パナソニックの「小さなプレッシャー」に規律が乱れたグリーンロケッツ、1トライに抑えられて完敗!

info_category1.gif2017/12/04

 初冬の柔らかな日差しに包まれて、絶好のコンディションでトップリーグの後半戦が始まった。
 NECグリーンロケッツは、群馬県太田市に乗り込んで、これまで9連勝と16チーム中で唯一全勝のパナソニックワイルドナイツと対戦する。
 瀧澤直キャプテンはこう考えて試合に臨んだ。
「お互いのアタック力を考えれば、トライの取り合いになればグリーンロケッツに不利になる。何とかロースコアの展開に持ち込むこと。そこに勝機を見いだしたい」
 確かに11月のウィンドウマンスに入るまでの9試合でパナソニックが記録したトライ数は53。一方、グリーンロケッツは26と約半数だ。
 粘り強くパナソニックのアタックを守り、野球にたとえれば、派手な「打撃戦」ではなく、息が詰まるような「投手戦」に持ち込むこと。
 それがグリーンロケッツのゲームプランだった。



 パナソニックのキックオフで試合が始まって2分。
 最初に守備からチャンスをつかんだのは、パナソニックだった。
 グリーンロケッツが自陣からの脱出を図ろうと、SO森田洋介がキックを蹴る。
 そこにFLデービッド・ポーコックが襲いかかって蹴られたボールをチャージ。こぼれ球をあわてて拾い上げた森田にパナソニックのFWがプレッシャーをかけて反則を誘い、4分にSOベリック・バーンズのPGで先制した。
 続くキックオフ。
 森田は、逆光のパナソニック陣内に高いボールを蹴り上げ、ハンドリングエラーを誘って、22メートルライン付近の好位置でマイボールのスクラムを得た。
 グリーンロケッツは、ここから左に展開。
 ジョーダン・ペイン、マリティノ・ネマニの両CTBを囮にして、背後にWTB後藤輝也を入れて突破を図る。しかし、後藤はパナソニックWTB北川智規の狙い澄ましたタックルを浴び、まったくゲインできないまま倒された。
 序盤のジャブを打ち合うような展開のなかで、パナソニックは防御力でもグリーンロケッツを上回って、攻撃の芽を次々と摘んでいく。自陣に押し戻されたグリーンロケッツは、長時間の防御を強いられて、少しずつ組織防御がほころびて行く。
 10分には自陣で相手のキックを捕って反撃に転じたが、続くラックで反則を取られて2本目のPGを決められる。
 直後の11分にFB吉廣広征のカウンターアタックから攻め込み、LOイ・ジンソクがボールをキープするが、ポーコックに腕力でボールをもぎ取られる。
 17分には、バーンズにラインブレイクを許し、大きなピンチに。ここでネマニがノーボール・タックル。バーンズからのパスを受けようとしていた選手を、ボールを持つ前に倒してしまったのだ。
 ネマニはこのプレーでイエローカードをもらってシンビンとなり、グリーンロケッツは14人で戦う苦しい状況に追い込まれた。
「ペナルティをやらざるを得ないように追い込まれた場面と、自分たちから反則をした場面の両方があった」と振り返ったのは、瀧澤キャプテンだ。
「パナソニックから小さなプレッシャーを受け続けた結果、相手の球出しを遅らせようとして反則を取られたり、スコアを少しずつ離された結果、無理にトライを取りに行こうとしてギャンブル的なプレーをして反則を取られた。いいディフェンスをしていれば、相手にボールを出させて次のアタックを止めればいいから、焦って球出しを遅らせる必要はないのですが……」
 けれども、「いいディフェンス」が持続しなかったのだ。
 


 0-9とリードされた20分には、WTB松浦康一が攻め込んだところでバーンズにボールを奪われ、そこからまた攻め込まれる。グリーンロケッツもよく戻ってトライのピンチを防いだが、最後は人数が足りなくなった右サイドにボールを動かされ、NO8ホラニ龍コリニアシにトライを奪われた。
 さらに26分にも、やはりペナルティからゴール前のラインアウトに持ち込まれ、そこからモールを押されてトライを奪われた。
 どちらのトライもバーンズがコンバージョンを決め、スコアは0-23と大きく開いた。
 グリーンロケッツがチャンスをつかんだのは、その後のキックオフからだった。
 自陣からアタックを仕掛けたパナソニックがオブストラクションの反則を犯し、そのボールをタッチに蹴り出してラインアウトを選択する。
 ゴールラインまでもう10メートルもない。この試合でつかんだ最初のビッグチャンスだ。
 モールを組むことは阻止されたが、ボールをキープしたグリーンロケッツは、フェイズを重ねてアタックを継続する。
 11フェイズ目には左サイドでペインがネマニにパスを通してゴールラインに迫り、さらにNO8アダム・トムソンがラックからボールを持ち出す。
 しかし、初めてゴールラインを背負ったパナソニックの“青い壁”はなかなか崩れない。
 20フェイズ目には、防御の注意が外側に向いていると判断した森田が思い切って直進し、トライまであと1メートルと迫ったが、続くラックからの攻撃でハンドリングエラーが生じ、結局チャンスを活かせなかった。
 対照的にパナソニックは、前半終了間際和にも1トライを追加し、0-30で前半が終了した。



