“ギラギラした泥臭さ”で6トライ! グリーンロケッツ、豊田自動織機に快勝!

info_category1.gif2017/09/04

 ガツガツ。
 ゴリゴリ。
 個人的な印象を述べれば、NECグリーンロケッツが6トライ中5トライをバックスで奪い、豊田自動織機シャトルズに42―26と快勝した試合は、核となる部分を音にして表すと、そうした痛そうな擬音の連続になる。
 スクラムからバックスにボールを展開して考え抜かれたサインプレーを仕掛け、相手に指一本触れられずにトライを奪う――といった“痛くなさそう”なプレーは、この6トライのなかに1つもなかった。トライに至る過程では必ず激しいコンタクトがあり、その力強さが相手防御を接点に集中させる効果を生んで、結果として接点から少し離れたところに快足ランナーが駆け抜けるスペースができた。



 たとえば、前半5分にWTB後藤輝也が素晴らしいスピードでゴールポスト真下まで独走した先制トライも、起点は、相手が蹴ったドロップアウトのボールをNO8ジョージ・リサレが体こと飛びかかるようなジャンピングキャッチで確保したのが発端。ラックからパスを受けたFL大和田立も相手防御に挑みかかるように直線的に前進。続いてボールを持った瀧澤直キャプテンも、相手のタックルを受けながら衝撃をぐっとこらえて体を反転。ボールを味方に見せたところに後藤が走り込んだ。
 結末は華麗なトライでも、プロセスは、肉体の強さを前面に出したフィジカルなプレーの連続だった。
 熊谷皇紀コーチは、そんなプレーぶりをこう評した。
「今は、チーム全員がボールを持ちたくてギラギラしている。だから、ブレイクダウンも激しくなるし、積極的にボールを持とうと、相手に捕まった味方のところに駆けつける。今日は、そういう良さが出ましたね」
 この試合でマン・オブ・ザ・マッチとなった、北海道出身の大和田が挙げた2つ目のトライも、バックスがFWに後れを取るなとばかりに泥臭いプレーを見せて導いた。
 CTBマリティノ・ネマニが激しいタックルで相手ボールを奪い、そこから右に展開。SO森田洋介が蹴ったショートキックをFB松浦康一が懸命に追走して圧力をかけ、こぼれたボールを、この試合でトップリーグ通算100試合出場のHO臼井陽亮→瀧澤キャプテンとつないで、大和田がインゴールに飛び込んだのだ。
 松浦は、前節、試合直前に体調を崩した吉廣広征に代わって急遽FBで出場。この試合も先発で15番を背負ったが、防御に体を張るだけではなくアタックでも積極的にボールを運び、何度も厳しいタックルに見舞われながらチームを前に出した。31分に松浦が挙げた今季初トライも、豊田自動織機SOサム・グリーンにハンドオフを見舞ってタックルをふりほどき、棒立ちになったディフェンスの間を駆け抜けたものだった。



「先週は無我夢中でした。今日は、少し落ち着いてプレーできましたが、それでも必死でした」と話す松浦の“ギラギラぶり”は、ポジションにとらわれずに自分の嗅覚でスペースを見つけてトライランキング1位タイに躍り出た後藤とともに、バックスのなかで突出している。それが、ネマニと、もう1人のパワフルなCTBアマナキ・サヴィエティに集中しがちな相手防御を攪乱し、ランナーが積極的に前に出られるスペースを創り出す効果を生む。
 ギラギラする気持ちはさらなるトライを導いた。
 14―7と追い上げられた23分には、“100キャッパー”臼井が相手防御の真ん中をきれいに突破。サポートした松浦がWTB竹中祥につないで、竹中が嬉しいトップリーグ・レギュラーシーズン初トライを記録。
 その後の松浦のトライに続き、34分にはネマニがトライを奪ったが、ここは森田の冷静な判断が光った。
 ラックから出たボールを受けた森田は、隣にいる走る気満々のネマニを飛ばして松浦にパス。松浦も、外側にサポートした後藤にパス。タッチライン際を走る後藤に戻りの防御が殺到すると、後藤は冷静に内側にパス。そこには、直前のプレーで自分を飛ばされたネマニが忠実にサポートしていて、最後の場面だけを切り取れば“相手に指一本触れられない”トライとなった。
 そう。
 NECグリーンロケッツが、前節に続いて今季2勝目を挙げた豊田自動織機戦は、チームのカルチャーがよく現れた“泥臭い”ゲームだった。
 前半にたたみかけた5トライは、こうした泥臭さが勢いを引き出したところに大きな要因があった。

