 森田のコンバージョンも決まり22-19。グリーンロケッツはさらにトライをたたみかける。
 16分だ。
 ワラターズが左に展開するところでパスミスが起こり、それを後藤がハーフウェイライン付近で拾い上げて、一気に加速。アタックの陣形を敷いていたワラターズは後藤のスピードに追いつけず、そのまま後藤がこの日2つめのトライを挙げて、マン・オブ・ザ・マッチを手中にした。
 森田のコンバージョンも決まって29-19。
 リードは、ワンチャンスでは覆らない10点差に広がった。
 けれども、国際試合で本当に大切なのは、試合終了までの最後の20分間。
 いくら入れ替えが自由に認められているフレンドリーマッチとはいえ、体力が消耗したなかで、勝ち負けを巡る熾烈な攻防が連続するからだ。
 果たしてワラターズは26分にヘガティが2つめのトライを挙げ、29-26と3点差に追い上げる。
 守りに回ったら勝利が危うくなるグリーンロケッツは、その後も攻めた。



 勝負を決する最大の山場は32分過ぎから始まった。
 その直前にグリーンロケッツは、ラインアウトからモールを押し込み、あわやトライかというチャンスを作り出して、相手の反則を誘っていた。
 しかし、もう一度モール勝負と意気込んだラインアウトでボールを奪われる。
 ワラターズはタッチに逃れたが、後藤がボールをクイックスローでピッチに戻し、相手を休ませない。フェイズを重ねたグリーンロケッツは、右タッチライン際で後藤が内側に切れ込むようにパスをもらい、マークを引きつけて途中出場のFL大和田立にパス。
大和田は一気に抜け出したが、ナイヤラヴォロに足首を払われて転倒。
この時点で、ラインアウト投入から50秒以上が経過している。
 グリーンロケッツはさらにアタックを継続したが、7フェイズめでターンオーバーされ、一転して逆襲を食らい、大ピンチに!
 ワラターズはメインスタンド側のサイドを攻め、ガラ空きのグリーンロケッツ陣ゴール前にボールを蹴り込んだ。
 このピンチを救ったのが、途中出場のWTB飯山竜太だった。
 飯山は、ターンオーバーされた直後からワラターズWTBアレックス・ニューサムをマーク。
キック処理でもニューサムより早く駆け戻り、ゴールラインまであと10メートルというところでセービング。そのまま強い筋力で覆いかぶさるニューカムをはねのけて、ボールを確保した。
「ニュージーランドに短期留学させてもらい、デカい選手たちにもまれて、足腰が強くなったおかげです(笑)」と、飯山はこの場面を振り返ったが、このゲーム最大のピンチが救われたのだ。
 2分40秒にわたった攻防で逆転を果たせなかったワラターズは集中力が薄れ、直後に反則を連発。グリーンロケッツは、そんな隙を見逃さずに攻め続け、最後はゴール前に攻め込んだところで試合終了のホーンを聞いた。
「今日は勝ったことが重要。春、一番のターゲットにしていた試合でしたし、逆転されて“いい試合をしたけど惜しかった”では、たぶん何も変わらない。ここで、準備が実を結んで結果が出たことで、やればできるという自信が生まれた。すごくいい試合だったと思います」
 11年目のベテラン、臼井の言葉だ。
 かくしてグリーンロケッツは、8月からスタートするシーズンに向けて最高のスタートを切った。






 後半25分からの出場でプレー時間はわずかに15分。
 その間、ボールに触れたのはわずかに1回。
 しかし、その1回が、グリーンロケッツの勝利にとっては、何物にも代えがたいほど大きかった。
 飯山竜太。
 2年目のWTBが、あわや逆転負けの大ピンチを救ったのだ。
 後半33分。ガラ空きの防御ライン背後を狙われたキックに懸命に駆け戻り、ボールを確保しただけではなく、奪い取りにきたワラターズWTBアレックス・ニューサムの重圧を、文字通りにはねのけて、絶体絶命のピンチを救ったのだ。
「もう無我夢中でした。あの場面は、相手に外側に抜かれる方が怖かった。蹴ってくれた方が守りやすいと思っていたところでキックしてくれたので、あとは追いかけっこでボールに追いつくだけでした」
 ボールを確保した瞬間にのしかかったニューサムを、強靱な筋力で仰向けにひっくり返したときには、秩父宮のスタンドから「おおっ!」という、どよめきと歓声が沸き上がった。
「自分の強みである下半身の力が生きましたね(笑)。正直な話、僕もビックリしたのですが、ニュージーランドで2か月間、巨漢にもみくちゃにされて、下半身や体幹が強くなりました。ただ、立ち上がった直後に相手にまた倒されて、ボールを離すタイミングが反則ギリギリになってしまった。そうした細かいところが、今日の反省点です」
 このプレーが起こったのは、ターンオーバーに次ぐターンオーバーという長い攻防の終盤。
 直前までワラターズのゴール前に攻め込んでいたグリーンロケッツは、ほとんどの選手が相手陣にいて、懸命に戻ろうとしていた。
 しかも、試合最終盤の体力的に一番苦しい時間帯。
 飯山は「途中からだったのでまだ体力が残っていた」と振り返るが、完全に孤立無援の状況だった。だからこそ「立ち続ける」ことにこだわり、そこを反省するのだ。
「そういう局面で、どれだけ長く立っていられるかが、これからも勝負のカギを握ると思います。だから、最後まで立ってプレーし続けることを、今後も常に意識し続けたいですね」
 スーパーラグビーの強豪との対戦で学んだことはそれだけではない。
 臨機応変な動きを求められることも、65分間はベンチで、残り15分間はピッチの上で、体感を通してしっかり心に刻み込んだ。
「国内の選手は、事前にビデオを見て準備しておけば、動きがだいたいわかるのですが、スーパーラグビーのような高いレベルになると、僕たちの動きを見て試合中にプレーを変えてくる。インゲームの修正力がすごい。だから、僕たちも、相手をしっかり見て、これからどうしなければならないのか、外側からどういう声をかけて味方に情報を送るのか、そういうことを心がけないといけないと思いました」
 8月に開幕するレギュラーシーズンに向けてつかんだ大きな手応えと課題。
 この教訓は、さらに2か月の熟成期間を経て、チームに還元されるはずだ。
 決意を込めて、飯山は言う。
「結局、この試合でボールに触れたのは、あのセービングだけでした。でも、15分プレーしてボールタッチが1回というのは、WTBとして物足りない。どれだけ自分が動いて、声を出してボールをもらえるようになるか。それが、今後の課題だと思います」
 いいお手本となるのが、この試合でマン・オブ・ザ・マッチに輝いた同じポジションの後藤輝也だと言う。
「後藤さんのターンオーバーや、トライを見て、いいお手本がチーム内にいると改めて思いました。だから、僕もそういうレベルに到達できるように、頑張りたい」
 2年目のシーズンにレギュラー定着を期して、飯山の挑戦はこれからいよいよ“山場”にさしかかる。

(取材・文:永田洋光)
 

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