気合いが入っていないわけでは決してない。
むしろ逆。
どうにかしよう、何としてでも勝ちたい、絶対に勝つんだ……フィールドの上のフィフティーンから気持ちは痛いほど伝わってくる。
しかし、気持ちをぐっと腹の底に呑み込んで、冷静さを保つことができなかった。
11─29。
NECグリーンロケッツは、開幕戦でクボタスピアーズに完敗した。
勝ち点を一つも取れなかった敗戦は、シーズン終盤に繰り広げられるであろう熾烈な順位争いを考えれば非常に痛い。だが、それよりも、気持ちというエネルギーをフィールドでしっかりしたパフォーマンスに結びつけられなかった点が、気にかかる。
ここでああしていれば……あそこでミスが起こらなければ……といった後悔はラグビーにはつきもの。ミスを犯さないようプレーをすることはもちろん大切だが、ノーミスにこだわるあまり平静さや図太さを失っては、ラグビーそのものが小さくなる。
記者席から見た印象でしかないが、開幕戦のグリーンロケッツには、全体的に「空回り」とか「不完全燃焼」といった言葉が重なって見えた。
試合はグリーンロケッツのペースで始まった。
キックの蹴り合いから、マイボールのファースト・スクラムを得たのは前半3分。
グリーンロケッツは、ここからバックスに展開し、5度にわたってクボタのディフェンスに挑みかかる。しかし、パスミスを拾われて切り返され、自陣22メートルへと押し戻される。
それでも勢いは失わず、9分にはクボタ陣22メートルライン付近のラインアウトから左に展開。ラックからSH西田創が鋭くサイドをついてゴール前に迫り、最後はFLニリ・ラトゥが左隅に飛び込んで、先制トライを挙げた。
SO安藤栄次のゴールキックは外れたが、先取点をトライという形で奪えたことで、グリーンロケッツの動きが良くなった。
12分には、相手キックを捕ったFBヤコ・ファンデルヴェストハイゼンがカウンター・アタックを仕掛ける。安藤の手を経てボールがCTBブライス・ロビンスに渡り、プライスが一気に相手防御の裏に出て、左WTB大東功一につなぐ。
ここまでは完璧なアタックだ。
しかし、大東がクボタの懸命の防御で倒されると、サポートが届かずにボールを奪われてしまう。
今度はクボタがカウンター・アタック。
懸命に戻ったグリーンロケッツだが、自陣22メートルライン近くまで攻め込まれ、ラックで手痛い反則を犯す。
クボタSOシェーン・ドゥラームが冷静にPGを決めて5─3。
これが、早過ぎる試合の分水嶺となった。
17分、ハーフウェイラインを越えてクボタ陣に攻め込んだグリーンロケッツは、またしてもボールを奪われて切り返される。自陣に攻め込まれたラックでクボタがボールを出したとき、グリーンロケッツの防御にぽっかりと穴が空いた。FWが密集の脇に固まり、バックスとの間に誰もいない空間が出現してしまったのだ。
そこをクボタのドゥラームが鋭くついて突進。サポートしたFWにボールを返して、最後はNO8マイケル・ブロードハーストがゴールポスト真下に飛び込んだ。
ドゥラームがゴールを決めて5─10。
以降、試合終了までグリーンロケッツはリードを奪い返すことができなかった。
安藤がPGを返して8─10でハーフタイムを迎えたグリーンロケッツは、後半もペースに乗れなかった。
気になるのは、密集戦での反則がわずかに2しかなかったにもかかわらず、すべて自陣で犯したため、これをドゥラームにPGで決められたことだ。
無理な攻めがミスを生み、ミスはそのままクボタのチャンスとなる。あるいは、意気込みが空回りして、反則を取られる。
PGで3点ずつ得点を積み重ね、クボタが反撃に出るところを粘って守り、ターンオーバーから切り返す──そんなグリーンロケッツのゲームプランを、そのままクボタにやられてしまった。
後半11分の段階でスコアは8─16。ワンチャンスでは追いつかない8点差となったことが、さらにグリーンロケッツの空回りを加速させる。
19分に安藤がPGを返してふたたび5点差に詰め寄ったが、2分後にはドゥラームにDGを決められてリードを広げられ、27分にトライを奪われたところで、勝負はほぼ決まった。
グリーンロケッツは、35分にニリの個人技からチャンスをつかみ、途中出場のFLセミシ・サウカワがタッチライン際を快走。ゴールラインに迫って内側へパスを返したが、サポートの選手と合わずにノックオン。リスキーな攻撃で突破口を開いても、最終的にはリスクがミスの形で返ってくる。この場面は、そんな攻撃を象徴していた。
