リコーとの直接対決に敗れたグリーンロケッツ、3位浮上ならず!

info_category1.gif2017/10/02

 

 ホワイトカンファレンス3位のリコーブラックラムズと、勝ち点差1で追いかける4位NECグリーンロケッツ。
 秩父宮ラグビー場での「直接対決」は、張り詰めた緊張感のなかでゲームが推移した。
 前半20分間は、お互いに相手陣22メートルラインを越えて攻め込むことができず、中盤での激しい攻防が連続。風下のグリーンロケッツは、少しずつ陣地を取られながらも、堅い防御で対抗した。
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)が前節、宗像サニックス戦のあとで、「リコーにはタマティ・エリソン、ロビー・ロビンソン、アマナキ・ロトアヘアといった強いランナーがいるので、彼らを封じられるように準備をしたい」と話した通り、彼らに走り込まれても組織で守り、大きなブレイクを許さなかった。
 2分には、瀧澤直キャプテンが背後から相手を抱え込むようなタックルでボールを地面に置かさずに、マイボールのスクラムに。
 9分には、NO8アダム・トムソンが、自陣22メートルライン付近のラックで、しっかり両足で踏ん張って相手ボールを奪う、得意技の「ジャッカル」でペナルティをもぎ取って、ピンチを救う。
 アタックに転じた場面では、7分に、SO森田洋介のショートキックをCTB釜池真道が捕ってハーフウェイライン付近まで前進。ラックから、今度はSH木村友憲がゴールライン目がけてキックを蹴り、WTB後藤輝也を走らせたが、ボールが上手く転がらずにリコーにタッチに逃れられた。
 13分には、トムソンの2つ目のジャッカルで反則を誘い、ラインアウトからアタック。
 FL大和田立が激しく直進して防御を押し下げ、今度は逆の右サイドにボールを動かしてHO臼井陽亮→後藤とつなぎ、ラックに持ち込む。そこに大和田が遠い位置から素晴らしいスピードで走り込んで防御を突破。しかし、フェイズを5つ重ねたところでノックオン。
 16分にも、WTB竹中祥のカウンターアタックで起点を作って左へ展開。タッチライン際でパスを受けた釜池が、内側にサポートしたCTBアマナキ・サヴィエティにパスを通し、サヴィエティが力強く前進する。しかし、タックルされたところで無理なパスを通そうとしてリコーにボールを奪われてしまう。
 我慢強いディフェンスでピンチを防いで反撃に転じても、アタックでは我慢ができず、チャンスを広げようと焦るあまりミスが出て得点に結びつけられないのだ。



 そんな試合の均衡が崩れたのは23分。
 リコーの“危険なランナー”WTBロトアヘアに、タッチライン際で初めてのラインブレイクを許したことが発端だった。
 ゴール前まで迫られたこのピンチに駆け戻ったサヴィエティは、背後からタックルを敢行すると同時に相手ボールを奪ったが、相手をつかんだまま反則覚悟のプレー(タックラー・ノット・リリースかつノット・ロールアウェイ)をした――と判定されてシンビンに。リコーに先制PGを許した上に、続く10分間を14人で戦う非常事態となった。
 それでも、直後のキックオフからリコーにプレッシャーをかけてノックオンを誘い、22メートルライン付近でのスクラムを得る。しかし、有効なアタックには結びつけられず、逆に33分にはロトアヘアに2度目のブレイクを許し、フェイズを重ねられて、ついにゴールラインを明け渡した。
 サヴィエティがピッチに戻る直前に奪われたこのトライ(コンバージョン成功)で、スコアは0―10。それでもピッチにいる選手たちは、平静さを保っていた。
 瀧澤キャプテンが言う。
「PGとトライで10点を失ったことは確かに大きかったのですが、14人でずっと自陣に押し込められる苦しい防御をしながら、失点を1トライに抑えたと考えることもできた。イエローカードが出たのは反省点ですが、チームとして焦りはなかった」
 15人に戻ったグリーンロケッツは、そこから反撃に出た。
 37分には、相手ラインアウトのこぼれ球を木村が拾い、ラックから右に展開。森田→釜池とつなぎ、走り込んだFB吉廣広征が大きく突破。だが、後続のサポートと呼吸が合わずにゴール前へキックを転がし、リコーにしのがれた。
 続くラインアウトからグリーンロケッツはふたたび攻め、森田のキックを拾い上げた釜池が前進してチャンスを作り出す。が、ここではリコーのCTBエリソンにジャッカルを食らい、スコアボードに得点を刻めないまま試合はハーフタイムに突入した。



