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「規律を守った素晴らしい防御」で終盤を耐えたグリーンロケッツ、08年10月以来の勝利をホームで挙げる!

info_category1.gif2017/10/16

 

  市立柏高校吹奏楽部の高校生たちが、ブラスバンドを奏でて雰囲気を盛り上げる。
 NECグリーンロケッツが、今季ホームの柏の葉公園総合競技場で行なう最初で最後のホームゲームは、冷たい雨がそぼ降るコンディションだったが、スタンドは最後まで熱かった。
 対戦相手のクボタスピアーズも、本拠は同じ千葉県の船橋市。「千葉ダービー」は、本当に試合終了の笛が鳴るまでわからない、文字通り「1点を争う」激闘となった。

 先制したのはグリーンロケッツだ。
 3分、SO森田洋介がハイパントを蹴り上げ、WTB後藤輝也とともに自ら追走。クボタNO8四至本侑城がお手玉したボールを奪うと、そのまま大きく前進する。森田洋が倒されてできたラックからSH木村友憲が大きく左へ展開。ボールはCTBアマナキ・サヴィエティの手を経てCTBマリティノ・ネマニに渡り、ネマニがインゴールに駆け込んだ。
 森田洋がコンバージョンを決めて7―0。
 これ以上は望めないほどの最高のスタートだった。
 しかし、そこから突き放せずにゲームは膠着する。
 14分にクボタにPGを返され、クボタの圧力に自陣に押し込められたグリーンロケッツは、立て続けにペナルティを犯す。クボタはこれらのペナルティをラインアウトにして攻め立てる。
 ピンチを救ったのは、NO8アダム・トムソンが連発したスーパープレーだった。
 まず29分、自陣ゴール前のラインアウトで、相手ボールを完璧なジャンプでスチール。さらに1分後には、クボタが持ち込んだラックからボールをもぎ取ってピンチをチャンスに変える。
 攻勢に転じたグリーンロケッツは、FL大和田立が突破を図り、クボタのオフサイドを誘う。
 このペナルティを森田洋がタッチに蹴り出してラインアウトにすると、今度はFWが魅せた。
 33分、モールを一気に押し込み、先頭でボールを持っていた大和田が、そのままインゴールに倒れ込んでトライを奪ったのだ。これも森田洋がコンバージョンを決めて14―3。
  だが、前半はこのまま終わらなかった。
 35分にラックで相手ボール奪取を狙ったトムソンが、横からラックに入ったと判定されてペナルティを取られると、クボタはそこからゴール前のラインアウトに持ち込む。
 このとき、トムソンが汚名返上とばかりに片手でボールを味方にはじき出し、ターンオーバーかと思われたが、突然降ってきたボールに対応できずにグリーンロケッツがノックオン。
 クボタは、このスクラムからサイド攻撃を敢行し、最後はSH井上大介がトライ。コンバージョンも決まって、14―10と追い上げられて前半が終了した。



