
秩父宮ラグビー場に足を運ばれた方ならご存知だろう。試合前のウォーミング・アップは、隣接するテニスコートで行われ、選手たちは、そこからメインスタンド下の通路を通って、ロッカールームに入る。
19日もNECグリーンロケッツは、これから対戦するリコーブラックラムズといっしょにテニスコートで軽く身体を動かし、ロッカールームへと移動した。
異様な大声がスタンド下の通路に反響したのは、まさにその時だった。
リコーの、試合に出られない部員たちが通路脇に並び、ロッカーに向かうチームメイトにさまざまな声をかけているのだ。それが、コンクリートの天井に反響して増幅されている。
頬を紅潮させて仲間の激励に応え、ロッカーに向かうリコーの選手たち。まるで大学チームの試合前の儀式のようだ。
その後ろからロッカーに入ることになったグリーンロケッツの面々は、無言で前方をにらみ、心のなかで気持ちを高ぶらせて、ただただ歩く。
気持ちを高めるのにどちらが正解なのかはわからない。チームにも、選手にも、それぞれの高め方があり、それぞれの儀式がある。だから、無言でロッカーに向かうグリーンロケッツに気持ちが入っていなかったわけでは決してない。
しかし、リコーが異様なまでに気持ちを高めていたのは事実だった。
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立ち上がりのキックオフ。
リコーSO河野好光が、グリーンロケッツ陣内のタッチライン際に絶妙なキックを蹴った。
右WTB窪田幸一郎が捕球すると同時にタックルが炸裂し、窪田がラインの外に押し出される。続くラインアウトからラックが形成された時、グリーンロケッツは勢い余ってオーバー・ザ・トップの反則を犯す。
リコーの河野がPGを決めてスコアボードに3点を刻むまでにかかった時間は、わずかに1分。試合前に見たスタンド下の光景が、嫌でも思い出される立ち上がりとなった。
続く4分、またもや両者の勢いの差が明らかになる。
グリーンロケッツが相手キックをチャージして敵陣に攻め込む。マイボールのラインアウトを得てモールを作り、そこからサイドアタックを仕掛けてラックに持ち込む。バックスは次の攻撃の布陣を敷いてボールを待ち受ける。FWも、何人かがラックを離れて次の展開に備えた。
そうして人数が減ったラックにリコーのFWがもう一度激しく挑みかかり、一気にグリーンロケッツを押し返してターンオーバー。
密集戦での激しさとしつこさが身上のグリーンロケッツが、お株を奪われた場面だった。
グリーンロケッツが、そんな嫌な流れを脱しかけたのは12分だ。
この日先発出場の左WTBシュウペリ・ロコツイが、リコーのキーマン、FBスティーブン・ラーカムのパスミスを奪ってトライを挙げ逆転。沈みかけていたムードを一気に高揚させた。
しかし、豪州代表として102キャップを誇り、ワールドカップの頂点にも立ったラーカムは、すぐさま自分のミスを取り戻す。トライ直後の、SO安藤栄次が狙ったゴールキックを自らチャージ。失点を5点でとどめると同時に、最後までプレーを諦めない本物の執念を見せつけた。
18分に安藤のPGで点差を5点に広げたグリーンロケッツは、何度もチャンスをつかんで攻め込むが、キックを追走する選手がボールを蹴った選手より前にいたと判定される「キック・オフサイド」を2回続けてとられるなど、チャンスを得点に結びつけられない。
8-3とスコアをリードしているのだから焦る必要はないのに、そして、じっくりと腰を落ち着けて戦えばチャンスをモノにする力を持っているのに、どこか気持ちが空回りして流れを自分たちに引き寄せることができないのだ。
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そして、28分。
この試合の勝負を実質的に分けたプレーが、リコー陣内22メートルライン付近で起きた。
グリーンロケッツが敵陣に攻め込んでの、リコーのラインアウト。グリーンロケッツとすれば、ここでプレッシャーをかけて、敵陣に居座り、じっくりと攻撃を仕掛けたい場面だ。
反対に、リコーにすれば、一刻も早くボールを確保して陣地を大きく取り戻したい場面。ラインアウトを素早く投げ入れてラーカムにキックを蹴らせることが、予想される選択肢となる。
グリーンロケッツは、ロコツイとLO安田知生がこのプレーを読んで懸命に走り、ラーカムの前に立ちはだかって、相手のクイック・スローを警戒した。小さな、しかし貴重なファイン・プレーだ。
ところが、2人に続く選手がいなかった。
ラーカムへのクイック・スローを諦めたことに安心したのか、グリーンロケッツの選手たちが足を緩めたその隙に、リコーはラインアウトを素早く投げ入れ、 CTB山藤史也が大きく前進。そのままグリーンロケッツ陣内に攻め込み、一気にゴール前のラインアウトに持ち込んだ。
