第47回 日本ラグビーフットボール選手権大会 第2回戦 対帝京大 ~グリーンロケッツ、帝京大に快勝して日本選手権4強進出!決勝進出をかけ、準決勝で三洋電機ワイルドナイツと激突~

info_category1.gif2010/02/15

 

 昨年12月19日のトップリーグ第11節、対福岡サニックスブルース戦から「負ければ終わり」の重圧をはねのけて急浮上したNECグリーンロケッツ。以来、前週はサントリーサンゴリアスと10─10と引き分けたもののここまで6戦無敗と、難敵、強敵、好敵手をねじ伏せて「リベンジ・ロード」をひた走ってきた。
 そして迎えた日本選手権2回戦。
 相手は、大学選手権を制した帝京大学だ。
 帝京大は、いくら学生チャンピオンとはいえ、これまで対戦してきたトップリーグ勢とは実力に開きがある。その分、グリーンロケッツには「勝って当然」という、これまでとは別種のプレッシャーがのしかかった。
 トップリーグ発足以前の社会人ラグビー時代から日本選手権での学生チームとの対戦はこれが5回目。過去4試合は、慶應義塾大学に52─29(99年度第37回大会)、関東学院大学に64─26、26─0、43─11(第38回大会、40回大会、41回大会の順)といずれも社会人の貫禄を見せつけたが、決して容易だったわけではない。
 全試合に出場した岡村要ヘッドコーチが、苦笑しながら振り返る。
「学生には勝って当然だと思われているので、モールから力任せにトライを奪うと、お客さんから“大人気ないぞ”とヤジが飛んでくる。本当にやりにくいです」
 攻撃力に上回る相手に整備し直したディフェンスでしっかりと守り、ミスを誘ってはそれを得点に結びつけてここまでたどり着いた今シーズンは、特にそうだ。リベンジ・ロードは、ボール支配率で相手を下回りながら勝った試合がほとんどだったのだから。



 果たしてグリーンロケッツは、立ち上がりから戸惑い続けた。
 象徴的なのは、前半16分にモールからFLニリ・ラトゥが先制トライを奪った7分後のこんな場面。
 FB吉廣広征の突破からチャンスをつかんだグリーンロケッツは、帝京大陣内でラックを作って左へ展開。SOの位置でLO浅野良太がボールを受けたときには、防御は1人だけ。グリーンロケッツは、ニリを始めそうそうたるメンバーが4~5人浅野からのパスを待ち受ける。どう考えても2個目のトライが生まれる状況だ。
 しかし、慣れない状況に戸惑ったのか、浅野はパスではなくてキックを選択。確かに帝京大のゴールラインまで距離があって、相手防御が懸命に戻ってくることを考えればキックも間違いではないが、恐らくは蹴った本人も周囲の選手も、ここでボールを蹴ることを想定していなかったはず。練習でやっていないことが試合で上手く決まるはずもなく、残念ながら絶好のトライ・チャンスは一瞬にして消え失せた。



 グリーンロケッツの2つ目のトライは、やはりモールからニリが挙げたもの。これでは力に勝る社会人が大人気ないトライを奪ったと言われそうだが、トライに至るプロセスを見れば、これが力の差ではなく、基本をどこまでやりきるかという徹底の差から生まれたことがよくわかる。
 場面を少し巻き戻す。
 27分にグリーンロケッツは、自陣で帝京大が持ち込んだボールをターンオーバー。キックを大きく蹴り込んだ。
 帝京大の背後に転がるボール。
 このボールを追ってグリーンロケッツは、吉廣を先頭にCTB櫻谷勉、WTB窪田幸一郎の3人が忠実に走る。一方の帝京大はようやく1人が戻ってボールを処理するだけ。あっという間に緑の3人が赤の1人を取り囲み、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘ったのだ。
 蹴られたボールは忠実に追う──こういう基本中の基本で手を抜かないのが、グリーンロケッツのチームカラー。本来ならば、力に劣る学生側こそこういう基本を忠実に実行し続けなければならないが、恐らくはブレイクダウンで力を奪われ、強いタックルと当たりを浴びて足がいつもよりも動かなかったのだろう。両チームの力の差が端的に示された場面だった。
 帝京大も30分にはラックから左に展開。素晴らしいパスで“緑の壁”をくぐり抜け、WTB富永浩史が鮮やかなトライを奪って学生王者の意地を見せた。が、反撃もここまで。
 前半終了間際にNO.8日高健がトライを加えたグリーンロケッツは、後半も3トライを追加し、終盤の帝京大の猛攻を得意のディフェンスで守りきって38-5で危なげなくベスト4進出を決めた。



