グリーンロケッツ開幕戦は“嵐の船出”? 東芝に無得点に抑えられる!

info_category1.gif2017/08/21



NECグリーンロケッツの開幕は、嵐に見舞われた。
 東芝ブレイブルーパスに0―13とリードされて迎えたハーフタイム。
 前半途中から激しく降り出した雨がさらに激しさを増し、しかも雷鳴が鳴り響いて試合が中断した。雷が秩父宮ラグビー場に近づきつつあり、屋根のないバックスタンドの観客には避難が呼びかけられた。
 いつまでも終わらないハーフタイムに、ついに試合中止かと思われた頃、雨がようやく弱まり、18時15分に後半開始を告げる笛が鳴った。
 この間、90分間。
 瀧澤直キャプテンは、仕切り直して後半に臨んだ気持ちをこう振り返った。
「1時間半の中断があったにもかかわらず、再開を待ってくださった両チームのファンの方々に感謝したい。ゲームが再開したときには、観客席に誰もいないのではないかと思っていましたが(笑)、前半と同じように観客席が埋まっていて、僕たちもいつものように後半に入ることができました。本当にありがたかった」
 そして、もう一言付け加えた。
「1回負けた試合を取り返す気持ちで後半に臨みました」
 トップリーグの規約では、前半が終了していればその時点で試合が成立し、前半のスコアがそのまま試合のスコアとして記録される。「負けた試合を取り戻す」という言葉は、そのことを指しているのだ。
 そして、実際、前半のグリーンロケッツはほとんどチャンスらしいチャンスを作れず、東芝の嵐のような猛攻を耐え続ける展開に終始した。つまり“負けて”いたのだ。



 東芝のキックオフで始まった試合、グリーンロケッツは1分にNO8ジョージ・リサレが自陣ゴール前で相手ボールに素早くジャッカルに入り、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を奪った。しかし、その後のラインアウトを確保できず、5分に反則からPGを決められて先制される。
 グリーンロケッツも、10分過ぎにマイボールスクラムから左に展開。SO森田洋介とCTBジョーダン・ペインがループしたところに逆サイドのWTB後藤輝也がライン参加。左WTB竹中祥につないで大きくゲイン。そこから12フェイズを重ねてゴール前に迫る。しかし、トライ寸前でハンドリングエラーが出て、得点を挙げられない。
 東芝がタッチに逃れた次のラインアウトからは、森田が東芝防御の背後にショートキックを上げてチャンスを作りだそうとしたが、そこから東芝FBコンラッド・バンワイクにカウンターアタックで一気に防御を切り裂かれ、最後はWTB宇薄岳央にトライを奪われた。
 以降は粘りの防御で失点を1PGに抑えたが、ほとんど相手陣に入れないまま40分が過ぎた。



 ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)は、この40分を振り返ってこう言った。
「ディフェンスがトップリーグで戦う水準ではなかった」
 後半も、立ち上がりにPGチャンスがあったが、森田のキックが外れて得点を挙げられない。
 しかも、7分にCTBマリティノ・ネマニが危険なタックルでシンビンとなり、そこからゴール前で東芝のモール攻撃にさらされた。
 グリーンロケッツも懸命に押し戻すが、立て続けに反則を取られ、3回目のペナルティで、反則の繰り返しによってLO権丈太郎がシンビンに。
 13人となったグリーンロケッツは、こらえきれずに11分にトライを奪われて0―20。
 この試合で18個の反則を犯したグリーンロケッツだったが、そのツケはやはり大きかった。



