24日、大阪・花園ラグビー場、対近鉄ライナーズ。
試合終了直前に近鉄SO大西将太郎が右端の難しい位置からゴールキックを決めて、スコアを26-24と逆転すると、まるで優勝したかのような大歓声がスタンドから沸き上がった。
地元チームのこれ以上ないほどの会心の逆転劇。NECグリーンロケッツは、そんな舞台を整えるために80分間を戦った、最高の引き立て役でしかなかった。
「今シーズンはこれまでラスト20分にずっと泣かされてきた。それまでの60分間をいい形で戦いながらこうした結果が続くのは、まだチームに最後の20分間を戦う力がついていないということなのでしょう……」
試合後に、岡村要ヘッドコーチは振り絞るようにゲームを振り返った。
3節にわたって連続した試合終盤の悪夢の逆転劇。
スタンドの記者席から見ていると、時計が80分に向かうにつれて選手の動きから余裕が失われ、焦りと不安からミスを連発するのがよくわかる。
ほんの少しだけ冷静になって状況を見定め、発想を転換して勝利に結びつける──今のグリーンロケッツには、そうした余裕がまったく見られない。たとえば試合の終盤にDGを狙ってゲームを切り、時計の針を進めるような工夫がチーム全体に共有されていないのだ。
岡村コーチが言う「最後の20分間を戦う力」は、そこで冷静さを取り戻せるだけの精神的な強さと言い換えた方がわかりやすいかもしれない。
悪夢の連鎖には技術的な要因ももちろんあるが、それよりも「また逆転されるのではないか」というネガティブな気持ちが大きく影響しているように見える。
小憎らしいほど冷静にピンチを耐え続け、堅い守りで日本一を勝ち取ったグリーンロケッツは、今や試合終盤の緊迫した場面に動揺し、頼りなさげにグラウンドでうつむいている。
特効薬はないのかもしれないが、自分たちをもう一度見つめ直し、チームのアイデンティティがどこにあるかを確認することが、遠回りであってもチーム再建には必要だ。
この試合のグリーンロケッツは、少なくとも後半の終盤までは勝ち点5に手をかけていた。すべてを否定するのではなく、冷静にゲームを振り返って、どこに問題が潜んでいるのかを特定し、そこをクリアにするにはどうすればいいかを考えること。
事態の整理と分析が、今チームには求められている。
前半は、ミスもあったが、グリーンロケッツらしい耐えて反撃するラグビーが鮮明な形になっていた。
4分にはバックスラインのディフェンスミスから近鉄CTBタフィア・タウファに大きく突破され、あわやトライというピンチを迎えたが、全員が懸命に戻ってタウファをタッチに押し出してことなきを得た。
15分には、FLニリ・ラトゥが、密集のサイドを鋭くついた近鉄SHキム・チョルウォンから腕力でボールをもぎ取って、ピンチをしのぐ。
この試合でのニリのプレーは攻守に気迫に溢れていた。立ち上がりから続く近鉄の攻勢を、グリーンロケッツが無得点に抑えることができたのは、ニリの奮闘がチームに勇気を与えた点が大きかった。
得点が動いたのは25分を過ぎてから。
近鉄のラインアウトのミスをターンオーバーしたグリーンロケッツは、SOヤコ・ファンデルヴェストハイゼンのキックで近鉄ゴール前へと攻め込む。近鉄にプレッシャーをかけて得たゴール前5メートルのラインアウトでは、モールを組んでじりじりと前進。FWが6次にわたって密集戦を挑んで近鉄の反則を誘う。
グリーンロケッツは、このペナルティキックでスクラムを選択して攻撃を続行。左オープンへサインプレーが決まって、FB吉廣広征がインゴールに飛び込んだ。
時計は28分。ヤコのゴールは外れたが、グリーンロケッツがいい形で先制した。
34分には、近鉄ボールのラインアウトで起きたミスからニリがボールを拾って前進。群がる近鉄のディフェンダーの背後にキックを上げ、それを自ら抑えてトライを追加(ゴール失敗)。
続くキックオフでも、ニリが単独で抜け出してチャンスを作り、ヤコのキック処理にもたつく近鉄からボールを奪った PR久富雄一がWTB窪田幸一郎にラストパスを通してトライを畳みかける。ヤコのゴールも決まって17-0。
かなり強い風下に立っていたにもかかわらず、グリーンロケッツがスコアを大きくリードして前半を終了した。
後半の立ち上がりも、グリーンロケッツの攻勢は続いた。
近鉄のキックオフを受けたグリーンロケッツは、CTBブライス・ロビンスが大きく突破。ヤコのキックから敵陣に攻め込む。
ミスから近鉄にボールを渡しても、要所で久富や窪田が相手のボールをターンオーバーしてピンチの芽を摘み、近鉄陣内で試合を進めた。
しかし、10分に試合の流れを変えるプレーが起こる。
