チームのプライドを見せながら、グリーンロケッツ、東芝に惜敗!

info_category1.gif2018/01/09



 レギュラーシーズンを終えての順位決定戦。
 相手は、今季開幕戦で0-20と敗れた東芝ブレイブルーパスだ。
 勝てば6位以上が確定するが、瀧澤直キャプテンは「死闘になる」と、試合前から考えていた。
 順位のことだけではない。
 東芝は、痛い局面を恐れずに体を張るラグビーにこだわりを持つ。それは、NECグリーンロケッツも同様だ。肉体と肉体をぶつけ合うことを恐れず避けず、真正面から力の限りを尽くすという意味で、「死闘」を予感していたのだ。
 果たして、試合はその通りの立ち上がりとなった。
 キックオフを蹴り込んだグリーンロケッツは、ボールを捕った東芝NO8リーチマイケルにFL細田佳也がタックルを突き刺し、すぐさまNO8ジョージ・リサレがボールに襲いかかる。倒されたリーチはボールを離せず、最初のプレーでペナルティを得た。
 場所は東芝陣22メートルライン付近だ。
 2分。
 このいきなりの先制チャンスに、「ちょっと緊張した」というSO森田洋介が確実にPGを決め、グリーンロケッツが3-0と最初の得点を記録した。
 続く東芝のキックオフ。
 今度はリサレがタッチラインをまたいでボールを捕るミスを犯し、東芝に自陣でラインアウトを与えてしまう。昨季までならこれで東芝のキックオフがダイレクトタッチとなったが、今季はルールが改正され、この場合はリサレがボールを持ってタッチを割ったことになるのだ。
 しかし、ゴールラインまであと10メートルというピンチに、リサレが汚名返上のタックルを炸裂させてノックオンを誘う。
 8分には、やはり自陣に攻め込まれたが、ラックでボールを奪い返す。
 攻めることにこだわる両チームの攻防は熱を帯びた。



 この時間帯の攻防を、瀧澤キャプテンはこう振り返る。
「みんなから出るエナジーが今日はすごく高かった。目の前にきた奴を仰向けに倒してやろうと、全員がディフェンスを楽しんでいた。高い集中力で、ものすごいタックルも何度か見ましたし、目立たなかったかもしれないけど、すごくいいタックルもありました。本当に1人ひとりから出たエナジーが高かった」
 この集中力が、グリーンロケッツにビッグチャンスをもたらした。
 19分。
 グリーンロケッツは、東芝陣22メートルライン上でラインアウトを得ると、そこからアタック。フェイズを7つ重ねたところでリサレがボールを奪われ、東芝が逆襲。左へ展開してFBコンラッド・バンワイクがグリーンロケッツの背後にボールを大きく蹴り込む。これを逆サイドから戻ったWTB飯山竜太が確保。同じWTBの後藤輝也がサポートしてボールを活かす。そして、CTBマリティノ・ネマニが前に出て拠点を作る。さらに今度は左に折り返してラックを作り、細田がパスアウトしてアタックを継続する。
 この時点で、すでに2分間ゲームが途切れずに続いている。
 そして23分。
 細田からパスを受けたFL大和田立→飯山とボールが渡り、飯山がリサレにパス。
 リサレは直線的なランニングで東芝防御を弾き飛ばし、スペースを作って、左にサポートしたFB吉廣広征にパス。
  自陣10メートルラインから走り始めた吉廣は、そのままスピードに乗って一気に60メートルを走り切り、3分近くに及んだ攻防を左中間へのトライで締めくくった。



 森田がコンバージョンを決めて10-0。
 さらにグリーンロケッツは、25分にCTBアマナキ・サヴィエティが鋭いタックルでリーチを倒し、大和田が働きかけて東芝の反則を誘う。
 そして28分。
 ラインアウトからアタックを仕掛けたグリーンロケッツは、フェイズを7つ重ねてから、森田が右のスペースにキックパス。このボールに後藤がドンピシャのタイミングで走り込み、そのままインゴールへと駆け抜けた。
 このトライもコンバージョンが決まり、17-0。
 完全にグリーンロケッツが主導権を握ったのだ。
 さらに続くキックオフからのリターンでも、HO臼井陽亮が東芝LO梶川喬介に強烈なタックルを見舞って反則を誘い、またもや22メートルラインを越えて攻め込んだ。
「確かにこの時間帯は“上手くいき過ぎているのではないか”と不安になるぐらい流れが良く、いい感じでスコアできました」と森田。しかし、こう付け加えるのも忘れなかった。
「東芝は経験値が豊富な選手がいっぱいいて、勝負所で点をとってくる」
 勝負所は直後にやってきた。
 ラインアウトからFWで前に出たところで左に展開。しかし、バックスの呼吸が合わずにネマニがタックルを受けて反則を犯す。
 これが東芝の、止まりかけていた息を吹き返すきっかけとなった。
 東芝はそこからタッチに蹴り出してラインアウトに。そこでモールを押し込んでペナルティを得ると、グリーンロケッツのゴール前に攻め込んでラインアウトに。
 そして、モールが停滞するやバックスに展開し、キャプテンのCTBリチャード・カフイがトライを奪う。
 さらにカフイは、38分にもパスに対してコースを変えて走り込み、グリーンロケッツの防御を突破。連続トライで17点差をあっという間に3点差まで追い上げた。
 勝負は後半にもつれ込むことになったのだ。



