グリーンロケッツ、ヤマハに肉薄しながらもチャンスを活かせずに敗れる!

info_category1.gif2017/10/10

 

  秋田県で初めて開催されたジャパンラグビートップリーグの公式戦が、NECグリーンロケッツ対ヤマハ発動機ジュビロ戦だった。
 この試合、最終的にヤマハが35―15とグリーンロケッツを下したが、グリーンロケッツにとっては12年度から続くヤマハ戦の連敗を止める絶好のチャンスだった。
 ヤマハは先発SOに2年目の石塚弘章を起用。ゲームキャプテンのFL西内勇人は、PGを狙うのに格好の位置でペナルティを得ても一切PGを狙わず、トライにこだわった。
 ヤマハの清宮克幸監督は、「SOに初めてヤマハのジャージーを着る選手を起用するチャレンジをしたが、ゲームキャプテンもチャレンジをしてしまった」と振り返ったが、FB五郎丸歩のPGで3点ずつスコアを刻み、点差を離してからアタックという、ヤマハのいつものゲームプランではなかった。
 つけいる隙はあったのだ。

 グリーンロケッツのキックオフで始まった試合は、1分過ぎに最初の防御でターンオーバーしたにもかかわらず、右タッチライン際で内側に戻したボールをふたたびヤマハに奪われて、攻撃に移れなかった。
 ものすごく小さなミスだが、ヤマハはここから攻撃を継続して5分にSH矢富勇毅がトライを奪って先制する。
 グリーンロケッツも、9分に右タッチライン際でWTB後藤輝也がCTB釜池真道に短いパスを通して前進。そこから今度は左に大きく展開し、逆サイドのWTB松浦康一がさらに外側に待つNO8アダム・トムソンにパス。タッチラインぎりぎりでボールを持ったトムソンは前方にキックを転がした。このとき、ヤマハにノーバインドのタックルがあったとしてペナルティを得たグリーンロケッツは、ボールをタッチに蹴り出してラインアウトから攻める。
 そして、右へフェイズを4つ重ねたところでヤマハの反則を誘い、11分にSO森田洋介がPGを決めて、3―7と追い上げた。
 さらにグリーンロケッツは、続くキックオフからの攻防で、タッチライン際で後藤が相手ボールに働きかけて反則を誘い、相手陣でのラインアウトにして攻める。
 3次目で右へボールを折り返して後藤が大きく前進。今度は、FL大和田立がラックのまん真ん中を破って一気にゴールラインに迫る。ここはヤマハの懸命な防御にトライに届かなかったが、さらに左へ展開。さらに松浦が防御のギャップに走り込む。
 時間は14分。
 ゴールライン上でタックルを受けた松浦が、グラウンディングできたかどうか、判定はTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)に委ねられた。
 しかし、判定はトライが認められず、松浦が、タックルを受けた後もボールを離さなかったとしてノット・リリース・ザ・ボールに。
 グリーンロケッツは、絶好の逆転機を逃したのだった。