 後半は、悪夢のような立ち上がりだった。
 まず1分に、クボタCTBシオネ・テアウパに防御ラインのギャップをあっさりと抜かれてトライを奪われる。
 続くキックオフからグリーンロケッツは、ネマニが大きくラインブレイクしてゴールラインへと迫ったが、左へ展開したところでトムソンが放ったパスを、クボタCTBマット・サンダースがインターセプト。そのまま独走トライを奪われて、スコアはあっという間に14―24と逆転された。
 それでも、グリーンロケッツは動じなかった。
 試合後、ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)は、「瀧澤直キャプテンと、森田洋が卓越したリーダーシップを発揮してくれた。こういうコンディションのなかで、冷静にプレーできたことを嬉しく思う」と話したが、サンダースにトライを奪われた直後にはこんな言葉が飛び交った。
 瀧澤キャプテンが振り返る。
「まだ37分ある。それだけの時間があれば、何でもできると、みんなで話し合いました。奪われたトライが、相手の意図したアタックで奪われたのではなく、自分たちのミスから取られたので、やるべきことをやればもう取られることはないという意識がありました」
 森田洋もこう話す。
「ここで崩れたらダメだと思っていたけど、みんなあわてなかったし、立て直すことができた。それが、今季成長した部分だと思います」
 続くキックオフ後の蹴り合いから、グリーンロケッツの反撃が始まった。
 まず後藤→FB吉廣広征→途中出場のWTB釜池真道とパスをつないで釜池が突破。ラックから森田洋が、クボタ防御の背後に小さなキックを上げてノックオンを誘う。このとき、アドバンテージが出ているなかで左に展開してネマニが広いスペースに走り込んだが、ボールが滑ってノックオン。アドバンテージを活かせずに、スクラムとなった。
 グリーンロケッツがこのスクラムを渾身の力で押し込むと、クボタがスクラムを崩してアドバンテージが出る。そして、トムソンがサイドアタック。ここも、トライには至らず、もう一度スクラム勝負を挑む。
 このスクラムも崩れかけたが、レフェリーから「ユース(ボールを使え)」の声がかかって、もう一度FWで細かくサイドをつく。そして、木村が相手FWの足下をすり抜けるようにインゴールに飛び込み、トライかと思われたが……TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の結果、木村がその前にタックルされたにもかかわらずボールを離さなかったとしてノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られて、トライが認められなかった。
 後半最初のトライが生まれたのは、それから3分後の13分。
 右タッチライン沿いのラックから出たボールを森田洋が左サイドへ長いキックパスを蹴る。これがバウンドしたところに釜池がドンピシャのタイミングで走り込み、クボタFB合谷和弘と競り合いながらキャッチ。そのままインゴールへと駆け抜けた。
 森田洋のコンバージョンで21―24と3点差に迫ったグリーンロケッツは、17分にクボタにPGを決められて21―27と引き離されたが、ワンチャンスで逆転できる7点差以内につけて、勝利だけを見据えていた。



 そして、22分。
 クボタのゴール前に攻め込むと、スクラムから右に展開。森田洋の隣に走り込んだ釜池が少し前進してボールを継続。今度は森田洋が強気に直進してクボタの防御を集める。そのラックから出たボールを受けた大和田がインゴールに飛び込み、この日2つ目のトライで1点差に迫る。
 右中間のやや蹴りにくい角度からのコンバージョンも、森田洋が決めて28―27と逆転!
 勝利に大きく前進した。

 けれども、最大の山場は終盤に訪れた。
 30分過ぎからクボタのゴール前に攻め込んだグリーンロケッツは、ペナルティを得るとスクラムを選択。PGの3点ではなく、トライを取りに行った。
 瀧澤キャプテンが、決断した胸の内をこう明かす。
「スコアは1点差だったので、ショットを選択すれば外れても敵陣でプレーできるし、入れば次のキックオフからまた敵陣に行ける。そういうオプションがあることはわかっていました。でも、その前のスクラムで相手が2回ペナルティを犯していた。トライを取れば6点差、あるいは8点差になる。万が一トライを取れなくても、ゴールラインまで5メートルの位置でマイボールをキープし続ければ1点を守り切る可能性は高い。最悪、相手にボールを奪われても、ディフェンスには自信があったので(自陣のゴールラインまで)100メートルのスペースがあれば守り切れると思っていました。試合が終わってから、ピーター(・ラッセルHC)に『あれはショットだ』と言われたし、トムソンからも『ショットじゃないのか』と言われましたが、コーチの意見も元オールブラックスの意見も退けて、スクラムを選びました」



 ところが、その「最悪の事態」が起こった。
 36分18秒。
 ゴール前の密集がつぶれてプレー続行が不可能になったところで、ボールが地面ではなく人の上にあるモール状態と判定されて、クボタにスクラムが与えられたのだ。
 後のないクボタは、ここから反撃した。
 インゴールのなかでのキックパスなど苦しいオプションも織り交ぜながら、じりじりと前進を続け、数えたフェイズは手元の集計で28。そして、ハーフウェイラインを越え、ついには10メートルラインも越えて、じりじりとグリーンロケッツのゴールラインに迫る。
 その間、密集の真ん中を割って出たテアウパの足首を、途中出場のSH山田啓介がつかんで間一髪で独走を止めたり、際どい場面もあったが、グリーンロケッツは一切ペナルティを犯さずに守り続けた。
 そして、ホーンが鳴った直後に、こちらも途中出場のNO8ジョージ・リサレが、クボタFLグラント・ハッティングにタックル。ハッティングの手からボールがこぼれ落ち、それをタッチに蹴り出して、激闘に終止符を打った。
「チーム全体がポジティブになるような勝利」とラッセルHCが言えば、瀧澤キャプテンも、「最後の苦しい時間帯にメンバー全員で守り切った。ディシプリンを守った素晴らしいディフェンスだった。ホームゲームで9年ぶりに勝ったことを本当に嬉しく思います」と、顔をほころばせた。
 4トライを奪っての逆転劇と、粘り強い防御でつかんだ勝利は、まさに今季を象徴するもの。
 成績も4勝4敗の五分に戻して、次節は近鉄ライナーズとのウィンドウマンス前最後となる試合を戦う(21日 パロマ瑞穂ラグビー場 11時30分キックオフ)。
 近鉄を破って勝ち越しでウィンドウマンスの休止期間を迎えられるのか――グリーンロケッツは、今週を万全の準備に当てて名古屋に乗り込む。







