「モールでトライ」の決意が生んだ初勝利! グリーンロケッツ、コカ・コーラに快勝!

info_category1.gif2017/08/28



「嬉しいの一言ですよ!」
 瀧澤直キャプテンが破顔一笑して、ボーナスポイント獲得の感想をそう言い切った。
 第2節コカ・コーラレッドスパークス戦は、開幕戦を落として“黒星発進”した両チームにとって、喉から手が出るくらい欲しい今季初白星をかけた戦いだ。
 そして、NECグリーンロケッツは勝った。
 前半に4トライ、後半にも3トライを奪い、コカ・コーラを2トライに抑えての快勝。念願のボーナスポイントも獲得したのだから、口調もなめらかだ。
 しかし、こう付け加えるのも忘れなかった。
「でも、今日はボーナスポイントよりもまず勝つことを優先していました。だから、試合中にトライ数はあまり考えなかった」
 どん欲に、ひたむきに勝利を追求した結果が7つのトライにつながったのである。

 この試合、勝負の分かれ目は、実は立ち上がりにあった。
 4分過ぎ。
 コカ・コーラはスクラムからアタックを仕掛けてラックを8連取。グリーンロケッツも、グラウンドに広く防御ラインを敷いて大きな突破を許さない。
 アタックの我慢とディフェンスの我慢。
 そんな我慢比べが続くなかで、コカ・コーラCTBティモシー・ラファエレが、防御を引きつけながら背中越しにパスを放ってWTB築城昌拓を走らせた。虚を突かれたグリーンロケッツは、FL細田佳也が懸命にタックルしたがラインブレイクを許し、いきなり大ピンチを迎えた――はずだったが、ラファエレのパスがスローフォワードと判定されて事なきを得た。
 猛暑で有名な熊谷で声援を送るサポーターの背中に、冷たい汗が流れた瞬間だった。
 グリーンロケッツは、この小さな分岐点を見逃さずに攻めた。
 6分にペナルティキックを得ると、SO森田洋介がタッチに蹴り出してコカ・コーラ陣22メートルライン手前のラインアウトに。そして、モールを組んだ。
 この場面を、コカ・コーラの山下昂大キャプテンはこう振り返った。
「地域的に考えて、あそこはモールを組んでもどこかでボールを動かしてくるだろうと考えていました。だから、モールをしっかり組み止めることができずに、ダラダラと押されてしまった」
 そう。グリーンロケッツは、一気に25メートル近くモールを押し込み、NO8ジョージ・リサレがトライを挙げたのだ。
 時間は7分25秒。試合開始10分以内の、理想的な先制劇だった。



 瀧澤キャプテンは、記者会見で「あそこからモールでトライを狙っていたのか」と質問されると、胸を張って「狙っていました」と答え、こう付け加えた。
「練習のときから、あの地域は押せるところまで押すと決めていました。FWとしては、モールでトライを取ることも計算に入れていた。だからこそ、あそこまで押せた。最初から押すつもりでいないと、どこかでボールを出すことを考えたと思いますが、バックスにも、FWに行けるところまで行かせてくれと伝えて、チーム全体で共有しました。あのトライは意図的なトライでした」
 チーム全体の士気が上がる、プラン通りのトライだったのである。
 さらに15分にも、グリーンロケッツはコカ・コーラ陣内深くでラインアウトを得ると、迷わずモールを組んだ。
「また同じシチュエーションがきたら、もう一度モールでトライを取りに行こうと話し合っていました」とは瀧澤キャプテンの言葉だが、今度はコカ・コーラが対応し、モールを組止めようとFWがガッチリと固まった。
 モールの最後尾でボールを持っていたリサレは、ふと顔を上げて前を見た。
 誰もいない!
 迷わずボールを持ってモールから走り出し、そのままゴールラインを駆け抜けた。
 この連続トライでグリーンロケッツは、完全に波に乗った。



 18分には、コカ・コーラが防御の背後に転がしたキックを、CTBマリティノ・ネマニがよく駆け戻って確保。自陣22メートルラインのなかから、キックではなくランを選択して、一気にカウンターアタックを仕掛ける。
 この果敢な判断にチーム全員が素早く反応。
 そこからボールを継続し、着実に地域を進めていく。積み重ねたラックが14を数えたとき、ラックサイドの狭いスペースにWTB後藤輝也が走り込み、スピードと強さで防御を振り切ってトライを奪う。時間はまだ20分。
 ウォーターブレイクの前に3トライを奪ったのだった。

 ところが、スコアを17―0としたことで安心感が出たのか、その後はコカ・コーラの反撃に、防戦に追われることになった。
 35分には、コカ・コーラNO8ジョセフ・トゥペにわずかなスペースを突破されてトライを奪われる。しかも、コンバージョンが決まってリードは17―7と変わった。
 ここでコカ・コーラが連続トライを挙げてゲームを混沌とした状況に戻すのか。
 それともグリーンロケッツが追加点を奪って引き離しにかかるのか。
 大切な前半最後の5分間に、集中力を発揮したのはグリーンロケッツだった。
 ハーフウェイラインから自陣に少し入ったラインアウトからボールを継続。少しずつ地域を前進させ、8次目のアタックでネマニが左サイドで大きくブレイク。サポートしたFL大和田立がゴールライン付近に持ち込み、そこからFWが激しくアタック。相手の注意が密集近辺に引きつけられたところで、ボールは外側で待つ森田に。森田からボールを託された後藤がきれいに防御を抜き去ったところで、前半終了を告げるホーンが鳴り響いた。
 森田が2つめのコンバージョンを決めて24―7。
 グリーンロケッツが、いい流れを取り戻してゲームは後半に突入した。