 死力を尽くした1週間前のゲームに比べれば、見ている側にも緊張感が薄れる内容だったが、それでもグリーンロケッツのサポーターが声をからして懸命に応援してくれたことも、チームには救いとなった。学生チームに肩入れしがちな秩父宮の空気を、いつもの「NEC」コールが普段の雰囲気に戻してくれたからだ。
 岡村ヘッドコーチも、試合後、感謝の気持ちを込めてこう述べた。
「反則をとられて嫌な感じが漂ったときに、OBの立川と大塚を中心に、たくさん詰めかけてくれたサポーターの声援でいつもの雰囲気に戻れました。本当に、今日来ていただいたサポーターの皆様と応援リーダーの立川と大塚に感謝したいです」
 ゲーム・キャプテンのニリも、こう試合を振り返る。
「今日は立ち上がりにアタックの機会が多くて、みんなエキサイトし過ぎた。それが、フィフティ─フィフティ・パス(一か八かのパス)をしたり、普段やらないプレーにつながった。完璧な内容とは言えないけれど、でも、結果を残せてハッピーだったね」
 そして、次週の三洋電機ワイルドナイツ戦に向けて、気を引き締める。
「三洋は日本のトップチームの1つ。僕たちが、今以上の水準でプレーしないと勝てない。そのためには、チームのストラクチャーを信じることが大切になる。まだまだやるべきことがたくさんあるけど、今週はその準備に取り組みたい」



 今季、三洋と対戦したのは昨年12月13日。そう、サニックス戦から始まる白星街道の直前、いわば“黒星街道の終点”が三洋戦だったわけだ。
 しかも、連勝を続ける三洋を3トライに抑えてボーナス・ポイントを与えず、逆にディフェンスのストラクチャーに対して自信と手応えをつかんだ試合でもあった。
 いわばグリーンロケッツの分岐点が、前回の三洋戦だったのである。
 その時点から2ヶ月と少し──次週の準決勝は、グリーンロケッツがどこまで高くV字回復を遂げたのか、その到達点を見極める格好の試合となる。
 


 


今日はあまりいいパフォーマンスじゃなかったね。ミスが多かった。
でも、それはメンタル面が大きく影響したから。帝京大は、負けてもともとというチャレンジャー精神で試合に臨んできた。つまり、先週のグリーンロケッツと同じ。これは、ちょっと難しいね。そんななかで、ニリとリョータ(浅野)が、よく頑張ってプレーしていました。
NECにとって大切なことは、シンプルなラグビーを貫くこと。今日は、ハーフタイムでシンプルなプレーに徹するよう切り替えられたけど、来週は三洋が相手だから、みんなもっとレベルアップしないといけない。
三洋は、2週間のインターバルがあるから、その間にNECの分析をして、しっかり準備をして臨んでくるでしょう。NECは、6日しかインターバルがないから準備が難しい。でも、今までやってきたことを確実にやって、1回か2回しかないチャンスを確実に得点に結びつければ、勝つチャンスは広がってくる。
セットプレーを確実にこなすこと。ラックでしっかりファイトすること。ミスをしないこと。そして、反応を早くすること──この4つがキー・ポイントになるでしょう。そのためには、みんながチームのストラクチャーを信じることが大切。そうやってここまで来たのだから、三洋戦もより一層強く信じてプレーして欲しいですね。



取材・文:永田 洋光