近鉄陣22メートルを越えた地点でグリーンロケッツが反則を犯すと、近鉄はキムが得意の速攻を仕掛けて大きく抜け出す。
グリーンロケッツの懸命のタックルに、キムが右へ放ったパスは地面すれすれの捕りにくいパスとなったが、これを近鉄FL佐藤幹夫が転倒しながら捕って CTBタウファにつなぐ。タウファはWTB四宮洋平にパスを通して反撃のトライに結びつけた。大西のゴールは決まらなかったが、このトライがグリーンロケッツに心理的に与えた影響は大きかった。
敵陣に攻め込みながらミスでボールを失い、相手に速攻を許す。それを食い止められないままボールをつながれ、トライまで持って行かれる──これは、11日の神戸製鋼戦の終盤に見た悪夢の再現のようなトライだった。
グリーンロケッツも27分にFL権丈太郎がトライをあげて、今季初めて4トライのボーナスポイントをゲット。点差を19点に広げたが、直後に近鉄の必死の反撃を食らい、2トライ2ゴールを奪われてしまう。
それでも後半36分に吉廣が相手ボールをジャッカルしてピンチを防ぎ、近鉄陣に攻め込んだときは、ようやく今季初の 5ポイントの勝利が見えた──かに思えた。
しつこく密集戦を挑んで38分過ぎまで相手陣内で時間をつぶすグリーンロケッツだが、勝利への行進はそこで足止めを食う。最後の最後にラックでターンオーバーされてしまうのだ。
息を吹き返した近鉄は一気に反撃。こうなると、もはやグリーンロケッツに近鉄を止める余力は残っていなかった。反則→近鉄の速攻→反則……そして、とうとうトライを奪われる。
絵に描いたような、と表現する以外にない“見事な”逆転負けだった。
「後半の最初のトライで近鉄に“いける!”と思わせてしまった。それが、何よりの敗因です。11月の1ヶ月で、これが負の連鎖にならないよう、しっかり立て直したい」
勝利が手のひらからスルリと滑り落ちたショックに呆然とした表情で、熊谷皇紀キャプテンはそう話した。
日本代表のテストマッチ期間となる11月のウィンドマンス。
3試合連続逆転負けという信じがたいような危機に、1ヶ月冷静になれる時間が与えられたのは本当に不幸中の幸いだ。
そして、失速しかけたグリーンロケッツを上昇気流に乗せるチャンスは、この11月しか残されていない。ラストチャンスを生かして復活への軌跡を描けるか ──この1ヶ月は、グリーンロケッツの復元力が問われる、本当に貴重で大切な整備期間である。
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今日は本当にシンジラレナイ。勝つチャンスはあったし、勝つべき試合でした。 前半を17-0のリードしたけど、ハーフタイムには「まだ勝っていないよ。0-0のつもりで後半に臨もう」と話しました。近鉄は後半に必死で反撃してくるから、ディフェンスにギャップを作らないようワンラインで(一列に並んで)ディフェンスしよう、そう話したんです。 でも、選手は時間が経つにつれてだんだんリアクションが遅くなっていった。近鉄がペナルティキックから速攻を仕掛けてくるのは十分予想できるはずなのに、ボールを見ながら戻ったり、素早く立ち上がってディフェンスラインを整えたり、といったリアクションができていない。 攻撃でも、チャンスにスローダウンしてしまったり、とにかくリアクションが遅かった。 一人ひとりの選手はみんな良くやっていたし、それをコーチとして誇りに思うけれど、チームとしては自信を失っていたし、機能できませんでした。 でも、ここで下を向いてしまったらダメでしょう。 頭を上げて、一つひとつのことをシンプルに、正確に、継続性を持ってやり続けるしか立ち直る方法はないと思います。 11月に必要なのは、とにかく心身をリフレッシュして、もう一度前を向くこと。そして、ラグビーを難しく考えないで、シンプルにやるべきことをやる──選手に力はあるのだから、それをいかに試合に出すか。そこに集中して、後半戦に臨みたいと思います。
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取材・文:永田 洋光/写真:渡辺 富士男
グリーンロケッツは、近鉄ゴール前でのFWの密集戦でボールを失い、そこから一気に自陣ゴール前まで攻められる。全員が戻っての必死のタックル。だが、勢いは追い上げる近鉄だった。39分の同点トライに終了直前の勝ち越しゴール…。グリーンロケッツの選手たちは呆然と芝生に崩れ落ちた。
「どうしてこうなるのか…技術的な要因以外にも原因はあるはずだが、今は言葉が見つからない…」と、熊谷皇紀キャプテンも記者会見でがっくりと肩を落とした。