 後半もまた、勝負の分岐点が早い時間帯にやってきた。
 3分にコカ・コーラにトライを奪われたグリーンロケッツは、6分にスクラムを押し込んでペナルティキックを得た。
 この時点のスコアは24―12。トライ数は4―2で、ボーナスポイント獲得にはもう1トライが必要だ。しかし、「勝利を確実にしようと考えた」瀧澤キャプテンはPGを選択。
 この日、前半に2本コンバージョンを外していた森田が、前半の最後に「1本入って落ち着いた」と、平常心でこのキックを決めた。これでリードは15点に。
 しかし、それでも展開は楽にならなかった。
 コカ・コーラは、続くキックオフ後のラインアウトから波状攻撃を仕掛ける。オフロードパスを使いながらグリーンロケッツの防御を崩し、重ねたフェイズは22。その間、何度もゴールラインに赤いジャージーが押し寄せたが、そのたびに緑の壁が弾き返した。
 そして、コカ・コーラが左に大きく展開した13分。
 大外を守っていた後藤が、パスを片手に当てながらインターセプトして、そのまま80メートルを走り切った。
「まるでマラドーナみたいだったね」と、笑ったのはピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)だ。マラドーナとは、もちろんあの「神の手」ゴールを挙げたサッカー・アルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナのこと。そして、この「神の手」で勝負が決まった。
 スコアの上で優勢に立つグリーンロケッツは、防御でも健闘。続くキックオフから攻め込まれたときにはゴール前でHO臼井陽亮や、途中出場のPR土井貴弘がラックに鋭く働きかけてピンチを防ぐ。そして、20分に細田が猛スピードでタックルに入って落球を誘い、こぼれ球を拾ったネマニが約80メートルを走り切った。
 さらに27分には、途中出場のHO秋山哲平が嬉しいトップリーグ初トライを挙げた。



 ラッセルHCが言う。
「今日の勝利が、私たちのシーズンの開幕だ。今日は23人全員がよくプレーした。特にFWは、スクラムで相手を支配し、防御でも早い出足でコカ・コーラの危険な選手たちを止めていた。本当に素晴らしかった」
 開幕戦の敗戦から一転しての快勝に、ラッセルHCの口調もなめらかだ。
 グリーンロケッツにとって大切なのは、この勝利を単発に終わらせずに次節につなげること。そのためには、この試合に垣間見えたサポートの遅れや細かいミスといった、修正可能な課題を「勝ったからこそできる“いい反省”」(瀧澤キャプテン)として、次節までに克服することが必要だ。
 果たしてグリーンロケッツは、連勝で白星を先行させられるのか。
 次節9月2日は、13時に札幌の月寒屋外競技場で豊田自動織機シャトルズを迎え撃つ。





 チャンスは確実にものにする。
 それが優れたアスリートの特質だ。
 2年目の今季、ジョージ・リサレは、スコット・ヒギンボッサムのケガもあって開幕戦から2試合続けて背番号8を背負った。そして、2試合目のコカ・コーラレッドスパークス戦で、チャンスをものにして結果を出した。
 勝利を大きくたぐり寄せた前半の早い段階での2トライ。いずれも、NECグリーンロケッツが得意とするモールから挙げたものだが、最後にインゴールに飛び込んだのがこのリサレ。最初のトライはFWが一丸となって25メートル近い距離を押し込んだものだが、2本目は「前を見たら誰もいなかったので」モールから飛び出した。そして、最後は防御をはね飛ばしてのトライに、「嬉しかったです!」と、最高の笑顔を見せた。
「スタメンで使ってもらったチャンスに、頑張らないといけない」
 そんな思いが実を結んだトライだったからだ。
 さらに顔がいくらか得意げなのは、トライやボールキャリーといったアタックだけではなく、防御でも手応えをつかんだこと。
 リサレが言う。
「ディフェンスは、試合に出るために一番やらないといけないこと。デーブ(・ディロンFWコーチ)さんからも、“しっかり相手に肩を当てろ”とか“低くタックルに入れ”と指示されていました。今日は、それができた手応えがありました」
 昨季は3試合で先発したものの、試合途中で投入されるインパクト・プレーヤーの役割を果たすことが多かった(途中出場は5試合)。しかし、80分間フルにグラウンドに立つことは、また格別な喜びをもたらす。特に、この日のような勝利は「嬉しかったし、楽しかった」と心に刻まれる。そんな喜びをさらに数多く味わうために必要なのは、「フィットネスやエクストラ(個人練習)」と、自分に言い聞かせている。頭のスマートさも、リサレの武器なのだ。
 一方で、「先週は東芝と試合をしたけど、トイメンが誰であろうと、絶対に負けない。たとえリーチ マイケルでも」と、自分の強さを証明する熱意にも溢れている。気持ちの強さが、実はリサレの最大の武器かもしれない。
 今季の目標は「走ること」。それも、ボールを持ったときだけではなく、攻守に地道にサポートに走り、タックルに汗を流すことを目指している。すべてはできる限り多くの試合に出場してチームに貢献するためだ。
 果たして今与えられているチャンスを、どこまで大きなブレイクにつなげられるか。
 今季は、リサレの大きな背中に注目だ。
 (取材・文:永田洋光)

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