グリーンロケッツ、近鉄を破り、5勝4敗でホワイトカンファレンス4位をキープ!

info_category1.gif2017/10/23



 台風21号の接近と、停滞した秋雨前線の影響で、日本代表活動による休止期間(ウィンドウマンス)前最後の試合となる近鉄ライナーズ戦も、前節に続いて雨のなかでの戦いとなった。
 しかし、悪条件にもNECグリーンロケッツは動じなかった。
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)が言う。
「この1週間、雨という状況を想定して、いい準備を重ねてきた」からだ。
 確かにキックによる地域の獲得と、ラインアウト成功率でリーグトップを走る近鉄を想定して入念に準備を重ねたラインアウト対策が功を奏して、試合が始まってから30分間、グリーンロケッツは、ほとんどの局面でプラン通りにゲームを進められた。
 勝利への道筋を早い段階で明確につけられたこと。
 それが、グリーンロケッツの勝因だった。

 最初にチャンスをもたらしたのは、ブレイクダウンでのNO8アダム・トムソンとLO廣澤拓の渋い働きだった。
 3分に、キックの蹴り合いから近鉄がラックに持ち込んだボールに2人で働きかけて反則を誘い、近鉄陣の22メートルラインを越えてラインアウトに持ち込んだのだ。
 グリーンロケッツは、そこからCTBアマナキ・サヴィエティを走らせ、さらに攻撃を継続。近鉄の反則を誘って、6分にSO森田洋介がPGを決め、3―0と先制した。
 8分には、もう1人のCTBマリティノ・ネマニが、近鉄FBセミシ・マシレワに素晴らしいタックルを見舞って圧力をかける。これでキックを蹴らざるを得なくなった近鉄に対し、WTB松浦康一が相手陣深くへとボールを蹴り返す。そして、ラインアウトからの球出しに圧力をかけ、トムソンがボールを奪って一気にチャンスを広げた。
 右に展開したボールは、大外で待つWTB後藤輝也に届かなかったが、続くスクラムからサヴィエティがタテに走って近鉄の反則を誘い、12分に森田洋がPGを追加。
 6―0として、主導権を握った。
「今日の試合では、FWが非常にいい仕事をした。攻守にわたってラックでの精度が高かったし、ラインアウトのディフェンスが素晴らしく、相手の攻撃を止めて勢いをそぐことができた」と、ラッセルHCは振り返ったが、FW戦にこだわりを持つ近鉄に対して、グリーンロケッツは、ラインアウトでも、モールでも仕事をさせなかった。



 14分には、近鉄が初めてグリーンロケッツ陣内に入り、ラインアウトからモールを押したが、FWが押されながらも踏ん張ってボールを出させず、マイボールのスクラムにしてピンチを防いだ。
 17分には、またも近鉄ゴール前で相手ボールのラインアウトを、今度は廣澤がもぎとる。廣澤は、22分にもラインアウトで2度目の相手ボール奪取を見せ、近鉄の攻撃の起点をつぶし続けた。
 そして28分、この試合で初めてグリーンロケッツがぶ厚いアタックを敢行した。
 ネマニがタックルを受けながらも大きく前進してサヴィエティにオフロードパス。そこからラックを連取してゴール前に攻め込み、30分に森田洋がPGを決めて9―0。
 この時間まで、近鉄を一度も自陣22メートルラインのなかに入れず、ボール支配率でも地域獲得率でも大きく圧倒。
 ここまでは堂々たる戦いぶりだった。
 しかし、さらに攻勢を強めようとしたところでミスが生じて近鉄が息を吹き返す。
 36分には、自陣に押し込められて、13フェイズの長い防御を強いられた。それでも、グリーンロケッツは規律を守り、反則をしないで守りきる。
 39分には防御の背後にボールを転がされ、懸命に戻ったSH木村友憲が確保したところにマシレワが襲いかかり、トライかどうかTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)に持ち込まれる場面もあったが、判定は、マシレワが木村のボールを故意にはたき落としたとしてペナライズされて、難を逃れた。
 結局、トライこそ奪えなかったが、近鉄ボールのラインアウト8本のうち4本を奪ったグリーンロケッツが、その優位を反映させ、9―0でハーフタイムに突入した。
 そのハーフタイム。
 瀧澤直キャプテンは、ロッカーでチームをこう引き締めた。
「後半は、相手の時間帯が絶対にくる」
 果たして後半、グリーンロケッツは、立ち上がりから厳しい防御に追われることになった。