 それでも、21分に自陣ゴール前のモールで相手ボールを奪うと、後藤がインゴールから強気に走り出てハイタックルを誘い、ピンチを脱出。続くラインアウトからボールを動かし、ヤマハ陣22メートルラインまで攻め込むが、ここでこの試合が初先発となったLOサナイラ・ワクァがノックオン。しかも、そのボールを奪われ、ラックで反則を犯して自陣に後退する。
 ここからグリーンロケッツは、長い防御を強いられることになった。
 この間に、スクラムを押し込む場面もあったが、レフェリーの「ユーズ(ボールを使え)」の声がトムソンに届かず相手ボールとなったり、細かいミスで反撃に転じられず、前半終了直前に矢富に2つめのトライを奪われて、3―14でハーフタイムを迎えることになった。
 瀧澤直キャプテンは、前半終了間際のディフェンスについてこう振り返る。
「ディフェンスで自陣にいる時間が長過ぎました。スクラムはいいスクラムも組めていたのですが、強いヤマハのスクラムに対抗するために力を使って、それがボディブローのように効いてきた。それで出足が止まった部分がありました」
 しかし、後半立ち上がりに、いきなり反撃のパンチをクリーンヒットさせたのはグリーンロケッツだった。
 ヤマハが蹴り込んだキックオフを確保してからの蹴り合いで、森田がヤマハ陣に向けてハイパントを蹴る。追走するのはトムソンだ。
 ヤマハは五郎丸がこのボールを捕球しようとしたが、トムソンの姿が目に入ったのかボールを落とす。そこに後藤が走り込み、ボールを奪うや俊足を飛ばして一気にインゴールまで駆け抜けた。森田のコンバージョンは外れたが、これでスコアは8―14。
 瀧澤キャプテンが言う。
「前半最後の10分間を守り切って3―7で折り返していれば、後藤のトライで逆転できた。そうなれば展開も違っただろうし、それが勝負の綾になりました」
 その後もグリーンロケッツは、自陣ゴール前のピンチのラインアウトで、トムソンが相手ボールを奪うなど耐え、10分には自陣から後藤が抜け出してチャンスを作る。ここで森田がキックパスで逆サイドの松浦を走らせたが、ボールは松浦の手に収まらずラインアウトに。
 13分には、スクラムからトムソンとSHリー・カドゥが8→9のプレーを見せて、カドゥが抜け出す。が、タックルされてボールを落とし、追加点を奪えない。
 こうしたアタックのミスが反撃ムードをしぼませ、18分、27分と、ヤマハの強力ランナー、CTBマレ・サウに連続トライを許して、スコアを8―28と一気に引き離された。
 このままでは終われないグリーンロケッツもすぐに反撃し、31分には、トムソンに替わってNO8に入ったジョージ・リサレが右隅にトライを決め、難しいコンバージョンも森田が決めて15―28と追い上げた。
 13点差で残り時間が10分を切った苦しい状況にもかかわらず、グリーンロケッツはなおも攻める。トライとコンバージョンで7点を加えればスコアは22―28となり、たとえ敗れても、7点差以内負けのボーナスポイントを獲得できる上に、ヤマハのボーナスポイント獲得も防ぐことができるからだ。



 ビッグゲインはなくとも、着々とフェイズを重ねたグリーンロケッツは、残り数分というところでヤマハの22メートルラインを越えて攻め込み、ボールを大きく動かして防御を揺さぶる。
 そして、38分。
 14個目の左中間ラックからボールを受けたリサレが大きく突破。ディフェンダーを引きずりながら力強く前進し、ゴールラインまであと数メートルと迫る。
 リサレが倒されたところでラックができるや、途中出場のSH山田啓介が左にパスを放ったが、これをヤマハWTB伊東力がインターセプト。そのまま約100メートルを走り切って、ダメ押しのトライを挙げた。
 最終スコアは15―35。
 グリーンロケッツはボーナスポイントを獲得できず、逆にヤマハがトライ数で3差をつけてボーナスポイントを獲得。同じホワイトカンファレンスに所属するチームとして、痛い5ポイント差をつけられる敗戦となった。
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチは、ゲームプランがある程度は功を奏したにもかかわらず、最後はスコアを離されたゲームを、こう振り返った。
「前節、神戸製鋼コベルコスティーラーズがヤマハを破った試合をヒントに、いい準備ができたし、今日の選手たちのパフォーマンスを誇りに思う。同じようなマインドセットで、次節のクボタスピアーズ戦に臨みたい。ただ、毎週毎週、どんな相手にも勝つチャンスを作り出しながら、判断ミスやオプションの選択ミスで相手にボールを与えて負けている。そういう状況判断力を高めるのが、これからの課題になる」