 グリーンロケッツが反撃に出たのは、20点差となってからだった。
 後半16分には、東芝ゴール前のスクラムで、竹中をFLの位置に入れて猛プッシュ。相手ボールを奪ってアタックに転じた。そして、ペナルティを得るとスクラムを選択。トライを奪いに出た。しかし、レフェリーの合図よりも早く組んだとして逆に反則を取られ、チャンスが潰えた。
 22分には、東芝のノックオンをペインが拾ってネマニにつなぎ、前に出て左に展開。大外の竹中に渡して大きくゲインした。続くラックで東芝が反則を犯すと、途中出場のSHリー・カドゥが素早く仕掛けてFB吉廣広征を走らせたが、ゴールラインまで届かない。
 24分にはペナルティをスクラムに選択してトライを狙いに行ったが、ここでも反則を取られて攻撃を継続できない。
 33分には、途中出場のCTB釜池真道が東芝防御のギャップをついて大きくゲイン。そこから左に回し、途中出場のSO亀山宏大がラックに持ち込んだところでまたペナルティを得たが、ここもトライに結びつけられなかった。
 ラッセルHCが言う。
「後半にいい形で反撃して多くのトライチャンスを作りだしたが、それをスコアボードに反映させられなかった。東芝は防御が激しく、ボールにどん欲に働きかけてきた。その点をいい教訓にして、来週のコカ・コーラレッドスパークス戦につなげていきたい」
 試合を通して見れば、チャンスやピンチの「ここが大切」というところで、ほんのわずかなミスが出たグリーンロケッツと、たとえミスが出てもそれを全員でカバーして集中力を切らさなかった東芝の、その差が勝敗を分けたように見えた。
 瀧澤キャプテンも、こう総括する。
「東芝は、奇をてらうことなく真っ向勝負をしてきた。それに対して、NECはタックルミスのような、ラグビーの本質のところで相手に上回られた。それが20点差というスコアに反映されたと思います。得点がゼロに終わったのは厳しい結果ですが、トライチャンスをいくつも作ることができたし、良かったことを持ち帰り、悪かったところは反省して、次のコカ・コーラレッドスパークス戦(26日 熊谷スポーツ文化公園陸上競技場 16時30分キックオフ)に臨みたいと思います」
 今季初戦では、SH木村友憲が初先発したのを筆頭に、ルーキーのFL亀井亮依、2年目の亀山、4年目のHO秋山哲平ら若い力がトップリーグデビューを果たした。
 さらにラッセルHCは、ペインとネマニのCTBコンビに「強力なミッドフィールド」と期待を寄せる。
 こうした新しい力を結集して“嵐の船出”を、順風の航海に変えることができるか。
 次節は、今季の可能性が試されるゲームになる。





3年目の今季、初めてつかんだ先発は17―18年度シーズン開幕戦。そして、これが木村にとってグリーンロケッツの9番を初めて背負った試合だった。
「試合に出るのはもちろん嬉しかったのですが、初めてということで、緊張も不安もありました。周りの人に支えられて、ようやくここまで来られた。だから、試合が終わった今は、感謝の気持ちしかありません」
 今季は、シーズン前に茂野海人が退団。先に退団が決まっていた櫻井朋広と、2人の“先輩”が抜けた。しかし、木村は、茂野とともにポジションを争ったことが今につながっていると話す。
「もちろん競争心はありましたが、いろいろなことも教わった。すごく勉強になりました。茂野さんがいたからこそ、今の自分があると思っています」
 試合は残念ながら0―20と敗れ、木村自身も後半21分でリー・カドゥと交代した。それでも充実感に溢れた表情で「初めての60分間」を振り返った。
「SHというポジションは、何よりもゲームをコントロールすることが大切なので、まずチームの攻撃のテンポを作ろうと心がけました。でも、東芝ブレイブルーパスは、やはりディフェンスのプレッシャーが強くて、自分たちが思ったようにボールが出てこなかった。それが、僕自身の課題ですし、チームとしての課題だと痛感しました」
 それでも、後半立ち上がりには、ラックで東芝が反則を犯したところで転がってきたボールを拾い、ラックの真ん中を割って出た。ところが、勢いよく抜け出したところでレフェリーの笛が鳴り、アドバンテージが認められずに、元の地点に戻された。そのとき、木村は悔しそうにグラウンドにボールをたたきつけた。
「あれは……アタックが継続していたので、アドバンテージが認められていれば大チャンスになったところでしたね……」と、言葉少なに振り返ったが、顔には「悔しい」という言葉が刻まれていた。常に「冷静」を心がけている木村が、その下に秘めた熱情をほとばしらせた瞬間だった。
 出番が多くなりそうな今季について、「NECの9番を背負うことはすごくプレッシャーを感じる部分もありますが、これからもゲームコントロールとテンポを作ることを心がけてプレーしようと思います」と話す木村は、最後にこう付け加えた。
「ラグビーが好きなので、試合に出る出ないにかかわらず、チームの勝利のためにはできることは何でもやって貢献したい。それが素直な気持ちです」
 トップリーグ先発デビューで刻んだプレー時間を今季はどこまで延ばせるか。
 木村のこれからのパフォーマンスに注目だ。

 (取材・文:永田洋光)

アーカイブ