 08年10月26日のヤマハ発動機ジュビロ戦(34―20)以来、9年ぶりとなるホームグラウンド・柏の葉公園総合競技場での勝利を挙げたNECグリーンロケッツ。マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは、攻守に体を張り、追撃のきっかけとなるトライを挙げた釜池真道だったが、それに勝るとも劣らない活躍をしたのが、背番号10を背負った森田洋介だ。
 トライ後のコンバージョン4本がすべて完璧に決まっていなければ、グリーンロケッツはクボタスピアーズに逆転負けを喫していたかもしれず、まずはその正確なキックが勝利をもたらした。
 前半3分の先制トライも、後半13分の釜池のトライも、森田のコントロールされたキックがもたらしたもの。打つ手が次々とはまり、チームの勢いを最後まで衰えさせなかった。
 しかし、試合後にピーター・ラッセルHCが「卓越したリーダーシップを発揮した」と評価したように、司令塔であるSOとして終始冷静にゲームを組み立てたことが、今季の成長を象徴する。
 昨季までSOを務めた田村優がキヤノンイーグルスに移籍し、チーム外からは不安視する声もあったが、今季は全試合で先発し、チームに4つの勝ち星をもたらした。
 メンバー全員の潜在能力を引き出して試合の結果に結びつけるという意味で、森田は田村以上の活躍を見せているのだ。
「チームは、昨季よりいい状態できていると思います。勝たなければならない試合を落とさずにいるのがその証でしょう。リコーブラックラムズ戦に負けたのはもったいなかったけど、これからは、昨季トヨタ自動車ヴェルブリッツに勝ったように、上位のチームにもチャレンジしたい。
 僕自身のプレーに関して言えば、試合に慣れてきて、ゲームのなかであたふたすることもなく、上手く処理できていると思います。今は、相手の動きをしっかり見ることを重視していて、相手の弱いところを狙ってアタックしたいと考えています」
 だから、クボタ戦も、一時は10点差をつけられたが、動じることなく「攻めればトライを取れる」と確信できた。それが、今季先発を続けて成長した部分なのである。
 プレースキックについては、ボールが新しくなったことに対応するため、思い切ってキックティーを変えた。ラッセルHCが招いたキッキング・コーチにも指導を仰ぎ、今はピンポイントを蹴り抜くように心がけている。
 前節のヤマハ戦では、後半早々の後藤輝也のトライ直後に比較的イージーなコンバージョンを外したが、それも「ポイントを外したから」とその場で分析。続くジョージ・リサレのトライ後には修正して、タッチライン際からの難しいキックを成功させた。
 試行錯誤を繰り返しながら、精度を上げているのだ。
 そんな森田の持ち味は、意外なことに防御力の強さにある。
「ディフェンスは僕の持ち味であるし、僕が試合に出るのもそこが評価されているから、という自覚があります。ラグビーは“体を張ってなんぼ”というスポーツなので、体を張って初めて信頼関係が生まれる。周りに信頼されないと、アタックのときにみんなが動いてくれませんからね」
 この試合では、クボタSOで日本代表でもある立川理道(天理大学出)とトイメンで対戦した。立川は前半で足を痛めて交代したが、同志社大学時代以来となる“対決”だった。
「僕が2年生で立川が1年生のときには天理大に勝ちましたが、あとは勝てなかった。だから、今日は久しぶりに勝った、という感じですね(笑)」
 次節は関西の古豪・近鉄ライナーズとの対戦になる。
「近鉄はFWが大きいので、僕がキックを使いながら味方FWをどうコントロールするか」をカギに挙げる。そのための秘策は――次節に名古屋で披露する予定だ。
(取材・文:永田洋光)

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