 グリーンロケッツは、風上に立つ後半に反撃を開始する。
 再三のラインブレイクで気を吐いた釜池は、「後半は風上だったので、40分という時間を使いながら逆転まで持っていければ、と思っていた」と、振り返る。
 果たして、2分にリコー陣に入ったラインアウトでペナルティを得ると、これをタッチに蹴り出してトライを奪いに行った。
 しかし、モールを押し込めずにバックスに展開。サヴィエティが突進して作ったラックから、大和田がもう一度タテに切れ込んだがタックルされ、サポートが遅れてノット・リリース・ザ・ボールの反則をとられた。
 7分には、吉廣のカウンターアタックから後藤→サヴィエティとつないでゲイン。フェイズを重ねてふたたびリコー陣に攻め込み、ペナルティを得るとまたもやラインアウトを選択したが、ここもハンドリングエラーでチャンスをつぶす。
 その後も、グリーンロケッツはボールを獲得するたびに大きく攻め込むが、決定的な場面を作り出せない。
 17分に、森田が相手のパスをインターセプトして反撃に出たところでペナルティを得ると、19分に初めてPGを狙い、森田が40メートルのキックを決めてスコアボードにようやく得点を刻んだ。20分近く攻め続けてわずかに3点と効率は悪かったが、それでもスコアは3―10と7点差。残り時間を考えれば、十分に逆転は可能だった。
 ところが――。
 続くキックオフリターンから地域をとるために蹴ったボールを、リコーWTB長谷川元氣がカウンターアタック。パスを受けたSOロビンソンがグリーンロケッツの防御を大きく切り裂き、一気にゴール前まで攻め込まれた。
 そしてフェイズを5つ重ねられて、ノーホイッスルで長谷川にトライを許し、せっかく7点差に詰めたスコアを3―15と離された。
「PGを返したあとも、ずっとリコーのゴール前で戦えれば良かったのですが、直後にトライをとられたのが痛かった。それまでずっとキックのあとはしっかりとボールを追ってディフェンスしていたのに、あのときだけポッカリと穴が開いた。あそこが悔やまれます」(釜池)



 おまけに、反撃に出ようとした次のキックオフが、ボールが飛びすぎてデッドボールラインを割り、センタースクラムへと戻される。
 張り詰めた緊張感のなかで推移したゲームが、一気にリコーへと傾いたのだ。
 それまで長時間の防御を強いられ、反撃に出てもトライを奪えなかったグリーンロケッツは、少しずつ運動量が落ち始め、逆にリコーがかさにかかって攻め立てる。
 29分には、LOロトアヘアポヒヴァ大和にラックの真ん中を割られて前進を許し、そこから攻められてトライを奪われ、トライ数は0―3とボーナスポイントを許す展開に。
 終了直前にもトライを追加されて、最終スコアは3―29。
 瀧澤キャプテンは、「同じカンファレンスで順位を争うリコーに5ポイントの差をつけられたのが非常に悔しい。ただ、課題を修正して、ふたたびリコーと切磋琢磨する順位へと上げていきたい」と、苦い胸の内を吐き出した。
 ラッセルHCは、「不用意に相手にボールを渡す場面が多く、ポゼッションを得点に結びつけられなかった。チャンスはあったが、判断を間違えた場面が多かった」と、チャンスにキックでボールを手放してしまっていたことを、次節に向けた修正点に挙げた。
 次節は、同じカンファレンスで2位にいるヤマハ発動機ジュビロとの対戦だ(8日 秋田市あきぎんスタジアム 13時キックオフ)。
 ヤマハは、30日に神戸製鋼コベルコスティーラーズに敗れて勝ち点は20のまま。リコー戦を落としたグリーンロケッツも13ポイントのままだが、ここで勝てば上位浮上の足がかりにすることはできる。
 昨季のトップ4チームに、若返ったグリーンロケッツがどう挑むか。次節も目が離せない。