 後半。
 グリーンロケッツは、開き直ったかのように積極的にアタックを仕掛けた。
 1分には吉廣のカウンターアタックからラックを作り、ペインが相手防御の裏に出る。そこに、後半から途中出場のW釜池真道が顔を出し、オフロードパス。だが、これはスローフォワードでスクラムに。しかし、その直後にペインはミスを取り戻すかのようにパナソニックFB藤田慶和を倒し、すぐに立ち上がってボールに働きかけ、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘う。
 グリーンロケッツは、これをタッチに蹴り出してラインアウトに。
 そして4分。
 これまでの鬱憤を晴らすかのようにFWが一気にモールを押し込んで、FL大和田立がトライを挙げた。
 森田のコンバージョンは外れたが、これで5-30だ。
 さらに続くキックオフから左タッチライン際で吉廣が大きく突破。そこからボールを継続し、途中出場のLO権丈太郎が前進。そこから右に展開して大和田にボールを持たせるが、タッチを割ってしまう。
 そして、ここで失ったボールをなかなか取り戻せないまま、グリーンロケッツは守勢に回り、終盤にはスクラムトライまで奪われて、5-54と敗れた。
 熊谷皇紀コーチは、後半序盤のアタックを「ラグビーには開き直って直進すると、それで前進できることがしばしばある」と話したが、その“開き直り”が連動性を持ったアタックに昇華することはなかった。言い換えれば、試合のなかにグリーンロケッツの良さが点在してはいたが、それらがつながって線になり、面となって得点に結びつく場面が、このトライを除けばなかった。
 それが大差がついた要因だった。
 次節は、パナソニックを1敗で追うサントリーサンゴリアスとの対戦だ(9日 秩父宮ラグビー場 11時30分キックオフ)。
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)はサントリー戦に向けての修正点をこう話す。
「ラグビーは、ディフェンスだけしていては勝てない。今日の試合のように、試合開始から5連続でペナルティを犯し、あげくイエローカードをもらっているようでは勝てない。後半の立ち上がりに、冷静にプレーしてトライに結びつけたように、来週も規律を守ってゲームを進められるよう選手たちのマインドセットを切り替えたい」
 パナソニック戦を終えた段階で、グリーンロケッツは5勝5敗の勝ち点21。ホワイトカンファレンス4位を依然としてキープしているが、5位のキヤノンイーグルスが勝ち点を18に伸ばしてひたひたと迫ってきている。
 トップ8としてシーズンを終えるためにも、これからは一戦必勝の戦いが続くのだ。
 果たしてグリーンロケッツは、この大敗から教訓を学び取って成果に変えられるのか。
 次節は、今季の行方を占う大切な試合となる。





まだ残暑が残っていた9月23日。
 宗像サニックスブルース戦でジョーダン・ペインは左手薬指につながる骨を骨折。試合後は一言「Broken(折れている)  」とだけ言い残して会場を去った。
 それから9週間。
 待ち望んでいた復帰戦が、このパナソニックワイルドナイツ戦だった。
 ピッチを離れていた間の思いを爆発させるかのように、ペインは攻守に体を張って活躍した。
 しかし、本人はこう振り返る。
「結果が伴わなかった。いいプレーもあったかもしれないが、同様に良くないプレーもあった。特に、後半立ち上がりに釜池真道にオフロードで渡したパスがスローフォワードになってしまった。通っていればビッグチャンスになった場面だったから、あれが悔やまれる」
 原因は「ゲーム勘が戻っていなかった」こと。
 直後のスクラムからは、アタックを仕掛けたパナソニックFB藤田慶和に強烈なタックルを浴びせてペナルティを誘い、後半4分のトライへと結びつけた。しかし、それでも「ケガする前ならパスを通せたのではないか」という思いがあって、悔いを残したのだ。
 リハビリに取り組んでいる間にチームは勝ったり負けたりを繰り返したが、ペインは焦りを抑えて「自分のコンディションを万全に戻す」ことに専念した。
 復帰してからチームへの貢献を思い描いてのことだった。
 だからこそ、50点近く点差を離されての敗戦に納得がいかないのだ。
「パナソニックのような強いチームと戦うときに、ミスをしたり、反則を繰り返して相手にボールを渡していては絶対に勝てない。今日は、そういう点をチーム全員が学んだ。自分自身も、来週までにゲーム勘を取り戻して、より良いプレーをしなければならないと思う」
 言葉の先に見据えるのは、次節のサントリーサンゴリアス戦だ。
 果たしてパナソニックと並ぶ強豪に、ペインの思いが炸裂するのか。
 ニュージーランド生まれの24歳は、ビッグチャレンジに腕を撫している。
(取材・文:永田洋光)
 

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