トップリーグ09-10 第4節 九州電力キューデンヴォルテクス戦 ~ 難産の末にグリーンロケッツ初勝利!浮上のきっかけをつかめるか? ~

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 これほどまでに「勝つ」のが難しく、苦しいものだとは、シーズン前に誰が想像しただろう?
 勝って当たり前というおごりがチームにあったとは思えないし、トップリーグ参加チームの実力を侮っていたわけでも決してない。
 しかし、「自分たちのラグビーをやれば勝てる」という思い込みが、各チームに研究されて自分たちのラグビーをできない状況で「こんなはずでは……」という迷いを生み、今シーズンのNECグリーンロケッツを縛ってきたのも事実だろう。
 13-7と辛くも6点差で九州電力キューデンヴォルテックスを破ってつかんだ初勝利には、そんな今季の迷いと逡巡(しゅんじゅん)があちこちに詰まっていた。
 それほど苦しみ抜いてつかんだ初勝利だったのである。

 対戦相手の九電は、前節でサントリーサンゴリアスに7-72と大敗している。だが、試合をよく見れば、サントリーの圧倒的な個人技には粉砕されたが、組織防御は少なくとも前半途中までは機能していた。個人で局面を変えるだけの圧倒的な力を持つ選手が少ないグリーンロケッツには、トライを取るのが難しい相手 ──それが、個人的な九電の印象だった。
 果たして試合はそんな予想を裏書きするような展開となった。

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 立ち上がりの5分過ぎにCTB釜池真道のキックで九電ゴール前に攻め込んだグリーンロケッツは、スクラムから8→9のサインプレーを使ってFLセミシ・サウカワにボールを持たせ、得意のモールで押し込もうとする。
 しかし、九電FWに粘り強く守られて押し切ることができず、相手ボールのスクラムに変わる。タッチに逃げる九電。いくらかは地域を戻されたものの、まだまだグリーンロケッツのチャンスは続くはずだった。

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 ところが、続くラインアウトでボールを奪われ、一気に逆襲を食らう。
 大きくゲインされたグリーンロケッツは全員が懸命に戻ってピンチをしのぎ、相手ボールのラックをターンオーバーして再逆襲に転じるが、そこでノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られてまたもや九電ボールのラインアウトに。
 攻め込んでは粘り強く守られ、ラインアウトで相手にボールを奪われて逆襲される。チャンスは一転してピンチに変わり、ミスの代償がどこまでも付きまとう。それが、前半のほとんどの時間に共通して見られたパターンだった。
 16分には、九電CTBナイサン・グレイがカウンター・アタックから抜け出してグリーンロケッツのゴール前に迫り、連続攻撃で緑の壁を揺さぶった。
 たまらずにオフサイドをとられたグリーンロケッツは、一瞬の隙をつかれてFL川嵜拓生にゴールラインを割られ先制を許す。ちょうど時計が17分に変わったところだった。
 ゴールも決められて7点差を追う展開になったグリーンロケッツは、懸命に反撃を試みるが、時間ばかりが経過して、スコアボードは依然としてゼロのまま。自らチャンスをつぶすようなミスが原因だが、特に重症だったのがラインアウトだ。
 グリーンロケッツは、手元の集計で、前半にあった16回のマイボール・ラインアウトのうち、ボールを確保できたのは半分以下の7回。残る9回のうち、3回は相手に奪われ、3回は反則を取られた。
 象徴的な場面が前半36分にあった。
 WTB窪田幸一郎が自陣のPKから素晴らしいスピードで抜け出し、独走状態になったところで、タックルに入った九電FB黒木孝太が足を滑らせ、その足に窪田がつまずいて転倒。足で相手を止めるプレーは本来ならイエローカードの対象となる重大な反則だが、戸田京介レフェリーは「故意ではない」と判断してシンビンとはしなかった。それでも、相手ゴール前で得たPKのチャンスに数少ないグリーンロケッツのサポーターが力の限り声援を送ったが、続くラインアウトで相手にボールを奪われ、あっさりとチャンスがついえた。

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「ラインアウトを完全に研究されていました。隙があると思って投げたところに相手が動いてボールを奪われたり、そういう繰り返しでサインミスも生まれて、まったくいいボールを取れなかった。すごくいい勉強になりました」
 そう振り返ったのは熊谷皇紀キャプテン。
 グリーンロケッツは、試合終了直前にも九電の猛攻をゴール前で必死に守り、相手の反則を誘ってPKをもらいながら、続くラインアウトで相手にボールを奪われてふたたびゴール前に攻め込まれる悪循環を繰り返した。
それでも、何とか勝利にこぎ着けられたのは、ミスを繰り返しても攻める姿勢を忘れなかったからだろう。