 悔しい敗戦となったリコーブラックラムズ戦で、今季からグリーンロケッツに加わった“国際派”SHが、“秩父宮デビュー”を果たした。
 91年5月生まれ。26歳の山田啓介だ。
 山田は、10歳で両親とともにでシンガポールに移住。現地のシンガポール・ジャパニーズで楕円球に触れ、12歳のときには「ラグビーで生きていきたい」と思うようになった。
 その後、17歳のときに帰国してつくば秀英高校2年に編入。日本の高校ラグビーも経験して卒業後はオーストラリアに渡り、メルボルンにある大学に進学した。ラグビーのためではなく、もう1つの夢である教職に就くためだった。
「子どもと接することが好きなので、教職に就きたいと思っていました。でも、トップレベルのラグビーにもチャレンジしてみたかった。ラグビーを始めて以来、こういう大きな舞台でラグビーをやるのが夢だったので、今は非常に嬉しいです」
 メルボルンでも、フッツクレイというクラブに所属してプレーを続け、それは保健体育の教職資格を取って中高一貫校に就職し、日本語を教えている間も変わらなかった。
 2年前には、「ラグビーで生きていきたい」夢をかなえるために、休職してグリーンロケッツに練習生として参加。しかし、夢はかなわず、今季「最後のチャレンジ」でトップリーガーとなり、夢を叶えたのだ。
 山田は、実は前節の宗像サニックスブルース戦が、トップリーグデビューだった。
 しかも、後半22分にピッチに入るや、9分後には後藤輝也から自陣でパスを受けて一気に80メートルを独走。華々しいトライで自らのデビューを祝福した――はずだったが、あいにく後藤のパスがTMOでスローフォワードと判定されて、“幻の独走トライ”となった。
 それでも、37分に、ふたたび後藤からパスをもらい、今度こそ正真正銘の初トライを挙げた辺りに、何か“持っている”雰囲気が漂う。
「もらった瞬間に“いける”と思ったのですが、まさかTMOとは!デビュー戦の初トライとしては印象的ですから、あれが初トライなら超嬉しかった(笑)。でも、最後にトライを取れたので、良かったです。ただ、先週はもう嬉しくて嬉しくて緊張する暇がなかったのですが、今週は緊張しました。ベンチスタートのプレーヤーとしても、流れを変えるプレーができなかった点が悔しい。自分の役割を果たせなかったという気持ちになります」
 持ち味は、オーストラリアで学んだ強気のボールさばき。そして、味方が抜け出せば忠実にサポートして、いつでもパスを受けられる位置につくことも心がけている。
「トップリーグは、これまでプレーしていたオーストラリアのクラブと、プレーのスピードがまったく違います。とにかく速い。でも、コンタクトやフィジカルの部分では、向こうで大きな選手と試合を重ねてきたので、今の僕でもトップリーグにはついていけます」
 これからは、リザーブでも先発でもどん欲に試合に出ることを狙っている。
「先発かベンチスタートかにはこだわりません。ベンチのプレーヤーには流れを変えてやろうという気持ちがあるし、また変えなければ、というプレッシャーもある。今はなるべく多く試合に出て、自分の経験値を上げていきたい。いくら練習をしても、試合に出ないと経験できない部分がありますからね」
 グリーンロケッツに現われた、異色の経歴を持つ強気のSHが、今季の若いチームにさらにインパクトを与えて“大化け”させられるか。
 背番号が21でも9でも、山田の背中に注目だ。
 
(取材・文:永田洋光)

アーカイブ