 だが、泥臭さは、悪い意味でも顔を出した。
 特に、14―0とリードした前半10分過ぎからは、気持ちが空回りしてボール争奪戦でペナルティを連続的に犯し、13分にトライを奪われる原因を作った。
 前半終了間際に豊田自動織機SH木村貴大に奪われたトライは、相手の強みであるCTB、JJ・エンゲルブレヒトにラインブレイクを許したのが発端で、ゴール前のスクラムをコントロールされ、ガラ空きとなった右のスペースをアタックされた。これは相手の意図通りのアタックだったが、後半立ち上がり4分にふたたび豊田自動織機に奪われたトライも、完全に気持ちが空回りした結果の反則が起点。
 後半風下に回ったグリーンロケッツは、豊田自動織機のキックオフリターンをしっかりと守ってターンオーバー。相手陣から反撃に出て、いいテンポで8つフェイズを重ねた。ところが、FL細田佳也がラックからパスを受けたところで、おとり役のリサレが気合いが入り過ぎて相手に接触。オブストラクションの反則をとられたのだ。
 しかも、グリーンロケッツは一度ボールを再獲得しながら、森田のハイパントに対してタックルが単発でロングゲインを許し、そこからボールを継続された。これでスコアが35―19と追い上げられただけではなく、「終盤に攻められたときに、キックで地域を進めることに迷いが生じた」(森田)結果につながった。



 10分には、ギラギラする気持ちの塊のような臼井が、この試合で同じくトップリーグ100キャップを達成した豊田自動織機PR川俣直樹に背後から強烈なタックルを浴びせたが、TMOの結果タックルした部位が高いと判断されて、シンビンになり、10分間をFW7人で戦う最大のピンチを迎えた。
 竹中が急遽FLの位置に入って再開したスクラムで、グリーンロケッツは立て続けに2度ペナルティを取られ、もう一度同じ反則を繰り返したらイエローカードの大ピンチに。しかし、そこから1度の組み直しを経て組まれたスクラムは、低く強固でびくともしなかった。
 しびれを切らした豊田自動織機はサイドアタックを仕掛けたが、グリーンロケッツは全員防御で対抗。最後は豊田自動織機がバックスに展開したところでエンゲルブレヒトがノックオンを犯して、最大のピンチを切り抜けた。
 敗れた豊田自動織機の長谷川真人キャプテンは、この攻防をこう振り返った。
「風上に立つ後半に、気持ちを切り替えて逆転を狙いましたが、NECのダイレクトプレーを受けて、なかなか気持ちを切り替えられなかった。特に、ゴール前で攻め続けているときに、FWでこだわりたかったのにトライを奪えず、バックスに展開したところでハンドリングエラーが出て、NECに流れを持って行かれた。本当に悔しいゲームでした」
 長谷川キャプテンが言う「ダイレクトプレー」とは、グリーンロケッツがギラギラする気持ちで見せた、ボールを持ったら迷わず前に出る泥臭いコンタクトプレーのこと。つまり、泥臭さが試合の通奏低音となって流れを決定づけ、勝負を分けたのである。
 もっとも、ピンチを脱したグリーンロケッツが、後半20分過ぎから36分にネマニのトライが生まれるまでのかなり長い時間をアタックに費やしながら、なかなかチャンスをものにできず、豊田自動織機のやる気を断ち切ることができなかったのも事実。マン・オブ・ザ・マッチの大和田も、31分に11フェイズを重ねたアタックの末にトライ寸前でノックオンを犯し、「まだまだやることがたくさんあります」と、ミスを悔やんだ。
 こうした空回りがいくつも重なって、試合終了直前にトライを奪われてボーナスポイントを失ったわけだが、終盤の攻防を、交代してベンチから見ていた瀧澤キャプテンはこう総括した。
「トライを奪った時間が少し早くて、残りの3分間をどう守るのかなと見ていましたが、最後はボーナスポイントを阻みたい豊田自動織機の気持ちが僕たちを上回った。4トライを奪われて、最高の結果にできなかったのは、僕たちの甘さだし、反省しなければなりません。ただ、こういう反省を勝ってできるのが大きい。ボーナスポイントを1つ失って、終盤の時間の使い方を全員が学べたのが収穫でした」



 ピーター・ラッセル ヘッドコーチも、「FWがしっかりしたプラットホームを作ってくれて、そこに選手たちが走り込んで短いパスで有効なアタックができた。ブレイクダウンでもサポートでも選手の熱意が感じられて、これが我々のラグビーだと証明できた。個人の名前を挙げれば、大和田や松浦が良く前に出ていたが、瀧澤キャプテンを始め、全員のパフォーマンスも良かった」と評価した。しかし、「目指すチームの完成形に近づいているか」という質問には、「まだまだ。道半ばにも達していない」と、苦笑しながら首を振った。そして、中5日と短い準備期間で次節の神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦(8日 秩父宮ラグビー場 19時30分キックオフ)に臨むことを踏まえて、「ブレイクダウンにより早く、より低く激しく入って、戦うよう準備をする」と決意を語る。
 昨季は第9節で同じ秩父宮で対戦し、38―24と快勝した神戸製鋼に、今の“ギラギラした泥臭さ”をぶつけて連勝を3に伸ばせるか。
 開幕から4試合目で、グリーンロケッツがビッグ・チャレンジに挑む。