 瀧澤キャプテンも、同様にボールキープの大切さを強調する。
「いいディフェンスでボールを取り戻したあとに、自分たちのミスで相手にボールを渡したり、いいスクラムが何本かあったにもかかわらず、試合のなかで相手にペナルティを与えるようなスクラムを組んでしまって、コンスタントにいいスクラムを組み続けることができなかった。それが反省点です。今季、これまでの7試合を振り返れば、みんなが献身して粘り強くディフェンスできる場面がある反面、それができなくて簡単にトライを取られる場面もあって、敗因につながっている。ただ、勝つことができないなかでも最後まで粘り強くディフェンスできるようになったのは、昨季よりもいい部分でしょう。
 でも、それはディフェンスの時間が長いことの裏返しでもあるので、もっと長くボールをキープできるようにしたい。ボールをキープするのが一番いいディフェンスですからね」
 この試合も、結局は反撃に転じたところでボールを失う場面が多く、それがヤマハを追い詰めながらもスコアを逆転できない要因となっていた。
 次節は、ホームの柏の葉公園総合競技場にクボタを迎え撃つ“千葉ダービー”だ(15日 13時キックオフ)。
 クボタは昨季、15―15と引き分けた相手であり、今季はともに3勝4敗勝ち点13と、まったく同じ成績を残している。カンファレンスが違うために順位争いには直接影響しないものの、さまざまな意味で決着をつけるべき、負けられない一戦だ。
 この1週間でグリーンロケッツが、どこまでボールをキープし、それを的確な状況判断で動かせるようになるか。
 次節は、修正力が問われる「ホームゲーム」になる。

 




 

 ニュージーランド代表オールブラックスとして29キャップの経歴はダテではない。
 昨季まで4シーズンはキヤノンイーグルスでプレーしていたが、今季は、スコット・ヒギンボッサムの負傷もあってグリーンロケッツに加入。第5節の宗像サニックスブルース戦からは、先発NO8として、ボール争奪やラインアウトで磨き上げた「ワザ」を見せている。
 前節のリコーブラックラムズ戦では、相手ボールを奪うジャッカルを連発。
 今節のヤマハ発動機ジュビロ戦では、相手ラインアウトを3回奪い取った。
 特に、前半16分に、自陣ゴール前でヤマハのラインアウトという大ピンチで見事にスチールを成功させ、ヤマハにモールを組むチャンスを与えなかった場面は、本領発揮だった。
「ヤマハのような、セットピースのいいチームに対しては、セットプレーを崩すことが大切だ。その点で、グリーンロケッツはしっかりとゲームプランを立てて臨んでいる。相手のラインアウトを奪うのも、そういう準備があって初めて可能になる。それから、ジャッカルは確かに自分の強みだけど、レフェリーと上手くコミュニケーションを取って、反則とならないようにプレーすることが何よりも重要。だから、常にコミュニケーションを心がけている」
 実は、シャイで、取材を受けるのが好きではない。「ノーコメント」と逃げ回るのを捕まえての、インタビューだった。
 しかし、ファンへの対応では、そんな「シャイさ」が消える。
 ラグビーどころ秋田の熱心な高校生ファンに写真撮影を頼まれれば、気軽に応じて、自ら「自撮り」のシャッターを押す。ラグビー王国で、ファンへの対応を心がけてきた積み重ねが、トップリーグでも表れているのだ。
 昨季まで「敵」だったグリーンロケッツについては、こう話す。
「昨季はアタックのチームだと思っていたが、今季はみんながいいマインドセットでゲームに臨んでいる。ディフェンスに体を張るし、FWのメンバーも信頼している。今日はセットピースで頑張っていたからね。そういう仲間とプレーするのを楽しんでいる」
 しかし、勝利をつかむための“苦言”も忘れない。
「勝つために大切なのは、毎週、毎週の小さな積み重ねだ。そして、勝てる相手にしっかりと勝ち切り、格上の相手にも常にチャレンジする気持ちを忘れてはならない。グリーンロケッツの選手たちは、みんなそれぞれいい選手たちだが、惜しむらくはまだ個人でのミスが多い。それは減らさなければならないし、そのためにも、お互いにサポートすることが大切だと思う」
 いよいよ深まるシーズンに、“ボール奪取職人”トムソンが機能すれば、グリーンロケッツの防御力がより高まる。その上でミスを減らしてボールをキープできれば――。
 現在、ホワイトカンファレンス4位につけるグリーンロケッツの飛躍のカギを、大ベテランの新戦力が握っているのだ。

(取材・文:永田洋光)

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