 流れが変わった原因は、ノット・ロールアウェイをはじめとするペナルティの連発だった。
 3分に近鉄SO野口大輔が狙ったPGは外れたが、5分には、この試合で初めてスクラムでペナルティを取られ、ラインアウトから近鉄に攻められる。
 守るグリーンロケッツは、7分にサヴィエティが相手ボールを奪ってそのまま前進。森田洋のキックでようやくハーフウェイラインを越えたが、スクラムでまた反則を犯して自陣に戻される。
 11分には、相手陣で近鉄のキックをサヴィエティがチャージしてチャンスが転がり込むかと思われたが、こぼれ球が近鉄に入り、マシレワに大きくゲインされる。行ける!と思って前に出た瞬間に相手にすれ違われるパターンで一気にゴール前まで攻め込まれ、近鉄ボールのラインアウトとなったのだ。
 ここでピンチを防いだのは、LOイ・ジンソクだ。
 相手ボールを空中で奪って、チーム6本目のラインアウトスティールに成功した。
 熊谷皇紀コーチは、この秘訣をこう説明する。
「ラインアウトのディフェンスで、1人ひとりが相手のスロワーのタイミングを読んだり、それぞれの役割に集中できるようになった。それが、ラインアウト防御の向上につながっています」
 それでも試合の流れまでは変えられず、グリーンロケッツはオフサイドを連発して、ついに21分、近鉄にPGを返されて、9―3と詰め寄られた。
 流れが変わったのは、28分。
 自陣のスクラムで、後半に入って初めて近鉄からペナルティを奪ったのがきっかけとなった。
 さらに続くラインアウトでもペナルティを得たグリーンロケッツは、初めて近鉄陣22メートルラインを越えて攻め込んだ。
 そして、このワンチャンスをものにする。
 ラインアウトからモールを組んだグリーンロケッツは、近鉄の圧力をかわすように前進。そこから左に展開し、廣澤がラックに持ち込む。さらにフェイズを重ねて5フェイズ目でネマニが大きく抜け出し、ゴールライン直前でラックを作る。
 左側には完全に人数が余った状態ができている。
 ボールは木村からトムソンに送られ、トムソンが落ち着いてFB吉廣広征にパス。吉廣がそのまま直進して、この試合で初めてグリーンロケッツがトライを記録。森田洋のコンバージョンはポストに当たって外れたが、スコアを14―3としてほぼ勝利を手中にした。
 さらにグリーンロケッツは、途中から入ったリザーブたちが生き生きと動いた。
 37分には森田洋に替わってSOに入った森田茂希が渾身のタックルで相手のミスを誘ってターンオーバー。そこからFLに入ったジョージ・リサレが大きく突破。さらにHOに入った川村慎もブレイクしてゴール前へと攻め込み、近鉄はたまらずオフサイド。
 39分に、このPGを「キックを決めたのは社会人になって初めてかもしれない(笑)」と言う森田茂が決めて、17―3。
 勝利を不動のものにした。