2008年度の開幕戦、対神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦に、網野正大と交代で途中出場して以来、NECグリーンロケッツでスクラム最前列中央のHOとして試合出場を積み重ね、臼井陽亮は、2日の豊田自動織機シャトルズ戦でついに100試合出場を達成した。
 10年目での快挙達成に、チームはピッチに入場する際、臼井を先頭に立てて敬意を表した。
 臼井も、チームの祝福にプレーで応えた。
 前半8分にはFB松浦康一のキックチェイスでこぼれたボールを素早く拾って瀧澤直キャプテンにつなぎ、FL大和田立のトライに結びつけた。
 23分には、自ら相手防御の真ん中を突破。そのままゴール前まで走って、WTB竹中祥にトップリーグ公式戦初トライをプレゼント。
 しかし、後半11分、この日同じく100キャップとなった豊田自動織機PR川俣直樹に強烈なタックルを見舞うと、戸田京介レフェリーはTMOを要求。その結果、タックルした部位が高くて危険と判定されてイエローカードに。記念試合でシンビンとなるオマケがついた。
「100試合目だからというより、今までの自分がそのまま出た試合でした。気合いを入れて試合に臨みましたが、相手に抜かれた場面もあったし、いいプレーもあった。いつも通りでした。
 実は、100キャップは意識しないようにしていたのですが、みんなが“臼井の100キャップを祝おう”と盛り上げてくれた。そういうみんなの前でプレーできたことを誇りに思いますし、感謝しています」
 この間、グリーンロケッツは浮き沈みを繰り返した。
 臼井自身、これまでの100試合にはいい思い出も、苦い記憶もあるという。
「特に印象に残っているのは、サントリーサンゴリアスに34―33と逆転勝ちした試合です(13年9月)。でも、自分が初めて先発した試合で、ノットストレートを3回か4回連続してやってしまったことも、苦い思い出として残っています。デビューをしくじった、そんな気持ちでした(笑)」
 トップリーグ2試合目となった08年9月の横河電機アトラスターズ戦だった。
 臼井は、15年W杯を前に「僕はまだW杯を諦めていません」と、力強く話したこともある。結果としてW杯代表には選ばれなかったが、19年に日本で開催されるW杯まであと2年。今でも世界にチャレンジする気持ちを持ち続けている。
「W杯はまだ全然諦めていません。夢は世界で戦うことですから。プレーを続ける限り、いいパフォーマンスをしてジャパンに選ばれるのが夢ですし、そこに向かってずっと努力しています」
 100試合出場を達成できたのも、常にいいパフォーマンスを求める意識のたまものだった。
「いつもぶれないように、質の高いパフォーマンスを出せるよう準備しています。100キャップは、自分が試合に出続けた結果として到達したわけで、目標にしていたのではありません。チームのために自分ができることを探して試合に臨む、その繰り返しです。特に、HOというポジション柄、セットプレーのマネジメントをしっかりできるように心がけています」
 だから、100試合目を終えた今、視線の先にあるのは101試合目の次節、神戸製鋼戦だ。
「今日でチームは2連勝ですが、連勝を伸ばすのも止めるのも自分たちの準備次第。月曜日からしっかり気持ちを切り替えて、勝つために何をすべきかを、チームで共有したい」
 101試合目にかける意気込みが強いのには、もう1つ理由がある。
 札幌での豊田自動織機戦には、紗菜(さな)夫人、長女で3歳の歓歌(よしか)ちゃん、生まれたばかりの長男・奏士朗(そうしろう)ちゃんと家族が駆けつけて100キャップを祝ってくれたが、ご両親は都合が合わずに来られなかった。そんな両親が、8日は秩父宮ラグビー場に駆けつけてくれるのだ。
「両親の前で結果を残せるように、101試合目も頑張ります!」
 そして、体と気持ちが続く限り、ピッチに立ち続けることも宣言する。
「とにかく試合に出ること。ケガをしないこと。パフォーマンスを高く保つこと。それを心がけて、100試合まできた。まだまだ上には上がいますが、出られる限りは、試合に出続けたい」
 そんなベテランの両肩に、今季のグリーンロケッツの躍進がかかっている。

(取材・文:永田洋光)

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