 前半終了直前に2PGを返したグリーンロケッツは、後半7分にSOにヤコ・ファン・デル・ヴェストハイゼンを投入。直後の10分に、ラックからボールを受けたヤコが、上手く相手を引きつけてすぐ横に走り込んできた窪田にパス。抜け出した窪田は、相手を完全に引きつけてから釜池にラストパスを通して待望のトライを奪い、スコアを13-7と逆転した。

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 岡村要ヘッドコーチが試合後に言った。
「(前半37分に)九電のグレイがシンビンになった辺りから、やっとボールを大きく動かすようになって、チャンスが増えた。ゲームのスピードアップを意識したところに、ヤコの投入がぴったりと合って、トライに結びついたと思います。それまでは、ゴール前のラインアウトという場面が多く、FWの視野が近場の密集戦に限定されていて、攻撃の幅を狭めていましたね」
 熊谷キャプテンも言う。
「今日は1勝できたのがとにかく大きい。正直なところ、やっぱり勝たないといけないというプレッシャーがありましたから。これでやっと、みんなもガンガン積極的にいけるようになるでしょう。今日の試合のなかでも、選手が自分からボールをもらいにいかずに、次のことを考えてしまう場面が多かった。そういう消極的な点を、これから修正しないといけないでしょうね」

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 「自分たちのラグビー」という形に選手がとらわれ過ぎていた弊害が、そういう消極的なプレーだろう。この試合でも、バックスの選手が相手にタックルされたときに、周囲にいる選手がラックに入ってボールを確保するのではなく、ラックに入ろうかそれとも次のプレーの準備をしようかと迷って、相手にボールを奪われる場面がしばしば見られた。
 勢いのあるときのグリーンロケッツなら、後続の選手がそのまま走り込んでボールを持ち出し、相手防御の綻びを大きくするような動きが見られるのだが、初勝利を意識し過ぎて硬くなったのか、この試合ではそういう積極性があまり見られなかった。しかも、少ないチャンスを生かそうとするあまり、パスが一か八かの「フィフティ・フィフティ・パス」になる場面も多く、それが試合を通じて10個以上のハンドリング・エラーにつながった。
 それでも、苦しんだ末に、とにかく初勝利をつかんだ。これで「勝つ」ことへの呪縛から解放されたグリーンロケッツは、本来の姿に戻っていくことになるだろう。 

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 トップリーグは、1週間の休みを挟んで、10月第2週の週末から再開する。次なる相手は、因縁の神戸製鋼コベルコスティーラーズ。勝利の喜びと課題を噛みしめながら、11日の対決までの2週間でどこまで積極性を取り戻せるか。

 失いかけていた自信を取り戻すことが、グリーンロケッツ浮上のキーポイントだ。







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 ラグビーでは勝つことが一番大事。だから、今日は勝ったことが収穫です。
 チームのパフォーマンスはまだまだだけど、勝ったことでだんだん良くなるでしょう。ただ、そのためには、みんなが自分のパフォーマンスの、良かったところや悪かったところを正直に見つめて、修正しないといけないでしょうね。
 最後に九電の攻撃を守り抜いたのは、NECらしいディフェンスでした。みんながよく頑張ったと思います。
 でも、次の神戸製鋼戦を考えると、FWがセットプレーをもっと練習しないといけないでしょうね。神戸はFWが強いチーム。だから、ラインアウトをしっかり取って、スクラムで相手にプレッシャーをかけないと、バックスも動きにくくなる。バックスがゲインラインを切れば、神戸の選手は後ろに戻らざるを得なくなるし、逆にNECの選手は前に前に出られるようになる。
 九電戦では、選手のリアクションが遅かった。セットプレーが安定しなかったから、九電のディフェンスにプレッシャーをかけられて、リアクションが遅れたのでしょう。ラインアウトやスクラムをセットするスピードも遅かったし、そこからチームにミスが広がった印象です。
 個人のミスをなくすには、一人ひとりがそれぞれスキルを磨くことが大事。そして、迷わずに実行すること。周りの選手も、そうしたプレーに反応して、サポートすることが大切です。
 今日は、マン・オブ・ザ・マッチはFLニリ・ラトゥだったけど、FBの吉廣広征とWTBの窪田幸一郎が積極的で良かった。でも、彼らの積極的なプレーを、みんながもっとサポートできれば、もう少しいい展開になったでしょう。  
 そういう精度が上がれば、チーム力はもっと強くなると思いますよ。

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吉廣 広征
窪田 幸一郎

取材・文:永田 洋光/写真:加守 理祐