続くモールの攻防戦でロコツイが相手の挑発に乗ってラフプレーでイエローカードをもらい、14人となったグリーンロケッツは苦しい防御を強いられる。
31分、ゴール前のスクラムから、リコーはNO.8ロッキー・ハビリが単独でサイドアタック。ロコツイのシンビンによりFWを1人減らしてスクラムを組んだグリーンロケッツは、これを止めることができずにトライを許し(ゴール成功)、8-10と逆転された。
次のキックオフでもグリーンロケッツは、ノット10メートルのミスを犯してマイボールを確保できず、リコーに中央スクラムから一気に攻められる。
スクラムから右に攻めたリコーは、ラックでボールを確保すると左へ移動攻撃。ラーカム→河野→WTB小松大祐とつないでトライを奪い(ゴール成功)、8-17と点差を広げられた。
28分に、リコーのクイック・スローを防いでいれば、敵陣で攻め続けられたかもしれない時間帯での14失点。いくら追い上げよう気合いを入れ直しても、この失点は重かった。
グリーンロケッツは後半にモールから2トライを返し、21─27と6点差に迫って終盤に一発逆転の望みを託したが、リコーの防御を決定的に崩すことができずに試合終了。今季初勝利を目指したはずの試合は、わずかに7点差以内負けのボーナス・ポイント1をゲットしたにとどまった。
試合後、岡村要ヘッドコーチは、厳しい表情で敗因をこう振り返った。
「前半、相手が攻撃的に出てきたのを受けてしまって、その流れを変えられなかった。点数的に後手に回ったのがすべて。点数と時間の関係から、攻撃のオプションが限られてしまった」
開幕3連敗は、グリーンロケッツにとってトップリーグでのワースト記録。早急な立て直しが求められる。試合を振り返れば、モールで2トライを奪ったことや、ロコツイの突破力など、明るい材料もないわけではない。自分たちが持っている力を上手く試合に生かせないところに、この低迷の原因がある。
長丁場のトップリーグも次週でもう第4節。
テイクオフに手間取っていては、失った時間を取り戻すのがいよいよ難しくなる。グリーンロケッツに今必要なのは、もう一度原点に返って、自分たちの強さを最大限に発揮する戦い方を見極めることだろう。
持てる力を発揮できないイライラは、パズルの一片が決まれば、案外逆に上昇への強烈なエネルギーへと変えられる。次週の九州電力キューデンヴォルテックス戦が、本当に今季の浮沈をかけた大一番となった。
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今日は、最後の20分間はハートのあるプレーができていたけど、その前の60分間は、残念ながらあまりハートを感じられませんでした。 技術的には、先週と同じでブレイクダウンに激しさがない。ラックで(相手を押しのける)ブローが弱かった。チームのみんながテクニックを持っているし、どうすればいいかを知っているんだけど、それがゲームに上手く出ていない。特に前半は、みんなのエネルギーが感じられませんでした。 チームを立て直すには、試合までに100%の準備が必要。もう一度チームのシステムを確認して、シンプルなゲームプランに徹して、みんなの力を引き出すように戦った方がいいでしょう。 チーム全員が、連敗を脱出するためのキー・プレーヤーです。 今日の試合では、後半9分から出たニリ・ラトゥと、25分から出たアン・スンヒョが良かったね。2人とも、気持ちのこもったプレーをしていました。 グリーンロケッツは、力のある選手が揃ったチーム。だからもう一度、一人ひとりが自分が今何をすべきかを考え、自分の役割を果たすことに徹することが必要でしょう。
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ニリ・ラトゥ
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アン・スンヒョ
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取材・文:永田 洋光/写真:築田 純(アフロスポーツ)
「アグレッシブさが足りなかった」と前半を総括したグリーンロケッツだが、2分にリコーにDGを決められて点差を開かれ、主導権を握れない。13分にはキックのミスからトライ(ゴール)を奪われ、スコアは16点差まで開いた。
その後、モールから連続トライをあげて猛追したが、反撃も及ばず、リコーに敗れた。
グリーンロケッツは、7点差以内負けの勝ち点1を得たものの、開幕から3連敗。来週の九州電力キューデンボルテックス戦に雪辱を期す。