 直後のキックオフで、近鉄LOトンプソン ルークのスーパーキャッチでボールを確保され、連続攻撃を浴びてトライを奪われたが、ラストプレーでは引き分けへと攻める近鉄にリサレが鋭い出足でノックオンを誘い、難しいコンディションの試合に、勝利という幕を引いた。
 瀧澤キャプテンが言う。
「チームとしてこの試合を『ファイナル(決勝戦)』と位置づけ、すべてを出し切って1点差でもいいから勝つことを意識していました。FWのラインアウトのディフェンスなどいいところもあり、最後のトライなど反省すべき点もありましたが、相手に80分間プレッシャーをかけ続けて試合を終えることができた。この勝ち点は、シーズン終盤に向けてすごく大きな勝ち点になると思います」
 これでグリーンロケッツは、通算成績を5勝4敗勝ち点21として、ホワイトカンファレンス4位をキープした。
「この5勝4敗は、みんなで勝ち取った5勝であり、みんなで負けた4敗。今季は、順位よりもチームに『勝利の文化』を根づかせることを目標にやっていますが、そのなかで勝率が5割を超えたのだから、順調な過程を踏めていると思います」
 11月の日本代表活動期間が終われば、パナソニック ワイルドナイツ(12月3日 太田市運動公園陸上競技場 13時キックオフ)、サントリーサンゴリアス(9日 秩父宮ラグビー場 11時30分キックオフ)と、現在両カンファレンスの首位チームとの対戦が待っている。
 その「ビッグ・チャレンジ」(ラッセルHC)に備えて、グリーンロケッツはこれからさらなるパワーアップへの準備に入る。







 近鉄ライナーズ戦を終えて、ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)は勝利の立役者に「FW第3列」を挙げた。
「攻守にベストプレーヤーを挙げれば、FW第3列になる。ラックでの精度が高かったし、ラインアウト・ディフェンスも素晴らしく、相手の勢いをそぐことができた。しっかり仕事をしてくれた。アダム・トムソンは、ラインアウトでもブレイクダウンでも、ディフェンスでも、本物のインターナショナルのプレーを見せてくれたし、ケガから復帰した細田佳也も、彼の経験を試合に活かしてくれた」
 細田自身にとっては、「僕のなかではまだ反省が多い試合」だったが、ラッセルHCは、攻守に接点で体を張り、「近鉄の勢いをそぐ」のに大きく貢献したと言うのだ。
 細田がラインアウトで相手ボールを奪う場面はなかったものの、手元の集計で近鉄から6回ラインアウトのボールを奪ったことも、「ラインアウト・リーダー」としての貢献だった。
「背中の肉離れで戦列を離れていたのですが、試合に出られなかった時間がとても辛かった。だから、気持ちのなかにブランクを作らないように、外から見たラインアウトの課題を、自分自身が復帰したときに、すぐプレーで改善できるよう心がけていました」
 リーダーとしてラインアウトを分析し、「僕が感じた課題と、出た選手たちが感じていた課題が同じだった」と、自ら課題を克服することに努め、そのことで気持ちを保ち続けたのである。
 今季、グリーンロケッツのラインアウトが好調な背景には、もう1つ、世界に名を馳せたラインアウト防御の名手・トムソンの存在が大きい。
 熊谷皇紀コーチも、ラインアウトについては「何よりも“先生”の存在が大きい」と話す。
 先生、つまりトムソンだ。
 細田も言う。
「アダム・トムソンが、すごくいい成果を出してくれている。だから、リーダーグループでその成果を取り込んで、上手く活用しています。その結果、みんなが、今までよりもシンプルに自分の役割に集中するようになって、いい結果につながっている。分析と対策がシンプルな分、1人ひとりの役割が明確になって、僕らも自信を持ってプレーに集中できるようになりました」
 今季、チームが上手く機能し始めた要因の1つだ。
 しかし、細田自身は、現状にまったく満足していない。
 昨季はサンウルブズと契約し、日本代表にも選ばれたが、キャップは現在「2」で止まったまま。11月のテストマッチに臨む代表にも選ばれなかった。
 19年W杯日本代表への門がだんだん狭まるなか、そこに細田の「悔しさ」と危機感がある。
「今のままでは全然ダメだと痛感しています。もっと頑張らないと、ジャパンには届かない。でも、ジャパンを目指さなければ僕自身のパフォーマンスも上がらないから、もっともっと、どん欲にチャレンジしていきたい。12月にはパナソニック ワイルドナイツ、サントリーサンゴリアスと、上位チームとの対戦が続きますが、今はそのチャレンジをとても楽しみにしています。自分のパフォーマンスにフォーカスすることで、チームの勝利に貢献できればベストですね」
 チームが一丸となる「上位」へのチャレンジは、細田自身にとっても、「桜のジャージー」へのビッグ・チャレンジなのである。

(取材・文:永田洋光)

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