これでトライ+ゴールを奪って6点差に詰め寄り、次のキックオフから乾坤一擲(けんこんいってき)のアタックを仕掛けて逆転……という望みも断たれた。
チャンスを確実に得点に結びつける精度と冷静さ──昨シーズンからの課題が依然として改善されない印象を残して、開幕戦が終了した。
試合後、岡村要ヘッドコーチは、「これは言い訳になりますが」と前置きしてからこう振り返った。
「合宿から1ヶ月、(インフルエンザの影響で)練習試合をやらずにきて、ゲーム感覚が戻らなかった。ラックの場面やキックボールに対して選手がみんなボールにばかり集中して、周りを見ていなかった。このブランクで、今までできていたことができなくなったことを、今日の試合で改めて実感しました」
確かに前半17分にトライを奪われた場面は、練習試合で一度経験すればすぐに修正できるポイントだ。そうした“悪い癖”を一度吐き出して修正するのが、プレシーズンマッチの役割なのである。試合中に修正しようとしても、「開幕戦ということで意気込み過ぎて熱くなり、冷静さを欠いてしまった」(熊谷皇紀キャプテン)状況では、非常に難しい。
とにかくグリーンロケッツは開幕戦に敗れた。それはもう、取り返すことができない事実。
ならば今、必要なのは、過度にこの敗戦を考えることではない。総括し修正すべき部分は修正して、あとは「残り12試合を全勝する」ぐらいの気持ちで開き直って戦うことだろう。
幸い次週12日は、ホームの柏の葉に東芝ブレイブルーパスを迎えての一戦が待っている。
開き直って、グリーンロケッツの一番強い部分をシンプルに東芝にぶつけることだけ考えれば、迷いは断ち切れる。
勝ちたい気持ちをシンプルに強いところに集約して戦うグリーンロケッツの勇姿を、サポーターもまた、首を長くして待ち望んでいる。
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今日の試合は、ゲームプランができなかったことが敗因。クボタのシェーン・ドゥラームに完全にゲームをコントロールされて、僕たちのラグビーができなかった。それが残念。 細かいミスもずいぶんあった。たとえば、1オン1のタックルを外されたり、ディフェンスをセットするスピードが遅かったり、ブレイクダウンでボールを確実に継続できなかったり・・・・・・でも、修正するのは難しくないと思う。
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▲西田 創
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要は、一人ひとりに強いハートが必要だということ。 タックルはどこでするかわかる? タックルはハートでするもんなんだ。 他のプレーも同じだと思う。みんなが、自分でこうするというディシプリン(決まり/規律)をしっかり持って、それを守ってプレーすれば、東芝にだって負けない力はある。 来週は、グリーンロケッツのハートの強さを見せてもらいたい。 そういう意味では、この試合で一番目立ったのはSHの西田創。 彼は今日のメンバーのなかで一番小さいけど、タックルがとても良かった。メンタルが良かったから、いいタックルができたんだと思う。 それから、LOの玄成哲が長いケガから復帰してデビューした。彼はこれからもっと伸びていく選手だから、注目してくださいね。
■玄成哲選手のコメント■
首のケガに苦しんでいたけど、2年間かけてしっかり準備ができたと思います。その間に僕を支えてくれた周りの方々に本当に感謝しています。できれば試合に勝って恩返しをしたかったんですが、勝てなかった。申し訳ない気持ちでいっぱいです。 自分の役割は、密集や下のボールに対する働きかけなど、地味な仕事に徹することだと思っています。今はやっとスタートラインに立てたという気持ちなので、これからチームで生き残れるよう、自分の仕事に徹したいと思います。 |
取材・文:永田 洋光/写真:築田 純(アフロスポーツ)
後半はブレイクダウンで優位に立ったクボタがじわじわとリードを8点差に広げ、27分にトライを奪って勝負を決めた。
グリーンロケッツにとって、ボーナス・ポイントも取れずに敗れたのは痛手。次週の東芝ブレイブルーパス戦に雪辱を期す。
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