 後半立ち上がりは、前半の終盤の勢いそのままに東芝が攻めた。
 4分にはラインアウトから右に展開。カフイを囮にしてWTB石井魁がトライを奪って17-19と逆転する。
 レギュラーシーズンでは、こういう場面から一気に崩されるゲームもあったが、この日のグリーンロケッツは違った。
 9分には、自陣のターンオーバーからPR土井貴弘が大きく抜け出して反撃。飯山が大きくゲインして東芝陣に攻め込む。
 さらに15分には、ラインアウトから左へ大きく展開。SH木村友憲からパスを受けた吉廣が相手のギャップに走り込み、飯山にパス。飯山は、バンワイクのタックルを振り切ると一気に加速。ゴールラインまであと1メートルと迫る。しかし、サポートがわずかに遅れてノット・リリース・ザ・ボールの反則をとられた。
 グリーンロケッツのアタックがようやく実を結んだのは19分だった。
 スクラムを押し込んでからリサレがサイドアタック。ラックからLO廣澤拓が前に出て左に展開。ふたたびリサレが大きく前進する。これに途中出場のCTBジョーダン・ペインが続き、ゴールラインに迫る。ここにみたびリサレが走り込んでトライを奪い、スコアを22-19と再逆転した。
 ここからゲームはさらにヒートアップ。
 リードされた東芝が猛然と反撃するが、グリーンロケッツも懸命の防御でトライを防ぐ。しかし、27分にトライ(コンバージョン成功)を、33分にはPGを追加され、22-29に。
 結局、この劣勢を最後まで跳ね返すことができずに、そのまま試合終了のホーンを聞いた。
「選手たちを誇りに思う」と切り出したピーター・ラッセル ヘッドコーチは、「小さなミスが勝負を分けた。東芝はミスにつけ込んだが、我々はミスにつけ込めなかった」と唇を噛み締めた。
 瀧澤キャプテンも、「勝利するには、もしかしたら何かが足りなかったのかもしれない。今はそれが何かはわからない。ただ、負けはしたものの、自分たちのプレーに誇りを持てるゲームだった」と、総括した。
 今季のゲームで1、2を争う素晴らしいパフォーマンスを見せながら、最終的に勝利をたぐり寄せられなかったグリーンロケッツは、次週に“有終の美”をかけてリコーブラックラムズと対戦する(14日 秩父宮ラグビー場 11時30分キックオフ)。
 森田が意気込みをこう話す。
「リコーも東芝と同じようなイメージ。ゲインラインを切らせないようにすれば、チャンスはくる。ちょっとでも順位を上げて、来季につなげたい」
 メンバーが入れ替わり、若返ったチームがシーズンをどう締めくくるのか。
 リコー戦は同時に、来季に向けた新しい一歩でもある。






 3年目にして訪れた初めての先発メンバー入りに、大石力也は奮い立った。
 初めて背番号がひとけたのジャージーに袖を通す喜びはもちろんあった。
 しかし、それ以上に、昨年4月に膝の前十字靱帯を手術して以来、7か月以上に及んだ長く苦しいリハビリテーションを成し遂げ、ふたたびピッチに立つ喜びに打ち震えていた。
 小学2年生でラグビーを始めて以来、初めて経験した大ケガとリハビリ。一時は「本当に復帰できるのか」と、不安にも悩まされた。ピッチに戻ったのは昨年12月はじめだったが、そこからひと月あまりで先発に抜擢された。だからこそ、奮い立ったのだ。
「復帰するのが自分のゴールだと思っていましたが、いろいろな人に支えられ、チームメイトが頑張っている姿からも刺激を受けて、ここまでくることができました。だから、自分にとって特別な初スタメンでした。ただ、気持ちは入っていましたが、変に熱くなり過ぎないようにいつものプレーを心がけました。でも、知らないうちに熱くなっていた。プレーしながら、こみ上げてくるものがありましたね」
 東芝ブレイブルーパス戦の前半15分過ぎ。まだスコアが3-0の時間帯に、大石の気持ちがほとばしったプレーがあった。
 ハーフウェイライン付近でできたラックから東芝SH小川高廣がキックを蹴ろうとした際、相手を飛び越えるようにチャージに出たのだ。結果的にチャージはならなかったが、スタンドにも気迫は伝わった。
 その後、NECグリーンロケッツが連続トライで一時は17-0と大きくリードした。
 手応えを問うと、こんな答えが返ってきた。
「確かに東芝にトライをとられるまでは時間が短く感じられました。でも、とられてからは、少し疲労を感じました。相手もキツそうだったので、そこでもうひと踏ん張りできれば……という思いはあります。自分としては、とにかくワークレートを上げようと意識しましたが、そんなに満足のいくデキではありませんでした。得意のラインアウトで、少しだけ“やれる”手応えを感じたぐらいです」
 謙虚……というだけではない。この言葉の裏には、もっと大きな思いがある。
「リハビリから復帰して練習試合に出て、公式戦に出て……と、ステップを上がってきましたが、今日が最後の試合というわけではありません。この試合は、あくまでも“やれる”という自信をつかむきっかけにしたかった。そのためには、チームに戻って反省して、もう一度メンバーに選ばれるように、リコーブラックラムズ戦に向けて頑張りたい」
 目標は、今季からチームに加わった元オールブラックスのアダム・トムソンだ。
 190センチの長身を武器にしたラインアウトはもちろん、ボールキャリーでもディフェンスでも、そして骨惜しみしないワークレートでも……と、すべてを高い水準でこないオールラウンダー。それが大石の理想なのである。
 東芝戦では、前半40分だけで亀井亮依と交代したが、与えられた40分間に「もっとボールを持ちたかった」と悔いを残した。だからこそ、今週を懸命のアピールにあてて、連続での試合出場を目指している。
 7か月のリハビリを経た復帰戦で、「やれるという少しの自信と反省」を得た大石のチャレンジは、シーズン最終盤の今、来季まで見据えてクライマックスを迎えている。
(取材・文:永田洋光)

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